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2015年3月20日

【施光恒】「修行」と新自由主義(2)

From 施光恒(せ・てるひさ)@九州大学

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●知らないと怖い農協改革のカラクリとは? 三橋貴明の最新Videoを公開しました!

https://www.youtube.com/watch?v=tdZJGFU19ac

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おっはようございまーす(^_^)/

だんだん暖かくなってきましたね。もうすぐ春ですね〜。
(゚‐゚)♪♪ポケー

いかんいかん、今日は、前回の続きです。

前回(3月6日付)の当メルマガ記事で、新自由主義推進派が、日本の一般国民に新自由主義的政策を受入れさせることができたのは、「修行」(「自己啓発」)系の言葉とうまく結びつけたからではないかということを述べました。

「「修行」と新自由主義」(『三橋貴明の新日本経済新聞』2015年3月6日付配信)
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/03/06/se-54/

「精進」、「努力」、「自分を見つめる」、「多様な他者の観点から自分を見つめ、視野を広げる」、「自分を高める」、「切磋琢磨」などの多くの日本人が好む「修行」系の理念が、新自由主義や、それに基づく「グローバル化」と結び付けられた。

それによって、

「規制を撤廃し、民営化・市場化が進んだ社会」=「皆が努力し、切磋琢磨し、人格を高めあえる社会」=「新自由主義的社会」

「国境の垣根を低くし、多様な人々が共に働く、多文化共生社会」=「互いに視野を広げ、高めあえる社会」=「移民国家ニッポン」

といったインチキな等式が暗黙裡に作られて、新自由主義的政策やその一つとしてのグローバル化の推進に利用されてしまった。

他者と切磋琢磨し、視野を広げ、自分を常に高めていきたいという日本人の生真面目さに、新自由主義推進派は付け込んできた。そのように論じました。

今回は、この結びつきをどのようにして解き、新自由主義やそれに基づくグローバル化の推進論者に対抗していくかについて考えたいと思います。

その際に留意すべきなのは、文化はなかなか変えられないし、変えることが望ましくもないということです。つまり、日本人の「修行」好き、「自己啓発」好きは、なかなか変えられないし、変える必要もないということです。

日本人の「修行」好きには、当然ながら、いいところも多々あります。武道が生まれたのも、職人仕事が世界で類を観ない水準にあるのも、「修行」好きのおかげです。学術文化が発展し、経済的に豊かな国になれたのも、常に、他者から学び、切磋琢磨し、自分を磨き、高めていこうとしてきた日本文化の賜物でしょう。

新自由主義者にここ20年ほど悪用されてきたからと言って、この美点をなくす必要は毛頭ありません。

上記のようなインチキな等式で示された結びつきをほどけばいいのです。

いくつかの案を思いつくままに書いてみます。

(1)新自由主義化、グローバル化の先にある世界は、多くの人々が自己を高めていくことができない世界であることを意識する。

我々が「改革」の先に作ろうとしている社会は、残念ながら、いわゆる格差社会です。グローバルな競争に対抗するため、賃金は下げられますし、雇用も不安定化していきます。

雇用の不安定化・非正規化は、「仕事を通じて自分を高める」のを非常に難しくします。

「こつこつ努力しても昇進できない」、「時給もたいして上がらない」、「いつ解雇されるかわからない」、「責任ある仕事を任されない」「勤め先に愛着も抱けないし、職場の同僚に仲間意識を持つこともできない」という状態を強いられますので、かつてのように、職場で切磋琢磨し、会社の発展とともに自分も成長していくなどという昭和な物語は生まれようがありません。

仕事以外の面での自分磨きでもそうです。生活に余裕がなくなり、不安定になれば、普通の人々は、趣味などを通じて自分を高めようなどという気にもなりません。自己啓発は、ある程度の生活の安定があってこそです。

結局、「修行」「自己啓発」好きの我々が「改革に伴う痛み」を通じて作ろうと努めているのは、皮肉なことに、大多数の日本人が、自分を磨き、高めることなどかなわなくなる社会にほかなりません。

(2)努力を尊ぶ文化も、失われてしまうことに気付く

似たようなことですが、新自由主義化が進めば、「コツコツ努力することの大切さ」が徐々に信じられなくなり、結局、修行好きな日本の文化も損なわれてしまう恐れがあります。

90年代半ばごろからの構造改革の時代に、新自由主義推進派は次のようによく言いました。

「これまでの日本のようなローリスク・ローリターンの画一化した社会を変えて、努力する人が報われるハイリスク・ハイリターン型の社会にしていかなければならない。そうなれば格差は少々生まれたとしても、皆が努力するようになり、社会はより活性化するはずだ」。

しかしこれは誤りでした。10年ほど前、よく話題にされた社会学者・山田昌弘氏の著書『希望格差社会』(筑摩書房、2004年)によれば、90年代後半以降、日本の格差社会化が徐々に進み、コツコツ働いても必ずしも報われない事例が多くみられるようになった。その結果、努力しても報われないのであれば、努力自体をやめてしまおうという人々が増えてしまった。そのように指摘します。

実際、統計数理研究所が昨年秋に発表した「国民性調査」によれば、若者を中心に、「努力しても報われない」と感じる日本人の割合は、ここ25年でかなり増えています。
http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/page2/index.html
(上記リンク先の「4 努力しても報われないが増加」を参照)。

新自由主義推進派は、かつて、格差が増えれば「勝ち組」を目指して各々努力するようになり社会が活性化するはずだと主張しました。しかし現実は、「努力しても報われるとは限らないから努力は無駄だ」と多くの人が感じ、「努力」という徳目が弱体化しつつあるようです。

この傾向が続けば、近い将来、日本人の修行好きの文化も失われてしまうかもしれません。

(3)「改革」の先にあるのは、一部の人が努力しなくて済む世界であることに気付く。

最近流行のトマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)から読み取れる要点の一つは、新自由主義化した社会では、「r (資本収益率) > g (国民所得の成長率)」となるということでした。

資本家の儲けが、一般国民の所得の伸びよりも大きいため、格差はどんどん拡大するというのです。つまり今の流れを放置しておけば、「親から相続した資本を持ち生活している人」と、「コツコツと努力を重ね、懸命に仕事をし、自己を高めようとしている人」では、残念ながら前者のほうに圧倒的に有利な社会ができてしまうということなのです。

経済的な側面だけでなく、文化面でもいえます。

現在の日本では、新自由主義に基づく「グローバル化」が進められていますが、教育や文化の面でのその表れの一つが日本社会の英語化推進です。

勉強好きの日本人の英語熱は、今後ますます高まるでしょうし、英語ができる人とできない人との間で教育や経済の面で格差が生じるようになります。日本国内でも、英語や英語文化の威信は高まり、相対的に、日本語や日本文化は軽視されるようになるでしょう。

これ、当然ながら、不平等です。英語を母語とするアメリカ人やイギリス人などが圧倒的に有利な世界ができてしまいます。彼らは、外国語を学ばなくても母語で大きな顔ができる一方、日本人は、努力を重ねたとしても彼らにはなかなかかないませんので、どこか引け目を感じるという社会になってしまいます。

つまり、日本人の理想は、「互いに切磋琢磨し、高め合う社会」、「お互いに異なる他者から学び、視野を広げ、啓発し合う社会」のはずですが、新自由主義化やグローバル化の果てにある日本社会とは、非対称的な社会です。一部の人(例えば、資本を持っている者、あるいは英語圏出身の者)は努力せずに済み、大多数の日本人は、報いられない努力をずっと強いられるという理想とはかけ離れた社会になってしまいます。

(4)新自由主義者こそ、努力が足りないと言ってみる

他に、こういう言い方はどうでしょうか。

「新自由主義推進派──特に政治家や官僚、研究者など──は、実は努力が足りない。本来するべき仕事を果たしていない」。

たとえば、最近、政府は、中小企業にまで少子化で縮む国内市場に見切りをつけ、「海外に打って出ろ!」などと言っています。しかし、これは、いわゆる「エリート」の仕事を放棄しているようにみえます。本来なら、政治家や官僚は、一般国民が、国内でしっかり稼ぎ、安定した暮らしを営むことができる環境づくりに努めるのが仕事のはずです。

あるいは、「小学生から英語を学ぶべきだ」「トーフルの点数をあげろ」と最近、政府は国民をせっつきますが、これも指導的立場の者の本来の役割だとは思えません。日本人が英語などたとえできなくても、安心してある程度豊かに暮せる社会を作ることこそ、指導的立場にある者の本来の務めのはずです。そのために、知恵を絞り、国際交渉の場で日本国民の利益を強く主張し、必要であれば、権謀術数を張り巡らせるまでするべきでしょう。

日本の「エリート」は、そういう身を削る努力を自分たちはせずに、言いやすい国内向けに「努力せよ」「痛みを伴う改革に同意せよ」「グローバル化に耐えられるよう開かれた人間になれ」などと説教しているように感じます。内弁慶的なんですよね。

このように、新自由主義推進派こそ、実は努力が足りないのではないか。困難だが本当に必要な「経世済民」の努力を行っていないではないか。このように問いかけてみるのも一つの案かもしれません。

(5)努力の方向が間違っているのではないかということに素朴に気付く

日本社会はもう20年近くにもわたって「改革」「改革」と言い続けています。しかし一般国民の所得は下落し続け、生活は安定しませんし、日本社会の活力や国際競争力も落ちる一方です。デフレも、20年近く続いています。

本メルマガ読者には当たり前だと受け取られると思いますが、新自由主義化やグローバル化といった近年の「改革」や「努力」の方向が間違っていることに気付くということが一番簡単な方策かもしれません…。

上で触れた5つの案以外にも、新自由主義推進派が、「修行」を好む日本人の真面目さに乗じる手口を無効にする方法はまだまだあると思います。

結局、新自由主義化やグローバル化が進めば、その先にあるのは、非常に不公平で、ごく一握りの人々しか、自らを磨き、視野を広げ、高めていく充実感を味わうことができない社会だということです。

我々日本人の大切にしてきた「修行」「切磋琢磨」「互いに視野を広げ、学び合う」などの理想が、本当にいかせる世界や国のあり方を、新自由主義推進派の口車に乗らず、落ち着いて考えていきたいものです。

長々と失礼しますた…
<(_ _)>

<お知らせ>
(1)4月5日(日)に福岡のカフェで開催されるこじんまりとした勉強会(「学ぶカフェ」)の講師を務めます。今回は、「「もののあはれ」と平等──日本社会と民主主義」というテーマで話します。お近くの方はぜひお越しください。

「『学ぶカフェ』のご案内〜日本の文化と教育を学ぶ〜」
日時:4月5日(日)午前11時45分から1時間半程度。
場所:R-style (アールスタイル) 福岡市中央区大名1-12-56 TheShops 2F
会費:1000円(お茶代別)
問い合わせ先:学ぶカフェ事務局
manabucafe@gmail.com
(お問い合わせ、お申し込みは上記のメールにて)。

(2)3月28日(土)には熊本で中野剛志さんの講演があります\(^_^)/
後半部では、中野さんと対談します。
http://ninigi74.com/info/824072

PS
「強い農業」とは、新たなレントシーキングの口実なのか?
https://www.youtube.com/watch?v=tdZJGFU19ac

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【施光恒】「修行」と新自由主義(2)への8件のコメント

  1. クンメル より

    私が英語で論文を書いたとき、周りの日本人は 「 お前の英文は良くない 」 と言っていた。しかし、外国人は私の英文について何も言わなかった。ドイツ人は手紙で 「 お前が羨ましい 」 と書いていた。フランス人は 「 お前の結果を読んで驚いている 」 と書いていたし、ロシア人は 「 ・・・a recent breakthrough due to・・・ 」 と書いていた。「 英文は読みづらくありませんか? 私の英文は日本で評判が悪いですよ 」 と返事を書くと、彼らは 「 英文など問題でない、大事なのは ” 頭の中身だ ” 」 と言っていた。英語は出来ないよりも出来たほうが良いが、大事なのは国語だ。

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  2. ゆう より

    甥っ子が4月から小学校に入学するのですが、もう英語の勉強に取り組んでるみたいで。 小学校の英語教育って本当に効果が出てるんでしょうかね。。本当に英語を学びたいなら日本にあるテンプル大学といったところやインターナショナルスクールもしくは英語圏の学校に行かない限り、厳しいと思うんですよね。日本語や日本の歴史を疎かにして英語の教育に熱心になりすぎた結果、道を踏み外す事になりそうな嫌な予感がするんだよな。。

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  3. ゆう より

    最近はサヨクだけじゃなくホシュにもウンザリして来てますね。シナ人や朝鮮人だけじゃなく外国人は日本人よりも優遇されてはならんと思います。安倍政権は何をトチ狂ったのか日本人ましてや東北の同胞が未だに苦しんでるのにも関わらず外国に金をばら撒くという愚行を繰り返してるし、施さん、藤井さん、佐藤さん、中野さん、柴山さん、三橋さんといった40代の皆様の活躍無しでは日本がますます破壊されてしまいます。。日本人一人ひとりが意識を変えて行かないといけないのかなと痛感させられます。

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  4. たろう より

    生きることに努力を最も強いられる国は北朝鮮です 国民に努力を促す指導者はろくな指導者ではありません 努力は強制ではなく自発的に行うもので その前提は仰られるとおり努力が報われる社会でなければなりません このままグローバル化が押し進めばアメリカの一部の大金持ちの人間だけがトクをし情報が管理され最も忌み嫌う北朝鮮のような独裁社会になるのではないかと危惧してます

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  5. たかゆき より

    仮想敵国♪シナ??まさか、、、アメリカでございましょう。。。二度あることは三度ある米軍基地で核の傘が開いた悪夢を見た子供のころの記憶が 鮮明に蘇ってまいります。TPPで食料自給率ゼロにされたら核で殺されなかったとしてもゲリラ戦も戦えませんね、、次の手を考えなくてわ。。。

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  6. Josefine より

    かつての英語熱が「英語かっこいい」という大衆の欲望に発するものだったとすると、現在の英語熱は官民一体となって大衆に「押し付ける」ものになっていると感じます。施さんは大学にお勤めだから、教員や学生に対する英語の「押し付け」を日々苦々しく感じていらっしゃるのではないかと推察します。何のために押し付けるのか。端的にいえば、日本人大衆を「英語のできる低賃金労働者」にするという暗黙の目的がありそうです。日本企業がグローバルに「打って出る」にせよ、外資が日本に進出するにせよ、「英語のできない日本人」はコストがかかってしょうがない。英語ができる少数の日本人に高い報酬を払わねばならない現状は馬鹿げている。日本語オンリ−の日本人どもはビジネスの障壁だ。というわけで、この障壁を取り除くことこそが官民主導の英語熱の正体でしょう。しかし、この「押し付け」は失敗するでしょう。失敗するから大丈夫、ではなく、失敗とわかった暁に、どれだけ多くの日本文化が失われてしまっているか、それを私は憂慮しています。

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  8. ベアノリズム より

    昔、勤め始めた頃(80年代)はまだ経営理念等が存在していて、自分等は唱える声に心なぞ伴っている世代ではありませんでした(多分少し上の世代である総理の世代もそうではなかったのか?)。あの頃から企業から経営理念等は廃れていき営利精神に支配されてきた気がします。かと言って仕事していること自体が営利精神に支配されて働いていた気はしないのです。今では何処の企業のホームページにも甘利、経営理念等を見ることが無いように思います。経営者のことなぞ解りませんが、なんとなく営利企業であっても基礎には見えない理念(ある意味ネオリベ的企業はシャブコン状態と言える?)がないどいつかは壊れる気がします。ましてや政府までがネオリベ企業営利精神の基に経済政策してるわけですから、もう日本はデフレのままいつかは壊れるのは免れないと思います。中国人に騙されると思うあるよ。道州制っちゅんじゃぁーっ!どう修正っちゅんじゃぁーっ!バッファロー・安倍の支持率はアメリカ式に絶滅させないと、僕の食生活は毎日御茶漬け海苔です。いい加減飽きました。小泉式安倍劇場も飽きました。ベアの劇場にしてください。

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