日本経済

2019年10月15日

【室伏謙一】実情を無視した消費税軽減税率はかえって消費を減退させ、経済を更に冷え込ませる

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 

 台風19号は東海地方、関東甲信越地方、東北地方等に多くの被害をもたらしました。中でも河川の氾濫は、本稿執筆段階の情報で14河川にも及び、なんと二子玉川駅付近でも多摩川の水が溢れ出すという被害に見舞われました。こうした被害は、言うまでもなく、日本だけが使っているプライマリーバランスの黒字化という奇妙奇天烈な財政規律に振り回され、緊縮財政を推し進めてきた結果にほかなりません。これだけ自然災害に脆弱な国になってしまっては、経済や社会の成長どころか、国防・安全保障にも支障をきたすことになるでしょう。(もっとも、安倍総理は日本が攻撃されたらアメリカが反撃してくれると本気で信じているようですから埒があきません。そもそもそんなこと日米安全保障条約のどこにも書いていないんですけどね。条約を読めない人が総理大臣では、諸外国からはやられたい放題、カモにされ放題。自然災害もその口実に使われてしまうでしょうね、災害援助と称して資源や権利を奪われる開発途上国のように。)

 さて、日本をこのような状況に貶めている元凶といえば、緊縮財政や新自由主義「改革」と、これも言うまでもなく、消費税増税ですね。残念ながら去る今月1日に10%に増税されてしまいました。その消費税、食料品等については軽減税率が適用されて8%に据え置かれています。消費者にはいい話、ホッとする話、事業者にとっても売上が落ち込まずに済む話のように聞こえますが、実態はそうでもないといいますか、むしろ真逆に作用していることもあるようです。

 この軽減税率、食料品の場合、お店で買って自宅で食べるといった場合には適用されますが、お店にイートインコーナーが併設されている場合にそこで食べていくといった場合には適用されず、10%の税率が課されることになっています。どちらになるのかは、支払い時に店員が確認し、それに対するお客さんの自己申告によるわけですが、持ち帰りと言っておいてやっぱりイートインコーナーで食べていくというお客さんも、当然中にはいるわけです。こうしたお客さんを、ネット上では「イートイン脱税」と呼んで揶揄し、そうしたお客さんの行為を店員に知らせる「良心的」な人のことを「正義マン」と呼ぶようになっているようです。

 本来非難されるべき対象は、「イートイン脱税」をした人ではなく、2度もの増税を強行した現政権であり、財政健全化を金科玉条に、そうせざるを得ない状況に追い込んでいった財務省であり、先の参院選で増税反対を掲げられなかたどころか、緊縮脳、増税やむなし脳にいつまでも縛られている多くの野党のはずです。ところが重箱の隅をつつくかのように一般庶民を別の庶民が揶揄する。新たな分断が生じていると言ってもいいかと思いますが、そんな状況を創り出した財務省の増税推進プロパガンダは、皮肉をたっぷり込めて、お見事としか言いようがありませんね。それに「正義マン」って、その正義いずくにありや。単なる自己満足のための密告者ではありませんか。冷戦下の旧東側の密告者か、はたまたナチスドイツ占領下のフランスにおけるナチスへの密告者、「正義マン」なる連中はそれと同じだ、というレッテルを、剥がれないようにしっかりと貼ってあげましょう。

 そして、軽減税率、お店で買った食品やお酒を、その場で味わえるし、すぐに追加で買って楽しむことができることをウリにして、比較的広いイートインコーナーを設けているお店などでは、10%の税率適用を敬遠してイートインコーナーの利用率が減り、ということはその場で追加購入という消費行動も減るので、売上が激減しているようです。そもそもイートインコーナーは、家まで持って帰らなくてもその場で楽しめる、友人たちなどと、良い食材を、飲食店で食べたり飲んだりするよりも手軽な値段で気軽に楽しめる、夏には暑く冬には寒い屋外に行かなくても買ったものを手軽に食べることができる、そんなある種庶民のための場所であるはずです。

 今回の増税は、お店にとっての収益の機会と、庶民にとっての便利な機会のいずれも奪おうとしているというわけです。

 今回の消費税増税は百害あって一利なし。直ちに一律引き下げに向けた検討を始めるべきです。しかし、それを主張しているのは、与党では少数の自民党の良識派議員たち、野党ではれいわ新選組と、れいわ新選組の躍進を受けて気が変わった共産党だけ。統一会派結成で調子に乗る立憲民主も国民民主も緊縮脳や増税脳が支配的のようですから期待薄です。緊縮脳、増税脳の議員たち、特に野党のそうした議員たちについては徹底してその姿勢を批判するとともに、「お前なんかに投票するもんか」とそっぽを向くというのが、頭を転換させる、つまりピボットには一番有効かもしれませんね、まあ数は多いですが。

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【室伏謙一】実情を無視した消費税軽減税率はかえって消費を減退させ、経済を更に冷え込ませるへの10件のコメント

  1. 雨だるま より

     今回の消費増税は断じて許し難いものだと思います。また、「酒類と外食を除く食料品だけ8%据え置き」という不可解な軽減税率制度のせいで、小売店には無理な運用を強い、消費者には無用な混乱を招いたことにも苛立ちを感じます。そしてこれが財務省と、現政権及び与野党問わず政治家たちの責任であることに異論は全くありません。その点では室伏さんに同感です。
     しかし、いくら複雑かつ理不尽な制度とはいえ、我が国は法治国家です。その法の目をかいくぐり、持ち帰ると自己申告しながらイートインで食べる行為が当たり前のように横行したら、法治国家として終わりだと思います。政治家や役人がここまで腐敗している今だからこそ、一般庶民だけでもルールを守るという遵法精神が重要なのではないでしょうか。また、それを店員に知らせる人を「単なる自己満足のための密告者」だと断定し、「正義マン」とレッテル貼りするネットの風潮に同調するのは、明らかに言い過ぎです。中には「単なる自己満足のための密告者」もいるのかもしれませんが、真摯にルールを守るという思いからそのような行動に出ている人もいると思います。一般庶民の分断を懸念されているようですが、そうしてレッテル貼りをすること自体、室伏さんも一般庶民同士の対立を煽り、国民の分断に加担していることになりはしないでしょうか。そのことが心配です。

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      1. 日本晴れ より

        室伏さんの言う通り
        今のsnsは過剰な正義や他人にマウントを取る事で自分が偉ぶってる人が本当に多いですようんざりするほど
        権力者の立場からすればあなたみたいな人とかイートイン脱税を取り締まる人が居てほくそ笑んでるでしょう
        だからその怒りをなぜ権力者や政治に言わないのですか?
        他の庶民にぶつけてること自体間違ってるんですよ

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        1. きつつき より

          確かに今の世、SNSで必要以上に正義をかざしてマウントを取ろうとする正義マンは多い
          でも雨だるまさんの言うことにも一理ある
          正義マンがやりすぎだとしても、だからといって何をしてもいいってわけじゃない
          それに室伏さんは一般庶民同士で対立するなと言いながら、
          その一方だけに加担して、もう一方を全面的に非難するような言い方
          イートイン脱税を注意する方の言い分も聞かなきゃフェアじゃない
          これだと結局室伏さんも庶民同士の対立を煽り
          漁夫の利で政府や財務省や政治家が得をする
          庶民同士の結束を図るようなことを言ってほしい

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        1. ボトムダウン より

          「雨だるま」さんの意見、なるほどと思いました。
          確かにいくら不本意でわかりにくい制度でも、ルールを破っていいという話にはならないはずです。
          あと、以前ネットで誰かが、
          「正義をやたら振りかざす“正義マン”も問題だが、その“正義マン”をネットで皆で叩くのも見ていて気持ち悪い。“正義マン”のやり方に対しやはり別の正義を振りかざして叩くのも、異なるベクトルからの“正義マン”。同じ穴のムジナ。」
          みたいなことを書いていました。
          それに同意です。

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        1. MAX全開 より

          >「日本晴れ」さんへ

          小さいなあ、人間が。
          イートイン脱税を店員に密告する人なんて、放っておけばいいのに。
          それにつられてそれをわざわざ、それこそ「重箱の隅をつつくかのように」問題視して煽っているのは、あんたの方だよ?
          それと室伏さん自身も。
          あんたたちこそが一般国民同士の対立・分断を煽り立てている張本人だということが、わからないのかなあ?

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  2. ととろん より

    今の日本はおかしい。権利主義が横行し過ぎて日和見自民党も票集めにだけ動き、生産性の無い事ばかりに税金を使って結果1000兆円の借家大国にした。更に増税で消費意欲を減退している。令和ナンチヤラ党もとんでもない詐欺政党。あまり言いたく無いが議員は仕事では無い。本来余裕のある人が皆が良くなる為にボランティアでする事。議員に産休も育休もあってはならないし、産休や育休を取るなら議員辞職して議員活動が出来る人を入れるべきだと思う。少子化対策も子供がいないと損。子供がいない=お金で応分の負担をする。つまり所得税が2倍になるとなれば、子供を作るだろう。人とはそういうものだ!保育園も保育園に預けるのは所得を増やす為なのだから保育料も大幅に上げれば良い。そうすると、週一パートで保育園子供を預けようとしている多くのズルイ母親がいなくなり待機児童問題も解消するだろう。本質的な改革を望みます。

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  3. 日本晴れ より

    >本来非難されるべき対象は、「イートイン脱税」をした人ではなく、2度もの増税を強行した現政権であり、財政健全化を金科玉条に、そうせざるを得ない状況に追い込んでいった財務省であり、先の参院選で増税反対を掲げられなかたどころか、緊縮脳、増税やむなし脳にいつまでも縛られている多くの野党のはずです。ところが重箱の隅をつつくかのように一般庶民を別の庶民が揶揄する

    全くです。なぜこういう事する人達って政治とか経団連とかそういう人達にその怒りや不満をぶつけずに周りの庶民にぶつけるんですかね?

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      1. 異次元大介 より

        店員に「密告」する人を、「同じ庶民に怒りをぶつけてる」と安易に決め付けるのはいかがなものかと思いますよ。そういう目的の人ばかりではないと思いますけどね。そんな決め付けも、「一般庶民を別の庶民が揶揄する」ことになるのでは?

        ちなみに私も今回の増税や税制には大いに不満がありますが、イートイン10%のルールはきちんと守ります。不正をやったら人としておしまいですから。

        また、他人の「イートイン脱税」を見ても私自身はスルーしますが、注意する人がいても別に全然構わないと思います。

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  4. 消費税廃止賛成論者 より

    室伏先生の今回の文章、大変素晴らしいと思います。しかしただ一つ、他の方も書いていらっしゃいますが、イートイン脱税を店員に密告する人を、
    「単なる自己満足のための密告者ではありませんか。冷戦下の旧東側の密告者か、はたまたナチスドイツ占領下のフランスにおけるナチスへの密告者、『正義マン』なる連中はそれと同じだ、というレッテルを、剥がれないようにしっかりと貼ってあげましょう。」
    と挑発しているところが残念だと感じました。
    彼らもその多くはおそらく、いわゆる「上級国民」ではなく、先生のご指摘の通り我々と同じ「一般庶民」だと思われます。言わんとする趣旨は理解できますが、その同じ「一般庶民」の一部に対し排他的な表現を用いて差別するのは、基本的な内容全体や他の部分が立派だけに、非常に勿体無い気がしてなりません。
    その点だけ今後は留意して頂けたらと願います。

    室伏先生の記事は毎回楽しみにしています。
    今後も先生の益々のご活躍に大いに期待します。

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  5. ブルーサンダーバード より

    コメント欄見てると、他の人が言ってるように、室伏氏本人がまさに国民の分断を煽ってるという皮肉wwwwwwwwww

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