FROM 藤井聡@京都大学大学院教授
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「豊洲」市場移転の件、これまで当方、
空洞やがらんどうと報道されている「地下ピット」は、
「技術的」に見れば、より衛生的であると考えられる、
と申し上げてまいりました。
しかし、今となっては、豊洲が危ない!
と煽り続けたメディアも政治家も世論も
「振り上げたこぶし」のおろし方が
分からなくなってしまっており、
これからは「些末な事」がことさら大きく
騒ぎ立てられるだろう――と社会心理学や
物語分析に基づいて指摘して参りました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/09/21/fujii-215/
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/10/11/fujii-218/
いわば、これまで豊洲の件で騒ぎ立ててしまった人々が
「豊洲移転において何か大きな東京都の闇があって欲しい」
「豊洲が実際に汚染されていて欲しい」
という潜在的な願望を持っている、という愚か極まり無い事態が、
社会心理学に基づく冷静な分析から予期されるに至っているわけです。
そんな中、今、特に豊洲の件で大きく騒がれているのが、以下の「水銀騒動」。
「豊洲地下空洞の空気から指針7倍の水銀検出 健康に影響『直ちにはない』も…」
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161017/dms1610171150007-n1.htm
この結果を受け、メディア上では「それみたことか!」とばかりに、
激しく豊洲を非難する報道が続いています。
「今度は水銀検出 “毒まみれ”の豊洲市場は取り壊すしかない」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/191966
「大気から指針の7倍の水銀、豊洲専門家会議で怒号飛ぶ」
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2892703.html
また、インターネット上でも、
「豊洲移転はもう無理」「豊洲オワタw」
という趣旨の発言が散見されている様です。
では、ホントに「豊洲移転はもう無理」なのかどうかを、
「技術的」
な視点で考えてみましょう。
・・・
第一に、大気や土壌の中に水銀が含まれることは、きわめて一般的です。
それが「ある」ことそれ自身を騒ぎ立てることはナンセンスです。
https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/cess-kokosiri/cess-koko20.html
だから問題はその「濃度」なのですが、それについての「国の指針」は、
大気中の水銀は1立法メートル当たり「0.04ug」以下(ug = マイクログラム)。
今回はその7倍の、1立方メートルあたり0.28 ugが、
地下ピット内のいくつかの空気中で検出された、とのこと。
これが今回の「騒動」の原因なのですが、
そもそもこの「国の指針」というのが
どこから来ているのかといえば、(後ほど詳述しますが)
「その空気を、生涯吸い続ける」
ことで、健康被害が生じるリスクが無いとは言いきれない濃度を意味しています。
つまりそれは、私たちが四六時中呼吸している生活空間の「大気」の基準なのです。
したがって、今回取り沙汰されている「国の大気の指針」なるものは、
通常人が立ち入ることがない「地下空間内の空気」の質を云々するような指針とは全く別。
そもそもその地下空間内に住み続ける人なんてどこにもいないのですから、
今回の一件は「オワタ!」等と大騒ぎするような話しではないのです。
にも拘わらず、それを知らない
(そして、豊洲の汚染が真実であってほしいという
潜在的願望を根強く持っているであろう)記者やネット住人達が
騒ぎ立てている・・・というのが実態だという次第です。
・・・
とはいえ、食品を扱う市場の下の空気が汚染されているのは、
なんだか不安――と言う方もおられるかもしれません。
しかしその点についても、少なくとも今回の報道情報から判断する限り、
過剰に「不安」がる必要は全く無いと、筆者は考えます。
詳しくは、文末の【付録:水銀の環境指針について】に記載しますが、
そもそも、今回参照された「国の指針」である「0.04ug」という数字は、
どれだけ体重が軽い人でも、仮に懐妊していても母胎のみならず
胎児にすら影響がでることはほぼ「絶対」ないと言い切れる水準、です。
つまり日本の環境の指針は、「安全側すぎるほどに安全な指針」
ともいえるものなのであって、実際、ドイツでは、
健康に被害がでる水準として設定されているのが、
0.35ug(1立方メータあたり)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002kunp-att/2r9852000002kusc.pdf
という約9倍の水準ですし、WTOでは、
1ug(1立方メータあたり)
https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/cess-kokosiri/cess-koko20.html
という約25倍の水準となっています。
だから、今回の豊洲で報道されている水銀量は、
極めて厳しい「日本の指針」を「7倍」という形で上回る結果が示されましたが、
環境に厳しいドイツを含めた諸外国では基準値以下の「安全」と言われる水準なのです。
さらに言うならもう一度繰り返しますが、
あの地下空間に住み続ける人など居ないのですから、
この基準で考えことそれ自身がナンセンス。
日常的に摂取する「飲料水」とそうでない「排水」の基準では
10倍の開きがあるのですから、「地下室内の空気」も、
日常的に摂取する大気の基準を「10倍」の基準で
考える方が合理的ということもできるでしょう。
そう考えれば、日本の指針の「7倍」となった今回の地下室内の空気は、
日本の極めて厳しい(日常的に摂取しない空気として想定される)環境指針をも
「クリア」できるほどに「衛生的」な空気だということもできるでしょう。
以上の議論だけでも十分だと思われますが、
さらにだめ押しでもう一つ付け加えるなら、
この地下空間内の空気なぞ「換気」をすれば
、一気にその濃度が低下することは火を見るより明らかです。
実際、東京都の「専門家会議」の委員も十分知っていて、
平田健正座長も「換気」の必要性について言及している事を最後に申し添えておきましょう。
・・・
以上、いかがでしょうか?
第一に、今回取り沙汰されている基準は
「日常的に生涯」吸い続ける大気についての基準であり、
地下室内の空気に当てはめて騒ぎ立てるのはナンセンス極まりない話であり、
第二に、「換気」すれば一気に問題は解決するであろう問題であり、そして何より、
第三に、今回の地下室内位の空気を、「仮に、一生涯吸い続けた」としても、
「体重50kgの妊婦においてすら、母体のみならず胎児にも影響がでない」
と言われるほどに安全な水準のものだ、
というのが、客観的事実でなのです。
筆者は、これら三つの論点はどれ一つとっても、
それだけで「大騒ぎする必要性がない」ことを示す論拠であると思われますが、
今回はこの三つが「同時」に成立しているのですから、技術的に判断すれば、
騒ぎ立てる必要など「全く無い」状況なのではないかと考えられるのです。
・・・・
ただし・・・・
「一旦、何かのリスクが気になりだしたら、ちょっとした事で大騒ぎしてしまう」
という事態は、何も今回の豊洲の一件だけではありません。
そういう事がくり返されていることは、
「リスク心理学」という学問の中でよく知られた客観的事実です。
つまり、存在論的な不安にさいなまれている現代人は、
ちょっとしたきっかけがあれば過剰にリスクに怯え、
絶対に達成できない「ゼロリスク」を求めてしまう
―――というきわめて不条理で愚かな存在なのです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4641173877
残念ながら、今回の豊洲の件は、まさにそういう
人間の愚かさを証明する典型例となってしまっているやに思えます。
そんな愚かさを乗り越えるには、自らが如何に愚かな存在となり得るのかを知ること。
これから当方も是非、そんな「無知の知」(自らの愚かさの自覚)を忘れないようにしていきたいと思います。
追伸:「リスク心理学」にご関心の方は是非、こちらを。
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【【【【 水銀の環境指針について 】】】】
日本の食品安全委員会は、
人が一生涯とり続けることが出来る水銀の上限(暫定耐容一週摂取量)は、
メチル水銀について2ug/kg体重weekだと定めています
(ちなみに、この数値は、「妊婦の胎児への影響」を加味したものですので、
かなり「安全側」の数値となっています)。
http://jccu.coop/food-safety/qa/qa02_02.html
これはつまり、例えば体重50kgの人なら、
一週間当たり100ugまでは摂取しても健康被害はない、
という事を意味します。
一方、人間は一日平均14.4立法メートルの空気を呼吸することを考えると
(http://www.daikin.co.jp/naze/html/d_1.html)、
体重50kgの人なら、その人が仮に妊婦であっても、
1立法メートルあたり約1 ugの空気を一生涯吸い続けても、
健康被害はない、という事になります(100/(14.4_7)=0.99)。
そして、今回地下空間で検出された水銀濃度は、
「1立方メートルあたり0.28 ug」ですから、
仮にそれが全て「メチル水銀」であったとしても
(実はそうでない可能性の方が高いですが)、
「体重50kgの妊婦が、一生涯、この空気を吸い続けていても、
母体のみならず、胎児にも影響がでない」
ということになります。
もちろん、人はいろいろな食品から水銀を摂取するかもしれませんし、
より体重の軽い方もいますから、そうしたこともそれも踏まえて国の指針は、
「0.04ug」という極めて低い値に設定されているわけです。
ーーー発行者よりーーー
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【藤井聡】ゼロリスクを求める愚 〜豊洲「水銀」騒動に見るリスク心理学〜への7件のコメント
2016年10月19日 12:44 PM
エントリーの内容と関係ないのですが・・。 今の私は、道しるべを失っている感じです。 「思考停止をしない」という事は、そういう苦しさも自ずと生じるのかもしれませんが。 この世は、嘘だらけ、なのでしょう・・。 何が嘘であるか、私に判るのか?という心許なさ。 人の真の姿を見抜けるのか?という不安。 何が是で、何が否、なのだろうか。 思考停止しない不安定さと、自由すぎる事の不安は、どこか似ている。「人間としてこうあるべき」という「規範」があっての自由なのかもしれない、とも思ったりして、程よく「思考停止」できる安定が社会にあって欲しいと思ってしまう事があります。 思考停止しない、という事の意味を私が十分に悟り切れていないのかもしれません。 また少し角度の違う話しになってしまうかもしれませんが・・ 個人的なイメージですが、「考える」というのは「飛ぶ事」に似ていて、着地点を見つけて一旦着地しても、それが絶対の結論かどうかを疑い、また飛ぶ。それをずっと繰り返す。疲れる事でもありますし、「すっきりしない」状態が続く。だからそれを、辛く困難だと感じ「常識ある誰かに決めてもらいたい」と考える人々の気持ちも、判るのです。 今、足りないのは、日本人に合った「規範」の共有なのではないだろうか・・。 それが、不十分だから、権力志向の政治家のもっともらしい、力強い断言に振り回されてしまうのではないだろうか。 となると、やはり現状では自分の頭で考えざるをえない。 しかし世の中は、「知っている」という事を評価して下さいますが、「考える」という事には「女々しくて決断力が無い。弱い」とマイナスイメージを持たれがちな気がします。 ふと思うのは「断言系」の言葉に多くの人がひかれるのは、人を迷わせたり悩ませたりしない、スッキリする、だから「爽やか」という表現も使われるのかもしれない。こういうイメージは、「断言系」の蔓延に拍車をかけるのではないかと。 あまり「スッキリ」に慣れ過ぎてしまうと、考える事が億劫になったり、根気よく人の話をきいたり、文脈をたどって理解する力が衰えてしまわないかも気になります。 今の世の中は、喩えると「動」とか「陽」の価値が高くなっているような印象があります。「明るさ」「楽しさ」「勇ましさ」「決断力」「行動力」というような。(分類として正しいかどうか判りませんが・・)。 こういう事も、とても大切な要素であると思うのですが、「じっと考える事」「学ぶ事」「休んで力を蓄える事」「悲しむべき事をちゃんと悲しむ事」等々、どちらかというと「静」「陰」?に属すると思われるものだって、とても大切なのではないかと・・。どちらが正しいという事ではなく、どちらも大切で、「陰」を持たなければ「陽」にも本当の力はなく、表面的なものになってしまうのではないかな。 「陽」が無ければ「陰」も本当の意味で存在する事はできない。 静寂、日本的悲哀、亡きご先祖様や八百万の神々との交流など、目に見えないものを感じ、大切に思う気持ち。こういった事も「静」「陰」に含むのではないか等と、自分の感覚で勝手に分類しております・・何か変ですみません(苦笑)。「陰」の分野の事は、人の心を浄化する力があるような気がするのです。 古事記でも、太陽の神様と月の神様は姉弟神で、どちらの神様も必要で大切に思う事が「日本的」を構成する要素の一つではないかと思うのです。
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2016年10月20日 1:40 AM
割れた水銀体温計の、水銀球を、つついて遊んだ思い出があります(ノ∀`)アチャー小池さんは、割と良識的、常識的、冷静に、よくやられていると思います。それに比べ、松井恥事は最悪ですね(><#)ガッデム!!!
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2016年10月20日 8:51 PM
健全な感情という地盤の上にしか強固な理性は建てられない。学問を隠れ蓑にして、率いる人々を馬鹿にし蔑むことが、リーダーの在り方として間違っているのではないかという心の声が聞こえてくる気がする為に起こる不安。冷静で理性的で在るはずなのに、激しい感情に支配されている感覚を振払うことが出来ない為に起こる不安。水銀問題など、原因が究明され、原因物質を除去する事が出来れば何の問題も無いにも拘わらず、焦って先回りをして躍起になって打ち消し、早々と事実上の安全宣言をする。上に書いた事が正しいかどうかは分からない。
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2016年10月22日 4:35 AM
す.す.す.水銀…..私は水銀に対し嫌な思い出がありますがお下品なお話になるので控えさせていただきます、ただ一言!『若者よ!水銀にお世話にならない人生を!』解る人だけで結構です。(豊洲の水銀量は虫も殺せません)わたくしの恥部はさておき、最近気付いたことがあります。それは音楽に対しての興味が変化している事です。考えて見れば幼少の頃、詩に対し意味が解らず唯担に雰囲気で聞いていたと思います。それが思春期頃から詩に対し深く興味を持ち、詩を重視して聞いていたかと思うのです。しかしながらある程度の経験を積むにつれ気づけば、最近は詩に対し興味がなくどちらかと言うと曲であり、音を重視している事に気付いたのであります。これを解釈すると幼少時はさておき、思春期頃から知性の発達により様々な情報を得ようとします。情報を得るには言葉であり文章であります。つまり詩であります。しかしながら経験を積んでいくとその情報に対しての言葉、文章が正しいものもあれば、バッタモンも数多くある事にも気付くのであります。しかし音に関しては好みの選択肢だけであって、嘘もなければプロパガンダもありません。そこにあるのは音と言う『現実』があるだけであります。私の心が荒んだだけかもしれませんがこの世の中、真実を蔑ろにした言葉が多すぎる!日本語は職人言葉や!職人とは物が出来て初めて言葉になんねん。それは文法が表してるやろ!これは長い歴史が作った最大のメッセージや。言葉なんかどうでもええ!真実を見ろ!
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2016年10月22日 8:24 PM
先生、アプローチが後手です!というか前提が駄目ですよw近鉄大阪及び奈良線沿線出身の我が地元のエースですからしっかりましょうwしょうがないなあwまず、嘘を平気でついている連中はどうしようもありません。嘘を嘘だと見ぬけ無い人達をそこから切り離し、嘘つきをコミュニティから孤立、排除するのが先決でしょう。そもそも、その様に感情で物を考え理性を働かさない連中は圧倒的に経験が少ないのです。人生経験しかない連中はそうでしょう。これを小説の世界に住む小市民と言う訳でありますが自明な事でない限り、人は過去の経験において物事の善悪を判断します。それ以外何がありますか?赤信号で事故った人は以後気を付けるでしょう。故に賢者は歴史に学びます。それらの究極は憲法でしょう。成文憲法が有るから守るのではなく、経験=常識があり憲法典があるのです。それを体験させる方法は過去の経験に徹底的に目を向けさせるしかありません。その方法があらゆる正しくもちいられた場合の文化という手段であります。それを徹底的に実際にやられているのは堺市と竹山市長です。竹山市長も奇しくも人文系のご出身なのですね。そして、明らかに維新は意図的にこれをやらせない様にしていると私は見ますw相当な手練れがいますねw戦場の流儀を一般市民に押し付けるような事が平気でできる素人を殴るボクサーの様な悪質で許しがたいね。三橋さんは経済学は社会科学だから明確な実証は必要ないと言いますが、あくまで社会科学はソフト的な制度、自然科学は技術。憲法学も社会科学ではありますが実証的な結果は求められますね。では何に対してか?それは人文科学の導き出す人はどうある冪かと言う、社会科学、自然科学の目的に対してあります。この辺は常識ですね。もしご理解されていれば釈迦に説法w余計な事を申し上げましたと謹んでお詫びをさせて頂きます。では。
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2016年10月23日 10:46 AM
誤りに対して過酷な業罰を求める精神を持っているから自分達の誤りも訂正できない身から出た錆
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2016年10月23日 1:58 PM
慰安婦問題でもそうなのですが、メディアは絶対に訂正しないですよね。今回の場合で思うのは、事実というものに対して、あまりに軽視しすぎる姿勢と、また、誤ってしまった場合の訂正の仕方を知らないと思えます。そのため、誤って報道した場合の法律は絶対必要だと思います。実際に、物を作っている人間からすれば、(心ならずも?)不良品を売ってしまった場合に、何故すぐに回収しないのか、理解できない。
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