先週の記事「稲田防相は自衛隊を暴走させたいらしい」では、さる6月27日、都議選の応援演説を行った稲田朋美防衛大臣が
「(自民党候補への投票について)防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いをしたい」
と言ってしまったことを取り上げました。
この発言に見られる論理構造は、フランス革命の際に見られた、自治体と軍の癒着を想起させるもの。
フランス革命が結局、ナポレオンの独裁に行き着いたことを思えば、じつに危ない話です。
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しかるにご存じの方も多いでしょうが、「右翼」「左翼」もフランス革命から生まれた言葉。
1789年、革命勃発直前に開かれた「三部会」では、議長席の右に貴族と聖職者を代表する議員が座り、左に平民を代表する議員が座りました。
貴族代表議員と聖職者代表議員の数は、ともに平民代表議員の半分だったため、このような配置になったものと思われますが、
「右=従来の制度をなるべく維持したがる人々、左=従来の制度をどんどん変えたがる人々」
という図式が成立したわけです。
革命後の「国民議会」でも、議長席の右に穏健派が、左に急進派が座ることになり、先の図式は保たれました。
つまり「右」と「左」はもともと、「議会で座る位置」という、そのものずばりの意味で使われていたことに。
ただし〈いかなる世界観を抱いているか〉という観点から、両者を定義することも可能です。
なぜなら左翼的な世界観には、以下の四つの特徴があるのですよ。
1)人間は理性的能力によって世界を制御できると信じる。
2)時代の経過とともに、人間の理性的能力は向上すると信じる。
3)よって時代の経過とともに、世界は進歩する(=より良くなる)と信じる。
4)よって進歩の速度は、速ければ速いほどいいと信じる。
だからこそ、現状をどんどん変えてゆこうとするのですが、上記の世界観を抱く者は、自分に対立する立場の者をどう規定するか?
「世界の進歩という、誰がどう見ても絶対に正しく望ましいことを、邪魔しようとするけしからんヤツ」。
これです。
けれどもそういうヤツらは、ただ進歩を邪魔するだけでなく、進歩と反対の方向に世の中を動かしたがるに違いない。
ゆえに、そのような者は「反動(分子、勢力)」と規定されます。
英語なら reactionary.
世界の進歩という正しい action にたいする反作用だから、語頭に re がつくのですよ。
したがって左翼とは
〈対立する立場の者を「反動」と規定したがる者〉
と定義できる。
同様、右翼、ないし保守は
〈対立する立場の者を「急進」と規定したがる者〉
と定義できます。
現にわが国の左翼は1970年代ぐらいまで、保守派のことを「保守反動」と呼んでおりました。
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と・こ・ろ・が。
こちらをどうぞ!
【直言極言】毎日新聞からの回答~戦後レジームの反動の嵐に抗して[桜H29/6/23] https://www.youtube.com/watch?v=rEOjO9SQzpI
戦後レジームの「反動」の嵐!(ギョェ)
戦後レジームの「反動」の嵐!!(エエッ)
戦後レジームの「反動」の嵐!!!(ガーン)
内容的には、
「毎日新聞の皇室関連報道について公開質問状を送ったところ、木で鼻をくくったような回答が来た」
という話なのですが、
水島社長、同紙の立場をハッキリ「反動」と規定しました。
番組紹介文もこうなっています。
今回は、チャンネル桜の公開質問状に対して毎日新聞から送付されてきた返答内容の問題点について、
それが敗戦利得者達の反動であることを指摘しておきます。
敗戦利得者達の「反動」!(ギョエ)
・・・繰り返しは省略しますが、それにしても何という言葉遣い。
すでに書いたとおり「反動」の概念は、本質的に「保守」ないし「右翼」としか結びつきません。
「左翼反動」というものは存在しえないのです。
となると水島社長は、毎日新聞について、保守、ないし右翼と位置づけていることになる。
ならば、その毎日新聞を「反日」と見なして批判する彼自身、および日本文化チャンネル桜は、
保守(右翼)と左翼、どちらになるでしょう?
・・・聞くだけヤボですね、これは。
だ・か・ら、
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しかも毎日新聞は、問題の皇室関連報道の趣旨について
「国民とともに新しい象徴天皇のあり方を考える」ためと回答しています。
水島社長、これにも文句をつけているわけですが、どこの世界に皇室のあり方を「新しく」しようとする反動勢力がいるのか?
反動とは定義上、「従来の制度の維持、ないし過去の制度の復活に固執する者(ないし勢力)」なのですぞ。
そして社長、最後にはこうおっしゃる。
いわく。
「こういった皇室報道に象徴される反動、
戦後レジーム側の反動、
旧体制の反動が今、吹き荒れはじめ
皇室解体へ向かって、こういった策動が推進されている」
みごとに3回も「反動」を連呼していますが、最後のフレーズ「旧体制の反動」にご注目。
この文脈で「旧体制」といったら、想起されるものは「アンシャン・レジーム」以外ありえません。
フランス革命に際し、王政につけられた形容です。
意味はもちろん「旧体制」。
アンシャン・レジームの反動の嵐に立ち向かって変革をめざす!!
まるっきり、左翼革命派の論理ではありませんか。
そんな論理を、保守派を自認する人物が公然と展開する。
まさに自爆的炎上そのもの。
だ・か・ら、
今の日本では「炎上政治」が展開されていると言うのですよ!
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ここで明記しておきますが、私は水島社長のことが人間的には好きです。
いい人だと思います。
しかしこの発言から判断するかぎり、保守(主義)とは何なのか、およそ理解できていないと評さざるをえません。
「反日でも反動でもいいじゃないか。あまり細かい点にこだわらなくとも・・・」
とお思いになる方もいるかも知れませんが、それは断じて違います。
たとえば目下の政治状況について、こんなコメントが出たらどう思いますか?
「民進党、共産党、社民党といった『与党』が連合して、安倍内閣をつぶしに来ている!」
あるいは経済政策について、こんな意見が出たらどう思いますか?
「デフレ脱却のためにも、公共投資を削減したがる『積極財政派』に対抗しなければならない! 『緊縮財政』を実現すべく、プライマリーバランス黒字化目標を破棄せよ!!」
認知的不協和丸出し?
はい、そうです。
水島社長がやってしまったのは、このレベルの発言なのです。
これでなお「反日でも反動でもいいじゃないか」と譲らない方には、世にも美しいお花畑の世界が待っていますからね。
まったく、右も左もあったものじゃない。
ちなみに14日、時事通信が行った世論調査によれば、安倍内閣の支持率は29.9%と、ついに危険水域(30%以下)に突入。
http://www.sankei.com/politics/news/170715/plt1707150007-n1.html
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000071-jij-pol
藤井聡さん言うところの「思い切った財政政策による起死回生」にでも打って出るしかない状況となりました。
「危険水域」が、英語では「デンジャー・ゾーン」となることにかんがみ、このURLをつけておきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=siwpn14IE7E
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)わが国の保守、および左翼・リベラルが、右も左も分からぬほどの認知的不協和に陥った経緯と、その(非)論理構造についてはこちらを。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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2)いったんは世界的な経済大国となったわが国が、舵取りの誤りによってズルズルと危険水域に流されていった記録です。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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3)左翼的世界観の本質や特徴について、より詳しく知りたい方はこちらを。
『本格保守宣言』(新潮新書)
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4)「パッと浮かんだだけの思いつきが、本当に正しいことはめったにない」(154ページ)
トマス・ペインの言うとおり。だからこそ、言葉をいい加減に使ってはいけないのです。
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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5)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
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