アーカイブス

2015年3月14日

【浅野久美】梅ちゃんと福ちゃん

From 浅野久美@チャンネル桜キャスター&月刊三橋ナビゲーター
http://keieikagakupub.com/38news/

——————————————————-

●戦後日本の情報の歪みはどのように生まれたのか?

https://www.youtube.com/watch?v=W4qwp0kYAT4&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

——————————————————-

梅が満開のいつものバス停周辺。
そばに寄るとよい香りがする・・・のはよーくわかっています。
まだ冷たい風に小刻みに揺れる控えめな姿と、やたら縁起の良さそうなはっきりとした紅と白。
さぞかしふんわりと、品のいい酸味が漂っているにちがいない。
梅の香り。早春の香り。そういえば今年はまだきちんと嗅いでいなかったなぁ・・
なのですごく嗅ぎたい。めっちゃ嗅ぎたい。
というわけで、まあそんなに大げさなエモーションではないのですが、バスもなかなか来なかったので、すぐ脇のお宅からはみ出している梅の木がとても気になりました。
バス待ち人は、OLさん二人とサラリーマン、お年寄りそれぞれひとりずつ。
120%の見事な満開なのに、誰も興味を示すお仲間はいない様子。でも、それはそれは見事な咲きっぷりなのですよ。
もう、こんな時こそ誰かスマホで撮りなさいよ・・・
って、ところで、私がそこで何をモジモジしていたかというと、その梅に鼻を近づけて、しっかりと香りを嗅ぐには、縁石に乗って、少々背伸びをする形になるからなのですね。
いえね、なんかほら、お花の匂いを嗅ぐ仕草って、メルヘンっぽくてブリッコっぽくて・・・なんというか、「風流でどうだ!」という感じがちょっと恥ずかしかったりしませんか。

しかも、ぴんと身体を反らしてまで、
「うーん、いいにほい」なんて目を細める陶酔顔は、まるで獲物を狙う女豹(!)みたいで、あんまりひとさまには見せたくなかったりするのであります・・・
え?
あ、「誰も見てねーよ」というツッコミはなしですよ。

まあ、つまり見過ごせないほど、絶好なタイミングの見事な紅白梅だったというわけですね。
そう、あの香りを体内に吸い込めば、きっとさらなる吉祥が・・・
しかし、そこでいきなりバスが高スピードでやって来てしまったので、梅の香りは今日はおあずけのまま。
明日こそ、竹馬(うそです)か高い靴を履いて、しっかり鼻を近づけて早春リベンジをしてやるからな・・・待ってろよ梅ちゃん・・・
というわけで、冬眠が開け、野生の本能全開の季節に構える『目覚めた女豹』・・・
ではなくて、スエットパンツの模様と髪留めのゴムだけがヒョウ柄だったりする浅野です。
みなさま今週もお仕事お疲れさまでした。

それにしても、たとえよい香りでも、ほどほどに、ほんのりと・・という程度が私たちのフツーの感覚ですよね。
ところが、時として、凶器に近いようなものすごい『芳香』に出会うことがあります。
いちばん許せないのは、ちょっと飲みすぎてタクシーに乗った時。
甘い芳香剤が車内に充満していた・・・なんて時は、ドアが閉まった瞬間が地獄の入り口ね。やっとつかまえたタクシーならば、降りるのはもったいないし、運転手さんに文句を言っても窓を開けてくれる程度でしょう。
しかもそれってタバコの臭いを消すための芳香剤であることも多いので、ヤニっぽさなども混じっていれば、鼻というより胃袋が反応・・・その人工的な匂いにひたすら耐え偲び、悶絶しながら帰路を辿ることになるわけです。

あと、滞在時間が大事なのは、デパートの化粧品売り場ですかね。
大抵は一階フロアにあるそのコーナーは始めのうちは女の花園・・
足を踏み入れた時はあまりにかぐわしくて、ちょっと贅沢で幸せな気分になるものです。
ところがですね、30分くらいうろうろすると、もうね、なんだか鼻がおかしなことになってくるのですよ。
各メーカーのカウンター(特に外国ブランド)に並ぶ香水やら何やらが混じり、最初は「ステキなにおい」と思っていたものが、「うっ。鼻が曲がりそう」とある地点で切り替わり、地下の食品売り場に逃げたくなるわけなのです。
その日の体調が悪ければ、転々と歩いて吸い込んだだけに、やはり胸がムカムカしてくるレベル。
そんな時ほど、食品売り場のシュウマイやとんかつのにおいが有効な『応急処置』になることもないでしょうね。
そうそう、あと、どうしても個人的にダメなのが(あくまでも個人の感想)、よく駅ビルに入っている人気店『ステ おばさんのクッキー』。あれ、いくらなんでも甘すぎじゃないですか。
たまたまあの周辺で待ち合わせなんかしたもんならあーた、もう強烈すぎて、
食べてもいないのに「当分クッキーは要らない」となりますね。
待ち人が遅れて来た日には、「もう一生要らない」となるくらいの破壊力を感じます。(実際に一度も食べた事がない)

それにしても、『よい匂い』という構えなのにムカムカすることもあれば、ものすごくクサいのに好ましいというワールドがあります。
主には発酵した食品ですが、私は少し前に、においの強い食べ物などの『クサイ度』を測る単位が日本に存在することを初めて知りました。『Au』という表記で表されるそうなのですが、普通、
Auといえば、元素記号の銀。auといえば、『お留守番サービス』。
あとは・・・空港で目にするオーストラリアの略とか、意味は忘れたけど昔習った何かの単位の『オームストロング』あたり・・・

でも、ニオイで『Au』と来れば、『アラバスター』というニオイ濃度測定検知器で測る、ニオイ単位のことになるんですって。

『和食』の世界無形文化遺産登録にも大いに御尽力された、東京農大の名誉教授、小泉武夫博士が開発したものらしいのですが、(新聞の連載も持っていらっしゃるのでご存知の方も多いかも)私はたまたま数年前、農大の学園祭で、醸造学科の学生さんたちの展示ブースに寄った時に、この方が発酵学の権威だと初めて知りました。

これがまた実に面白い先生で、ご著書を読むと、それまでの自分の『美味』の概念がだいぶ揺らいでしまうような深い食へのこだわりや冒険心が見え、特に『発酵』という、我々には元々馴染みのある分野に俄然興味が湧いて来ます。
一般的な『クサイ』発酵ものといえば、日本では納豆、クサヤ、滋賀のなれずし・・などが挙げられますが、私はどれも大好きですよ。台湾の『臭豆腐』や南国の『ドリアン』なんかも、確かに一瞬怯むけど、やっぱりそこそこ美味しいですよね。

そうそう、かつて伊豆大島のお土産で頂いたクサヤは、『臭いの少ない』・・・とパッケージに書いてあったので、私はすんなりと気軽にキッチンで焼いてしまったのですが、これが見事に臭い。物凄い。大事件。
日常でぼんやり暮らしていた者には、いきなり想像を超えたパンチを食らってしまうこととなり、
ゴロゴロ寝ていた我が家の猫さえ、一目散に家のいちばん隅に隠れてしまったのですから本能で何かの危険を察知したのでしょう。
充満してしまった濃厚なにおいは換気扇などやわなものでは間に合わず、上の階から苦情が来ることを覚悟しながらすべての窓を全開にしましたが、5日間くらいは家の中のニオイは消えませんでしたね。
でも、冷酒とともにぺろりといただいたクサヤはもちろん最高に美味でした。

小泉博士が計測したニオイのデータによれば、焼いたクサヤは1267Auだそうで、
納豆 452Auの3倍です。

さすがに数字で表されると納得してしまいますが、
でも、クサヤなんてどうやらまだまだ子序の口のようです。
堂々一位、スウェーデンの『シュールストレーミング』という、発酵したニシンを缶詰にしたものは世界でいちばん臭い数値の 8070Auらしいのですが、缶詰が気圧と発酵圧?で爆発する恐れがあるので飛行機には乗せられないというほど危険なものだそう。
(ちなみに、食べた人の感想は、「日本の塩辛に似ていて、銀杏を踏みつぶしたものにクサヤ汁をぶっかけた、生ゴミを天日に干した・・・云々」とのこと。うーん。想像できるようなできないような・・・)

日本では一社のみが輸入しているそうですが、『ひと嗅ぎ』『ひと口』くらいは経験してみたいものの、罰ゲームみたいに扱うのもなんだか申し訳
ないですよねぇ・・・

ちなみに、小泉教授の靴下のニオイは 120〜200Au。さらには野球部の練習直後の靴下が400Auだそうです。
つまり、スポーツの後はクサヤの一歩手前?!

そういえば、我が家の猫は、人間が外から帰ると必ず玄関で待ち構えて脚(というか靴下)にまとわりつき、酔いしれたようにつま先を抱えてくるくると何度も回転します。
それがまた、(いつかメルマガにも書きましたが)彼女はかなりの太め猫なので、しばらくはこちらも身動きが取れないくらいの張り付き様なのです
そして、なぜか、素足の多い夏にはあまり採用されないのがこの出迎え方式の特徴。この季節、ムートンのブーツを脱いだばかりの厚手のタイツなんかも大好きのよう。
そんな日はキャット床上回転はマタタビクラスのマックス25回〜30回くらいになります。
でも、一応名誉のために言っておきますが、脚のお手入れはちゃんとしているので、
できれば自分の靴下は『発酵』ものと一緒には考えたくありませんけどねぇ・・

というわけで、いずれにしても、発酵って限りなく奥深い・・ということは改めてよくわかりましたが、
今、すごーく食べてみたい発酵珍味が、金沢の名産、『フグの糠漬け』!!
フグの卵巣を糠につけて発酵させたもので、熟成に3年もかかる貴重なものだそうです。

卵巣には猛毒があるのに・・・と誰もが考えますが、3年間、塩と糠に漬けて熟成することによって、
何故か毒はすっかりと抜けてしまうそうなのです。一度食べたらやみつき・・と聞きましたが、
いやはや、それにしても、いちばん最初に試した人は勇気がありましたねぇ。

さあ、
その金沢がいよいよ東京から近くなります。
ということは、フグの糠漬けもぐぐっと近くなるというわけですね。これはめでたい。
祝! 北陸新幹線全線開業。

ではでは、みなさまよい週末を!

PS
このVideoには一部の方にとって不愉快な内容が含まれています。
ご覧になる場合は自己責任でお願いします。
https://www.youtube.com/watch?v=W4qwp0kYAT4&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

関連記事

アーカイブス

【三橋貴明】厚生労働大臣は辞任するべき

アーカイブス

【小浜逸郎】第2波は来たか

アーカイブス

【渡邉哲也】「タダ乗り」包囲網

アーカイブス

[三橋実況中継]GDPデフレーターがマイナス

アーカイブス

【藤井聡】【令和元年9月の予言】これから、多くの政治家・有識者達は令和初頭の経済低迷は消費税でなく「米中経済戦争」や「五輪終焉」等が原因だと主張し始めます。

【浅野久美】梅ちゃんと福ちゃんへの3件のコメント

  1. メイ より

     浅野先生のコラム、いつもとても面白くて、毎回楽しみに読ませて頂いております。 それにしても、食べ物の描写、上手ですねえ! 前回のチョコレート、前々回のフランスキャラメル、自分で実際に食べたような気がするくらいでした。 今回の発酵食品のお話しも、食べた事ない物ばかりだったのに、凄い臨場感です。食べられるかどうか判らないですが、匂いだけでも嗅いでみたいなと思いました。 それにしても、人間の味覚って奥が深いですね。爆発するほど危険な発酵物を好んだりするなんて。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. たかゆき より

    『くさいはうまい』♪表題の本で紹介されていたイヌイットのキビヤックはけっこうイケてるみたいです。死ぬまで口にすることはないと思いますけど、、、バス停そばの梅の香人気のない夜に盗んではいかが??視覚の低下する夜は嗅覚がより一層敏感になるやもしれませぬ。 春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる試してみてはどうでしょう。さいごに言っていいかなぁ、、、元素の周期表をもういちど確認されてはいかがでしょうか?

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  3. migie より

    浅野久美さんは、ホント文章がお上手ですね。梅の香の季節の話題から始まって、ちゃんと本日の北陸新幹線開通ネタに落としておられるところがにくいです。ところで、どうも男性に比べ、女性の方がはるかににおいには敏感な感じが致しておりましたが、その思いを確信に変わりました。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】黒字国債と改名しよう

  2. 日本経済

    【三橋貴明】パズルを解く選挙

  3. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】立民・維新の「食料品だけの消費減税」は,まっ...

  4. 日本経済

    【三橋貴明】日本人はどこから来たのか?

  5. 日本経済

    【三橋貴明】「低所得者 対 高所得者」のルサンチマン・...

  6. 日本経済

    【三橋貴明】付加価値税という世界的詐欺

  7. 日本経済

    【三橋貴明】鳥は三匹しかいないわけではない

  8. 日本経済

    【三橋貴明】混迷の政局

  9. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】小泉八雲『日本の面影』の読書ゼミを本日開催....

  10. 日本経済

    【三橋貴明】石破を引きずりおろす手法がない

MORE

タグクラウド