From 藤井聡@京都大学大学院教授
———————————————
●月刊三橋最新号のテーマは「農協改革」。
マスコミや国会議員も語ることができない「亡国」への道とは?
<無料>経済解説
「なぜ地方議員は党執行部に逆らえないのか?」
https://youtu.be/8GGn_ZgqiCA
———————————————
安倍総理・自民党総裁がこの度9月24日、
「本日この日からアベノミクスは第2ステージへと移る」
http://www.sankei.com/premium/news/150924/prm1509240008-n1.html
と明言した上で、戦後最大の経済600兆円をオリンピックイヤーに目指すと宣言されました。
「ターゲットは戦後最大の経済、そしてそこから得られる戦後最大の国民生活の豊かさだ。GDP600兆円の達成を明確な目標として掲げたいと思う。」
http://www.sankei.com/premium/news/150924/prm1509240008-n3.html
あまり知られていないかもしれませんが、そもそもこの600兆円という数字は、
「政府が公表している正式目標」
です。
政府は本年の8月8日に、「中期財政計画」として、財政再建の基本計画を正式に取り決めていますが、その計画の中には、ベースケースと経済再生ケースの二つが想定されています。
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201503/201503_4.pdf
その経済再生ケースでは、毎年3〜4%程度の名目成長率が想定されており、オリンピックが開催される2020年には、599兆円に到達する見通しとなっているのです。
(https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201503/201503_4.pdf の「35」ページの【試算結果】参照)
ですから、この度の安倍総理が宣言された「戦後最大の経済・600兆円」は、政府が想定する「成長率」が保証されれば、それで十分に到達できる目標なのです。
では、そんな「成長率」の実現が容易なのかと言うと……既に現時点において、その達成は、実際のところ大変に厳しくなっています。
第一に、「消費税増税ショック」は、未だに日本経済に、ダメージを与え続けています。
4−6月期のGDPはマイナス成長、そうなったのも、民間の消費と投資が消費税増税によって冷え込んでしまったことが最大の原因です
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/10chou_hoseiyosan/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%892.JPG
さらには、消費税増税で、一時的に物価も上昇していましたが、その物価もついに、マイナスになっています。
(島倉さん提供のこちらのグラフ⇒ http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150925-OYT1T50011.html)
もうこれだけで、名目成長率3〜4%を毎年確保するのが絶望的に難しい状況……でありますが、「中国ショック」もまた、日本の成長を低迷させる事は必至です。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/24/china-economy-consumers-idJPKCN0RO0GG20150924?sp=true
これに、近い将来に10%への消費増税も予定されているわけですから、政府計画で言われる「経済再生ケース」(名目成長率3−4%)を実現することは、
「もしも、何もしなければ」
著しく困難であることは間違いないのです。
ですから、総理が今回600兆円を目標に掲げると明言したということは、
「600兆円を実現するために、何かを行う!」
ということを宣言したに等しいのです。
この点について、総理は、以下の二つの方針に言及しておられます。
http://www.sankei.com/premium/news/150924/prm1509240008-n3.html
(方針1)
「デフレから脱却し、力強い成長軌道に乗せるため、生産性革命を大胆に進めていく。大きな経済圏を世界に広げながら投資や人材を日本へと呼び込む政策を果断に進めていく。」
(方針2)
「南アルプスを貫く全長25キロに及ぶ巨大トンネル。先月、リニア中央新幹線が本格着工となった。東京と大阪を1時間で結ぶ夢の超特急であり、日本の最先端技術の結晶だ。北陸新幹線は今年の春、富山から金沢まで乗り入れた。さらに来年3月には北海道新幹線が開業となる。高速鉄道によって北から南まで地方と地方をつないでいく、日本全国が大きな1つの経済圏に統合されることによって、それぞれの地方にダイナミックな成長のチャンスが生み出される。」
上記、経済成長への対策として言及されているのは(方針1)であり、(方針2)は地方創生のためのプロジェクトという趣旨で言及されています。
しかし言うまでもなく、(方針2)は、
公共投資の「フロー効果」(投資することによる経済刺激効果)
という意味でも、
交通インフラによる「ストック効果」
(交通が便利になって、需要と供給の双方が刺激される)
という意味でも、経済成長を促すことは間違いありません。
一方で、(方針1)は、
(1−1)生産性を高める=供給量を高めることを通してデフレから脱却する。
(1−2)グローバル化を促進することで投資・人材を日本に呼び込み、デフレから脱却する
という二点を主張する、いわゆる、「新自由主義路線」のものですが、これについては、(少々”微妙”な言い方が恐縮ですがw)議論が分かれるところです。
第一に、(1−1)の供給量を高めることは、デフレ脱却「後」には重要ですが、デフレ脱却そのものについては、デフレギャップを拡大します。
第二に、(1−2)のグローバル化の方針は、世界経済が不調でさえなければ十分に高い合理性を持ちうるものですが、ギリシャ・VW危機に苛まれたユーロ圏、上海株ショックに見舞われた中国、そして、それらに端を発する世界的デフレ深刻化……という現状においては、必ずしも合理性を持ちません。
以上を考えると、(方針1)よりもむしろ(方針2)の方がより合理的なデフレ脱却方針である可能性が考えられるところです。
この(方針2)はもちろん、内需拡大によってデフレギャップを埋める事を目指す「ケインズ路線」と同時に、インフレになってからの成長を促すインフラを重視する「リスト路線」(交通インフラこそが国力の源泉であると論じたフリードリッヒリストの路線)でもあります(ちなみに筆者は、このケインズ・リスト路線を踏まえたインフラ論を「超インフラ論」とまとめて呼称しています)。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/06/02/fujii-145/
ですから、今日のわが国政府は、戦後最大の経済・GDP600兆円を目指すわけですが、それを目指すにあたって、(方針1)に象徴される
「新自由主義路線」
で目指すのか、(方針2)に象徴される
「ケインズ・リスト路線」
で目指すのかが問われているわけです。
無論、両者を「折衷する」という道も存在しうる所ですが、残念ながら、この両者では、一方が他方を「逆効果だ」と否定する側面を持ち合わせています。
「防災減災ニューディール」の政策参与を担当させていただいている当方は、明確に
「ケインズ・リスト路線」
こそが、デフレを脱却し、日本経済を成長に導く唯一の道であると認識していますし、その路線での政策アドヴァイスを提供すべき使命を帯びた存在であると自認しておりますので、今後とも、自説が誤りである可能性を最大限に自問しつつ、さらなる政策提言を進めて舞いありたいと思います。
。。。。
さて、その路線で考えた時、今、何よりも求められているのは、
増税ショック対策のために「最低5兆円」
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/10chou_hoseiyosan/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%893.JPG
中国ショック対策のために「最低5兆円」
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/10chou_hoseiyosan/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%894.JPG
あわせて、
「10兆円の補正予算」
を緊急に断行すべきであると考えています。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/10chou_hoseiyosan/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%895.JPG
そして、その中身については、じっくりと吟味していく「ワイズスペンディング」の姿勢が不可欠であると考えます。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/10chou_hoseiyosan/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%897.JPG
・・・
このように、わが国を成長させるには、改革や緊縮を旨とする「新自由主義」ではなく、積極財政に基づく内需の拡大と適正なインフラ政策に基づく成長戦略を旨とする「ケインズ・リスト路線」が必要不可欠なのです。
しかしそれは、「日本の経済政策」にとって真実であるだけではなく、「地方創生」にとっても真実なのです。
今、大阪では、橋下維新があらたに立ち上げる「おおさか維新の会」では、「都構想」を中心とした、緊縮と構造改革を軸とした「新自由主義」路線の諸政策が政策公約に掲げられようとしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150928/k10010250031000.html
しかし、それでは、日本経済が成長しないのと同様、大阪経済も成長どころか衰退することは目に見えているのです。
(http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/09/23/fujii-161/の検証1〜4)
一方で、「ケインズ・リスト」路線の大阪再生といえば、筆者が提唱する「大大阪構想」、あるいは、その構想と大いに重なり合う、自民党近畿議連が提唱している
「近畿メガリージョン」
の構想です。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00302850.html
http://mainichi.jp/select/news/20150917k0000m010025000c.html
安部総理の(方針2)でも論じられたリニアと北陸新幹線を基軸として、大阪を中心に近畿・西日本各地と大阪を接続し、巨大な経済圏(近畿メガリージョン)を形成し、それを通して、抜本的な成長を果たそうとする構想です。
奇しくも、以上の報道を見る限り、「橋下維新」は明確な「新自由主義」路線であり、自民党(近畿議連)は「ケインズ・リスト」路線となっているわけです。
したがって、来たるべく大阪W選挙(市長/知事選挙)で、この維新と自民党系が選挙戦を戦うとするなら、その戦いは文字通り、
「新自由主義」路線 VS 「ケインズ・リスト」路線
の様相を呈しているわけです。
・・・・
このように、日本全体の思想的闘争(新自由主義VSケインズリスト主義)は、そっくりそのままの形で、大阪にて繰り広げられているものとなっているのです。
いずれにせよ、GDP600兆円の実現についても、大阪再生についても、それら自身を否定する方々はほとんどおられないでしょう。
そうである以上、今問われているのは、それを実現する
「思想」
として一体何が正しいのか、という事なのです。
以上にも論じた理由の通り、当方にとっては、ケインズ・リスト主義の合理性は、著しく高いものと確信しています。
一人でも多くの有権者の皆様にこのような問いを立てていただき、その上で、いずれが人々を幸福に導くことができるのかを是非、考えていただきたいと思います。
PS1 「ケインズ・リスト主義」を改めて認識したい方は、こちらをどうぞ!
http://amzn.to/1JIB755
PS2 「サトシフジイドットコム」では、大阪W選に向けて、色々なメッセージ、
情報を提供しています。是非、ご覧ください!
http://satoshi-fujii.com/category/facebook/
**** メルマガ発行者よりおすすめ ****
●マスコミが語ることができない亡国への道
<無料>経済解説
「なぜ地方議員は党執行部に逆らえないのか?」
https://youtu.be/8GGn_ZgqiCA
もし、あなたが、子供や孫たちに安全で豊かな日本を引き継ぎたいなら、、、
この不都合な現実を知って声をあげてください。
*****************************
【藤井聡】GDP600兆の実現と大阪再生のためには、「新自由主義」路線でなく「ケインズ・リスト」路線が不可欠です。への8件のコメント
2015年9月30日 10:09 PM
リスト主義とか初めて知りましたが、古くはアレキサンダー大王がオリエントを征服し様々な文明を都市を交流させヘレニズムの下で新たな文化を生み出した当たりからしてそういうのはわかります。今の法隆寺の柱も下をたどればギリシャらしいし仏像も元はギリシャせいですからね。四半期決算の目先しか見ない連中は交通による交流が中長期的に生み出すイノベーションに無頓着すぎますよw
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月2日 10:17 AM
今の政権は株価という表現しやすいものばかり追っていて、本質的な対策がされていないイメージです。かつて、中国がはげ山だと恥ずかしいからと、山をペンキで塗っていましたが、それと似たようなイメージです。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月2日 8:05 PM
以前にもデフレ脱却を口にして消費税を増税し現在進行形にて愛国を口にして国を売るような法案を次々に実行に移す、そして今回の(方針1)と(方針2)、相対する意見が同一人物の口から同時に出てくる点この自己矛盾を矛盾だと認識しない頭のネジが一本外れた新自由主義者が一国の長である以上、例え(方針2)を採択してもやれ緊縮予算だ!外資にも門戸を開け!その労働力に移民を活用!etcせっかくの日本国と日本人を発展させる効果を相殺するような事案が次々と彼と彼のオトモダチによって沸き起こされとても中途半端がモノが出来上がるのではないかと不安ではなりません結論を申しますと安倍晋三に乗っかって事を成すよりも安倍晋三を潰してから成した方が、確実且つ国家国民の利益に直結するのだと考えますさらに欲を申せば藤井先生たちのような方々に保守左派(ポリティカルコンパス)の政治勢力の結集の旗手をお願いしたいのです…橋下や安倍にこの国が蹂躙される前に…
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月4日 4:27 AM
藤井氏の言・・・このように、日本全体の思想的闘争(新自由主義VSケインズリスト主義)は、そっくりそのままの形で、大阪にて繰り広げられているものとなっているのです。付言すれば、リベラル自由主義VSネオリベ全体主義の決戦でもある。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月4日 8:15 AM
藤井先生、バンバン行きましょう。景気よく。安倍首相に進言してください。大阪ダブル選挙、反維新側に危惧されている方もおられますが、橋下維新など、砂上の楼閣です。幻想だけ振りまいて中身なしですから、口先だけで誤魔化そうするのですね。橋下人気そのものが幻想ですから、まずメディアが言うほど人気がないということを、広めることがまず第一です。政治家を引退すると言っていたのにも、拘わらず新党結成って、相変わらず支離滅裂です。メディアがこの辺りを徹底的に追求すれば、橋下も終わりなのですが。橋下維新を支えているのは、大衆ではなくマスメディアです。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月6日 1:23 AM
言っては悪いですが、今回のGDP600兆。国民を騙す為の大本営発表以外の何物でもないかと思っております。言ってる事とやってる事が真逆の人々は詐欺師か、大馬鹿者か、その両方でございますので。私も公共投資や規制政策、税制の転換を主軸としていく事でGDP600兆は可能であるとは思っていますが安倍政権にそれを期待するのは豚がチンパンジーがシェイクスピアをタイピングするよりも望み薄でしょう。最も確実に答えを間違いうる場合というのは、単に出鱈目に回答するのではなくて過てる理解により問題に対処した時であります。これはまさに安倍以外の何でございましょうか。GDP200兆まで激減するかもと言われた方が得心しますわ。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月7日 4:24 AM
藤井先生の仰る通りだと思います。橋下市長のやり方じゃもっと大阪や日本は衰退します。それは今の大阪の経済状態がそれを示してまうし欧州の混乱がそれを示してると思います。自民党の近畿議連はまともな事言ってると思うし西田昌司先生など近畿出身の政治家は大阪都構想の欺瞞さ見抜いてる思いますし、もう新自由主義の欺瞞さはもう勘弁してほしいと思います。北陸新幹線は絶好調で推移してますし、日本は地震大国なのでインフラ投資やインフラ充実がより重要だと思います昨今AIIB銀行などのインフラ投資銀行が世界でも注目集めてますがインフラあってこその成長だって事分かってるからでしょう、新自由主義とは真逆な思想が今こそ重要なんだと思います。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年10月7日 3:08 PM
『大阪代理戦争』でんな。すると橋下はN海清、藤井はんはY本健一で。ほんだらM田組組長は…..平蔵…..?..ようさん居るから解らん。物騒な話はさておき、現代日本は『トロイの木馬』で言うならばトロイア国であります。敵国であるギリシア人が入った木馬をイーリオスの城内に入れる為『嘘』の情報をトロイア人に吹き込んだシノーン(橋下)、作戦を考案したオデユッセウス(平蔵、洋一)、木馬がイーリオス城内に入ればギリシアの負けと予言したカルカース(新自由主義)それを信じるトロイア人(日本人)、自らイーリオス城門を壊し木馬(ギリシア人が隠れている事を知らず)を城内に招き入れ、結果トロイア国(日本国)滅亡。っと妄想する毎日で御座います。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です