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2013年4月9日

【藤井聡】2本目の矢

FROM 藤井聡@京都大学

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●月刊三橋3月号「韓国大崩壊」の配信は4/10で終了します。

⇒ http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_1980/index.php

「グローバル経済の優等生」韓国の過酷な現実とは。

この搾取を目のあたりにして、
「TPP加入はマスト」と言えるのか。

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黒田総裁を中心とした日本銀行が、「マネタリーベースの倍増」をはじめとした、文字通り、多くの人々の予想を上回る極めて大胆な金融政策を打ち出しました

言うまでもありませんがこれは、デフレ脱却のための「アベノミクス」の第一の矢が、大きく放たれた事を意味しています。

株式市場はこの第一の矢を大きく評価し、その公表翌日には、史上最大の出来高を記録しました。

多くの方々はこの動きに、デフレ脱却、そして、経済成長に向けて、大きく希望をお感じになっておられるところではないかと思います

言うまでも無く、筆者もそんな大きな希望を感じている一人であります。

こんな話を耳にしていますと、もう今回の「黒田バズーカ砲」(なんてメディアでは言われてるようです)だけで、もうデフレは吹き飛んだんじゃないだろか。。。。なんて、気分になってきても不思議ではないかも、しれません。

。。。。でも、安倍政権は、このバズーカだけでは、デフレは吹き飛ばないだろう。。。。と考えているのであって、だからこそ、第二の矢、第三の矢を加えた、
「三本の矢」
が必要だと考えている訳です。

じゃぁなぜ、どんだけ今回のような「バズーカ」をぶっ飛ばしてもデフレが吹き飛ばないのかと言えば。。。。それは、「市場」には、全く質の異なった、「二種類の市場」が存在しているからなのです。

それは、「金融市場」と「実体市場(経済)」です。

(※ なお、一般的には「金融市場と実態経済」と言われることが多いのですが、
これでは対比した感じがしませんので、上記の様に記載しました。

で、「金融市場」においては、実際の財・サービスではない「金融商品」なるものが売り買いされて、「実体市場(経済)」においては、いろんな「財・サービス」が売り買いされています。
(※ なお、「先物取引」という売買では、いろんな財やサービスが売買されますが、これは、財やサービスを「売買する権利」そのものを「売買」しているので、結局、金融市場の取引となります)

さらに、「金融市場」のカネは(一部の国民を除くと)、国民の給料にはなりませんが、「実体市場」のカネは、基本的に国民の給料になります。

パン屋さんでパンを1万円分買うと、その1万円は直接、パン屋さんの給料に繋がり
ますが、証券マンから1万円の金融商品を買っても、その1万円がそのまま、その証
券マンの給料に繋がる、なんてことは無い、ということですね。
(#そんな事があったら、そりゃ、天才バカボンの世界ですね 笑)

いずれにしても、いずれもいろんなものを売り買いしてる「市場」ですから、どこかの大旦那がでてきてメチャクチャ景気よくいろんなモノを買ってくれれば、活気づいていくわけです。

つまり、たくさん買ってくれる旦那がいれば、モノの値段はどんんどん上がっていくわけですね。

。。。。で、「日本銀行」というのは、(日本円を使う)「金融市場」における最強の「大旦那」な訳です!

だから、今回の「黒田バズーカ」でもって、「金融市場」は大いに活気づいて、
・株価は上昇し、
・国債の価格も上昇し(=これは長期金利が下がるということを意味します)、
・ドルやユーロなどの海外の通貨も上昇したのです!(これは、もちろん円安を意味します)

で・・・・この金融市場と実体市場(経済)の両者は、「一体」ではありませんが、
「接続」されてはいます。

で、どうやって接続されてるかと言えば、
「誰かが、金融市場で調達したカネを、実体市場(経済)で使う」
という事があれば、「金融市場」から「実体市場(経済)」にカネが流れるのです。

だから、例えば甘利大臣は、
「気の影響が実体経済に移りつつある」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL010I4_R00C13A3000000/
などと発言されているわけです。

しかし・・・・黒田バズーカで供給されたの日本円の全てが、「日本」の「実体市場(経済)」「だけ」に流れ込むとは限らないんですね。。。。

なぜなら、「日本の金融市場」には、日本の実体市場(経済)だけでなくて、海外の「金融市場」や、海外の「実体市場(経済)」などとも「接続」しているからです。

さらには、日本の金融市場に参加している人達が皆、

「金融市場で調達したカネをつかって、
また別の金融商品を買う」

なんて事をやってばかりいたら、金融市場は活性化していっても、実体市場(経済)は活性化してはいかないからなのです。。。。。そんなことになれば、結局は、国民の給料は上がらず、我々のポケットにやってくるはオカネはほとんど増えない。。。という事になっちゃうんですね。
(。。。。っていうか、そんな事ばっかやってたら、やべぇ事になっちゃうじゃねーか!なんて話もあるくらいなのです 苦笑)↓
http://www.minervashobo.co.jp/book/b105544.html

・・・・

ということで、「黒田バズーカ」でもって日本の金融市場が活気づくのは素晴らしいことなのですが、そこで特に何も手立てを施さなければ、活性化されたエネルギー(というかマネー)は、「必ずしも全て私達国民のポケット」にやってくる訳では無い、ということになるのであります。

だ・か・ら!

黒田バズーカで活気づいたエネルギーを、日本国民のポケットに少しでも多く配当させるための、何らかの手立てが必要となるわけであります。

その根幹にあるものこそ、

「アベノミクス、第二本目の矢」

なのであります(例えば上記記事でも、甘利大臣は、「これから一番大事なことは、補正予算が実体経済に効いてくることを把握していくことだ」と発言されていますが、これもまた、同じ現状認識に基づいたご発言ですね)。

・・・繰り返しますが、日銀というのは、「金融市場」の大旦那なのですが、
『政府というのは「実体市場」における大旦那』
となり得るわけです!

だ・か・ら!、

政府が(※)、一生懸命がんばって、
「金融市場で調達したカネを、実体市場(経済)で使う」
ことをやれば、実体市場は活気づき、国民のポケットにオカネがやってくるのであります!
(※ もちろん、民間と一緒に、であります(笑)。が、もちろん、それぞれに出来る事できないことを踏まえた「役割」をガッツリと見据えることが大前提ですね!)

。。。。

ということで、日銀黒田総裁にここまでがんばって頂いた訳ですから、後は、政府が(※)第二本目の矢をしっかりと放っていかなければならない訳であります!
(※ ひつこいですが、もちろん、民間と一緒に、であります(笑)。が、もちろん、それぞれに出来る事できないことを踏まえた「役割」をガッツリと見据えることが大大大前提ですね!!)

・・ということで、ひょっとすると本メルマガ読者にとっては、今週もまた、何とも「あたりまえ〜」なお話だったかと思いますが(笑)、もし、そうお感じにならなかった方がおられましたら、「あたりまえ〜」な体操が踊れる位になるまで、上記、お目通し願えますと幸いです。

ではまた来週!

PS
月刊三橋3月号「韓国大崩壊」は4月10日で配信終了。

もし、あなたがグローバル経済に飲み込まれつつある
韓国の実情を学び、日本のあり方について考えたいという懸命な方なら、
このこのお知らせは非常に重要です。

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【藤井聡】2本目の矢への3件のコメント

  1. 名前はまだ無い より

    以前から甘利大臣や菅官房長官の発言こそが安倍総理の真意なのではないかと思うことが多いです。安倍総理自身「財政規律を守る」ということを衆院選前の党首討論などでも何度も発言されていたように思います。やはり二本目の矢は折られているのではないでしょうか?(「機動的な財政政策」とはどういう意味かが私にはもともとよく分からないのですが)本日の三橋貴明さんのブログ記事『目覚めよ! 日本経済と国防の教科書 (中編)』に「そうではなく、安全保障の危機が深刻化し、現実に国民の生命や安全が脅かされている状況があったとして、デフレの時には経済的なボトルネック(制約条件)は存在しないという話です。要は、政府は必要なおカネを必要な国防関連分野に費やしても構わない。結果的に、国防の強化とデフレ脱却の両立が可能、という話でございます。」と述べておられるようにデフレ下における財政拡大はむしろ一石二鳥のはずです。財政拡大に内心反対の方がよく「必要な公共事業ならいいけど」とおっしゃいますがそもそも藤井先生をはじめ財政政策を訴える方が「無駄な公共投資をどんどんせよ」などとおっしゃっていた記憶がありません。「必要なものにお金をかけるべし」などそもそも議論する必要がないほど当たり前なのですが。。。

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  2. Yuriya Kaito より

    >>「市場」には、全く質の異なった、「二種類の市場」が存在しているからなのです。それは、「金融市場」と「実体市場(経済)」です。>>というご指摘、新鮮に感じました。

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  3. momo より

    確かに当たり前の内容でしたねwでもそのことを政府の人間がどれくらいわかっているのかが気になるところです。

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