政治

2017年9月29日

【施光恒】民進党が支持されなかった理由

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

おっはようございまーす(^_^)/

民進党が、事実上、解党してしまいましたね。

政党はどこでも、独自の世論調査や票読みをし、選挙結果の予測を立てるといいます。民進党も、おそらく独自の調査をした結果、このまま選挙戦に臨めば壊滅的な打撃を受けると考えたのだと推測します。

「民進党としては選挙に出ず、公認候補も立てない。希望する民進党議員は希望の党からの公認を得て出馬してよい」という民進党執行部の奇妙な決定は、このままではどのみち、民進党に未来はないと考えた末の苦渋の選択なのでしょう。

民進党は、2012年末に政権から滑り落ちて以来、一向に支持率の回復が見られませんでした。国民一般の信頼をすっかり失ってしまっていました。

民進党が結局、国民一般の支持を得られなかった一番の原因は、民進党から、愛国心、つまり日本の国家や国民のことを心から思う気持ちを感じられなかったことだと思います。

この点について私は、今年7月、蓮舫・前民主党代表が自身の二重国籍問題に関する会見を行った後、『産経新聞』の記事で次のように書きました。(「蓮舫氏会見 国民を不幸にする民進党」(コラム【国家を哲学する 施光恒の一筆両断】『産経新聞』(九州・山口版)2017年7月19日付))
http://www.sankei.com/politics/news/170719/plt1707190055-n1.html

「…… 蓮舫氏の二重国籍問題についての会見を見て、民進党が支持を得られない理由が改めてよくわかりました。第一の理由は、やはり国籍や愛国心、日本への帰属意識などのナショナルなものを、蓮舫氏や民進党が重視しているように感じられないことでしょう。民進党は、安全保障や経済などに関して、日本国民のことを常に真剣に考え、命がけで働いてくれるのか、十分に信頼できないのです。

…… 民進党は野党であるからこそ愛国心や帰属意識を強調する必要があります。野党は時の政権を批判します。政権批判が広範な支持を集めるには、その中身が国内外の特定の政治勢力や特殊なイデオロギーからではなく、国家・国民を真摯に思う気持ちから出ているものだと国民に示さなければなりません。二重国籍問題の経緯をみるかぎり、蓮舫氏や民進党には、その意思や意欲が感じられません」。

ここで書きましたように、民主政治の質を高めるためにも、政党や政治家が確固たる愛国心の持ち主だと示すことは大切なのです。

繰り返しになりますが、野党にとってもそれは同様です。野党の仕事は、時の政権や政策の批判です。その欠陥を指摘し、国民に広く知らしめ、より真っ当な政治へと導くことです。

国民一般が野党の批判に耳を傾け、それを真剣に受け止めるようにするには、批判が、外国勢力の影響や党利党略、偏ったイデオロギーなどからではなく、日本という国家や国民の将来を一心におもんぱかる気持ちから出ているのだと国民一般が納得できるようにしなければなりません。

多くの国民が、野党も日本を愛し、国家・国民の行末を真剣に考えているのだと確信できない限り、野党の政権・政策批判は国民一般には届かないのです。

これはちょうど、自分自身のことを本当に思ってくれてのことだという確信を持てない限り、人は他者からの批判や忠告をあまり傾聴する気にならないのと同じです。

民進党は、前身の「民主党」から名前を変えたものの、やはり民主党時代のイメージが悪すぎました。

民主党時代、鳩山由紀夫氏の「日本列島は日本人だけの所有物じゃない」発言とか、「国というものがなんだかよくわからない」発言、あるいは菅直人氏や前原誠司氏の外国人献金問題などがありました。また、赤松広隆氏は、民団に対して、選挙運動を手伝ってもらったみかえりに外国人地方参政権の実現にまい進するという発言もしています。

こういう例は枚挙にいとまありません。「民進党」と名前を変えた後でも、今度は、蓮舫氏の二重国籍問題が出てきますし、この問題で騒がれていたにもかかわらず蓮舫氏を党の代表に選んでしまいます。結局、民進党は、国を大切に思っていないのではないかという国民の疑念をさらに深め、信頼を回復できなかったわけです。

上記の『産経新聞』の記事では、私は結びとして次のように書きました。

「民進党は遠からず解党に向かうのではないでしょうか。…… それは妥当な帰結でしょうが、日本の民主政治の発展のためには、健全な野党勢力、リベラル勢力はやはり必要です。日本の国家・国民の将来を真に思う、愛国心を備えたリベラルな政治家や政党の新たなる登場に期待します」。

正直なところ、私が思ったよりもだいぶ早く民進党は実質的「解党」に至ってしまったわけですが、「日本の国家・国民の将来を真に思う、愛国心を備えたリベラルな」政党というのは、やはり、なかなか現れないでしょうね。そもそも現状では、与党のほうもそれほど信頼できないのが残念なところですが。

今日はいつもより短めですがこの辺で。エラそうな文章、失礼しますた…
<(_ _)>

関連記事

政治

【三橋貴明】世界屈指の「豪雪国」

政治

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」第六十四話『「納得がいく」令和の政策ピボットは実現可能なのか』

政治

【三橋貴明】カタルーニャ独立運動とナショナリズム

政治

【小浜逸郎】東京愛と愛国心とナショナリズム

政治

【三橋貴明】ナショナリズムと財政

【施光恒】民進党が支持されなかった理由への7件のコメント

  1. ふるたにしんすけ より

    気が付けば、欲に目がくらんだろくでなししかいない政界。。
    もともと考えれば、議会制初期のころはまだましだったのでは・・と思ったりもする。

    一人間としての良識や常識さえもない、共感能力のまったくない
    ひとでなししか、立候補する資格が得られないのだろう。。

    諸外国のトップリーダーを観て、自分たちもおかしい、、と反省するくらいの人間でなければ、選挙も未来も意味はない。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. 神奈川県skatou より

    ナショナルなものを否定したほうが知的でカッコいいと思って政治活動をする、うわべでは成功しそう、でも、愛国心、あるいは国民愛がなければ、赤の他人である候補者に対して、有権者は、なにかよいことをもたらしてくれそうだとは到底思わない。

    逆にその愛が、小さくとも遠くても、自分の方向を向いているとなれば、それは確かに、「よくわからないけど頼めそう」となる、と、理解いたしました。

    たとえば農家のひとが、候補者の演説内容に農協愛を感じれば、それは何を言っているのか詳しく理解しないまでも、そのひとを信用し投票するだろう、と。

    愛のない改革、愛のない保護や規制、どちらも空論に近く、大事だと思う心には、きっと未来を夢見る思いがあり、ありたい明日の姿があり、それが原動力(WHY)になるはずで、実は国民自身の愛国心の無さが政治家の成り手を減らし、自ら質を下げているのかもしれない。
    この戦後空間の負を払いのけたくなる、そう思いました。

    先生の次の長文を楽しみにしております。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  3. 施 光恒氏の今日の「民進党が支持されなかった理由」は簡潔で素人にも分かり易く良い文章でした。何時も長いので途中で切り上げてしまうのが、今日は確り読みました。「民進党はいつか解党する」の読みも的確でした。
    今後ともこの程度の長さに纏めてください。文章が締まりますよ。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

      1. コメントに返信する

        メールアドレスが公開されることはありません。
        * が付いている欄は必須項目です

  4. 亀田 泰彦 より

    僕自身の考えは、選挙の浮動票の考えに近いんですが、当初、民進党は期待していたんですが、誰だったか、自衛隊のことを、暴力装置と言った幹部がいたでしょ!あれいらい、あの党とは断絶しました。あのグループに共産主義者のような人がいたら、大多数の人は指示しないでしょう!今度、出直したら、地元の旧民進党の候補者、比例も希望に入れるんじゃない?

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  5. 赤城 より

    最終的にはきちんと教育された日本人がいなくなったことで今の日本の惨状ができていると思います。
    戦前戦中世代の日本人として教育された人たちとその人たちの影響を受けた日本人がまだ日本に存在して大きな影響力を持っていた時代は完全に終わりました。
    今は完全なる戦後教育の何が日本人なのか祖国への愛や忠誠はどういうものかという基本的なナショナリズムを始めから教育されない地球市民のような教育しか受けない日本人だけの時代です。
    これはとてつもない事態なのですがそれについてもう誰も気がついていないような状況ですね。
    それも戦後を生き抜いてきた戦前戦中世代の日本人たちが100年後の日本を見越すことなく何もできずせずにただ流されるままに目の前の政治や日々の生活を送ってしまった結果でもあるので、やはり日本人にはもともと生存競争において大きな弱点欠陥があるとしか考えられませんが。
    日本人の遺伝子には大陸ではもうほとんど滅んでしまった古い要素が多く存在しているという話を聞きました。
    それは裏を返せば大陸での生存競争に負けてほとんど滅ぼされてしまった種族の血筋だということです。
    生存能力というのはただ優れているということではありません。
    他種族よりよほど優秀でもそこで適応して生き抜いていくために必要な能力が欠けていれば簡単に他種族に淘汰されてしまうのです。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  6. スズメのかたびら より

    産経新聞の施さんの言葉通りに民進党は早期解党になりましたね。さすが!はっきり予言?していた方は他にあんまりいないんじゃないでしょうか。愛国心のある政党の誕生についても予言が実現するよう期待したいです。

    話は変わりますが、先日、柴山さんと中野さんの
    『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』刊行記念トークイベントの動画を見ました。
    勝手に忖度したところ、お二人とも本当に疲れ切ってるように見えたので大丈夫かなあと。柴山さんの四十肩は治癒されましたでしょうか。かなり痛そうで目も虚ろで、でも話出すと手抜きのない、いつも通りの思いの詰まった訴えで寝てないのに凄い根性だなと驚きました。
    中野さんもショボショボしてて、ギャグのキレもいまいち。
    他の動画でも明らかにやつれてるように見えることがあったので心配です。中野さんを見てると「あ~すごい神奈川県民っぽいなあ」と懐かしく。今は私は神奈川県民じゃないですが、
    この人、神奈川県民なんだぞー凄いだろーと自慢したくなるのです。

    仕事と両立しながら、国のために言論活動や講演活動ほんとにありがとうございます。喋ること自体がエネルギー使うのに、何百回も同じ事を繰り返し言っても通じず代替案を出せ!とか言われたらさすがに体に影響がきますよね。
    他にもいっぱい面倒なことがあるんだと思います。
    真面目で尊い価値に向かって頑張る人は消耗してしまう。
    中野さんや柴山さんのような優れた人があらゆる努力して、
    それでも目的達するの難しい。運の要素もある
    どんなに能力が高くても、全力を出して運と神様の助けがあって何とか実現できるかどうかが実際で、不倫しながら議員活動もバリバリやるヨ♪などというのはほんとかね?と思っちゃうのです。尊い価値に向かって突き進む人が体をいためたら悲しいので
    適度にサボりながら体を癒して言葉を伝えてもらえればなあと思っております。

    「若者に告ぐ、親方に授けられるべからず。親方を乗り越す工夫を切磋琢磨すべし。これ匠の道の真髄なり」

    私の尊敬する人の言葉です。
    中野さん、柴山さん、施さんには普通の人が行けない飛びぬけた世界へ行ってもらいたい。西洋人の言葉をはるかに超越してもらいたいっ!(またこんなストレスをw)
    いつもありがとうございます。お体ご慈愛ください

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】決して許してはならない凶行

  2. 日本経済

    【三橋貴明】聖徳太子の英雄物語

  3. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】成田悠輔氏の「老人集団自決論」が論外なのは、...

  4. 日本経済

    【室伏謙一】「金融緩和悪玉論」を信じると自分達の首を絞...

  5. 日本経済

    【三橋貴明】聖徳太子の英雄物語

  6. 日本経済

    【三橋貴明】政府債務対GDP比率と財政破綻は関係がない

  7. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】『2023年度 国土強靱化定量的脆弱性評価・...

  8. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】【3月14日に土木学会で記者会見】首都直下地...

  9. 日本経済

    【三橋貴明】無知で間違っている働き者は度し難い

  10. 日本経済

    【三橋貴明】PBと財政破綻は何の関係もない

MORE

タグクラウド