日本経済

2020年3月31日

【室伏謙一】今必要なのは冷静さ、過剰ではない適度な「自粛」、そして消費税減税と新型コロナ損失への粗利補償だ

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 

 本日で令和元年度も年度末、明日からは晴れやかに新年度を迎えたいところですが、現下の世の中ではそうもいかないようです。言うまでもなく、新型コロナウィルスの感染拡大がその原因ですが、具体的にどんな影響があるのか、考えてみることとしましょう。

 まずは新型コロナウィルスの感染が、その全ての感染経路が明確にならないまま感染が拡大していることにより、いつどこで感染するか分からないという、ある種「ぼんやりとした不安」に駆られてしまっていること。その結果、人の行動が抑制的になるとともに、他人の行動が、非抑制的であるか否かに関わらず気になり、場合によっては非難や口撃の対象にしてしまうことがありますね。不確実性や不安が生む疑心暗鬼や焦燥感と考えれば、今回に限ったことではないと思いますが、危機的な状況では起こりやすいことなのでしょう。

 更に、強そうで確実そうなものを求める心理というものもその延長線上に生まれてきます。巷に溢れる「日本の対策はまだ生ぬるい。」、「早く都市封鎖、ロックダウンをすべきだ。」、「欧米を見てみろ。」と言った意見はまさにその典型です。国内対策に関して日本は欧米と比して生ぬるいわけではなく、欧米のやり方が過剰であり、むしろ有害であることについては、藤井聡先生らの京大レジリエンスユニットの提言「新型コロナウイルスによる「死亡者」および不況による「自殺者」の「最小化」を目指すリスクマ・ネジメント対策~京都大学レジリエンス実践ユニットからの提案~」(https://38news.jp/politics/15536 )をお読みいただければ良く分かると思いますので、これ以上は立ち入りませんが、要は不安で狼狽していて、何か強そうなものにしがみ付きたい、束の間でも安心を得たいということでしょう。しかしこの手の不安や狼狽は、放置しておけばエスカレートしかねないと思います。

 そうした不安な心理を上手く利用して権力を得よう、強化しようと考える不埒な輩は歴史上少なからずいたわけですが、残念ながら、この新型コロナショックをまさに自分の地位・権力の強化・安定化に活用しようとする政治家が現れました。それが誰かは言わずもがなの「ミドリのタヌキ」さん、別名「豊洲の女」さんですが、彼女はお得意の、定義が曖昧なカタカナ語を使って、根拠も不確かな対策で都民や周辺県民の不安感を煽り始めました。彼女はまず手始めに3月28日及び29日の外出の自粛を都民に要請しました。要請ではあるものの、25日の夜という直前かつ突然の強い要請であったことも手伝って、多くの都民がこれに従ったばかりか、多くの店舗も臨時休業や営業時間の短縮等を行いました。

 7月の都知事選に向けて「決断できる知事」の姿を見せつけ、支持率を上げる絶好の機会と捉えたのでしょう、見事な「小池劇場」の再来といったところです。(なんと今後も続ける可能性もあるそうです。まさか都知事選まで引っ張るつもりでは・・・いやはや。)

 ところが、自粛要請で客足が大幅に減って売上が激減した店舗や休業した店舗等への補償はまるでなし、仕事がなくなった都民への補償も当然なし、更に自粛要請はしたものの何をして何をしたらダメなのかのメルクマールもまるでなし。同時に、スーパー等では買い溜め買占めが起きて、瞬く間に棚から商品が消えていったようです。「長期戦」に備えて「籠城」というのであれば、都民の暮らしを支える「兵站」、つまり食料等の生活物資の安定的供給がしっかり担保され、そのために必要な環境が整えられている必要があるわけですが、そんなことはお構いなし。さすがは「見切り発車のリンドバーグ」と言ったところですが、既にボロボロと「小池劇場」の弊害が明らかになってきています。これでは「戦う」前から負けてしまいかねませんね。

 しかし、一方で、これを「見事な決断」と評する声も少なくありません。まさに「ぼんやりとした不安」の中で、なんとなく強そうに見えるものに、後先考えずにすがろうとする都民の姿、別の言い方をすれば、冷静さを失った都民の姿といったところでしょう。更なる問題は、そうした心理が国や都が求めるまでもなく、自主的に自粛を、しかも必要以上に行うことにつながっていくこと。現にそうなってきていますし、自粛要請を無視して外出している人、飲食店等に行く人に対する蔑視や口撃につながっていっています。また、「もし自分が感染していて、無症状で、それで外出して他人にうつしてしまったら・・・」と外出を出来るだけ控える人もいるようです。その心掛けは素晴らしいと思いますが、それをやり過ぎれば、本当に身近な経済は壊滅してしまうでしょう。身近な経済の破壊の連鎖は最終的に日本全国に波及し、日本経済が沈めば、結局は自分の首を絞めることになってしまいます。これがもう一つの影響です。

 したがって前掲の藤井先生らのご提言を参照しつつ適度に恐れて適度に対応することが肝要なのですが、地域によってはそうもいかないというところも出てくるかもしれません。そうなった場合に、一般国民もスーパーも飲食店も、あらゆる商業店舗も、あらゆる業種の企業も個人事業主も、安心して休むことができるようにするためには、政府が必要十分な休業補償を行うことが必要です。

 また、消費税は単に一般消費者が店舗等で買い物をする時だけなく、企業が仕入れをする際にもかかりますが、それをそのまま転嫁するのが難しい場合も多く、その場合はその企業が肩代わりをすることになり、重くのしかかります。勿論消費者にとっても、どんな状況でも食べていかなければいけませんし、生活必需品は購入しなければなりませんから、10%の消費税は重くのしかかります。そもそも現在の景気後退から不況への流れは、昨年10月の消費税率引上げに端を発していることはGDP統計等から明らかです。したがって、消費者のみならず、この危機的状況下にある企業、特に中小零細企業を救うためにも消費税減税は必須であると考えるべきでしょう。

 こうした措置を求める声は、既に与野党から出てきています。(先日3月24日の東京MXテレビ「モーニングクロス」の「オピニオンクロス」のコーナーで紹介させていただきました。)しかし、安倍政権は、政府はと言った方がいいかもしれませんが、消費税減税や必要十分な休業補償等の大規模な国の財政支出には消極的です。

 そうした中で、煮え切らない安倍政権に決断をするよう背中を押すべく、昨日3月30日、自民党の安藤裕衆院議員らによる議連「日本の未来を考える勉強会」と、同じく自民党の青山繁晴参院議員らによる「日本の尊厳と国益を護る会」の合同による「『消費税減税』に向けての緊急声明」が出されました。両会合わせて賛同議員は100人以上。一大「減税勢力」の結集です。(私も会見を傍聴してきました。)

 「日本の未来を考える勉強会」は消費税率について、当分の間軽減税率を現行の8%から0%として全品目に適用することを求めている一方、「日本の尊厳と国益を護る会」は税率を5%に引き下げることを求めています。したがって、税率の考え方について両者は異なる意見を持っているわけですが、減税が必要、減税が第一という点では一致していることから、あえて両者で擦り合わせを行うことなく緊急声明の提出に至ったとのことでした。まさに「小異を捨てて大同につく」、素晴らしい動きだと思います。

 ちなみに、両者の考え方の違いについてもう少し解説しておくと、「日本の未来を考える勉強会」は、そもそも新型コロナウィルスの感染拡大によるもののみならず、昨年の消費税増税により壊れかけている日本経済の土台を立て直すために消費税減税が必要という考えです。一方で「日本の尊厳と国益を護る会」は、消費税の存在意義は否定せず、0%にした場合、仮に再増税があった場合の影響が大きいと考えられることから5%としたとのことでした。

 また、減税を当面の間としていることについては、安藤議員は、新型コロナウィルスの感染拡大も加わって引き起こされつつある「第二次世界恐慌」とも評される状況から抜け出すまでという趣旨であり、今後こうした状況に弾力的に対応できるようにするためには、かつて存在した「景気条項」を復活させることも検討すべきとしていました。

 更に、今回改めて提示された「日本の未来を考える勉強会」の「「令和恐慌」回避のための30兆円規模の補正予算編成に関する提言」は、当初の提言では題名のとおり総額30兆円とされていたところ、状況の深刻化を踏まえ、総額50兆円となり、前述の休業補償、粗利の補償についても現金で30兆円となりました。これらは勿論全て真水(政府支出)であり、その財源は国債です。

 必要に応じてその規模は拡大していくべきであるし、大企業でも資金繰りに苦慮しているところも出始めていることを踏まえ、青天井でやるという姿勢も必要であるとのことでした。この長年のデフレを考えれば、当然の良識ある見解だと思いますね。早々に安倍政権にも同じ考えを持ち、それを国民に対して明確にしてもらいたいところです。

 財政支出の規模感に関しては、城内実衆院議員は、欧米がどれだけ大きな規模の対策をやりかが重要であること、それによっては流動性が高まって為替レートに影響し、円高になり、輸出産業に打撃となることも懸念されると指摘し、あの財政規律を重んじるドイツでさえも今回の危機に臨んで規律を解除して事に当たるとしていることの重要性を指摘していました。この期に及んで日本だけが財政規律、しかも他の先進国はどこも採用していないプライマリーバランスの黒字化目標などに拘泥している場合ではないということです。

 これらはある種「当然」の対策だと思いますが、安倍政権、自民党幹部の腰は重く、というより危機感がまだまだ欠如していてそこまで思いが至っていないようであり、そう簡単にこれらの「当然」の対策が実現されるとは思いません。しかし、今示されている政府の対策案ではとても沈みつつある、破壊されつつある日本経済を立て直すどころか救うことさえ難しいでしょう。このいろいろな意味での「国難」を乗り切るために、是非この事実、そして「日本の未来を考える勉強会」らの提言を広めて、支持を増やしてください。どこかの地方議会で、「この提言を政府においては採用し、実現すべき」という決議をするというのも効果的であると思います。

 是非よろしくお願いいたします。(「ミドリのタヌキ」、「豊洲の女」に騙されないように注意喚起することも併せて。)

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【室伏謙一】今必要なのは冷静さ、過剰ではない適度な「自粛」、そして消費税減税と新型コロナ損失への粗利補償だへの5件のコメント

  1. たかゆき より

    兵站 無視

    それは 日本人の「 宿痾 」かと、、、

    先の大戦における 帝国軍人の 戦死者

    その6割が 餓死

    そして 35万人を超える海没死

    戦時における 日本人の愚かさを 

    目の当たりに出来るとは、、、

    長生きはするもんで ございますね。。。

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  2. 大和魂 より

    全国の皆さんには、お気のどくに申し訳なく思う今日この頃です。なぜなら、わたくしの地元にも財務省あがりの、デカイ顔した老体が、のさばっているからです。それで、その老害は公設秘書が犯罪者で、しかも逮捕されたのが、秘書を辞めた翌日と言うから、明らに、地元の自治体の長と結託した事件まで起こし、何食わぬ顔して、のさばっております。その自治体の長も先日、また再選されたクズなのです。また財務省あがりのクズは、自身の後継者に、財務省の若手の人間を模索しており、現に、その後継者は無所属で、この数年、活動しています。これは厳然たる事実で、安倍総理も勿論知っていますから、ココにも腐敗した産物が存在している訳です。だから、正義面した桜の大紋の組織も地に落ちて泥にまみれて腐れ果てている事なのです。コレもメディアと結託、操作して全国放送させないよう仕込み、判らない方々が殆の実態なんです。こんなこと断じて、許されないことですから、ソレつながりの財務省もココで息の根を止めるべきだと切に思います。

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  3. 日本晴れ より

    >ミドリのタヌキ」さん、別名「豊洲の女」さんですが、彼女はお得意の、定義が曖昧なカタカナ語を使って、根拠も不確かな対策で都民や周辺県民の不安感を煽り始めました

    全くですね。豊洲の件もまさに政治的決断力のあるリーダーを演じる為に使った可能性があるし、カタカナ語の多様やこの人元々ナイトエコノミーを推進してた人です。それが一転夜の活動を禁止するとかだったら初めからナイトエコノミーなんてやるなと言いたいしこの人の行き当たりばったりその場のノリで決める政治にうんざりです。

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  4. 日本晴れ より

    小池都知事を評価してる奴は馬鹿です
    何故なら小池都知事は外国人のインバウンド推進やナイトエコノミーの推進してた人です しかもマスクも中国に送った人だし
    小池都知事は下らない事を問題視して 自分の大事な判断は無かった事にする駄目な判断ばっかしてるのが小池都知事です

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  5. docholiday より

    ミドリのタヌキに加えて、大阪の煽り屋も、自身が知事であった時のインフルエンザ対策をネタに、勢力拡大に力をいれています。
    東京と大阪、感染者数の一位と二位。
    この国の劣化は、とめどなく。これに、無能な現政権、官僚。
    まさに、コロナ感染状態。国家の店仕舞い。

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