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2019年4月30日

【施 光恒】「美しい調和」の時代へ

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

おっはようございまーす(^_^)/

 

今日は平成最後の日ですね。明日から「令和」が始まります。新元号、どうお感じになりましたか? 私はなかなかいいのではないかと思っています。「れ」から始まる音の響きが新しさを感じさせるのと同時に、「和」という漢字が昭和を思い起こさせます。新しいものと古いものをうまく調和させた元号だなという印象です。先日、大学で、中国文学を専門とする先生と元号について話す機会がありました(立ち話程度だったのですが)。

そのなかで強く印象に残ったのは、元号を使用することの意味でした。

「令和」は漢籍からではなく万葉集という日本の古典からとったということで、安倍政権らしく「脱・中国」を表明したものだ、ナショナリズムの表れだなどと、一般に言われています。

その中国文学の先生は、まあそうかもしれないが、万葉集を典拠としているから「脱・中国」だとことさらいう必要もないだろうと言っていました。

つまり、これまで中国の古典から言葉を選んできたとしても、我が国が独自に元号を定め、使い続けてきたことこそが、日本人の「脱・中国」、つまり「我々は独立した国なのだ。自分たちの国のことは自分たちで決める。中国など他国からの干渉は受け付けない」という強い意志表明にほかならないのだということでした。

私は、なるほど確かにそうだと感じました。

東アジアでは伝統的に中国の力が圧倒的に強く、周辺の国々は中国の臣下だと考えられてきました。いわゆる冊封体制の下にありました。

わが国は、聖徳太子の頃からそれに反発し、「日本と中国は対等の国家である」「中国何するものぞ」というナショナリズム(独立の意思)を抱くようになりました。

中国皇帝の臣下である「王」ではなく、中国皇帝と対等である「天皇」という呼称を用いるようになったのがその表れの一つです。元号の使用も同様なのです。

独自の元号を打ちたて、それを使うことは、東アジア世界では「我が国は中国の支配を受けない独立国である」という強烈な意思表明だったのです。

元号とは、対外的には独立の標識であり、対内的には「我々は一つの国であり、国民であるから、まとまっていこう」という意思を表しています。

「国民のまとまり」ということに関しては、ここ数年、「上級国民」という嫌な言葉をよく目にするようになりました。

国民のまとまりや一体感、平等性といったものが失われ、逆に分断が生じていると多くの人々が感じとっているから、このような言葉が広まったのでしょう。

本メルマガで三橋さんをはじめ多くの執筆者がよく指摘していますが、国民の分断は、日本だけに見られるものではなく、「グローバル化」に伴って生じる世界的な現象です。

「グローバル化」の受益者である一握りの「上級国民」(投資家やグローバル企業関係者など)に対する庶民の反発は、2016年の英国のEU離脱や米国のトランプ大統領の選出、昨秋から続くフランスの「黄色いベスト運動」などの背景にあるものだと言えます。

平成時代の約30年間は、冷戦が終わり日本を含む世界各国が「グローバル化」の時代に突き進んでいった時期とほぼ重なります。「グローバル化」というと何かいいものに聞こえますが、「グローバル化」とはその実、「多国籍企業中心主義化」にほかなりません。

(この点については、以下の以前の私のメルマガ記事をご覧ください)。
「多国籍企業中心主義化」と称すべき(『「新」経世済民新聞』2018年9月28日付)
https://38news.jp/economy/12450

グローバル化は、多国籍企業(グローバル企業)の利益になるかどうかという観点から、人々を序列化し、分断していく作用を持ちます。

政府は、新元号「令和」とは「美しい調和」を意味するものだと説明しています。

「美しい調和」というこの理念を、令和時代は、国内的にも国際的にも実現していきたいものですね。

国内的には、「上級国民」などという嫌な言葉が使われなくなり、国民の調和や連帯意識、相互扶助意識が回復されるようにしたいものです。

かつての日本人は、「華夷秩序」「冊封体制」という当時のグローバリズムに敢然と背を向け、「天皇」という呼称を打ちたて、独自の元号を定め、「脱・中国」の自主独立の精神を示しました。

我々現代人も、「グローバリズム」(「多国籍企業中心主義」)の不公正さを認識し、「脱・グローパル化」を実現し、国民主権を回復していくべきでしょう。

また国際的にも、「グローバリズム」の怪しさを暴き、各国庶民がそれぞれ豊かになり、まとまることができ、なおかつ各国間の協調関係も育まれるような、現行の「グローバリズム」よりももっとましな調和的な世界秩序の樹立を目指していきたいものです。日本は、そうした新しい世界秩序の建設に関し、主導的役割を果たすよう努めるべきでしょう。

長々と失礼しますた…
<(_ _)>

<施 光恒からのお知らせ>
3月27日に自民党の安藤裕衆議院議員を中心とする「日本の未来を考える勉強会」で「ポストグローバル化に向かう世界とナショナリズムの意義」というタイトルで講演させていただきました。

そのときの動画がyoutubeにアップロードされていますので、よろしければご覧ください。今回のメルマガで言及した「グローバル化」の不公正さや、平成時代に日本企業がいかに変質したかなどについても話しています。
https://www.youtube.com/watch?v=helG4ohheTM

 

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【施 光恒】「美しい調和」の時代へへの2件のコメント

  1. たかゆき より

    令和

    令という字体から
    ぼくが受ける印象 それは

    案山子

    唱歌にありますね、、

    歩けないのか山田の案山子
    耳がないのか山田の案山子

    安倍某とダブって
    クスッと してしまう 今日この頃

    平成最低 もとい 最後 ♪ 

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  2. 神奈川県skatou より

    >また国際的にも、「グローバリズム」の怪しさを暴き、
    >各国庶民がそれぞれ豊かになり、まとまることができ、
    >なおかつ各国間の協調関係も育まれるような、現行の
    >「グローバリズム」よりももっとましな調和的な世界
    >秩序の樹立を目指していきたいものです。日本は、
    >そうした新しい世界秩序の建設に関し、主導的役割を
    >果たすよう努めるべきでしょう。

    ワーワー8888
    全く持ってスバラシイ!強烈支持であります。
    これぞ最古の国の担うべき、国際的な役割であります。

    そういえば、ゴールデンウィークで、ひさびさに他県に住む自分の兄と会って会話したのですが、彼は仕事柄、中国へ、また中国人と仕事することも多いので、話題が今後の中国の技術的覇権の話になりました。
    そして話題はそれを担うべき留学生の帰国率の話になり、たとえ中国共産党が嫌われているとしても、留学生一万人のうち百人が帰国すればそれでよく、その百人のうち一人がトップクラスならば、中共としては技術で日欧米を凌駕する目的には十分だろう、ということでした。

    そして中国人の本質である、国民国家の意識よりも、家族、血族の連帯という伝統的スタイルは、今でも、つまりカンペーといって酒を酌み交わすことはなく、生活スタイルがアメリカ流の中国人でさえ、その連帯意識の本質は変わらないという点。

    さらに、彼らにとって中国共産党とは、自分たちの経済的豊かさの邪魔さえしなければどうでもいい、とても関係の希薄な存在である、つまり政治権力がどうでもいい、民主主義なんていう題目は興味ない、というリアルについて確認できました。

    この情勢において、日本の役割を思い起こすに、それを今なお担える国、国民か、という心配もあります。
    ただ、兄との会話では日本の役割の話はしませんでしたが、中国人と同様に日本人の本質もあまり変わらない、今のところは・・・という観察になりました。

    今のうち、できることはしよう、持っているものは次世代に継承しよう。そして、まだ生き残っている古い層の話は大事にしよう。そう思っています。
    さらに身近な話で恐縮ですが、自分の父親が昭和の東京五輪建設計画の体験を私費出版しましたが、一区切りついた後に、さらに本を考えていて、それは彼の体験である、1968年の大学紛争で、大学側としての立場と、つい先日まで学生だった立場で、調整役をした、ナマの経験談をつづる予定です。
    どちらの立場にもなり切れない、という話になるはずです。日本の思想の本質の一反がそこにきっと隠されているだろう、そう感じ取り、自分はその作成を応援しております。

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