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2015年7月14日

【藤井聡】危機に備え、「増税延期」と「大型景気対策」の準備を。

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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●●長崎の「軍艦島」は「日本のアウシュビッツ」にされてしまうのか?
月刊三橋の次号(7/11配信)のテーマは、「歴史認識問題」です。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv3.php

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ギリシャ危機、そして、中国の株式市場の暴落と、いよいよ、世界経済が危機的な状況に陥ってきました。

ただし、メディア上では、楽観的な見通しが言われていることがしばしばです。

例えば、ギリシャ国債を保有しているのは今や民間では無く、大半が政府機関であり、したがってギリシャがデフォルトしてもそれが世界経済に大きな打撃を与えることは無いだろう、という予測がしばしば言われています。
http://www.smam-jp.com/useful/report/ichikawa/__icsFiles/afieldfile/2015/06/22/irepo150622.pdf

同様に、中国株についても、中国政府が徹底的な対策を講じ、少なくとも当面は、これ以上の被害拡大が回避できるのではないかとも言う意見もあります。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NR57B56JTSEB01.html

もちろん、そうした楽観的な見通しが正しい可能性もありますが、そうなるとは限りません。

実際、サブプライムローン危機やリーマンショック時、日本はサブプライムの不良債権をほとんど持っていないので、影響は軽微だろうと言われていましたが、ふたを開けてみれば、実際には、凄まじい経済的打撃を受けたのです。

また、サブプライムローン危機から日本の巨大被害をもたらしたリーマンショックまで1年程度の時間がかかった事を考えれば、これから1,2年の間、リーマンショック時の経済被害と同等、あるいは、それ以上の被害を受けることは覚悟しておくことが必要です。

まず、ギリシャについてですが、ギリシャ国債の民間所持は限定的(2割程度)とは言え、ギリシャ国債を保有している各公的機関(EFSF,EU等)が数兆円から数十兆円規模で損失を出すことになりますから、ギリシャがデフォルトすれば、彼らが「緊縮的」な動きを加速する可能性がでてきます。そうなると、火種を抱えるイタリアやスペインの危機が誘発されていくことも考えられます。

そうした動きが生じてくれば、ユーロは売られ、下落、暴落することが危惧されます。

結果、ユーロ圏内の輸入価格は高騰し、実質的な消費・投資が縮小し、内需が縮小していきます。さらには、先に述べたギリシャのデフォルトで大きな損害を被った各種政府機関の緊縮的振る舞いによって内需縮小はさらに加速することになります。

一方こうしたユーロ危機よりも、より直近の危機として深刻なのが中国のバブル崩壊です。

日本のバブル崩壊が日本経済に打撃を与えたのは、多くの資産家・企業が膨大な「借金」を抱え、彼らの需要・投資が一気に冷え込み、内需が急激に縮小してしまったからです。そうしたことが、今まさに中国で起こっています(真偽のほどは定かではありませんが、大損したたくさんの投資家が自殺しているとの噂がある、とも報道されています)。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150704/frn1507041700005-n1.htm

中国の内需の縮小が、どの程度の規模になるのかは定かではありません。しかし、リーマンショック時に失われた株式資産が米国内で800兆円であった一方で、中国のそれは、現時点でたった3週間でその半分程度の水準(390兆円)に達しています。ですから、深刻な中国国内の内需縮小が起こったとしても不思議ではありません。

さらに現時点では、中国当局の常識を度外視した様々な対策(例えば、売買停止、等)で、株価は一時、持ち直す動きを見せていますが、実体経済の活力以上に株価が高騰している状況が解消されてはいませんから、いつ何時、今回と同様、あるいは、それ以上の急落を見せるかは分からない状況です。

さらには、売買禁止などで仮に株価が安定したとしても、株を得ることが出来なくなった投資家たちは、損失を最小化するために、不動産や証券等、他の資産を売却することが予想されます。結果、さまざまな金融市場の価格が急落し、さらに大量の投資家・企業が巨大な損害を被ることになることが危惧されます(特に不動産については、景気対策で無理な政府投資が重ねられてきた結果、過剰供給状態となっていますから、その下落は時間の問題です)。

その上、中国当局が、景気回復の次なる手として、輸出拡大を狙って元安誘導を図ることも予期されますから、そうなれば、日本の輸出はさらに縮小することになります。しかも、そうした元安は韓国をはじめとしたアジア諸国の景気後退をもたらし、それを通して日本の輸出がさらに減少していくことも危惧されます

この様に、中国もギリシャも、仮に今、各種の対策で落ち着きを取り戻したように見えても、それは単に、表層的な安定に過ぎず、一皮めくれば、関連諸国に波及する深刻な潜在的な危機が残されたままとなっている状況なのです。

むしろ、問題を先送りすればする程に、潜在的な危機が肥大化し、かえって、健在化したときの危機をさらに巨大化させてしまう事になります。

それはいわば時限爆弾。

無論、表面的な危機を回避すると同時に、潜在的な危機を構造的に解消する対策が、ユーロと中国で取られれば善いのですが、残念ながら、そういう構造的対策が図られる様子は、ほとんど見られていません。

したがって、仮に今回、リーマンショックの様な危機を免れたとしても、やはり、数年以内には、それと同様のショックに世界経済が見舞われ、日本が深刻な被害を受けるであろう事は、避けがたい状況にあります。

リーマンショック時には世界中で需要が縮小し、その結果、(諸外国における)輸入が激減し、日本においては、トータルで一年間で27兆円もの輸出が激減しました。これが、日本経済に大打撃をもたらしました。

そして今回の中国・ユーロ危機もさらに深刻化すれば、日本からの輸出が激減する危機に繋がります。

現時点においても、(先にも触れたように)株価の損失総額(390兆円)はリーマンショック時損失総額(800兆円)の半分程度の水準に達しており、また、ギリシャの借金額はリーマンブラザースの破綻額の半分以上の水準です(64兆円に対して38兆円)。

こうした数字だけを比較すれば、日本の輸出が10〜20兆円規模で、早晩縮減しても何も不思議ではない、と言うことができます。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=675911272509819&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater

しかもわが国は今、金融緩和による円安誘導で輸出を急激に伸ばし、それを通してデフレ不況が緩和されている状況です。それは、リーマンショックの直前と同様の状況です。したがってここで輸出が一気に縮減すると、再び日本のデフレは極めて深刻な事態に陥ることになります。

さらには、現在はさらにまずい事に、消費増税の影響で景気が後退しつつある状況です。ですから、今年や来年の経済ショックは、リーマンショックよりもさらに大きな被害をもたらすことが危惧されます。

・・・

いかがでしょうか?

以上はもちろん、「確定的な未来」ではありません。

しかし、「十二分以上にあり得る未来」なのです。

国土強靱化とはそもそも、このように、未来のリスクを見据え、それに対して粛々と対応を図る取り組みです。

以上の「現実的なギリシャ中国危機のリスク」を見据えれば、

・増税延期の準備
・大型景気対策の準備

が必要なことは、危機管理視点から考えれば、論ずるまでもなく当たり前のことなのです。

是非とも、日本の経済政策担当者やエコノミスト、経済学者の皆さんにも、ゼロリスクの平時のみを前提とした経済理論に基づいてあれこれと考えるのではなく、

「危機管理」

の発想で考えていただきたいと思います。

さもなければ、日本は再び、アベノミクス以前の、最悪の不況状況にたたき落とされてしまうことになるのです。

PS
合理的な「大型景気対策」を考える上で何よりも求められているのは、理性的な「インフラ論」です。ようやく今週発売となります『超インフラ論』、是非、ご一読ください!
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PPS
強制徴用で騒ぐ韓国が仕掛けた罠とは?
月刊三橋の次号(7/11配信)のテーマは、「歴史認識問題」です。
https://www.youtube.com/watch?v=vGLmma-WA14&feature=youtu.be

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  1. 新「日本列島改造論」と日本の針路 より

    藤井先生の「超インフラ論」を読んで、故田中角栄元首相の「日本列島改造論」を思い浮かべた人は多いと思う。田中政治の全体像を総括するのは簡単ではない。政官財の癒着と金権政治批判で退陣したが、外交面の自主性の発揮、内政面での、過密・過疎解消の施策、国土の均衡ある発展、弱者に対する配慮など見るべき点も大きい。戦後民主主義のまさに頂点に君臨した人物と言えよう。田中逮捕の切っ掛けとなったロッキード事件の発火点は、アメリカであった。田中以後、日本外交は対米従属を深め、政官財癒着を攻撃した勢力は、新自由主義の本性を現し、TPP属国化と国民経済解体が進行している。国民経済の自立的発展とその基礎である社会資本の充実は、金権政治の温床として葬られた。田中政治を葬り、また、日本経済の自立性を奪おうとしている本体は、アメリカ(金融資本)とそれに追随している日本のリバタリアンたちである。未来に向かって、日本の自立と民主主義を守り、国土の均衡ある発展を確保するためには、年率2〜3%の経済成長率が必要であり、新「日本列島改造論」(超インフラ政策)の実行が不可欠である。中国の動きは、不安定さを増しており、アメリカも当てにはならない。(他人を当てにするな!)他を頼む前に、自分の足で立つ気概が日本に必要である。そのためにも、恐れず、新「日本列島改造論」(超インフラ政策)を大胆に提起するべきである。

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  2. ねこ より

    第2回シンポジウムで、宮本先生、木村先生は、藤井先生のインフラ論に全面的に賛成、ということではなかったように受け取りましたが、印象あっていますでしょうか?しかし、何より正確な観察研究からの見解であることを、シンポジウムでは重視されているように感じて、好感を持ちました。パネルディスカッションで藤井先生が、このシンポジウムは意見をまとめてどこかに要望を出すという趣旨のものではない、と言われたのも、学問的独立と自由な感じがして、とてもよかったですv^-゚)次回も楽しみにしています。

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  3. robin より

    宇宙人は存在するのか?って問いに対していつか、どこかに必ず存在すると答えるのに似てますね。人類や地球が滅んだ何万年先とか太陽系の外とか。答えとして間違ってないですが神学ではなく経済学なのですからできるだけ多くの人の生活を守る学問を目指して欲しいですね。

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  4. 拓三 より

    あの〜、経済学者さん(財政政策軽視論者)に質問があるんですが?Q、タイムラグのラグはいつごろになるのでしょうか?  このままだと詐欺にあたる可能性が濃厚だと思うのですが?*ギリシャ、中国問題は、数年前から解っていた事ですので当然解っていた上でタイムラグをうたっていた事でしょう。それと構造改革が進んでいないからだ、という脳みそにウジが湧いている様な回答はご勘弁下さい。

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  5. アンジェラマオ より

    そんな事をここで言われても、あなた安倍政権の参与で安倍総理とも会えるんだから安倍総理に言上してやってもらいなさいよ。安倍総理が国家国民を思う愛国者なら喜んで藤井先生の言う通りにしてくれますよ。そうじゃないならそうじゃないという事ですわな。

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  6. ろんどなー より

    消費税を8%に上げたことは大失敗だったと誰が見ても分かるのに、財務省はなぜまた10%に上げようとしているのか全く理解できません。そもそも5%から8%に上げた税収増分はどうなって、どこへ行ったのかも不明。そして明らかな失政なのに増税賛成した財務官僚と御用学者の誰も何の責任も問われていませんから、また平気で無責任な増税の話ができるのでしょう。彼らは国会と国民をナメ切っているのでしょうか。あるいは日本の経済成長を阻害したい目的でもあるのか。今の日本の癌は罪務省と害務省。どちらも組織改革どころか一度解体して作り直すべき。それなりに機能・貢献していた通産省、建設省、運輸省が無くなったのに、罪務省と害務省はそのままなのはすごくヘンです。しかも大失態をやらかしても誰も降格とか免職とかナシ。だいたい財務省の中に税務署が含まれる国なんて、他にありませんから、日本だけにある変則的で歪んだシステム。それを武器に政治家や言論人やマスメディアを黙らせているとしたら、巨大既得権益の独裁権力組織。ここまで経済と世界情勢が不安定化している時、害にしかならない増税よりも、むしろ消費税を5%に戻すことを検討しても良いくらいでは?

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