From 島倉原@セゾン投信
おはようございます。
今回は、先週収録・放映されたチャンネルAjer出演に関する話題です。
例によって、仮説に基づく個人的な分析および見解です。念のため。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-66.html
↓先月、藤井聡さんも取り上げておられたのがこちらの記事。
(参考)リチャード・ベイグ「政府の借金は問題ではない、問題は民間の借金である」
http://theatln.tc/1u0EdYG
過去の経済危機(日本のバブル崩壊、米国のリーマン・ショックetc.)の直前には、「政府の借金」ではなく、家計・企業を合計した「民間の借金」が膨らんでいたという事実を述べています。
藤井さんがご指摘の通り、
「今や日本政府の財政は、借金が対GDP比で2倍を上回るほどの危機的状況にある。増税しなければ、日本は深刻な経済危機を迎えてしまう。だから、増税が必要だ。」
という「物語」には重大な疑義があります。
実際はむしろ逆で、
「消費税増税をはじめとした緊縮財政を続けているからこそ、日本政府の借金残高や財政赤字は、著しく悪化している。」
である疑いが濃厚、というより私自身は確信しています。
この点についてもいずれ詳しく述べたいと思っているのですが、今回はベイグ氏の記事に含まれていた、
「民間の借金が急増している中国は、特に憂慮すべき状況にある。中国におけるGDPに対する民間債務の比率は、過去5年間で60%ポイント拡大し、2013年時点で200%に達している。」
という議論に注目してみました。
以前、「金融循環と第二の敗戦」という記事で、20年弱の周期で不動産バブルが発生する「金融循環」に言及しました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/08/14/shimakura-3/
金融循環が経済自身のメカニズムによって内生的に生み出される、という議論自体、主流派経済学からは注目されない仮説と言えなくもないのですが、少なくとも海外には同様な見解を共有するエコノミストも存在します。
実は、「金融循環と第二の敗戦」の最後でサラッとご紹介したブログ記事でも述べているのですが、私自身は、そこからさらに一歩踏み込んで、
「新興国危機も金融循環によって周期的に発生する現象で、そろそろ次の発生タイミングではないのか?」
という仮説を持っています。
(参考)島倉原「金融循環がもたらす経済危機?」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
もちろん、金融循環の存在に比べたら理論的根拠も確信も相対的に乏しく、「思いつき」に近いものかもしれません。
実際、他にこうした議論を行っている人を、少なくとも私は知りません(真面目に探したこともないのですが)。
さて、中国といえば新興国の代表選手。
上記の仮説を持つ者としては、ベイグ氏の議論は気になるところです。
そこで、いわゆるグローバル・スタンダードな新興国株価指数の構成各国について、「民間の借金」を含めたマクロ経済や金融市場(株価と為替レート)の状況を一通り確認し、
「近い将来、『仮に』新興国危機が発生するとしたら、どういったシナリオが考えられるのか?」
を検討してみたのが今回のプレゼンテーションで、下記の記事はその概説です。
(参考)島倉原「新興国危機が起こるとしたら…」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-66.html
各国のデータも含め、詳しくは是非上記の記事をご覧いただきたいのですが、
「アジア通貨危機(1997年に勃発した、前回の大規模な新興国危機)の発端となったタイのような『震源地の条件』を兼ね備えた国こそ見当たらないものの、現在中国のみならず多くの新興国で民間の借金が急増しており、そこかしこに『危機のマグマ』が溜まっているのではないか?」
というのが、分析に基づく私見です。
なお、上記の記事では「震源地候補」の1つとしてロシア・東欧地域を取り上げていますが、同地域における経済の不振と不安定な国際情勢の関連を読み解く材料の1つとしても、前回ご紹介した中野剛志さんの新著「世界を戦争に導くグローバリズム」は参考になるかもしれません。
http://amzn.to/1ynsffA
また、「歴史的背景から見た景気循環」といったテーマに関心がある方には、10年以上前に出たものですが、「トゥモローズ・ゴールド」という本をお勧めしておきます。
http://amzn.to/1tzDRJv
こちらを書いたのはマーク・ファーバーという(多分著名な)投資ストラテジストで、景気循環的な洞察も交えながら、当時における「有望な投資対象」を考察しています。
あくまでも投資ネタを追求したものなので、金融循環の見地からは当時と今とでは真逆の状況であることからすれば、結論そのものはあまり役に立たないかもしれません。
同書は他方で、予測の的中率はもちろん、結論に至る考察のプロセス、かつて「新興国の代表選手」だった19世紀のアメリカに関する話題など、興味深い内容になっていると思います(もちろん、学術書ほどの堅苦しさもありません)。
実現するかどうかはともかくとして、私自身、この本を読んでいなければ恐らく今回の仮説は思いつかなかったのではないか、その意味でも感慨深い1冊です(もちろん、ファーバー氏が「新興国危機のサイクル」について述べている訳ではありません。念のため)。
ちなみに、日本は当然「先進国」に分類されています。
しかしながら、過去のデータを見る限り、特にバブル崩壊以降、新興国の株価が相対的に低調な局面では日本の株価パフォーマンスも今一つ、という傾向が見られます(アメリカの属国だから、という訳でもないのでしょうが)。
先月、日経平均がアベノミクス後の高値を更新したことが伝えられましたが、実は、株式市場のメインプレイヤーである外国人投資家にとっての尺度であろう「米ドル建ての日経平均」はジリ安傾向で、取引時間中も含めれば、昨年5月が直近のピークになっているようです。
こんな時に、消費税増税なんてやってる場合でしょうか…。
http://www.marketnewsline.com/apps/market/quotes?r=2y&c=1010&lang=ja
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PS
このVideoには、一部の人にとって不快な情報が含まれています。
ご覧になる場合は、自己責任でお願いします。
https://www.youtube.com/watch?v=ZK5RY5rIGs8
【島倉原】新興国危機の可能性への2件のコメント
2014年10月10日 9:22 AM
循環とは言うもののこの循環こそ金融主導経済学者による大量破壊兵器使用に匹敵する犯罪だと考えてしまうのであります。メジャー石油屋ブッシュJr.はこの大量破壊兵器には知らんぷりをしたのだ。伏せインしたのだ。膨れ上がった風船は破裂するまで膨れ上がる。破裂した後は飛散と流入(移民)?‥‥そう言う計画だったんですね。ネオ左翼リベラル政策。唯でさえデフレ下での実感無き経済成長を取り戻そうとしている、パソナ養護隊ネオアベ政権へと変貌を遂げたのに、このままじゃ色の三原色は気づかない内に真っ黒に染められてしまうのでしょう。まさにブラックアウト。何にも見えなーいっ!右往左往。「公」であるべき政府は「私」と化してしまった(民、企業家が公を考えねばならない日本)。ある意味、マクロ的な巨大な利己主義、エゴイズム。大量エリート狂想曲による大量難聴患者創出演奏。聴きたくもない。はらわたもじごばた(方言)も煮え繰り返ります。 細胞、脳髄がハチャメチャな私が口にできることではないけど失礼しました。(色々なところから言葉を引用しました)
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