コラム

2016年3月2日

【佐藤健志】戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する

From 佐藤健志

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2016年2月4日、日本はTPPに署名した。

まだ国会での批准手続きが残ってはいるものの、これによって日本はグローバル投資家の狩場となることがほぼ決定してしまった。「月刊三橋」では、以前からTPPに潜む数多くの問題点を指摘してきたが、いまだにTPPの恐ろしさを理解していない(できない/しようとしない)人たちも多い。

伊藤元重氏をはじめ、多くの人はTPPの内容を知らずに議論している。自動車の関税が撤廃されて、日本の自動車メーカーの輸出が増えるだろうと期待する声もあったが、蓋を開けてみれば、アメリカはSUV車の関税を29年間維持するなど、日本が期待する経済効果はほとんど見込めない内容になっている。

TPPはアメリカの巨大グローバル企業に日本という市場を差し出すための条約だったことが明らかになったのだが、そのことには目を瞑り、「これでアメリカとの安全保障が強化された」などと意味不明な理解でTPP賛成を叫ぶ寝ぼけた人たちに、三橋貴明が目覚めの鉄槌を振り下ろす。

『月刊三橋』最新号
「TPP大検証〜日本を貧困化させる新たなる不平等条約なのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
※このテーマを聞くには3/10までにお申込みください

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私の新著『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』が、2月27日、徳間書店より発売されました!
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/

戦後(レジーム)脱却と言えば、2006年、はじめて政権の座についたとき、安倍総理が唱えたスローガン。
占領中はむろんのこと、1952年に独立を回復した後も、日本はアメリカに従属してきたわけですから、これは当然、「アメリカに追随することをやめて、真の自主独立を達成する」ことを意味するものと受け取られました。

「真の自主独立」の中身ですが、「独自の国家戦略のもと、安全保障や経世済民をめぐる政策を主体的に追求できること」と規定しておきましょう。
ここで言う「安全保障」には、国防のみならず、食料やエネルギーの安定供給確保、インフラ整備や災害対策、さらには言語を含めた自国文化の保護も含まれます。

第一次安倍内閣は短命に終わりましたが、2012年、民主党から政権を取り返す形で第二次安倍内閣が成立したときは、「これで戦後脱却が達成される! 日本が変わる!」と、躍り上がって喜んだ人が少なからずいたものです。
同内閣に反対する立場の人すら、「このままでは日本が戦前のようになってしまう」と危惧することが多かった。

しかるにわが国において、「戦前」は「戦後」の対立概念のように見なされている。
言い替えれば、
〈安倍内閣が「戦後脱却」を実現させる〉
こと自体については、同内閣への賛成・反対を問わず、コンセンサスが成立していたのです。

ところがどっこい。
ここ数年、安倍内閣が実践してきた政策を見ると、対米従属からの脱却どころか、むしろアメリカへの完全従属をめざしているのではないか? という感が強い。
戦後脱却どころか、「戦後の完成」に向けて邁進していると評しても過言ではありません。

自民党の法務部会長である丸山和也参院議員など、最近、同院の憲法審査会で、「日本がアメリカの51番目の州になるということについて、憲法上どのような問題があるのか、ないのか」と発言したくらいですからね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160217-00010000-logmi-pol

丸山議員の発言については、オバマ大統領を「奴隷の子孫」のごとく見なした箇所が、もっぱら問題になっていますが、こちらの箇所も負けず劣らず、あるいはそれ以上に問題だと思います。

対米従属からの脱却を(少なくとも主観的には)めざしつつ、実際には従属の徹底へと向かってしまうのはなぜなのか?
これが本の第一のテーマです。

第二のテーマは、やはりタイトルに出てくる「右傾化」。
本書ではこの言葉を、「ナショナリズムを強調する形の全体主義化」という意味で使いました。
全体主義は「社会規模において、特定の立場や主張が絶対化され、それに反対する者にたいしては抑圧や攻撃が加えられる状態」と定義しています。

保守主義は、いかなる立場や主張も絶対に正しいわけではない(人間の理性そのものに限界があるためです)というところから出発する理念ですから、右傾化と保守化が別物なのは明らかでしょう。

私の見るところ、現在の日本ではイデオロギーの左右によらず、自分たちの立場や主張を絶対化したあげく、対立する勢力については、威圧して攻撃すればいいとする風潮が強まっています。
つまりは右(いわゆる「保守派」)と、左(いわゆる「左翼・リベラル」)が、そろって全体主義的になってきているのです。
ただし内閣支持率を見ても分かるように、目下、優勢なのは右ですから、日本そのものの全体主義化が生じるとすれば、それは「右傾化」の形を取る可能性が強い。

とはいえ、ここで「あれ?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
そうです。
ナショナリズムとは国家を重視する立場を指す以上、それに基づく形で社会が全体主義的になるとすれば、アメリカへの完全従属、すなわち「属国化」など生じるはずがない。

むろん、その通り。
現在、わが国で生じている右傾化は、じつは右傾化としてすら本物ではありません。
だからこそ、「右傾化」とカギカッコに入れたのです。

カギカッコを形作っているものは何か?
ずばり申し上げましょう。
思考停止です。

この思考停止の背後には、いかなる経緯や構造があるのか?
どうすれば脱却できるのか?

上記二つのテーマについて、さまざまな角度から徹底的に論じました。
「震災ゴジラ!」「僕たちは戦後史を知らない」「国家のツジツマ」「愛国のパラドックス」といった、過去数年の著作で展開してきた考察の集大成であると同時に、新たな地平を切り拓く突破口になったと自負しています。

目次をご紹介しましょう。
第一章 「戦後脱却」は属国化の道
第二章 理不尽の陰にキッチュあり
第三章 思考停止と「戦後の始まり」
第四章 不条理国家の見取り図
終章  筋の通った未来のために

そして!
本日、3月2日(水)の8:00から、3月4日(金)の23:59まで、出版記念の期間限定キャンペーンが行われます。

Amazonで本書をご予約・ご購入のうえ、
http://www.maroon.dti.ne.jp/dakkyaku2016/
から申し込みをしていただいた方に、著者特典をプレゼントいたします!

申し込みには Amazon から送られる注文番号が必要ですが、キャンペーン開始前に Amazonでご予約・ご購入された方もご参加いただけます。

お問い合わせは、『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』キャンペーン事務局(tokuten@jasper.dti.ne.jp)までどうぞ。

今年は選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから、初めての国政選挙が行われる年。
夏の参院選のことですが、ダブル選挙になるのではという話も飛び交っています。
しかも戦後初めて、憲法改正が選挙の争点としてクローズアップされる可能性がある。

2016年は戦後日本のあり方が大きく変わるかも知れない年なのです!
賢明な選択をなすには、何が必要なのか?

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』
ぜひご一読を!

ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)「右傾化」と「保守化」が別物であるように、そもそも日本の保守派は、本当の意味における「保守」ではありません。詳細はこちらを。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)

2)右と左が、そろって全体主義的となるにいたった経緯については、この本も是非どうぞ。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
http://amzn.to/1lXtYQM

3)自主独立の追求が、完全従属に行き着きかねないパラドックスの背景を知るには、こちらがお勧めです。

『夢見られた近代』(NTT出版)
http://amzn.to/18IWkvl(紙版)
http://amzn.to/1JPMLrY(電子版)

4)「フランスはどうにもならない災難に陥っている。しかもその代償たるや、他国が最良の繁栄を獲得するために払った代償よりずっと高い!(中略)フランスは自国の美徳を卑しめるために、国益を放棄したのである」(71ページ)
他人事と笑えるかどうか、微妙なところではないでしょうか。

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)

5)この70年あまり、日本が従属してきたアメリカも、かつてはイギリスの植民地でした。同国がいかにして自主独立を達成したか、そのマニフェストがこれです。

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
http://amzn.to/1lXtL07(紙版)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)

6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

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まだ国会での批准手続きが残ってはいるものの、これによって日本はグローバル投資家の狩場となることがほぼ決定してしまった。「月刊三橋」では、以前からTPPに潜む数多くの問題点を指摘してきたが、いまだにTPPの恐ろしさを理解していない(できない/しようとしない)人たちも多い。

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