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2014年10月8日

【佐藤健志】もはや、どうでもいい!

From 佐藤健志@評論家・作家

本紙編集長・三橋貴明さんは、ご存知の通り、非常に温厚な方。
しかし。
日本経済の現状、およびそれにたいする政府の反応は、その三橋さんを怒らせるほど、ひどいものとなっているようです。

10月1日、ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」にアップされた記事「あれから一年が経ち・・・」をご覧下さい。
むろん、ここで言う「あれ」とは、2013年の10月に決定された、消費税率を8%に引き上げる判断のこと。

問題の判断から一年を経て、青ざめるような経済指標が次々に出ているとか。
実質消費支出は、前年同月と比べても、また前月と比べても減少。
実質賃金指数も減少。
鉱工業生産指数も、生産が減少で在庫が増加。

要するに日本の景気は悪くなる一方なのです。
三橋さんの言葉を、直接ご紹介しましょう。

「結局のところ、実質賃金が下落し、さらに家計貯蓄率が落ち込んでいる国、すなわち、『国民が貧困化し、家計に余裕がなくなっていく国』において、消費増税を強行した以上、『反動減の反動増』は、起きえないという話なのです」

「政府が目論んでいた『V字回復』は現時点で完全に不可能になってしまいました」

いいかえれば日本経済は、消費税を8%にしたせいで相当なダメージを受けていることに。
ふつうに考えれば、来年に予定されている10%への再引き上げは延期されてしかるべきでしょう。
そして今なら、延期の決断を下すことは可能です。

しかしこれは、いわゆる「アベノミクス」が失敗だったことを認めるにひとしい。
国民をさらなる貧困化から救うべく、この現実を直視し、従来の政策を転換するのか?
それとも自分のメンツを守るべく、あくまで現実を受け入れずに政策転換を拒むのか?

この二者択一にたいし、現政権が見せている反応はお分かりですね。
そうです。
あくまで現実を受け入れずに政策転換を拒んでおいて、「それこそが国民をさらなる貧困化から救う道なのだ」と、自分自身、および周囲に言い聞かせようとしているのです!

「自分自身に向けてつくウソほど、声高なものはない」
アメリカの哲学者、エリック・ホッファの言葉です。

というわけで、経済指標が青ざめるようなものであろうが、
いや、青ざめるようなものであればあるほど、
「今後の力強い回復」をめぐる見込みやら、期待やら、予測やらが大いに主張される次第となる。

負けが込んできたギャンブラーほど、大きく張りたがるのと同じですな。
エドマンド・バークは「新訳 フランス革命の省察」において、こんなときの心理を、次のように形容します。

「人々は、希望であれ不安であれ、まともな感情を喪失するだろう。バクチにハマった者の常として、彼らは衝動に突き動かされるまま、自滅的な妄執にとらわれる」
(225ページ)

バークの英知について、さらに知りたい方はこちらをどうぞ。
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三橋さんも、こう言い切りました。

「見込みとか期待とか予測とかは、もはやどうでもいいです。
政府の『失政』により景気が失速し、国民が貧困化しているというのが現在の日本なのです」

もはや、どうでもいい!
この言葉を通じて、三橋さんが真に言わんとしているのが
「いい加減に現実逃避はやめろ!」
であるのは明らかでしょう。

自分にとって都合の悪い事実には目を向けない。
逆に自分の立場を肯定してくれそうなものなら、信憑性の有無にかかわらず飛びつく。
そんな具合だから、見込みや期待や予測が外れたとしても、一切の責任を取らない。
というか、そもそも責任を取る必要があるという発想すらないので、批判されたら逆ギレする。

まったく、現実逃避は手に負えません。
・・・しかし。

このすべて、政府や「国家権力」を批判したがることで知られる、ある新聞の姿勢を連想させませんか?
自分にとって都合の悪い事実には目を向けない。
逆に自分の立場を肯定してくれそうなものなら、信憑性の有無にかかわらず飛びつく。
そんな具合だから、虚偽や捏造の報道をやらかしても、一切の責任を取らない。
というか、そもそも責任を取る必要があるという発想すらないので、批判されたら逆ギレする。

経済の動向をめぐる現政権の姿勢は、朝日新聞とじつに良く似ているのです!
朝日新聞と現政権が、互いに相手にたいして批判的なのも、こうなるとなかなか皮肉なものがあると評さねばなりません。
近親憎悪ですな。

とはいえ、これは何を意味するか。
そうです。
日本のあり方を良くしたいと思うのなら、朝日新聞と現政権は同程度に批判されるべきなのです!

前者は日本、および日本国民のイメージを貶めることで、国益を損なっている。
しかし日本、および日本国民の貧困化を放置、もしくは促進させるのも、国益を損なう振る舞いでしょう。

ついでに。
経済の先行きについて、現実逃避にひとしい見込みや期待や予測を披露する政権が、ほかの分野、たとえば外交や安全保障については、まっとうな見込みや期待や予測を立てていると見なしてよいでしょうか?

目下、保守派の一部には、現政権については(基本的に)擁護しつつ、朝日新聞については「解体」や「廃刊」を叫ぶ動きがあります。
しかし今まで述べてきた理由により、私にはこの動きも、現実逃避の一種と思われて仕方ありません。

そしてこれは、じつのところ当たり前の話。
『僕たちは戦後史を知らない』からも、ちょっと引用しておきましょう。

「戦後史の教訓、それはずばり、負け惜しみの上に国を作ろうとしてはいけないということに尽きる

「負け惜しみは、戦争に負けた事実を(本当には)受け入れないことであり、現実逃避の一形態なのだ」
(286ページ)

この点についてさらに知りたい方は、まずこれをどうぞ。
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つづいてこちら。
http://chokumaga.com/magazine/free/152/3/

よって、予言しておきます。
このまま行けば遠からず、
(1)虚偽報道をめぐる朝日新聞の弁明
(2)経済の動向をめぐる政府の見込み、期待、および予測
(3)「戦後レジーム脱却」を唱える保守派の主張
のすべてについて、
国民は「もはや、どうでもいい!」という態度で応じるだろう、と。

ではでは♪(^_^)♪

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PS
このVideoには、一部の人にとって不快な情報が含まれています。
ご覧になる場合は、自己責任でお願いします。
https://www.youtube.com/watch?v=ZK5RY5rIGs8

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【佐藤健志】もはや、どうでもいい!への13件のコメント

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  3. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    あ、間違えた。場違いなところにコメントしてしまった。

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  4. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >しかしこれは、いわゆる「アベノミクス」が失敗だったことを認>めるにひとしい。前回の増税実施が失敗だったことは、確かでしょう。「アベノミクス」そのものは、わからない。(安倍首相の言ったりやったりしていることの全てが「アベノミクス」の内容をなすのではない)どちらにしても、今回の10パーセントをどうするか、で安倍さんの本質が今度こそはっきりするでしょう。すなわち、この人は、「メンツと国民のどちらを守る人なのか」ということです。政策の内実とは無関係に、政治家として信任に値する人物かどうかがわかる、稀有のチャンスです。

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  5. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >た、日本人ならとても承伏しがたい詭弁が展開され>る。彼はダ「異質な面にのみ注目し、共通点には目を向けない」議論。誰にとっても承服しがたいのが「詭弁」というものではないのですか。なのに、「日本人なら承服しがたい」などと、「日本人」を特権視している。こんな物言いは、「互いの共通点のみに注目し、異質な面には目を向けない」議論にも増して、「承服しがたい」。

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  9. きらきら より

    絶対に間違ってはいけない。という強迫観念みたいなものがあると思います。・戦争で負けるという失敗を認めない。・原発を安全に運用できなかったという間違いを許さない。・経済政策を間違ったという誤りを認めない。そういう意味で、まだ誤りを認めている分朝日はマシと思えます。また、人間は間違えて当然という、雰囲気はあっても良いのかなと思います。

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  10. kanata より

    佐藤健司氏の論理の特徴は、互いの共通点のみに注目し、異質な面には目を向けないところにある。それ故、「このまま行けば遠からず『朝日新聞の弁明=安倍政権の見込み=保守派の主張』が国民から見捨てられる」というような不思議な結論が導き出される。この特徴は、彼の著書「僕たちは戦後史を知らない」でもいかんなく発揮され、「マッカーサー=神武天皇」「アメリカ=真の日本」「八紘一宇をアメリカが実現」といった、日本人ならとても承伏しがたい詭弁が展開される。彼はダンサーを自称するが、「足が高く上がる(つまり柔軟である)」というダンスの基本には目を向けようとしないわけです。

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  11. たかゆき より

    ヨハネの黙示録♪朝日は赤い馬に乗り日本を戦争へと導き安倍は黒い馬に乗り日本を貧困へと導くそして蒼ざめた馬に乗る無関心によって全ての国民は死に至らされる。

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  12. ぬこ より

    金や利権や矮小なプライド(選民思想の裏返し)の為、自分の空理空論に他人を巻き込んで世論を創っていく知識人とやらを、一部庶民は嘲笑っている事実に気付かないのが、知識人とやらの人間力の限界かと思われます。思想って奴は、日々の汗の中から生まれるものなのではないでしょうか?僕ら庶民は、日常的に頭を下げて生きておりますので、妙な高見から他人を見下す傾向のある知識人とやらを、逆にその直感で判ってしまうという習癖があるのです。安倍政権に指示してるらしきウオール街の犬も、メディアの報道姿勢も、本音では保守活動家を侮蔑してる保守系知識人とやらも。彼らは人(日本人)を人と思っていないんですよね。労働者はいつでも市場から調達可能な換えの効く部品と思ったり、慰安婦の婆さんたちを自らの思想とやらを実現する為の小道具と思ったり、真剣に国を憂いている人を自らがステップアップして権力に擦り寄る為の踏み台に使ったり。売文業には売文業なりの矜持があるのではないのでしょうか?僕の様な便所の書き込みとは違うでしょうに(笑)。ここ最近、急に安倍政権(米国)に擦り寄り始めた知識人とやらの事を、視てる人はよく観てますよ。そんな中、現実的に日本社会の現場に入って課題を提案なさっている三橋先生。三橋先生のブログのコメ欄には実際に社会で揉まれているであろう人達の書き込みが多くあって勉強になります。さ〜て僕も仕事探すぞ(笑)!

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  13. 神奈川県skatou より

    長らく中小企業サラリーマンなぞやってますと、ふしぎなルールに打ちひしがれます。「動いているものは動いているから正義だ」プログラムソースをいくら見ても「間違ってる」ようにみえるが、たしかにシステムは動いていて正しく運用できている。「俺が正しく修正してやる!」と改造すると、たいていは意味不明の障害を引き起こしてしまう。障害を調査してはじめて、想像外のへんてこなルールが存在していたことに気づいたりします。またこんな対人ルールもあります。「会社では怒ったほうが9割負け」自分でもなかなか分からなかったのですが、感情的態度というのは柔軟性がなく思考の範囲も狭く、そこに隙が生まれてしまう。また相手が固定的な人間関係だとその後のことが難しくなる、ということのようです。世の中難しいものだと、日々反省しきりです。見解の相違さえ克服するしかないのかと、なかなか茫漠たる気持ちになりますね。

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