FROM 藤井聡
みなさん,こんにちは.
京都大学の藤井聡と申します.
三橋さんのメルマガに参加できて,うれしく思っています.
さて今回は最初の回ですので,
少々自己紹介がてら,
最近の興味関心をお話いたしたいと思います.
当方は今,京都大学の都市社会工学専攻というところで,
国土計画,都市計画,土木計画,交通計画などの
「公共政策のプランニング」の研究に従事しています
(※だから,我々のグループは “計画系”グループと呼ばれています.
工学部のよその研究室が主として“自然科学”をベースにした
工学研究をしている一方で,我々は,“人文社会科学”を
ベースにした工学研究=実践研究をするところなんです.
ご関心の方は,当方のHP
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.
あるいは,FB
http://www.facebook.com/Prof.
等をご参照ください)
(※ちなみに当方の学位論文は,
行動的な計量経済学に基づく交通市場における需要分析,
でしたが,その後,その「行動」っていうのを
もっと研究するようになって,社会心理学研究,
ひいては社会的ジレンマ研究を進めるようになったのでした.
いわば,ノーベル経済学賞の方のお名前を借りると,
マクファデン→サイモン→シェリング,という流れです).
で,この「プランニング」 というのが,
最近では随分と嫌われているようです.
なぜかというと,
「自由放任にするのが,一番よい結果をもたらすんだ!」
というイデオロギーがこの日本を,というか,この世界を,
支配してしまっていたからです.
そんなイデオロギーをなんて言うかということですが,
ネオリベラリズムとか新自由主義とか,
ややこしく言うと新古典派経済学,
あるいは簡単に市場原理主義,とか,
言われたりします.
いつからそんなことになったのかというと,
おおよそ,80年代頃からのようです.
実は,かの1929年の大恐慌以降,
1980年代頃までの半世紀,そんな新自由主義は,
そこまで大きな力を持っていなかったのです.
...ということで,1980年代くらいまでは,
ほとんどだれも「プランニング」がそのものが悪いなんて
誰もおもってやいませんでした
(共産主義の計画経済は人気は無かったのですが).
それに,ケインズ主義だって,誰も,
何か悪いものだなんてだれもおもわれていなかったのです.
例えば,米国のニクソン大統領は70年代
「我々はもうみんな,ケインジアンだ!」
なんて言ってたそうです.
ところが,80年代,90年代になってくると,
どんどん新自由主義が,世界を支配するようになっていきます
(さらにベルリンの壁崩壊が,その流れを決定づけたわけですね)
で,そうなればなるほど,どんどんケインズ主義にしろ,
プランニングの考え方にしろ,嫌われていってしまったのです.
そして,今やもう,「ケインズ主義」だとか
「積極財政に基づく経済政策を」だとか,
さらには「計画経済」(笑)だとかいっちゃうと,
エコノミストの方々の中では,「こいつは馬鹿か?」
と言われるようになっちゃったわけです.
で,さらに経済学の学者さんの集まりだったら,
そんな事ちょっとでもいっちゃったら,
完全につまはじきにされて,
出世できなくなっちゃうなんてことを,
よく耳にします(これ,マジです).
でも,どっちが馬鹿かっていったら・・・
なんて事を言うと誹謗中傷合戦になってしまいますから(笑),
当方が敬愛する,ケインズ研究の第一人者であられる
ロバート・スキデルスキー教授という先生(←
のお言葉をお借りしましょう.
「今回の危機(←リーマンショックの意)の根本原因は,
経済学の理論的な失敗にある....
最近,圧倒的な力を持っていた新古典派経済学が
どれほどの害悪を与えたかは,簡単には記せないほどである.
歴史上,これほど奇妙な考え方に
優秀な人達が熱中した例はまずない」
〜『なにがケインズを復活させたのか?』より〜
・・・
ということで,
今,日本や世界がメチャメチャになってるのは
「(滅茶苦茶頭のいい)経済学者の皆さん」が
「集団的な狂気状態」になっちゃってたからだ....
という疑義が濃厚(!)なのであります.
そんなこんなで,
当方の専門の「プランニング研究」なんてのは,
世界の端っこに追いやられていたわけですが....
ということで,少し長くなりすぎました.
この続きはまた,次回!
PS
なぜ、正直者は得をするのか? 社会的ジレンマ研究とは?
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【藤井聡】経済学の失敗への1件のコメント
2012年7月25日 6:16 AM
面白い。もうテレビなんて見ていられません。動画はみなくっちゃいけませんし先生の本は読まねばならないし、忙しくてたまりません。困っております。うれしい悲鳴です。
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