アメリカ

2016年11月17日

【島倉原】トランプ現象とブレグジットの相違点

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家

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先週最大のニュースといえば、何と言ってもアメリカ大統領選挙。
周知の通り、一時は「泡沫候補」とも言われた共和党のトランプ氏が当選しました。

グローバル化の下で資本が国境を越えた利益を追求し、
一部の上位所得層に所得が集中する一方で、先進国の労働者が貧困化する。
そんな格差社会への不満が、リーマン・ショック後の停滞の中で臨界点に達し、
イギリスのEU離脱決定に続き、反グローバリズムの投票行動として顕在化した。
そんな解説を、本メルマガのみならず、多くのメディアで目にしていることでしょう。

上記の解説、それはそれで間違いではないのですが、
トランプ現象とブレグジット、金融市場の反応は、いささか異なるものとなっています。

ブレグジットが判明した6月24日は、日本も含め、世界同時株安の様相。
外国為替市場では円高・ドル高(ユーロなど、円以外の通貨に対して)となるなど、
明らかにリスクを回避しようという流れでした。

ところが今回、トランプ氏の当選が判明した11月9日には、
日本こそ大幅な株安だったものの、アメリカはじめ、その他の先進国市場は軒並み上昇し、
外国為替市場も、東京時間こそ円高が進行したものの、
その後は対円も含め、ほぼ全面的なドル高となっています。

そして際立って対照的なのは、新興国市場の動き。
ブレグジットの際は、「先進国発のパニック」ということで、
株安局面も含め、新興国株の方が先進国株よりも堅調だったのに対し、
今回は同じく先進国で起きた出来事でありながら、
新興国株のパフォーマンスが先進国株に見劣りするのみならず、
トランプ氏当選判明後4日続落し、マイナスで推移するなど、
明らかに新興国からの資金流出が生じています(2016年11月15日時点)。

トランプ現象とブレグジット、共に反グローバリズムの現象ではありますが、
ブレグジットがEUというグローバリズム体制から見れば、
共通通貨ユーロにも不参加のイギリスという、いわば一周辺国の動きであったのに対し、
トランプ現象はグローバリズムの総本山、基軸通貨国アメリカで起きたイベントです。

私自身は、非現実的な主流派経済学とは根本的に相容れない「景気循環論」の観点から、
グローバル経済には、先進国・新興国間の長期的な資金サイクルが存在し、
リーマン・ショックもその後の停滞も、そのサイクルがもたらした現象であると共に、
現在は新興国から先進国、特に基軸通貨国アメリカに資金が移動する局面と考えられ、
周期的な現象としての新興国危機が起こる可能性すらあると、一昨年から述べてきました。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/10/09/shimakura-7/

来年誕生するトランプ政権の実際の政策について、現時点では不透明な要素も多く、
トランプ大統領誕生の中長期的な影響は、決して定かではありません。
しかしながら、現在までの金融市場の動きを見る限り、
景気循環の後退局面で反グローバリズムの動きが顕在化し、
それを背景として国内回帰の政策を打ち出したトランプ氏の当選が、
一昨年のロシア制裁ショック、昨年の人民元切り下げショックを経た後に、
今年に入りやや停滞していた先進国への資金移動を今一度強めるきっかけとなった。
そうした解釈が成り立つのではないでしょうか。

仮にそうした解釈が正しいとすると、意外というか、反省点が一つ。
私自身は、資金移動を加速する、そうしたイベントの新たな勃発自体は想定していました。
とはいえ、それは昨年の人民元切り下げショック同様の、
何らかの新興国発のイベントであろうと、半ば思い込んでいたところがあります。
しかしながら、トランプ現象自体も上述の資金サイクルを背景に生じたものだとすれば、
「先進国発のイベントによる資金移動の加速」という上記の解釈も、当然あるべきでした。

そうした教訓につながるかどうか、時間が経ってみないとわからないところはありますが、
いずれにせよ、歴史的に見ても興味深い分析局面にあることだけは間違いなさそうです。

〈島倉原からのお知らせ〉
今回の記事と一見矛盾したことを述べているようですが、
「ドル高・先進国株高が一本調子に進むわけではないのでは」という1つのシナリオを、
新興国側の事情も加味しながら分析しています。
↓「トランプ大統領当選後の金融市場」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-208.html
↓「株式市場の下値のメド」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-207.html

景気循環論を前提としたマクロ経済分析、経済政策論に興味がある方は、
こちらの拙著も参考にして下さい。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』
(二番目のURLはあらすじをまとめたブログ記事です)
http://amzn.to/1HF6UyO
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-94.html

↓ツイッター/フェイスブックページ/ブログでも情報発信しています。
こちらも是非ご活用ください。
https://twitter.com/sima9ra
https://www.facebook.com/shimakurahajime
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/

—発行者より—

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★★★★★:山本直美さまのレビュー

豊洲問題は、完全に小池百合子劇場に取り込まれていました。

解説を聞いてはっきり理解でき
月刊三橋の会員でよかったと心から思いました。

プロパガンダに騙されないつもりでいても、
見抜く知識や経験のなさで、簡単に
騙されるものだということがよくわかりました。

今回教えていただいた
1)恐怖プロパガンダ   
2)ルサンチマン・プロパガンダ 
3)木を見せ森を見せないプロパガンダ
をしっかり理解してこの3つのプロパガンダに
対しては騙されない人間になります。

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【島倉原】トランプ現象とブレグジットの相違点への5件のコメント

  1. 學天則 より

    部屋にリンゴがあるとします。それを部屋から還元的に分離してリンゴという個にします。そのリンゴを個として、いくら詳しくなっても、部屋にあるリンゴという現象全体を的確に捉えないと、リンゴその物すらなんであるか真に論じる事は出来ない。リンゴだけに分離すると明らかに情報が偏ってしまう。リンゴを情報としてだけみるとそれは明らかに情報不足だろうとわかる。コンピューターシステムなんかもそうだある特定の商品マスタデーターだけで意思決定に資する情報は得られない。全ての情報を一元で管理して、総合して判断に必要な情報を提供する訳です。それでも完ぺきではなく還元的な訳ですが、これが財務諸表なんかにも普遍的にあてはまり、だから財務諸表だけ見ていても大半の企業は潰れる。野中郁次郎先生の提唱されるSECIモデルではこの不足する情報を暗黙知というのでしょうね。要するに明文的な情報はマクドナルドのマニュアルであり成文憲法なのです。ふと部屋の片隅を見ると怪しい注射器を持ったおばさんがいて、リンゴの横にはよく見ると針で刺した後がある。還元主義というのはそこまで見ない訳です。このリンゴを経済学としましょう。いくら経済学を理解した処で全体である人文、自然、社会科学を総合して学問とは何かを論じられますか?またその学問全体で現象を分析するはずなのに部分だけで説明が出来るでしょうか?そんな事をすればあやしい毒注射?リンゴをおいしくほうばるだけです。無理ですねwあしからずw

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  2. 神奈川県skatou より

    >だからこの世界は情報でそれを人が認識する事で>勝手な世界を作り出しているなんて、ぶっ飛んだ>思考が出るわけですが、さて、認識というものは「ありのままを見ている」わけではなく、「あるべく姿に当てはめている」のかもしれません。この世に「輪郭」などありませんが、人間(生物)はそれがあるように認識を成立させることで(=べき論)、情報の世界、物理よりメタな世界、を生み出していますので。今更数学者が「我らが認識した様式で世界を創り出している」と言った(?)のは「そりゃそうだろう」というだけで、数学という展開ゆたかなロジックを世界に当てはめて、認識失敗しない範囲まで展開しちゃうわけですからね。こういう話になるとすれば、AIとロボットは身体性という観点でまったく違うインパクトを人類史に持つという話にもなりそうですが・・

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  3. 神奈川県skatou より

    循環でひとつ思い出したことがあります。心理学というのは「実験」という方法で哲学から分離したと習いましたが(当時の実験は内観法)、さらに心理学から認知科学が分離したのは従前の、文字で記載する仮説と実験データの統計分析による確認手法でなく、仮説をプログラムにして動的に実践し、その挙動で確かめる、という側面があったと理解しています。つまり学問とは文字で記載し大勢が確かめる(追認可)という構造に、ある種の限界があるはずで、特に対象がなんらかの内在するロジックが動的に動いている場合は、人間が空想で捕まえられる範囲外の場合があるだろう、ということです。対象が現象として定常状態になっている、循環になっている、などの違いで、取るべき分析アプローチも違うだろう、そのように思われます。景気循環論という可能性もそのあたりに面白さがあるのではと憶測いたします。(すみません不勉強で)自分としてはもうすこしミクロな?、なぜ労働時間は100年経っても変わらないのか、のほうが不思議というか、進歩が無いなぁと日々感じております。

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  4. あまき より

    先進国の問題発生を端緒とする資金流動加速も予測に加えるべきだったと省みられた島倉さんの一文に、思わず居ずまいを正した。今回の選挙で私もいろいろと学んだ。「絶対」には注意する必要があるということだ。トランプ氏の当選だけは「絶対」避けなければならないと繰り返していた某米国通がいたが、「絶対」という表現で冷静な票読みを放棄し、自分の好悪や希望、思想を優先したのだ。こういう人には今後、分析家としても戦略家としても対価を払うわけにはいかないだろう。安倍首相に片方の候補とだけ面会させるような段取りを外務省が施すなどということは「絶対」にない、という見方も、よって大いに疑問だ。今年の5月、ワシントンで開催された笹川フォーラムで、佐々江賢一郎在アメリカ合衆国大使館・特命全権大使が英語でスピーチされている。要約すると、「今度の大統領選で米国が孤立主義に向かうのではないかと取り沙汰されているが、そのような米国など我々は想像できない。米国は我々にとって希望である。米国にはより強く、よりグローバルな立場であってほしい。自国内のことだけを考えるようでは困る。世界に対する役割を考えてほしい」つまり「特命全権大使」という我が国を代表する立場でこのような「肩入れ発言」を行った上での9月安倍ヒラリー会談だったことになる。安倍さんが外務省を無視して独断専行をはたらいたという見方を完全否定するつもりはないけれど、しかし外務省が安倍さんの判断を誤らせた可能性も「絶対」ないとも言えない。マスコミをはじめ米国通・米語通がなぜ、ことごとく予測を誤ったかは、それぞれがそれぞれの胸に手を当てて考えればよい。私にはトランプ新政権の出現より、安倍外交の危機が与える政治・経済の影響の方が深刻だと思う。

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  5. 學天則 より

    資金循環論といいますかデカルト以来還元主義で科学はやって来た訳ではないですか?で、それは個=例えば素粒子に分解され、素粒子を理解すれば全体も解るみたいな話に陥って机上の空論と化して言ったわけですよね。全体を見る視点が失われていった。実は私も同様に還元的に物ごとを見ている訳ですが、最終的に還元される対象は情報という個ではないんですよね。情報は個では成り立たず海の様に他の情報と関連してシステムを複雑な形成している。私の中では還元的思考がシステム論的に思考にたどりついている訳なんです。詳細は不明ですが、この様な情報に還元する似たような考え方をホーキング博士やラブロック博士だったかな?そしてイーロンマスク氏等もされていると聞きましたが、だからこの世界は情報でそれを人が認識する事で勝手な世界を作り出しているなんて、ぶっ飛んだ思考が出るわけですが、日本の学者がその辺の水準まで考えられないなら本当に程度が低すぎると言わざるを得ません。つまりそこまで真剣かと言う事です。

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