FROM 藤井聡@京都大学大学院教授
——————————————————-
●●長崎の「軍艦島」は「日本のアウシュビッツ」にされてしまうのか?
月刊三橋の今月号のテーマは、「歴史認識問題」です。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv.php
——————————————————-
大阪都構想の100日言論戦を通して、実に様々なことを学ばせて頂きましたが、その中の最大の収穫の一つが、
「言論戦と呼ばれるものの本質は『ウソとの戦い』である」
という事実を、ありありと、しみじみと認識した、と言う事でした。
普通、わたしたちは意見に食い違いがあり、その食い違いを調整するために込み入った話をする時は、少なくとも相手は、
「ウソをついていない」
という事を前提とします(そうじゃないと、話にならないですよね)。
そして、
「意見が違いは、どっちか(あるいは、どっちも)の理解不足だ」
という事を前提にして、あれこれを話し合い重ねます。そしてそれを通して何が「理解不足」なのかが突き止められれば、その不足を埋めれば、話が前に進むことになる、という次第です。
これこそ、「話せば分かる」の精神であり、「熟議」の論理です。
ところが!
「政治」に関わる意見の食い違いの多くは、こんな「理解不足」を原因としないケースが往々にしてあるのです。
なぜなら、「政治」に関わる意見は常に、(カネや地位といった)「利権」と結びつくことがあり得るからです。だからその「利権」を手に入れるため(あるいは守るため)に、時折人々は、
「ウソ」
をつくのです。
そうなると、そこで生まれる対立は意見と意見の対立ではなく、
「ウソと誠」
の対立となります。
で、そんな「ウソと誠」の対立では、「誠」は「ウソ」を論破することは絶対的に不可能です。
そもそもウソつきは、自身の理解不足を見いだして是正しようとする気がさらさら無く、ただ単に(何らかの利権を手に入れるために)「邪魔する奴を言い負かす」ためだけに発言を繰り返します。
だからその言論戦が「ウソとの戦い」であると特定できたのなら、そのウソつきとまじめに議論することなど、百害あって一利なし、何の意味もないのです。さっさとその場から退散することが得策です。
しかし!
「ウソと誠」の対立では、直接論破は不可能だとしても、誠実に真摯に説明を重ねていけば、「こいつはウソつきだ」ということを
「公衆」
の皆さんに知らしめていくことはできます。そして、ウソの力を削いでいくことができるわけです。
これが、唯一、ウソつきに勝つ方法です。
そもそも詐欺師と真面目に議論したって何の意味もないのは、当たり前。
でも、詐欺師が力を持つことができるのは、そいつの嘘がばれるまでの間だけ。
だから詐欺師に勝つには、そいつが詐欺師であることをバラせばそれで事足りる、という次第です。
ただし……「彼らがウソつきであるということを、世間に周知していく」ことは決して容易ではありません。
なぜなら、彼らは「自分のウソがバラされることが一番ヤバい」、という事を知っているからです。だから、こちらが彼らのウソを指摘すると彼らはいつも決まって、「違う、あいつこそ、ウソつきだ!」というウソを声高に叫び始めるのです。
例えば、都構想の住民投票前に、百人以上の学者がそれぞれの立場で、都構想の危険性を訴える文書を公表したとき、橋下氏は、ツイッターで、その所見について、
「全部デマ」
と言い放っていますが、これほど明らかな「デマ」はありませんよね(オイオイ、「全部」ってアンタwww) http://satoshi-fujii.com/150503-3/
……以上が、当方が都構想をめぐる100日言論戦で学んだ教訓でした。
まとめて申し上げますと、
(1)政治にかかわる言論では、ウソをつく輩が混入し、デマを流布させることが頻発する。
(2)ただし、ウソつきとの議論は、百害あって一利なし。
(3)だから、ウソつきに勝つには、それがウソであることを広く公衆にばらしていくのが唯一最善の策
(4)ただし、ウソつきは自身のウソがバレる事を恐れ、自身のウソを告発する人々を皆、「ホントはあいつこそがウソつきだ!」と触れて回る(こうして上記(1)がさらに強化される)
という次第です。
さて、この様に考えますと、
・積極財政 vs 緊縮財政
・保護貿易 vs 自由貿易
・構造強化 vs 構造改革
・インフラ論 vs インフラ不要論……
という対立構造はいずれも、次のような4つの特徴を持つ「ウソとの戦い」である、という側面が明確に存在していることが見えてきます。
つまり……
(1) 「積極財政・インフラ論・保護貿易・構造強化」論がダメで、それらを語る輩は単なる既得権益者だ、一方で「緊縮・インフラ不要論・自由貿易・構造改革」論は正しく国民国家に有益だ、という「ウソ」が繰り返され、「デマ」として世間に流布される。
(2) そんなウソつきの「緊縮・インフラ不要論・自由貿易・構造改革」論者達とは、直接「議論」しても何の意味もない。百害あって一利なし。
(3) そんな「ウソ」を無力化していくためには、彼等が「ウソ」をついていることを世間に明らかにしていくしかない。
(4) ただし彼らはそう言われ始めれば、「緊縮・インフラ不要論・自由貿易・構造改革」論者達のウソを告発しようとしている奴(たとえば、藤井)こそがウソつきで、デマを言っている、と喧伝し始める(こうして(1)がさらに強化される)。
……
ところで当方は、この(3)の「言論活動」の一環として様々な「書籍」を出版して参りました。
都構想住民投票前に出版した『大阪都構想が日本を破壊する』もそうでしたし、民主党政権が「コンクリートから人へ」というデマ満載のプロパガンダを展開していた時に出版した『公共事業が日本を救う』もまた、そうでした。
そして、最近では『超インフラ論』もまた、この(3)の活動の一環として、インフラ不要論や積極財政無効論という「デマ」を打ち破るために出版したものです。
ですが、こうした(3)の活動(詐欺師のウソをばらそうとする活動)を行えば、やはり、(4)の活動(詐欺師のウソをばらそうとする奴がウソつきだ!と触れ回る)がネット上で様々に展開されてしまいます。例えば……
『都構想』における(4)は、こちら↓
http://agora-web.jp/archives/1641655.html
http://blogos.com/article/112048/
『超インフラ論』における(4)は、こちら↓
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4569826342/ref=cm_cr_dp_synop?ie=UTF8&showViewpoints=0&sortBy=bySubmissionDateDescending#R1XSGHTWEN3JM
……
ちなみに、本日のメルマガは、こうして繰り返される(4)(←要するにこれって、法的措置で対抗することもあり得る単なる誹謗中傷ってことですねw)に対する「ワクチン」の意味があります。つまりそれは、
(5)「詐欺師のウソをばらそうとする奴がウソつきだ!と触れ回る」という(4)の活動が出てくるのはごく当たり前、という事を公衆の皆様に解説する事を通して、(4)の活動の効能を無力化しようとするもの(ただし、(4)を仕掛ける詐欺師たちとは直接議論は決してしない)。
という「第五番目の要素だ」という次第です。
……なんだかややこしい話ですが、詐欺師・ウソつきと戦うのは、どうしてもややこしくなってしまうものです。なんと言っても彼らは一から十までずっとウソをついている訳ですから仕方ありません。
とはいえ、人類はこういうことを、詭弁家(ソフィスト)と戦い続けたソクラテスの時代から延々と続けているわけですから、ますます仕方ありませんw
ということで、心ある読者の皆様は、「ウソつき」「詐欺師」とは議論する事はあっさりとあきらめて、彼らが如何にウソつきで詐欺師なのかを一生懸命、いろんな人に説明して回りましょう。
もちろん!
その前に、様々な客観的な状況を見据えつつ、しっかりと自分の頭で、何が正しい意見なのかを考え続けることが何よりも大切です。私たち自身が「ウソつき」になってしまっては元も子もないのですからw
では、また来週!
[メルマガ発行者よりおすすめ]強制徴用で騒ぐ韓国が仕掛けた罠とは?
月刊三橋の今月号のテーマは、「歴史認識問題」です。
https://www.youtube.com/watch?v=vGLmma-WA14&feature=youtu.be
PS
ウソ・デマとの「最新の戦い」にご関心の方は、是非こちらを!
http://amzn.to/1JIB755
PPS
PS2 ウソ・デマを吐き散らかす輩の「生態」にご関心の方は、是非こちらを!
http://www.amazon.co.jp/dp/4794968191
【藤井聡】言論戦の本質は「デマ」との戦いですへの9件のコメント
2015年8月5日 8:39 PM
「都構想」の復活宣言を初めとして、11月大阪知事・市長同時選と言う大阪決戦が近づいている。「嘘」と恫喝による維新・新自由主義勢力との全面対決なくして、大阪の、日本の再生はあるまい。大阪から反維新・反新自由主義の新しい風を吹かせる必要がある。国の政治・経済的自存自衛と新たなる成長政策の為、大胆に舵を切る契機でもある。反維新(ハシモト=詐欺師)反新自由主義(緊縮・合理化・切り捨て)のすべての府民・市民の行動を期待したい。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月7日 7:51 PM
結果が明確にすぐに出る事柄では、ウソがばれるのも早いですね、STAP細胞とか。藤井先生が挙げられた財政や貿易、インフラ整備などは、要素が複雑で大規模で結果を見るのに時間がかかり、真偽の判断はかなり理知的に優れていないと難しいですね。・・感性を上位に置いてすぐに水に流したがる日本人の不得意分野かもしれません。対面のけんかでは、ウソをつかれたら直ちに「それはウソだ、ウソをつくな」と相手に詰め寄るのも有効でしたが、、確信犯(橋下さん等)には通用しないかもしれませんね。(夫婦ゲンカでの経験ではありません(^^;)
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月9日 4:34 PM
古代中国で韓非子先生が同様の事をおっしゃっていた様な・・・。国が滅びるには47の前兆があるようです。橋下さんみたいなのが出てくる時代は再び対策を古典に求める事が必要かもしれませんね。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月10日 3:57 PM
私が考えるに、緊縮財政=戦いを恐れた事大主義者自由貿易=戦前、戦中の朝日新聞構造改革=火事場泥棒インフラ不要論=バカ、DV男女大阪都構想=積み木崩し(いろんな意味で)
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月11日 12:39 AM
ただの理屈チンピラに過ぎない橋下をここまで増長させたのは、マスメディアの責任です。あんなもの詰まらんと、切ってすてればよいものを、改革者だの、希有の政治家だのと持ち上げて、大阪のみならず日本をも混乱させてきました。いまだに橋下コールが絶えませんが、大阪や日本を再生していくには、ひとつにはこのような悪質な勢力を駆逐していくことが必要であると思います。厳しい戦いになるでしょうが。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月12日 11:24 PM
昨日の三橋さんのメールマガジンと照らし合わせると「日本の農業は補助金漬け」も悪質なデマですね。農業も大阪都構想も構造改革論も国民が「このままではダメだ」と将来に対する漠然とした不安を抱いているときに詐欺師たちは「これが特効薬です」と間違った解決策を提示するのだろう。安倍首相「強い日本へ、改革あるのみ 日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。 私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。」チーン
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月14日 10:41 AM
悪手を見抜く♪藤井先生の「棋譜」を研究したおかげでウソ手を嗅ぎ分けられるようになりましたし緊縮財政 増税 構造改革の三手一組の頓死の筋も難なく分かるようになりました。とりわけインフラ論による「矢倉」の見事な組み方には感銘をうけております。勝負を避けて いきなり将棋の駒をぶつけてくるようなプロの嘘つきがどんな酷い手を使うのか彼等がどこまで愚かになれるのかじっくりと拝見しようと思いつつ藤井先生の素晴らしい「棋譜」をこれからも楽しみにいたしております?
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月15日 4:57 PM
その嘘つきの「彼ら」のご主人さま(東のローマ帝国)が、自国の産業を保護しながらのTPPごり押しの二枚舌どすからね。でも西のギョーザ帝国の十枚舌に比べれば、かわいいものなのでせうか?
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2015年8月17日 3:19 PM
藤井先生のご意見は常に物事の本質と哲学を基本に踏まえつつ、現実社会や政治の虚偽と戦う姿勢を貫いておられます。だから我々は先生のご議論を聴くまたは読むことにより、虚偽と真実の区分ないし実相を知ると同時に、哲学を学ぶことができます。大阪都構想における先生の攻防と勝利はまさにその典型でしたし、最近の財政健全化論争においても決定的なインパクトを与えられたと思います。今後インフラ論や経済政策論において、先生の弁論が虚偽の主張・論議を正しい方向へ導き、傾いている日本の国運を立て直すことになると確信しています。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です