政治

2016年3月1日

【藤井聡】消費税8%増税の「検証」会合を ~「不誠実」な発言を許さないために~

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授 

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2016年2月4日、日本はTPPに署名した。

まだ国会での批准手続きが残ってはいるものの、これによって日本はグローバル投資家の狩場となることがほぼ決定してしまった。「月刊三橋」では、以前からTPPに潜む数多くの問題点を指摘してきたが、いまだにTPPの恐ろしさを理解していない(できない/しようとしない)人たちも多い。

伊藤元重氏をはじめ、多くの人はTPPの内容を知らずに議論している。自動車の関税が撤廃されて、日本の自動車メーカーの輸出が増えるだろうと期待する声もあったが、蓋を開けてみれば、アメリカはSUV車の関税を29年間維持するなど、日本が期待する経済効果はほとんど見込めない内容になっている。

TPPはアメリカの巨大グローバル企業に日本という市場を差し出すための条約だったことが明らかになったのだが、そのことには目を瞑り、「これでアメリカとの安全保障が強化された」などと意味不明な理解でTPP賛成を叫ぶ寝ぼけた人たちに、三橋貴明が目覚めの鉄槌を振り下ろす。

『月刊三橋』最新号
「TPP大検証〜日本を貧困化させる新たなる不平等条約なのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
※このテーマを聞くには3/10までにお申込みください

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現在の法律では、来年四月には、「消費税10%増税」が予定されています。

ですが、この「予定」は、何があっても絶対に変わらない、というものでは断じてありません。

総理が何度もこれまで発言してこられたように「リーマンショック級」「東日本大震災級」の事態となれば、増税は当然凍結せざるを得なくなりますし、
http://www.sankei.com/premium/news/160110/prm1601100031-n1.html

「リーマン」が何かはかどうかはさておいても、「世界経済の大幅な収縮」があるだけでも、差し控えるべきものであることは、論を待ちません。
http://www.sankei.com/politics/news/160224/plt1602240030-n1.html

あるいは、菅官房長官が発言しておられるように、「増税で税収減なら見送り」する可能性も十二分に考えられます。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6192656

いずれにしても、消費税増税は日本経済に、「凄まじいディープインパクト」をもたらすことは火を見るよりも明らか(としか当方には思えないという状況)なのですから、10%増税にあたっては、様々な検討が求められていることは必須です。

そうした検討は、「凍結するか否かの判断」のみならず、断行するにしても、「そのための対策として何が必要か」を理解するためにも、必要となるでしょう。

では、10%増税を果たしたときにどうなるのか、を検討するにあたって、最も効果的なアプローチは何かと言えば……

「一昨年に8%に増税したことで、一体何が起こったのかを検証すること」

に他なりません!

ついては、10%増税の予定年月日をおおよそ一年後に控えた今日、我々は、あの8%増税の時に何が起こったのかを、可能な限り客観的な視点から検証することが求められているのです。

消費税増税以後、消費は縮小し、所得も減少し、鉱工業生産指標も悪化し、物価は伸び悩み、GDPの成長率はマイナスに凋落しています。

これらはいずれも「増税後」に生じたことですが、この「変化」が「消費税増税によってもたらされたのか、それとも、それ以外の要因で引き起こされたのか」を、可能な限り公正中立な立場から検証することが求められています。

その検証は、「増税を正当化したい」という意図や「全てを増税のせいにしてやりたい」という意図を持った人物や組織には決して委ねられません。

そういう意図を排除した、客観的視点から判断可能な人物、組織に検証させることが必要です。

では、この検証を行うに当たって何よりも大切なのは、

「そういう客観的で公正な検証が可能な人物や組織とは誰か?」

という点です。

通常、こういう人物を選定する事は必ずしも容易ではないのですが、今回に限っては、大変素晴らしい、選定基準があります!

その基準とは、

「消費税8%の増税『以前』の時点で、
どういう影響がもたらされるかを述べていた『予想』と、
増税後、2年が経過した『現状』との乖離が
どれだけあるのか?」

という基準です!!

この乖離が大きい人物、組織は、

「増税インパクトを過大評価/過小評価したいという『意図』を持っていたか、
 あるいは、増税インパクトを正確に予測する『能力』が無かったか、
 あるいはその両方に当てはまる」

ということになります。

ですから、彼らに、10%増税のインパクトについて論ずる資格などあるはずは有りません(というか、そんな「資格はない!」と言われても、何人たりとも否定できないですよね)

一方で、8%増税前に言っていた予測内容と現状との乖離が少ない人々は、少なくとも、乖離が「大きかった」人々よりは、圧倒的に「10%増税の影響についての言説」に耳を傾けるべき人々であることは間違い無い、と言えるでしょう。

したがって、10%増税にまつわる政府の取り組みを考えるにあたっては、こうした「見通しと現状との乖離が少ない人々」の声を、重視すべきであることは論を間違いありません。

・・・

そして、かの点検会合では、どうやら7割の有識者が、極めて楽観的な見通しを語っていたのが実情です。

※ 『消費増税の集中点検会合、有識者の7割が増税賛成〜誰が賛成?(参加者の賛否一覧)【争点:アベノミクス】』ロイター 2013.9.2
http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/01/consumption_tax_n_3853649.html

ついては、筆者は、10%増税問題を考えるにあたって、以下のプロセスで検討を進めることが、可能な限り公正で客観的な情報を把握するに当たって重要なのではないかと考えます。

(1)まず、かの点検会合の「議事録」を精査して、まずは、誰が信頼に足るエコノミスト、経済学者なのかを検討する(あるいは、エコノミスト、経済学者を、当時の議事録と現状の客観的な経済状況とを比較することで「格付け」する)。

(2)そうして選定された比較的公正な有識者達を集めて「8%増税」の影響を評価させる(あるいは、当時の有識者全員を集めて「8%増税の影響」を評価させると同時に、彼らの「格付け値」を参考にしながら「重み付き平均」の考え方で、理性的な評価を行う)

(3)そうして得られた「8%増税の影響についての評価結果」に基づいて「10%増税の影響」を想定する。

こうしてできるだけ客観的なアプローチに基づいて、

「10%増税の影響」

を公正中立な視点から評価すべきであると、筆者は考えます。

イメージや政治力などではなく、

「本当に公正中立で、客観的で理性的な判断」

に基づいて、日本の10%増税にまつわる評価がくだされることを、心から祈念いたします。

なお、上記評価を通して、「低く格付けられた有識者」に対しては、本来なら何らかのペナルティが下されなければ……当方は、この世に「神も仏もあるものか……」とおもってしまいます。それほどに、有識者のウソや欺瞞は、絶対に許してはならないものと、憤怒をもって、当方は認識致します。

ちなみに最後に当方の個人的な見解を申し上げるなら……消費税8%増税について楽観的な見通しを語っていた「7割」の有識者達は、「ウソつき」と言われても仕方ないのではないかと….思います……が、その判断を下すためにも、上記の様な可能な限り公正中立、客観的な評価プロセスを踏む必要があると思います。

そうしたプロセスを経ることを通して、誰が「ウソつき」で誰が「正直者」であるのかが明らかにできる可能性がグンと高まるものと考えます。

PS この「消費税増税問題」をマジメに考えるにあたって、下記書籍は、本当に有用であると考えます。なぜなら、マジメに考えるには思考停止は絶対排除すべきで有る一方、下記書籍は、包括的な視点から彼らを「排除」する方途が示されているからです。是非、ご一読を。
http://www.amazon.co.jp/dp/4198640637

ーーー発行者よりーーー

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2016年2月4日、日本はTPPに署名した。

まだ国会での批准手続きが残ってはいるものの、これによって日本はグローバル投資家の狩場となることがほぼ決定してしまった。「月刊三橋」では、以前からTPPに潜む数多くの問題点を指摘してきたが、いまだにTPPの恐ろしさを理解していない(できない/しようとしない)人たちも多い。

伊藤元重氏をはじめ、多くの人はTPPの内容を知らずに議論している。自動車の関税が撤廃されて、日本の自動車メーカーの輸出が増えるだろうと期待する声もあったが、蓋を開けてみれば、アメリカはSUV車の関税を29年間維持するなど、日本が期待する経済効果はほとんど見込めない内容になっている。

TPPはアメリカの巨大グローバル企業に日本という市場を差し出すための条約だったことが明らかになったのだが、そのことには目を瞑り、「これでアメリカとの安全保障が強化された」などと意味不明な理解でTPP賛成を叫ぶ寝ぼけた人たちに、三橋貴明が目覚めの鉄槌を振り下ろす。

『月刊三橋』最新号
「TPP大検証〜日本を貧困化させる新たなる不平等条約なのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
※このテーマを聞くには3/10までにお申込みください

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  1. ひろ より

    安倍政権初期の、財政支出がそこそこ多くて、それなりにいい感じだったときでさえ、8%への増税で、やられてしまいました。 では、もし、震災直後に消費増税なんかしてたらどうなっていたことでしょう?そんなことを提言していた悪魔のような連中のリストです。「消費税は生産意欲を減退させにくく,経済成長に与える影響が軽微である.消費増税は消費減退で景気後退を招くとの批判は強いが,復興投資の拡大が予想されるうえ,税率引き上げ後の消費全体も短期にとどまる.耐久財を中心とした駆け込み需要も期待できる.」www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm 共同提言者(2011年6月15日10:00現在)(敬称略)・伊藤 隆敏 (東京大学)   ・伊藤 元重 (東京大学)・浦田 秀次郎 (早稲田大学) ・大竹 文雄 (大阪大学) ・齊藤 誠 (一橋大学)    ・塩路 悦朗 (一橋大学)・土居 丈朗 (慶応義塾大学) ・樋口 美雄 (慶応義塾大学)・深尾 光洋 (慶応義塾大学) ・八代 尚宏 (国際基督教大学)・吉川 洋 (東京大学)

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  2. 拓三 より

    *観覧注意…….恐怖映像体験談。先日、P.Cで色々と検索していた時の事です。ふと、ある映像が私の目に留まったのです。その映像に映し出されていたのは白と黒が混じり合った白髪頭に眼鏡を賭けた年の頃で70歳位で少しバカボンのパパに似た老人が独り言のように何かを語っていたのです。名前は確か…..ウジ田信男…定かではありません。何を語っているのか気になり耳を傾けると、どうやら日本経済を語っていた事が分かり、よく内容を聞いてみるとリフレ派の金融政策批判をされていました。その老人は笑いを殺すかのように薄ら笑いを浮かべ楽しそうに語っていたのですが、少し不気味さも感じ背筋に冷たいものを感じたその時、その老人の口からこの世とは思えない、それはそれは恐ろしい言葉が発せられたのです。    『消費増税の影響はない』…….怖っ                     完

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  3. たかゆき より

    責任の所在政府と与党自民党でしょう。無能 嘘つき 御用学者の意見を採用した安倍総理がまず責任を取るべきです。総理の口癖「私が総理大臣なんです」「私が責任者なんですから」せめて 僕をうならせるぐらいの責任のとりかた とやらをお示しいただきたい と期待しているのだ ♪

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