政治

2018年3月5日

【三橋貴明】議論の基本

From 三橋貴明

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新自由主義と安倍政権
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安倍総理大臣が、
3月1日の参院予算委員会で、
自民党の二之湯武史参院議員の
質問に答える形で、

「いわゆる新自由主義という
立場は取っていない。

強欲を原動力とせず、真の豊かさを知る
資本主義を目指していきたい」

と、自論を展開しました。

総理の発言を受け、

「いや、ちょっと待て。

安倍政権の経済政策(移民政策含む)は、
バリバリの新自由主義じゃないか。

嘘をつくな!」

と、批判するのでは、
ダメなのではないかと思うのです。

総理の発言を受け、むしろ

「総理の言う『新自由主義』とは、
いかなる政策を意味しているのか?」

と、具体論で議論する必要があります。

新自由主義を辞書で引くと、

「国家による福祉・公共サービスの縮小し、
小さな政府を目指す。

民営化、規制緩和、市場原理主義の
重視を特徴とする経済思想。」

となるわけで、この時点で
「安倍政権の過去五年間の経済政策」
そのままになってしまうわけですが、
「新自由主義」という「アイコン」で語ってしまうと、
あまりにも議論が抽象化し、

「いや、新自由主義だ」

「いや、違う」

と、不毛なやり取りになるだけで、
結局はグローバリズム的な政策が
推進され、国民が貧困化していく
だけの結果になります。

三橋は、総理の言う「いわゆる新自由主義」について、
より具体的に「グローバリズムのトリニティ(三位一体)」
と表現しています。

すなわち、緊縮財政、規制緩和(※民営化含む)、
自由貿易(ヒトの移動の自由含む)の三つの
政策パッケージです。

緊縮財政は、別に「常に悪」
というわけではありません。

日本のインフレ率が高く、
総需要が過大になっている状況
では(例:1974年頃)、政府の
緊縮策は正当化されます。

あるいは、国内の供給能力を
引き上げるために、規制緩和が
必要な分野もあるでしょう
(例:ドローンや自動運転に関する規制緩和など)。

言葉ではなく、より具体的な政策と、
国民に与える影響について、

「その政策は、デフレ(総需要不足)
に苦しむ日本に必要なのか。
具体的には、総需要を拡大する政策なのか」

「その政策によって、日本国の安全保障が
弱体化することはないのか」

つまりは

「デフレ対策なのか? インフレ対策なのか?」
「安全保障の強化なのか? 弱体化なのか?」

と、日本に必要なメトリクス(指標)に基づき、
あらゆる政策は評価されるべきなのです。

現実には与野党の国会議員を含む
政界、官界、そしてメディアは、
単なる「言葉」で批判の応酬を
繰り広げるばかりです。

これでは、我が国の経済問題が
解決することはないでしょう。

言葉を定義し、データや
事実ベースで具体論を話し合う。

これが本来の「議会」の
あるべき姿なのだと思います。

ところが、日本人はこの種の
議論に慣れていません。

結果的に、先日の裁量労働制の
議論の際の「データ捏造」が
起きてしまったように
思えてならないのでございます。

言葉を明確に定義する。

データという事実を大切に扱う。

この種の議論の「基本」すら
失われているのが現在の
我が国の政界であり、
暗澹たる思いが沸き起こるのを
抑えきれないのです。

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【三橋貴明】議論の基本への6件のコメント

  1. ぬこ より

    ミッツが、財務省と日銀の裏方の欧米裏勢力に潰されなかったのも、この事実と数字のみで評論してきたからなんですよね。

    下手な陰謀論に触れずにデータのみで勝負。
    国際社会、陰謀あって当然ですが、そっちはそっちの専門家に任せれば良い話。

    欧米支配層の情報に明るい人達。
    例えば、ベンジャミン、リチャードコシミズ、飛鳥昭男、竹内睦泰(むっちゃん)、中丸薫、池田整治、堤未果。

    こう言った人達とミッツの主張をバランスよく取り入れて、始めて日本が置かれた位置が分かるようになりましたよ。

    反韓反中だけのネトウヨ番組では到底真相が解らない。
    彼等から、ビルダバーグやCSISの話は聴いたことすらない。

    そして、陰謀論者レッテルを貼ってる方が、逆に陰謀論と言う言葉を生み出して真相から遠ざけてきた事実。

    小泉構造改革等で、外資系金融機関の、日本大企業や銀行の持ち株比率が増えた背景に陰謀が無いわけないですよね。
    麻生や進次郎による農協や水道事業民営化の背後のCSISとの関係。

    この辺を語れる人達が所謂保守派に皆無なのがおかしいですよね。

    日本を主語にと言ってる方々も妙にこの辺は逃げる傾向がありますよね。

    是非、こうした方々とも討論して欲しいです。
    TPPの時は堤さんと共演なさってたと思いますが。

    新しい日米関係を構築できるのは、トランプさんの時だけでは?
    言論規制されつつある欧米国民のグローバリズムに対する怒りを代弁できるのは、まだ比較的に言論の自由がある日本だけかと。

    YouTubeでも、ミッツが講演してる動画が英訳されて、アメリカ人が賛美の嵐でコメントしてますよ。
    じゅ~がサムライを恐れてるとかコメントありますよ。

    真正ユダヤのもののふ(物部)が立ち上がるのはいつなのか?、当の米国人の方が解ってるみたいです(笑)

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  2. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍をいつも熱く熱く応援しております。

    >言葉を明確に定義する。
    >
    >データという事実を大切に扱う。
    >
    >この種の議論の「基本」すら失われているのが現在の我が国の政界であり、暗澹たる思いが沸き起こるのを抑えきれないのです。

    「その場のコスト」という問題で、議論したい論点が高次の場合、基本的な用語の定義の相互確認がおざなりになるということは、ままありそうかなと思いました。

    学校教育は仕事のためとか、世界がグローバル化云々のため、とかいうより、より良い社会をお互い築ける素養のためだとすれば、カネの理解という意味で、簿記の基礎を中学生で学ぶのはどうでしょう。
    意外と実用的でもありますし、クニノシャッキンの不自然さも
    分かるかもしれません。

    もしもそうなれば、東大出の優秀なエリート官僚ならば、とうぜん簿記の基礎も理解していることでしょう。あと何年かかるか考えると、申し訳ないですが。。
    (国造りというのはそんなスパンかなと自己弁護)

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  3. momo より

    デフレしか経験のない者にとって、「インフレで困るから総需要減らそう」という状況が思いつかないのですが、具体的にどういうシチュエーションなんでしょう?

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      1. F-NAK より

        返信を投稿しようと思ったら、新規投稿をしてしまいました。。
        すみません。一つ下の私のコメントが質問に対する返信になります。。

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  4. F-NAK より

    日本全体では、ここ20年以上ありませんが、局所的な例でよいのであれば、近年でも割と発生しています。

    以前、テレビ番組で納豆ダイエットというものが紹介され、その後、スーパーから納豆が消える(買い占められる)ということがありました。

    ブームはすぐに収束したので、値段こそあがりませんでしたが、継続していれば納豆の値段は上がったでしょう。(インフレ)

    これに対し、政府が国民に「納豆を買うのを控えてください」と呼びかければ「(納豆に対する)総需要を減らす」ということになります。

    もし、それでも納豆の高騰が止まらなければ納豆税の導入ですね。

    逆に、そんなときに政府が「俺たちも財政出動して納豆を買うぞ。」なんてやったら、納豆の価格が跳ね上がります。

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  5. F-NAK より

    優秀なエンジニアたちが参加しているミーティングでは、
    「今の意見の”主語”は何?」とか「今の言葉の定義を教えて」などの質問はよく出ます。

    このようなミーティングに関するノウハウは、海外でも多くの書籍に書かれています。
    つまり、実は海外でも「健全な議論になっていないミーティング」は数多くあるようです。

    むしろ、開発現場では日本人エンジニアの方がはっきり物を言っている、というケースも多くありました。

    なのに、なぜ日本人は議論が苦手といった風潮があるのか?
    私は、原因のひとつに「文系・理系」という分け方があるのでは、と考えています。

    経済、経営、法律の専門家にも論理的思考は必要です。
    (逆に理系のエンジニアにも、経営などの知識や社会学的な視点は必要です。)
    今の日本の教育は「文系に論理的思考は不要」と言い切ってしまってるように見えます。

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