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2015年7月16日

【島倉原】積極財政の確かなビジョン

From 島倉原@評論家

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●●長崎の「軍艦島」は「日本のアウシュビッツ」にされてしまうのか?
月刊三橋の次号(7/11配信)のテーマは、「歴史認識問題」です。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv3.php

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おはようございます。
台風の影響で梅雨明け宣言が遅れているようですが、先週末あたりからすっかり暑くなり、近頃は起きるたびに汗ぐっしょりです。
皆様もどうぞ熱中症にはご注意ください。

先週、藤井聡さんから、ヨーロッパで「アンチ緊縮」運動が盛り上がっているにもかかわらず、日本ではそうした事実があまり報道されないし、(実は15年以上に及ぶ緊縮財政によって苦しんでいるにもかかわらず)そうした国民運動が起こってもいない、という指摘がありました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/07/07/fujii-150/

その中で、「アンチ『大阪都構想』=アンチ緊縮」の構図が存在することを指摘した数少ない例外として、拙稿
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/03/26/shimakura-20/

が紹介されたことも踏まえ、日本でアンチ緊縮運動が盛り上がらない要因について、改めて検討してみたいと思います。

【その1:「緊縮財政が日本の経済や社会を長期にわたって停滞させている」という事実が十分浸透していない】

「大阪都構想」の住民投票では、出口調査、あるいは行政区別の世代分布と賛成率の相関関係において、「高年齢層ほど反対率が高い」という傾向が見られました。
そうした結果を受けて、住民投票の直後には、「高年齢層が現状打破に必要な改革の足を引っ張っている」というネガティブなニュアンスで、「シルバー民主主義」という表現も用いられていました。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20150521-00045905/

上記リンク先の記事でも述べられているように、世代以外に考慮すべき要因の存在や、そもそも賛否の票数が僅差であったことを踏まえれば、こうした世代要因だけで今回の投票結果を説明しようとすること自体には相当無理があるはずです。
他方で、上記の事実が「若年層ほど、現状打破に必要な改革を望む傾向が強い」ことの「一端」を示している、と考えること自体はあながち的外れではないと思われます。
なぜなら、「緊縮財政という現状」のもとで特にしわ寄せを受けて削減されているのは、公共投資・教育といった、現役世代・将来世代にとってより重要な分野だからです。
実際、緊縮財政以降の就業率や正規雇用率の低下度合いは若年層ほど著しいですし、年々の社会保険料率引き上げによって現役世代の負担感は相対的に増しています。

問題は、こうした弊害の真犯人であるはずの緊縮財政が、「現状打破のための改革」という美名のもとに提示されてしまうところにあります。
こうした構図が成り立ってしまうのは、「緊縮財政が自分たちの生活に実害をもたらしている」という認知が乏しいからに他なりません。

そうした認知、あるいは実感が浸透していれば、若年層ほど反対の傾向が強かった今回のギリシャの国民投票のように、全く逆の傾向を示すでしょうし、
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGM06H5K_W5A700C1FF8000/

現に、高年齢層についてではありますが、「『大阪都構想』の住民投票でも、『緊縮財政による実害のおそれ』が反対の重要な原動力の1つとして働いていた」という報道がないわけではありません。
http://dailynewsonline.jp/article/966487/?page=all

してみると、「正しい認知がより浸透していれば、若年層の反対率が少なからず高まり、『大阪都構想』はもっと大差で否決されていただろう」という仮説は十分妥当であるといえるでしょう。

手前味噌ですが、緊縮財政が多方面にもたらしている実害を確認するなら、是非こちらを参考にしてください。
http://amzn.to/1HF6UyO

【その2:緊縮財政が国策、あるいは国民的合意として進められている】

ギリシャの緊縮財政はいうまでもなく、ドイツを中心とするEUに押し付けられたものですし、同様な影響は他のユーロ圏諸国にも及んでいます。
また、若干構図は異なりますが、藤井さんが事例として指摘されたスコットランド独立運動のアンチ緊縮運動的側面にしても、もともと異民族と意識されている「イングランド人」から緊縮財政を押し付けられたことに起因しています。
そうした「押し付け感」が、緊縮財政の弊害に対する反発ひいては実感を高め、アンチ緊縮運動の盛り上がりに少なからず寄与していることは、十分考えられます。

対して日本では、政府自らが「政府の借金が過大だから、財政支出は抑制しなければならない」というスタンスのもとで、緊縮財政を推進しています。
政権与党は自社さ・自公・民主、そしてまた自公と入れ替わりこそすれ、こうしたスタンスは1995年の「財政危機宣言」以来、全くといっていいほど変わっていません。
そして、こうした動きは「構造改革」「財政再建」という名のもとで妥当な政策としてマスメディアでも報道され続け、多くの国民もそれを容認(少なくとも「反対するまでのことではない」と認識)しています。
しかしながら事実は全く逆で、むしろ緊縮財政の実施以降、政府の借金は対GDP比で過大になっています。
http://on.fb.me/1uwxhyc

そうした事実が余り省みられずに緊縮財政が推進される背景に、いわゆる主流派経済学に起因する誤った世界観が存在することについては、上記の拙著などをご参照ください。
http://amzn.to/1HF6UyO
他方で、「なぜ、そうした流れが作り出されてしまうのか」を理解するにあたっては、例えば、藤井さんが書かれた下記の書籍などが参考になるかもしれません。
http://amzn.to/1DbmcZv

【その3:「アンチ緊縮」「積極財政」のビジョンを掲げる政党が存在しない】

上記で列挙した各党はもとより、いずれを見渡しても、「アンチ緊縮」あるいは「積極財政」のビジョンを掲げる有力な政党は日本に見当たりません。これもまた、ギリシャをはじめとしたヨーロッパの動きとは決定的に異なる点です。
一部それらしき政策を掲げている政党はあっても、今の流れに調子を合わせて表面的な「無駄の排除」「財政健全化」をも掲げているため、整合性が取れていません。
民主党や維新の党、あるいはかつてのみんなの党のように、政権交代政党や第三勢力としての存在感を示してきた政党は、むしろ緊縮的・新自由主義的な政策を掲げています。
あえて言うなら、最も「アンチ緊縮」に近いのが共産党で、昨年の総選挙でも得票数・議席数とも大幅に伸ばしましたが(そういえば、藤井さんが先週紹介された、スコットランド独立運動を報道した記事も、「しんぶん赤旗」のものでした)、「確かな野党」以上の存在になるのは現実的ではないでしょう。

こうした現象は、「経世済民」の担い手であるべき政治家の多くが、主流派経済学の影響も受け、経済の現実や財政政策の重要性を理解していないが故に生じています。
国民としても、投票行動でアンチ緊縮の意思表示をすることもできず(多くの国民はそもそもそうした発想を思い浮かべることもなく)、かえって緊縮的・新自由主義的な政策が推し進められてきたのが、過去20年余りの日本の状況といえるでしょう。

しかしながら、上述した直近の共産党の躍進は、「アンチ緊縮」「積極財政」といったビジョンが、日本でもある程度受け入れられる素地が存在することを示していそうです。
だとすれば、そうしたビジョンを掲げる政党が登場すれば、国民の一定の支持を獲得することは十分考えられます。
そうなると、マスメディアとしてもある程度はそうした論点を取り上げざるを得ず、「アンチ緊縮」がより多くの国民に浸透するようになることでしょう。
さらに、そこまで来れば、緊縮財政が外からの押し付けではないことが、むしろ積極財政の実現性を高める要因としてはたらくでしょう。
政党が先か、国民の意識が先か、ニワトリと卵のようなところがありますが、既存政党による緊縮的・新自由主義的な流れに対峙する「積極財政の確かなビジョン」を掲げる政党の存在が、突破口として必要な状況なのかもしれません。
http://amzn.to/1HF6UyO

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PS
強制徴用で騒ぐ韓国が仕掛けた罠とは?
月刊三橋の次号(7/11配信)のテーマは、「歴史認識問題」です。
https://www.youtube.com/watch?v=vGLmma-WA14&feature=youtu.be

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【島倉原】積極財政の確かなビジョンへの5件のコメント

  1. ななし より

    >その3:「アンチ緊縮」「積極財政」のビジョンを掲げる政党が存在しないこれが一番致命的ですね…。2と3が卵と鶏になってますね。この民意も酷いものです。職場の上司から親まで、国庫を自分の財布の如く捉えています。だから、新国立競技場の話でも「こんな値段で〜」とテレビと全く同じ事を言っていました。「金は消えてなくならない」って事実を知ってる日本人が、日本に何人居るんでしょう?私も先生方のお話を聞くまで、そんな当然の事に気がつきませんでした。政治家にも居るんでしょう?これがわからない人が。貧乏性がまた貧乏を招いてるのかと思うと絶望します。

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  2. アビチャ より

     藤井聡先生は確かに参議院予算委員会などで、何回か、公共事業が日本を救うなどのアンチ緊縮財政の主張をなさっておられ、それを高く評価する例えば西田昌司議員のような方が自民党の中でも何人かはいるようですが、声が聞こえてきません。一方、緊縮財政の先頭を走る稲田朋美政調会長に至っては、三橋貴明先生から、個人レッスン的な講義を受けていたと言われます。又、この二人を含むかかなりの数の自民党議員がTPPは危険と明確に主張していたはずなのが、今は、そのような動きは全く見られないようです。おそらくは党議とやらで、がんじがらめになっていてどうしようもない状況に思われます。  かくなる上は、知恵を絞って、私達が行動に出るしか無いのではないでしょうか。そこで、提案が一つあります。三橋貴明の「新」日本経済新聞は3万人近くのメルマガ読者が居ますね。その他にも、親戚づきあいのメルマガや放送局があるようです。これらのメンバーに訴えて、一人、3千円ほどの寄付を集めることを考えてくれませんか。それで、2億円ほどを集めます。  その目的は、全国の有名新聞に、数回に亘って、アンチ緊縮、国土強靱化、TPPを潰せ等の全面広告を出すのです。農協さんとか心ある企業戦士も協力してくれると思います。そのための実行部隊の隊員を募りませんか。本来なら、一口1万円ほどの投資を募って貰うのが、永続性もあって、一番良いのですが。まずは、そういうことで、同志を組織して行動に移りませんか。

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  3. 徳田昌則 より

     藤井聡先生は確かに参議院予算委員会などで、何回か、公共事業が日本を救うなどのアンチ緊縮財政の主張をなさっておられ、それを高く評価する例えば西田昌司議員のような方が自民党の中でも何人かはいるようですが、声が聞こえてきません。一方、緊縮財政の先頭を走る稲田朋美政調会長に至っては、三橋貴明先生から、個人レッスン的な講義を受けていたと言われます。又、この二人を含むかかなりの数の自民党議員がTPPは危険と明確に主張していたはずなのが、今は、そのような動きは全く見られないようです。おそらくは党議とやらで、がんじがらめになっていてどうしようもない状況に思われます。 かくなる上は、知恵を絞って、私達が行動に出るしか無いのではないでしょうか。そこで、提案が一つあります。三橋貴明の「新」日本経済新聞は3万人近くのメルマガ読者が居ますね。その他にも、親戚づきあいのメルマガや放送局があるようです。これらのメンバーに訴えて、一人、3千円ほどの寄付を集めることを考えてくれませんか。それで、2億円ほどを集めます。 その目的は、全国の有名新聞に、数回に亘って、アンチ緊縮、国土強靱化、TPPを潰せ等の全面広告を出すのです。農協さんとか心ある企業戦士も協力してくれると思います。そのための実行部隊の隊員を募りませんか。本来なら、一口1万円ほどの投資を募って貰うのが、永続性もあって、一番良いのですが。まずは、そういうことで、同志を組織して行動に移りませんか。

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  4. たかゆき より

    現実を直視し 自分の頭で考える♪といっても、、一度刷り込まれたバイアスはなかなか消し去ることができませんね。コテコテの主流派経済学ダイスキー様とお話しすることがあるのですがまさに暖簾に腕押し 糠に釘 馬の耳に念仏馬耳東風「馬耳東風」様にすれば、、多数派経済学の諸説に沿わない説や授けられたマニュアルにはない「念仏」に耳を貸したなら「貴様は俺の顔に泥を塗るのか」と教授や上司に目をつけられて出世できないどころか下手をすると追放処分でしょうから心中お察しいたします。今まで 教えられ 行ってきたことに間違いはないのか 常に疑問を抱くことは自分を含め 駄馬には骨の折れることでございますが島倉さまをはじめ多数の名伯楽を擁するこの国の未来は決して暗いものではないとぼくは確信いたしております。

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  5. kazu より

    おはようございます。本日のメルマガ、興味深く読ませていただきました。現存する政党の中でアンチ緊縮に最も近い共産党の躍進に、日本でもアンチ緊縮躍進の可能性があるのではとのご指摘、誠にごもっともと思います。更に申し上げれば、(既に多くの方が忘れていますが)そもそも現政権が誕生した2012年12月の総選挙においては、TPP交渉参加への原則や国土強靭化に向けた10年200兆円、アベノミクス第2の矢、など自民党も「反緊縮」「アンチ市場原理主義」的な政策を掲げていたのではありませんでしたでしょうか?2012年の総選挙において、民主党に愛想が尽きた、という側面もあったとは思いますが、上述の様な政策への支持が集まった結果、安倍政権が誕生したとも受け取れると思います。この観点からは、なぜ安倍政権の政策が真逆に動き、そういう動きとなっているにも拘わらず、なぜ国民の間から「公約違反ではないか」という声が上がらないのか、がもっと議論されてしかるべきと考えますがいかがでしょうか?

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