From 佐藤健志
『右の売国、左の亡国 2020年、日本は世界の中心で消滅する』
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さて。
「現在の日本では、保守と左翼・リベラルの双方が、表面的にこそ対立しているようでいながら
実際には手を取り合って〈日本否定の翼賛体制〉をつくりあげつつある」
というのが
『右の売国、左の亡国』の大きなテーマ。
これを裏付けるように、左右の奇妙な融合ぶりはますます際立ってきています。
まず先週の記事で紹介した稲田防相のWW(ワンダーウーマン/訳分からない)答弁について、
こんなツイートを見かけました。
いわく。
南スーダンPKO日報に「戦闘」と記してあるが、
稲田氏は「憲法9条があるので戦闘行為ではなく衝突だった」と呆れる答弁。
今朝(注:2月15日)の朝日はそれを擁護する記事が。
「苦しい答弁の背景には憲法9条下で自衛隊の海外活動を広げることのむつかしさがある」と。
いつから朝日は安倍政権弁護新聞になったのだ。
プロフィールによればツイート主は、大学を定年退職した生命倫理、ホロコースト研究者とのことです。
私は当該の記事を直接見ていませんが、ツイートの内容が正確だとすれば
これは朝日が安倍政権弁護新聞になったのではなく、
安倍政権が朝日新聞弁護内閣になったと解すべきでしょう。
なにせ防相のWW答弁は、
〈平和憲法が守られてさえいれば、現実認識はどんなにお花畑でもいい〉
と構える点において、護憲派の左翼・リベラルの発想と瓜二つなのです。
朝日が共鳴するのも当たり前ではありませんか。
考えてもみて下さい。
〈現憲法なんかどうだっていい!〉
と、本当に思っていたら、
あんなしょうもない答弁をするはずがないのです。
d(^_^)\(^O^)/稲田さん、あなた本当は護憲派でしょ\(^O^)/(^_^)b
逆に朝日新聞にしたって
「憲法9条は金科玉条なのだから、PKOなど即、中止だ! 南スーダンの人々がどうなろうと知ったことか!」
とは、さすがに書けるはずがない。
日本国憲法の前文には
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない(ことを信ずる)」
と明記されているのです。
となれば
「苦しい答弁の背景には憲法9条下で自衛隊の海外活動を広げることのむつかしさがある」
と言うしかないじゃないですか。
してみると、これに腹を立てている「生命倫理・ホロコースト研究者」さんは安倍政権を嫌う一方、
憲法前文についても、日本(人)を余計な危険にさらすものとして否定したがっているのでしょう。
安倍政権が喜ぶと思いますよ!
9条を変える度胸があるかどうかはともかく、とりあえず改憲推進を謳っていますから。
d(^_^)\(^O^)/研究者さん、あなた本当は改憲派でしょ\(^O^)/(^_^)b
だ・か・ら
『右の売国、左の亡国』と言うのですが、
さらに面白い事例があります。
2月11日に東京新聞が配信した記事「この国のかたち 3人の論者に聞く」に出ていた
社会学者・上野千鶴子さんの発言。
上野さん、日本の人口は今後増えないと前提したうえで、こう述べました。
いわく。
日本はこの先どうするのか。
移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、
難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、このままゆっくり衰退していくのか。
どちらかを選ぶ分岐点に立たされています。
移民政策について言うと、私は客観的に無理、主観的にはやめた方がいいと思っています。
客観的には、日本は労働開国にかじを切ろうとしたさなかに世界的な排外主義の波にぶつかってしまった。
大量の移民の受け入れなど不可能です。
主観的な観測としては、移民は日本にとってツケが大き過ぎる。
トランプ米大統領は「アメリカ・ファースト」と言いましたが、日本は「ニッポン・オンリー」の国。
単一民族神話が信じられてきた。
日本人は多文化共生に耐えられないでしょう。
だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。
平和に衰退していく社会のモデルになればいい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/hiroba/CK2017021102000006.html
「移民を入れないかぎり繁栄が維持できない」ことを
自明であるかのように見なしている点に関して言えば、
上野さんの議論に説得力はありません。
生産年齢人口が減少しようが、その影響を上回る生産性向上が達成されるかぎり
経済は拡大しうるからです。
また社会が衰退するとは、国民の貧困化が進むことを意味する。
そんな状態のもとでも、平和や治安が維持できるというのは本当か?!
安全保障やインフラ整備だって、できなくなってゆくのですぞ。
中国が経済と軍事の両方で、成長・拡大を続けたらどうするのか。
ひたすらアメリカにすがって国の存立を確保する?
その場合、同国への従属が深まるのは目に見えています。
はたせるかな、三橋貴明さんは2月14日のブログで上野さんの発言を取り上げ、
「『犯罪的』と断言したくなるほどに罪深い」
「よくもまあ、この手のことを平気で口に出せるものです。恥知らず」
と厳しく批判しました。
日本は「平和に衰退していく社会のモデル」になればいいという上野さんの結論は
要するに緩やかな亡国の肯定ですから、三橋さんの批判はもっとも。
し・か・し。
移民受け入れに関する上野さんの主張はどうか。
論点を整理すれば、以下のようになるのですぞ。
1)移民を受け入れると、社会的不公正・抑圧・治安悪化がひどくなる。
2)世界的に移民受け入れを制限しようとする風潮が高まっているときに、日本が移民をどんどん増やすなど無理。
3)文化的な単一性の高い日本のような国は、移民の流入がもたらす影響に耐えられない。
すなわち移民受け入れは、日本の伝統や社会的基盤を破壊する。
上野さんと言えば「左翼・リベラル」のイメージが強いものの、
これは真正なる保守主義の発想に基づいた堂々たる正論です。
裏を返せば、
移民政策をそうと正しく見抜かれないよう・・・
もとへ、誤解されないよう配慮しつつ推進している現政権は
グローバリズムの名のもと、
〈社会的不公正・抑圧・治安悪化をひどくするうえ、日本の伝統や社会的基盤まで破壊する売国的政策〉に
血道を上げていることになる。
まさに「右の売国」ですが、
厄介なのはこの点をみごとに誤解・・・
もとへ、正しく見抜いた上野さんの結論が
緩やかな亡国の肯定になってしまうこと。
さしずめ、売国と亡国のサンバ。
だから、『右の売国、左の亡国』だと言うのです。
何らかの形で「日本否定」に走ってしまうことにかけて、保守と左翼・リベラルの間に、今や違いはないのですよ!
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)「戦後レジーム脱却」が、〈日本否定の翼賛体制〉をつくりあげてしまうメカニズムの体系的分析です。
『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)
2)改憲派がWW答弁をするまでに憲法9条を重んじ、護憲派はそれに腹を立てつつ憲法前文を否定する。「右か左か」を問うことに、何の意味があるのでしょうか?
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)
3)戦前と戦後の違いは「日本を肯定する翼賛」と「日本を否定する翼賛」の違いでしかないのかも知れません。国の将来が気になる者すべてにとり、戦後史の全面的な見直しは急務です。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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4)「真の自由は英知と正義を伴うだけでなく、繁栄へと導いてくれるはずのものなのである」(161ページ)
エドマンド・バークの言葉です。衰退と貧困化のもとでは、自由も英知も正義もなくなるとわきまえるべし!
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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5)「もっともな言い分と、メチャクチャなタワゴトとが、十分な考えもなしに混ざり合っているのだ」(240ページ)
はて、トマス・ペインが上野千鶴子さんの発言を読んだはずはないのですが・・・
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
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