From 藤井聡@京都大学大学院教授
(1)中身が知られていない、イメージ先行の「大阪都構想」
「大阪都構想」の住民投票が決まりました。
11月1日、ないしは10月25日に投票と言われていますから、今から後、一月半後には、住民投票が行われます。
https://mainichi.jp/articles/20200907/k00/00m/040/063000c
とはいえ、多くの国民は、大阪市民の方々も含めて、言葉はよく耳にするが、それが何なのかはよく分からないという方が大半だと思います。せいぜい知っていることといえば、
・橋下さんが作って、松井さんや吉村さんが今やっている「大阪維新の会」が推進しようとしてきたもの。
・5年前に一度住民投票を実施して否決されたもの。
という程度だと思います。でも、肝心の「中身」についてはもっとよく分からない、というのが実態だと思います。だから、多くの人々は「都構想」という言葉から、
「大阪を、『東京都』みたいなものにする構想」
とイメージする方が大半だと思います。そして、
「今は大阪よりも東京の方が発展しているから、大阪をよくするための構想なのだろう」
と、何となく「想像」している方が多いと思います。
事実、今、大阪市では、この都構想について、大半の方(71.8%以上)が、「行政の説明は不十分だ」と認識しているにも関わらず、約半分(49.2%)が「賛成」と回答しています。
https://mainichi.jp/articles/20200906/k00/00m/010/077000c
つまり大阪市には今、「中身はよく分からないけど、まぁ、賛成だ」という気分が蔓延しているわけです。
これは大変に恐ろしい状況です。
今、大阪市民は大阪都構想という「イメージ」は良いけれど中身がよく分からないものを、分からないまま食べてしまおうとしているようなものだからです。その中身如何によっては、取り返しの付かないことにもなりかねないですから―――。
(2)大阪都構想の本質は、「大阪市の廃止」である。
では一体、大阪都構想の「中身」とはどういうものなのでしょうか?
まず手始めに、できるだけ中立な情報を調べるという趣旨でWikipediaを見てみましょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E9%83%BD%E6%A7%8B%E6%83%B3
するとそこには、次のようなことが書かれています。
1.大阪市を廃止し、
2.複数の「特別区」に分割すると同時に、
3.それまで大阪市が所持していた種々の財源・行政権を大阪府に譲渡し、
4.残された財源・行政権を複数の「特別区」に分割する、
これを見ると、どうやら大阪都構想は、
「大阪市という一つの会社を潰して、そのカネと権限を大阪府という大企業に譲り渡した上で、4つに分社化する」
というような話だということが見えてきます。
普通こう言う話は、会社を潰す話をする時に言われます。
ですから、大阪都構想とは、東京のような「みやこ」に発展させる構想だという「言葉のイメージ」とは裏腹に、「大阪市を廃止する」というのがその中身なわけです。
(3)都構想の住民投票は、「大阪市の廃止を大阪市民に問う」選挙である。
ところが、前回の住民投票の時、驚くべき事に、この「真実」が投票用紙に記載されておらず、有権者に「隠されて」しまっていたのです。この点について、多くの学者や市民が「事実の隠蔽じゃないか」と言う視点から激しく批判し続けてきたのですが、今回の投票時には、選挙管理委員会の判断でその「事実」が明記されることになりました。
『大阪都構想住民投票 用紙に「大阪市を廃止」明記』(毎日新聞、令和2年9月7日)
https://mainichi.jp/articles/20200907/k00/00m/040/063000c
ちなみに、大阪都構想の住民投票の有権者は大阪市民。
したがって、大阪市民の皆さんは、後一月半後に
「自分達の自治体である大阪市を廃止するかどうかの判断」
を問われることになるわけです。
2015年の住民投票時には、大阪市民は自分達の自治体を廃止することを回避する判断をした訳ですが、今回大阪市民は、自分達の大阪市を廃止・解体する判断を下すのでしょうか?
少なくとも、何も分からないうちにイメージだけで都構想に賛成し、大阪市を廃止することだけは避けることは、必要だと言えるでしょう。
もしも大阪市を潰すなら、潰すという事を理解しながら潰して頂かないと、後で激しく後悔することにもなりかねないわけですから…。
(4)大阪都構想の住民投票は、「堺市民に、堺市の廃止を問う」ようなものである。
ところで、この「大阪市を潰す」という概念は、大阪においては少々直感的に分かりづらいのかも知れませんが、次のように考えれば簡単にご理解頂けるのではないかと思います。
すなわち、今回の大阪都構想の住民投票は、
堺市民に「堺市を廃止しますか?」を問う
様なものなのであり、
神戸市民に「神戸市を廃止しますか?」を問う
横浜市民に「横浜市を廃止しますか?」を問う
様なものだということです。
言うまでも無く、堺市民も神戸市民も横浜市民も、そんな投票にほとんど誰も賛成しないでしょう。
にも関わらず、大阪市だけなぜ、大阪都構想を支持する方が多いのかと言えば――それはたまたま、廃止される市の名前が、府県の名前と一緒だからです。
でも名前がどうあれ、廃止は廃止なのであって、大阪でも堺でも横浜・神戸でも「都構想の実態」は一ミリも変わりません。
ついては大阪市民の皆さんには是非、名前やイメージに囚われずに、大阪市という自分達の自治体を潰すのが都構想というものだという「真実」をしっかりと認識した上で、投票所に行っていただきたいと思います。
追申1:
大阪都構想については、実に108人もの学者・専門家達がその危険性を様々に指摘しています。「大阪市が廃止」されることのデメリットがどれだけ深刻なのか…ご関心の方は是非、下記ご覧下さい。
『大阪都構想の危険性に関する学者所見』
https://satoshi-fujii.com/scholarviews2/
追申2:
…にも関わらず、都構想の賛成世論があるのは、それが単なる「空気」だからです。空気が暴走すれば必ず自滅します…是非、ご一読ください。
『新・空気の研究』 ~TV・知事・専門家たちのコロナ脳
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08D4SJWR3/
追申3:
「維新と仲が良い」と噂される菅新総裁…ですが、未来は決して明るくありません。注意深く推移を見守りましょう。
『なぜ日本は菅氏の「消費増税発言」によって「地獄行き」となるのか?』
https://foomii.com/00178/2020091221032570796
【藤井聡】『大阪都構想の真実』その住民投票は「大阪市の廃止」を大阪市民に問うものであるへの10件のコメント
2020年9月16日 3:42 PM
「大阪市を潰す」
とは
大阪市に寄生し 甘い汁を吸っている
893(やくみ では ありません念のため)
これを潰すのが 真の目的
と 知人から聞いた事有り、、
真偽のほどは定かならねども
まあ
それを言ったら 都構想は
おしまいよ ということか
しら ん。。。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月19日 7:33 PM
magnificent publish, very informative. I’m wondering why the
opposite experts of this sector don’t notice this. You must continue your writing.
I am confident, you have a great readers’ base already!
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月16日 8:13 PM
ただダラダラして今頃何が日本の尊厳と国益を護る会なんですかね。これも橋下徹と同じく口先だけの無能集団でしかないですね!ホントどご見て何やってんだか!これだからバカの代名詞な櫻井女史とか有本香とか西村幸祐みたいなのにソックリですよね。それに比べれば断然、藤井先生も富岡先生も小山先生の物事の見方や考え方がまともなのです。ちなみに金融屋の傀儡の財務省の関係者も同じく無能で役立たずだからあらゆる処で情報収集したって肝心の分析力に乏しいから意味がないわけで、失敗だらけとは酷いよね!それでメディアと結託して簡単に役人辞めさせよってバカかって話で、これがまたデフレを放置してバカ曽根康弘政権の背後で暗躍した低次元のクズ集団でしたよね。でその屋台骨が強いて言えばベテンの集まりの傀儡である東大法学部であり実は小学生以下だから日本が解体するわけなのね。だから傷もの政治家はダメなんだよねって事は傷もの役人もまたしかりなんだが隠蔽改竄やられたら国民は蚊帳の外なんだよ怖いね!だから桜の代紋も泥にまみれたクソまみれなんだよ杉田和博!
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月17日 10:56 AM
この記事は何の本質も言っていない。
目を引くだけのキャッチコピー「大阪市をつぶす」という言葉だけが先走りしただけの記事
皆の目的は、大阪をよりよくするためという目的のためだけ。
そのために、必要なら大阪市だろうが、すべての市をつぶそうが、また復活させようが何の問題もない。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月17日 11:03 AM
一般市民が政策の中身をすべてこまごま把握する必要はないし、目的のために手法が変わることなんで当たり前。
要は、信じれる政治家かどうか、やろうとしている目標、そして最終的にはその結果を判断して投票すればよい。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月17日 4:55 PM
記事は本質を言っていない、目を引くキャッチコピーだけだ、という指摘をされていますが、そのご指摘、「都構想そのもの」にピッタリ当てはまると思います。
>要は、信じれる政治家かどうか
>やろうとしている目標
「信じれる」根拠は?都構想を進めようとしている維新の会の政治家は信じれないのばかりです。目標は府への財源・権限の集中でしょう。一部に利益の集中するデカイ商業施設やカジノをつくり、地域経済社会は疲弊するのは目に見えています。なお、こうした「本質的な」批判は、既に藤井さんらが5年前に否決された都構想投票に先立って徹底的に行っておられます。
>そして最終的にはその結果を判断して投票
都構想を実行するかどうかの投票の判断に、まだ結果が出てないどころかやってもいないものをどう使うというのでしょう。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月18日 12:22 AM
大阪市民なら、大阪市政が良くなるなら反対しないですよね。
そもそも大阪市政を良くする方法は大阪市の廃止なのでしょうか?
大阪市民にはない概念ですよね。
大阪市民が望んだ政策なのでしょうか?
一つの国政党がやりたい政治の構想を練り、その後やってもいいか?と聞いてくる。否決してもまた聞いてくる。
まるで郵政民営化をもう一度国民に問う!と言って解散総選挙をして、雰囲気で投票をした痛い過去を思い出さずにいられない。
最終目標は一体なんでしょうか?
郵政民営化の本当の目的は何だったでしょうか?
だいたい住民投票の正確さも信用できない。
後で答え合わせができるよう、投票用紙をスマホで撮っておく等各自工夫が必要だと思う。
世界は水道を再公営化し、大阪は地方創生とは真逆のオール大阪と言い出し、反対する間も無く気づけば水道料金を回収する会社は外国の会社になっています。
この流れで反対しても都構想は実現しそうで怖いです。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月18日 7:30 PM
都構想どちらが正しいかやってみないとわかりません。
現状判ってるのは前回否決されて代案が意味なかった。
その後の選挙で再挑戦を目的にしたW選挙で大勝した事実。
橋下さんに代わってから大阪が良くなった事実。
維新の国会議員は問題起こす人間が多い事実。
選挙に勝てないのに批判ばかりする学者はいらない。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月20日 8:46 AM
大阪市を廃止するってことを理解したら大阪都構想を理解したことになるのか?
このライター、ただ変化するものを批判したがるやつなんだろう。俺たちの未来を潰さないでほしい。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2020年9月24日 4:30 PM
大阪都構想は大阪市民には不利益ですね。
大阪都構想の目的である2重行政による経費削減より、廃止にする費用のほうが高いということが、維新の説明の変遷からも良くわかります。
政令指定都大阪市と大阪府の両者から有効なサービスが大阪市民に提供されるのはメリットだというのも当然ですね。
維新が多額の費用をかけ1度だけ住民投票するといいながら、2回目の住民投票をする約束を守らない団体というのも良くわかります。
彼らの目的は、竹中平蔵氏の主導する水道民営化等による利権を得ることだと思いますが、そこをもっとよく知りたいです。
大阪市のホームページでは、水道事業は大阪府に移管する予定であるが、民営化する方向性であると分かりにくい表現がしてあります。
何となく賛成でなく、詳しく調べてみてください。
大阪市民が賛成する理由が見当たりません。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です