From 佐藤健志
三橋貴明さんが11月19日、ブログに「内需縮小型経済成長」と題した記事を書いています。
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12329602219.html
2017年7月~9月期のGDP速報値が、内閣府によって発表されたことを受けたものですが、論旨のポイントはこちら。
GDPの成長率を見るときには注意すべき点がある。
1)インフレ率を示すGDPデフレータがマイナスになっていないか。
2)輸入が減少していないか。
このどちらかが成立すると、名目GDPが縮小していても、実質GDPは成長しているように算出されてしまう場合があるのです!
世に「焼け太り」という言葉がありますが、こちらはさしずめ「痩せ太り」。
本当は痩せてきた(=貧困化の道をたどっている)のに、太ってきた(=豊かになっている)かのごとく見えるためです。
ちなみに「焼け太り」、広辞苑によると
「火事に遭って、その後の生活や事業が以前よりかえって豊かになること」
と定義されます。
焼け跡から(いったんは)繁栄を築いた戦後日本のあり方を想起させるのが面白いところですが、それはさておき。
三橋さんは(1)の状態を「デフレ型経済成長」、
(2)の状態を「内需縮小型経済成長」と呼びました。
そして今年の1~3月期におけるGDPの伸びは前者で、7~9月期のGDPの伸びは後者だったと指摘します。
要するに、目下の景気拡大は見かけ上のものにすぎないという話。
しかるに、関連して面白い記事がありました。
こちら。
国の「悲惨さ」測る指標、日本が最下位の理由
(フォーブスジャパン、2017年5月2日配信)
書き出しはこうです。
人間の置かれる状況は、両極端な「不幸(悲惨)」か「幸福(恵まれている)」かのどちらかだ。
そして、国の「悲惨」な状況を改善させる最も確実な方法は、経済を成長させることだ。
何でも1960年代のアメリカで、世界の経済情勢を大統領に分かりやすく説明しようと
「悲惨指数(ミザリー・インデックス)」なるものが考案されたのだそうです。
ミザリー・インデックスというと、スティーブン・キングの小説に索引をつけたみたいですが、そうではありません。
(※)「インデックス」には「索引」の意味もありますので。ついでに同名のデスメタル系バンドまで存在します。
https://www.youtube.com/watch?v=B09bQChhiHA
世界各国の人々の「不幸度」を計るもので、現在の算出法は以下の通り。
悲惨指数=〔消費者物価指数(CPI)+失業率+金利〕-1人あたりの実質GDP変動率
言い替えれば、
CPI、失業率、金利については「高いほど悲惨」、
実質GDP変動率については「低いほど悲惨」です。
で、この基準で計ったとき日本は世界第何位か?
なんと、最下位!
つまりは「世界で最も悲惨度が低い幸福な国」なのです!!
ニッポン、スゴイ!!!
・・・しかし、うまい話には裏がある。
記事の筆者、スティーブ・ハンケさんはこう明言します。
(※)ジョンズ・ホプキンズ大の経済学者で、上記の算出法を考案した人物。
日本が相対的に幸福だと考えられるのは、
1人当たりGDPの成長率のおかげではない(わずか0.7%しか伸びていない)。
インフレ率が前年比マイナス3.5%だったことが、最終的に指数を低く抑えたということだ。
(カッコも原文。以下同じ)
https://forbesjapan.com/articles/detail/16107?utm_source=YahooNews&utm_medium=referral&utm_campaign=yahoonews
早い話、
〈日本はデフレが続いているから、見かけ上、人々が幸せだという結果が出る〉
のであります。
三橋さんにならって、これを「デフレ型幸福」と呼びましょう。
「痩せ太り型幸福」でもいいかも知れません。
ハンケさんはCPIのみを挙げましたが、
思えばわが国は失業率も低い(ただし実質賃金は伸びていない)。
金利も低い(ただし需要は冷え込んだまま)。
そして実質GDPは、
1)インフレ率が低いか、
2)内需が縮小しているかの、
どちらかの理由により成長している(ように見える)!
上記三指標の意味合いは、カッコに入れた部分によって、みごとにくつがえされてしまうのです。
悲惨指数の算出においては、カッコの部分が考慮されないため、たしかに数値は低くなるでしょう。
が、それは日本人が幸せであることを意味するのか?
「違うだろ~~~っ!!」
──豊田真由子(元衆議院議員)
だ・か・ら、
「右の売国、左の亡国」と言うのですよ!
『右の売国、左の亡国 2020年、日本は世界の中心で消滅する』(アスペクト)
https://www.amazon.co.jp/dp/475722463X(紙版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B06WLQ9JPX(電子版)
そして本当は幸せでないのに、幸せだという嘘が蔓延すれば、炎上が始まるのは必然の帰結。
だ・か・ら、日本は炎上すると言うのですよ!
『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)
http://amzn.asia/7iF51Hv(紙版)
http://amzn.asia/cOR5QgA(電子版)
現に三橋さんによると、
最近の安倍政権は、わが国が本当は経済成長していないにもかかわらず、成長しているかのごとく思い込む傾向が目立つとのこと。
すなわち
1)明らかに無理がある認識を、
2)〈みんなが共有している(はずだ)〉という点を根拠にして、
「崇高にして達成可能な理想」のごとく絶対化しているのです。
さて、これを何と言ったでしょうか?
そうです、キッチュです!!
詳細はこの本をどうぞ。
『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)
「かくも芸術的なやり口を目の当たりにしたあとでは、革命派は財政の天才、ないし紙一重の集まりだと、誰もが納得することだろう」
──エドマンド・バーク(フランス革命政府の経済政策をめぐって)
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)
(※)引用した語句は292ページに登場します。
ところで、日本に次いで悲惨指数が低かったのは中国。
まだまだこっちが上というわけですが、喜ぶのは早い。
ハンケさん、ずばり述べています。
同国はほぼ完全に、1人当たりGDPの大幅な成長(6.3%の伸び)のおかげで、この結果を得ている。
中国の人々が本当に幸福かどうかについては、議論の余地があるかも知れません。
経済統計だって、粉飾している可能性は無視できない。
ただし悲惨指数に関するかぎり、
〈日本の幸福が見せかけのものにすぎない〉ことには、
残念ながら疑問の余地がないでしょう。
なおアメリカの悲惨指数は39位。
ベトナム、スロバキア、チェコに次ぐ数字とのことでした。
かの国も、あまり幸せとは言えないようです。
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)12月6日、日本文化チャンネル桜の番組『FRONT JAPAN 桜』でキャスターを務めます。共演は本紙でもおなじみ、浅野久美さんです。
http://www.ch-sakura.jp/topix/1589.html(番組案内)
2)産経新聞の総合オピニオンサイト「iRONNA」に寄稿しました。
「韓国が『慰安婦の日』をわざわざつくった裏事情」
http://ironna.jp/article/8263
(※)タイトルは編集部の意向によるものです。内容的にはトランプ訪韓の際、元慰安婦のイ・ヨンスさんが晩餐会に出席したことを扱っています。
3)戦後日本が、「焼け太り」から「痩せ太り」に陥っていった過程の記録です。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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4)痩せて太るというのは、むろん矛盾しています。なぜそんなパラドックスが成立してしまうのか? そう、保守もリベラルもすっかり自己矛盾をきたしているせいなのです。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)
5)政治の目的は経世済民の達成です。社会を保守するとは、この状態を保ちつづけることなのです。物事が総崩れの様相を呈しているときこそ、基本に立ち返りましょう。
『本格保守宣言』(新潮新書)
http://amzn.to/1n0R2vR
6)「何よりワケワカで、目が点になるのはこれだ。完璧な独立を達成するだけの実力を持ちながら、われわれはイギリスへの従属をめざしている」(225ページ)
まあ世の中には、完璧な積極財政を達成するだけの実力を持ちながら、あくまで緊縮財政にこだわる国もありますからねえ・・・
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)
7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
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