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2013年10月22日

【藤井聡】「世界の理解」が「世界をつくる」

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

あるテレビ番組に出演した時の事。

その番組では様々な「ブラック企業じゃないか?」と思える企業を簡単なVTRで紹介し、それについて議論するというものでした。

その番組は、「ブラック企業」を(犯罪企業、とまでは言えないが)、過酷な労働条件で働かされる反社会的・反倫理的な企業、という趣旨で幅広く定義した上で議論するものでしたが、そんな中の一つとして、「メガバンク」の事例が紹介されました。

VTRでは、今のメガバンクが、如何に「利益最優先」であって、羽振りの良い会社にはいくらでも貸すものの、潰れそうな中小企業からは、その中小企業が倒産しようが、その社長が自殺をしようが、兎に角、徹底的に「貸し渋る」「貸し剥がす」という、という実態が紹介されます。

そしてさらにVTRでは、メガバンクの営業マンが次の様な事を告白します。

「この仕事を続けるには、人間らしさ、倫理、道徳を無くさなければやってはいけない、
実際、多くの同僚がやめていった、
そんな中で続けられるのは、一流企業で働いているとうい社会的ステータスと、
一般の人達よりもより多くのオカネをもらっているからにしか過ぎない。」

もちろん番組では、それぞれの企業のブラックさを少々大袈裟に表現しているところもあるでしょうし、何より、一般の常識では、

「会社が利益を優先するのは当たり前」

であって、「慈善事業」でやってるわけではないんだから、これはブラックでも何でも無い、という反応だろうと思います。

実際、番組の中でも、そういう意見で占められ、そのメガバンクをブラック企業だと認定したのは当方だけでありました。

ですが、こういう企業こそを、俗に言う「ブラック企業」として扱い、非難する風潮がなければ、日本経済の未来は暗くなる一方だろう。。。。と思います。

なぜなら、銀行は、高い公共性を帯びた「公器」だからです。

なぜ、銀行が「公器」なのかと言えば、

1)社会の秩序や安寧は日本経済の動向に大きく依存しており、

2)日本経済の動向は、民間企業の活力に大きく依存しており、

3)民間企業の活力は、適切な融資を受けられるかどうかに決定的に依存しており、

4)そして、その融資をするか否かを決定しているのが、銀行

だからです。

つまり、この1)〜4)をまとめて言うなら、

「銀行の判断が、日本経済の動向を決定づけ、社会の秩序や安寧の水準を規定している」

のです。そうである以上、銀行という企業体は、ただ単に、

「自社の利益だけを考えておけばよい、という純然たる利己主義」

が許されてはならない企業体なのです。

もしそんな風潮がまかり通れば、企業が適切な融資を受けられず、日本経済の活力は減退し、日本社会の秩序と安寧が著しく毀損されることとなります。
(注:正確に言うなら、デフレの時には、ということです。インフレの時には、過剰融資が行われ、過剰なインフレやバブルが起こることになるでしょう)

つまり、今日のデフレ不況は、

「銀行における利己主義を許容する」

という社会風潮が、その深淵に横たわる重要因の一つとなっているのです。

そんな社会風潮が、銀行の利己主義を助長し、その公共的影響が無視され、結果として、日本の経済と社会の活力や安寧が減退し続けているわけです。

・・・・

以上は「銀行」について述べたものですが、全くこれと同じことが、全ての企業体にも当てはまります。

その典型的な理由が、企業というものは「生産をするだけの存在」なのではなく、「人間を雇う」という重要な責務をおった「公器」だからだ、というものです。

真っ当な国家は、その国家に生まれ落ちた人間に、その人間の特徴や個性や能力の如何によらず、著しく不合理・不条理なケースを除いて、すべからく仕事を与えようとするものです。

(※この点についてはいろいろな意見はあるでしょうが、そんないろいろな意見というのは、上記主張の「著しく不合理・不条理なケース」とは何かについての多様な意見、ということだろうと思います)

しかし、政府が全ての人を雇うことなんて出来ません。ですから、民間の企業体がその重要な「人間を雇う」という重要な仕事を請け負っている、という側面があるのです。

その意味に於いて、全ての企業は、雇用を生み出す「公器」なのです。

したがって、先の銀行のお話と同様に、「利益だけが全てに優先されるべきである」という「利己主義」を是とする社会風潮が蔓延すれば、経済の活力と社会の安寧のために不可欠な雇用が失われ、日本の経済や社会の安定や活力は失われざるを得なくなるのです。

・・・・

以上は、当方の「個人的な好み」や「思い込み」、ましてや「特定のイデオロギー」を述べたものではありません。それは論理的に考えた場合に必然的に浮かび上がる「社会風潮が社会経済の活力や安寧に決定的な影響を及ぼしている」という「論理構造」であるに過ぎません。

こうした当然の議論を踏まえた上で、日本の行く末に巨大な影響を及ぼす立法行為における議論を含めたあらゆる公論が展開されることを、祈念せずにはおれません。

以上、ご紹介まで。

PS
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PPS
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【藤井聡】「世界の理解」が「世界をつくる」への3件のコメント

  1. 毒シャア より

    自分の理解だと「ブラック企業」とは「入社すると後悔するほど労働条件の悪い企業」だったのですが、たしかに銀行の所業を見ると「ブラック企業」と言っても差し支えないですね。前者は労使関係においての「ブラック企業」、後者は企業の社会的影響においての「ブラック企業」。「公器」については(理想的ではあっても)そのとおりですね。公器の目的は「社会貢献」ですから、入力(雇用)による貢献と、出力(活動)による貢献があるのだと思いますが、入出力ともに「社会貢献(社会の持続)」に適った活動を期待したい。この意味で経営者の志と責任は重いですね。昨今は簡単に起業できる反面、デフレにより社会の水位が下がっているため、経営者も必死にサバイバルなのでしょうけど・・・最後で述べられた「利己主義と社会の秩序の論理構造」という結論が興味を惹きました。というわけでPSで紹介された「なぜ正直者は得をするのか」にジャンプしましたが・・・Kindle化リクエストをクリック!

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  2. ろんどなー より

    日本の高度成長期には多数の地銀や信用金庫が各地にあり、個人商店や中小企業を支援する仕組みであったのが、金融業界のグローバル化による統廃合で大手銀行ばかりになり、しかもその大手顧客の大企業は株式発行という自己ファイナンスができる上に余剰資金を抱えているので銀行からお金を借りる必要があまりない。となると、銀行は投資で利益を上げる、という仕組みに世界中がなってしまっています。利益を上げて配当を増やさなければ、株主が経営陣の交代をうるさく迫るからです。しかし、おかしいのは株主はなんの社会的責任も持たずに自己利益最大化において強い権限を持っていること。つまりこれもレントシーキング・システム化しているのです。「お金」は経済の「血液」ですから、国中の経済活動の隅々にまで回ってこそ安定した健全な国家経済が形成されるものを、グローバル化が進むとそれとは真逆のことが起きてしまう。日本より一足先にグローバル化が進んだ英国を見るとよくわかりますが、中小企業が消え、全国どこへ行っても同じようなチェーン店が並ぶ同じような商店街ばかり。銀行がお金を貸してくれないので、小規模の会社や店は生き残れず、大手に身売りしてまた銀行が手数料を稼ぐのです。そして、レントシーカー達の最大の問題点は、彼らの利己的で無責任な行動の結果、社会に甚大な悪影響があったとしても「社会的責任」をいっさい取らない、利益を社会に還元することがなく、自己肥大化していく、ということです。グローバル化が進んだ国というのは、「グローバル投資家」という「蛭」が国民の経済活動に寄生し、「経済の血液=金」を吸い取り続けて巨大化し続けていく、気味の悪い世界です。

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  3. ヌコ より

    当該なんちゃらマニーの放送中に、藤井師匠ご自身による「銀行は公器ある」発言を期待しておったので、ちょっと残念だったのでござりマウス。なんで奴らが消費者金融を経営しているのでせうか?

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