From 佐藤健志
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日本が途上国支援を続けられる訳
消費増税、高齢化、千兆円の政府債務
借金大国の日本が世界貢献できる訳とは・・・
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本メルマガをお読みいただいている方は、よくご存知と思いますが、私はしばしば映画などのポップカルチャーを題材に、政治や社会の動向を論じます。
評論集『夢見られた近代』は、その一例にすぎません。
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では、なぜそうするのか?
これについては、『夢見られた近代』収録の論考「幻想政治学とは」をご覧いただくのが一番良いものの、思い切って要約すると以下のようになります。
「現実は芸術を模倣する」という格言にならって言えば、今や現実はしばしばポップカルチャーを模倣するかのごとき様相を呈するのです!
たとえば。
6月23日にイギリスで行われた、EU離脱の是非を問う国民投票ですが、離脱派の中には、この日のことを「インデペンデンス・デイ」と呼ぶ人々がいました。
「インデペンデンス・デイ」は、直訳すれば「独立記念日」。
ただし1996年に公開され、世界的な大ヒットとなったハリウッドのSF映画の題名でもあります。
ある年の7月2日、エイリアンの巨大円盤軍団が地球に来襲!
人類は滅亡寸前まで追い込まれるが、三日後の7月4日、アメリカ大統領の指揮のもと一丸となって決起、エイリアンを撃退する・・・という内容の作品。
7月4日はアメリカの独立記念日ですから、それにちなんで、『インデペンデンス・デイ』と題されているわけです。
ドナルド・トランプと妙に容貌の似通った人物まで登場するものの、これは別の話でしょうね。
とまれEU離脱派の人々は、この映画にちなんで、国民投票日を「インデペンデンス・デイ」と呼んだ形跡が濃厚。
というのも『インデペンデンス・デイ』、今年になって続編が発表されたのです。
題して『インデペンデンス・デイ リサージェンス(復活)』。
おまけに『リサージェンス』のイギリス公開日は、国民投票の翌日にあたる6月24日!
ほとんど出来過ぎではないでしょうか。
イギリスの「エコノミスト」紙など、同作品の映画評を6月23日に掲載したのですが、冒頭にはこんな断り書きがついていました。
いわく。
この批評は、『インデペンデンス・デイ リサージェンス』が6月24日に公開されることに合わせたものである。劇中には、ロンドンがこっぱみじんに吹き飛ばされる場面が含まれる。
この批評の掲載日は、偶然ながらEU離脱をめぐる国民投票と重なった。離脱派の中には、くだんの投票を「インデペンデンス・デイ」と呼ぶ者が少なからず見られる。
批評の内容は、EU離脱の是非とは無関係だ。しかし、上記の符合に気づいた諸君のために一言。エコノミストは、断固として残留支持である!
http://www.economist.com/node/21701090?fsrc=scn/tw/te/bl/ed/newfilmindependencedayresurgence
無関係などと言っていますが、「ロンドンがこっぱみじんに吹き飛ばされる」のくだりが、EU離脱をめぐるイギリス国内の対立、および離脱がもたらす衝撃の比喩となっているのは明らかでしょう。
のみならず。
イギリス独立党のナイジェル・ファラージ党首は、国民投票で離脱実現が確実と報じられたときに、こんな趣旨のスピーチを行いました。
これは本物の人々の勝利だ!
普通の人々の勝利だ!
まっとうな人々の勝利だ!
われわれは多国籍企業と戦った!
営利第一の巨大銀行とも戦った!
大政党とも戦った!
嘘、腐敗、不正とも戦った!
そして今日、
誠実で実直な愛国心が勝利を収めようとしている!
これはイギリスだけの勝利ではない!
ヨーロッパ全体の勝利なのだ!
6月23日を
われらのインデペンデンス・デイとして
歴史に刻もうではないか!!
http://www.bbc.com/news/uk-politics-eu-referendum-36613295
しかるに『インデペンデンス・デイ』でも、いよいよ反撃開始というとき、アメリカ大統領がこんな趣旨のスピーチをするのですよ。
今日が7月4日というのは、運命的なことかもしれない。
かつて独立を勝ち取ったときと同じように、
諸君は今一度、自由のために戦うのだ!
独裁や抑圧、迫害を逃れるためではなく、
滅亡を逃れるために!
われわれが勝てば、
7月4日はアメリカだけの記念日ではなくなる!
全世界が声を一つにして、こう宣言した日になるのだ!
おとなしく闇夜の中に消えたりはしないぞ!
戦わずに滅亡を受け入れたりするものか!
われわれは生き残る!
人類は存続する!
今日、われわれはインデペンデンス・デイを祝うのだ!!
動画で比較していただくとよく分かるのですが、ファラージ党首のスピーチ、話し方まで劇中の大統領を思わせるものでした。
ただし問題は、
〈人類がアメリカ大統領の指揮のもと、一丸となってエイリアンと戦う〉
という『インデペンデンス・デイ』の内容が、グローバリズムの性格も顕著に持っていること。
時差の存在を無視して、7月4日の夜明けが全世界で同時に(=アメリカに合わせて)来てしまうくらいです。
本当はアメリカの中でも、東海岸と西海岸では三時間ほど時差があるのですが、この点は脇に置きましょう。
片やイギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドで構成される連合王国。
つまりイギリスのナショナリズムも、それ自体、グローバリズム的な要素と無縁ではないのです。
EU離脱が決まったあと、同国の統合が揺らいでいるのは、必然のなりゆきと評さねばなりません。
いわばそれは、『インデペンデンス・デイ』の内容にナショナリズムだけを見て、国民投票の別称としたことのツケなのです。
ちなみにナイジェル・ファラージ、EU離脱決定後にイギリス独立党の党首を辞任すると表明しましたが、くだんの表明がなされたのは、なんと7月4日でした。
だとしても。
今なおグローバリズム礼賛の傾向が強いわが国では、そのうち『デペンデンス・デイ』(従属記念日)なんて映画がつくられるかもしれません。
どんな内容かと言うと・・・
ある年の8月13日、エイリアンの巨大円盤軍団が地球に来襲!
アメリカをはじめとする各国は、8月14日に反撃を試みるものの、みごとに失敗してしまう。
ただし日本は、「エイリアンへの武力行使は、憲法上どのような位置付けになるのか」とか、「平和主義国家として、まず話し合ってみるべきではないか」といった議論が政府内部で出たため、この日の反撃に参加しなかった。
8月14日深夜、ようやく翌日に反撃を敢行することが閣議決定されるが、そのときエイリアン側から特使がやってくる。
特使は首相にたいし、自分たちが「コスモ・グローバリズム」の精神を広めようとしていること、今までの武力衝突は「誤解によって生じた不幸な事故」であり、人類がコスモ・グローバリズムを受け入れ、主権を放棄しさえすれば何も問題はないことを、弁舌さわやかに説いた。
で、8月15日の夜明け。
反撃部隊を前に、首相がこうスピーチする。
私たちは間違っていました!
コスモ・グローバリズムへの参加は歴史の必然であります!
戦わずに主権を放棄する、
これこそ戦後日本の繁栄を築いたものではありませんか!
私たちがエイリアンと和解すれば、
8月15日は日本だけの記念日ではなくなります!
全世界が声を一つにして、こう宣言した日になるのです!
平和を愛するエイリアンの公正と信義に信頼しよう!
静かな誇りを抱きつつ、従属の道を歩むのだ!
私たちは生き残ります!
人類は存続します!
今日、私たちはデペンデンス・デイを祝うのです!!
これを聞いた反撃部隊のメンバーは、
「その通りだ! 繰り返しません、誤ちは!」
「戦うべきではなく、愛し合うべきなんだ!」
などと口々に叫び、武器を捨てさる。
そして日本はエイリアンと、TPP(TRANS PLANETARY PARTNERSHIP、惑星間経済連携協定)を締結するのでありました。
この映画の現実版はこちらをどうぞ。
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なお続編は、『デペンデンス・デイ レファレンダム(国民投票)』となる予定です。
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)7月16日(土)の20:00〜23:00、日本文化チャンネル桜の「闘論! 倒論! 討論!」に出演します。
テーマ:参議院選挙の結果とこれからの日本(仮)
http://www.ch-sakura.jp/
2)8月20日(土)、「表現者シンポジウム」の第一部に登壇します。
・時間 19:00〜21:30(18:30開場)
(※)これはシンポジウム全体の時間です。
・場所 四谷区民ホール
・会費 2000円
参加ご希望の方は、郵送ないしファックスで下記宛にお申し込み下さい。
西部邁事務所
〒157−0072 東京都世田谷区祖師谷3−17−22−303
03−5490−7576
お申し込みの際は、お名前、ご住所、電話番号、参加人数を記入していただきたいとのことです。
3)「インデペンデンス・デイ」が「デペンデンス・デイ」に逆転する! このパラドックスの構造についてはこちらを。
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4)「デペンデンス・デイ」から始まった日本の戦後史についてはこちらを。
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5)おかげさまで、7月14日のフランス革命227周年を前に増刷となりました!
これで5刷となります。ありがとうございます!
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6)アメリカのインデペンデンス・デイが、いかなる激烈なアジテーションのもとで始まったかはこちらを。トマス・ペインの舌鋒に比べれば、ドナルド・トランプもおとなしく思えてきます。
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7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966
ーーー発行者よりーーー
日本が途上国支援を続けられる訳
消費増税、高齢化、千兆円の政府債務
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