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2017年11月17日

【上島嘉郎】〈朝日新聞、死ね〉はただの暴言か

From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

学校法人「加計学園」に関する朝日新聞の社説(11月11日付)をめぐり、自身のツイッターで〈朝日新聞、死ね〉と投稿した日本維新の会の足立康史衆議院議員の言動が物議を醸しています。

文部科学省の審議会が加計学園の獣医学部の新設を認める答申を出したことに朝日が〈「総理のご意向」をめぐる疑いが晴れたことには、まったくならない〉と書き、それに足立氏が〈捏造報道をする朝日新聞を、日本社会が許容している中で最も厳しい言葉で非難した〉というわけです。足立氏は、言葉遣いに批判があっても撤回しないとしています。

足立氏はさらに15日の衆議院文部科学委員会で、希望の党の玉木雄一郎代表の関係団体が獣医学部新設に反対する日本獣医師会の関係団体から政治献金を受けていたことを問題視し、「献金をもらって仮に請託を受けて国会質問していれば犯罪者だ」と批判しました。
加計学園に関する朝日新聞の報道についても触れ、「捏造だ」と強調し、林芳正文科相に「捏造だと言ってください」と答弁を求める場面もありました。(林大臣は「特定の報道について断定することは控える」と同調は控えましたが。)

産経新聞によると、〈足立氏は委員会後、記者団に「朝日の捏造報道で拡大した風評が、意味のない(他の)野党の質疑につながっている。捏造報道の責任は大きい」と主張。民進党が国会で取り上げた「保育園落ちた日本死ね」の言葉を引き合いに「『死ね』が不適切なことは重々承知している。『日本死ね』を問題にしなかった国会やメディア、社会に対する異議申し立てだ」と述べ、撤回しない考えを示した〉(11月16日付朝刊)とのこと。
希望の党や立憲民主党は足立氏への懲罰動議の提出を検討しているようですが、さて、この先どうするのか。

「死ね」と言われた朝日新聞は、15日付の朝刊で〈政治家は言葉が命。「朝日新聞、死ね」と言論の元を断つような物言いは適切ではない〉というジャーナリストの青木理氏の見解とともに、同社広報部の〈現職国会議員がこうした暴力的な言葉で正当な報道・言論活動を封じようとしたことに強く抗議します〉というコメントを載せました。東京新聞も15日付朝刊で「維新・足立氏 議員資質は?」との記事を載せ、足立氏の言動を批判しましたが、まあ「相身互い」の記事ですね。

インターネット上では足立氏に対し「幼稚で短絡的」「品がない」などの声も上がっているようですが、足立氏は「確信犯」として発信しているわけで、「朝日新聞、死ね」という言葉遣いについては、〈不適切なことは重々承知〉しながら、「日本死ね」を問題にしなかった〈国会やメディア、社会に対する異議申し立て〉であること、玉木議員に対する「犯罪者」云々も「受託収賄罪」を念頭に〈献金をもらって仮に請託を受けて国会質問していれば〉と断っています。内容的には必ずしも「暴言」とは言えない。

ここで、そもそも論を。朝日新聞に「馬鹿は死ななきゃ直らない」と言ったとして、何か問題でしょうか。〈現職国会議員〉が〈暴力的な言葉で正当な報道・言論活動を封じようとした〉とは何を甘ったれたことを言っているのか。しかも〈正当な報道・言論活動〉とは、過去の自社の振る舞いをお忘れか、と言いたくなります。

政治家にもメディアを批判する権利はあります。その中身が事実に基づかず不当だと思えば大いに反論すればよい。日本のメディアはその自由を大いに謳歌しています。ただインターネットの普及があって、以前より読者・視聴者がメディアの恣意や偏向、捏造や報道しない自由(不都合な真実の隠蔽)の行使等に敏感、批判的になり、そのぶんメディアは不自由を託つようになったということでしょう。政治家の不快感の表明や誤認の指摘を圧力と受け止めるのは筋違いです。

加計学園の獣医学部新設に関する報道に、朝日新聞は一片の曇りもないか。たとえば前川喜平氏(前文科事務次官)と加戸守行氏(前愛媛県知事)の国会における証言をどう報じたか(または報じなかったか)。

「死ね」は言いすぎだというのなら、朝日新聞が日本国と日本国民に対し「万死に値する」虚偽報道を重ねてきた事実を挙げておかねばなりますまい。それは事の子細な経緯をみるかぎり、「日本悪しかれ」という意思によって意図的になされたとしか思えません。またか、という読者もいるでしょうが、いわゆる「従軍慰安婦強制連行」がその一つです。

「日本の軍・官憲によって朝鮮の若い女性が20万人も強制的に連行されて慰安婦にされた」という虚偽を世界に広げたのは、千田夏光、吉田清治という2人の「作家」と、彼らの著作や証言を積極的に取り上げ権威づけした朝日新聞であるという批判は、控えめにいっても国連のクマラスワミ報告やマクドガル報告、米下院の対日非難決議などにこれらが根拠として採用された経緯をたどれば、その因果関係は明らかで、何ら不当なものではありません。

朝日は、吉田証言については虚偽を認めざるを得なくなり、関連記事を取り消しましたが、それによって生じた日本国と日本国民の被害については、事実上頬かむりを続けています。父祖の名誉回復に努める報道に意を注ぐという姿勢も見られない。
冤罪の被害者が、それを仕立てた者に向かって「死ね」と言いたくなる気分は責められるものか。政治家がそれを口にするのは好ましくないというのは、「嘘だと追及する者を許さない」というマスメディアの不遜さ、特権意識ではないのか。

「新聞はウソを書く」と喝破したのは山本夏彦です。
〈日清日露の戦争のたびごとに新聞の部数は飛躍的にふえた。それまでは町で新聞をとっている人は選ばれた人で、新聞は家長が読んで聞かせた。わが家では昭和になっても子供が新聞を読むことを禁じた。禁じられていたから隅から隅まで読んだのである。
新聞はウソを書く、ウソでないまでも誇張して書く、好んで醜聞をあばく。大人は割引いて読むからいいが、子供は真にうけるからいけないと禁じたのである。永井荷風は自活しなければならなくなったとき新聞記者になろうか。いや私は事によったら盗賊になるかも知れない。しかし不幸にしてまだ私は正義と人道とを商品に取扱うほど悪徳に馴れていないと書いた。〉(「古新聞育ち」『最後の波の音』文春文庫)

「嘘吐きは泥棒の始まり」。そしてそれが高じれば、その罪過が「死」につながりかねないのは世の道理でしょう。ましてや正義と人道を商品にして悪徳をなすとすれば、です。

〈上島嘉郎からのお知らせ〉
●大東亜戦争は無謀な戦争だったのか。定説や既成概念とは異なる発想、視点から再考する
『優位戦思考に学ぶ─大東亜戦争「失敗の本質」』(PHP研究所)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569827268

●慰安婦問題、徴用工問題、日韓併合、竹島…日本人としてこれだけは知っておきたい
『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』(ワニブックスPLUS新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/484706092X

●拉致問題啓発演劇『めぐみへの誓い─奪還』の公演予定
http://www.rachi.go.jp/index.html
入場無料ですが事前申し込みが必要です。

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【上島嘉郎】〈朝日新聞、死ね〉はただの暴言かへの5件のコメント

  1. 卓也 より

    なんか擁護の仕方がめちゃくちゃだなあ
    あなた先日、政治家の「言葉の乱れ」についてなんて言ってましたっけ?
    皇室のあり方に関するような「重要な課題に対してきちんと向き合う政治の体制になってない」原因だといってたじゃないか
    それは右左関係なく、その都度厳しく批判されるべきで、
    それこそデフレを国民に強いる財務省や与党の政権運営に物申すでもなく、
    ただ「アンチサヨク的脊髄反射」で自称保守から褒めてもらうために、
    国会の場を利用するような商売は「重要な課題に対してきちんと向き合う政治の体制」からはほど遠いのではないですか。

    また新聞メディアが誤った報道をすることと、立法権を有する政治家が
    特定の団体に「死ね」ということになんの関係があるの??
    「どっちもどっち論」で煙に巻こうとしたってそうはいかない
    正直言って今回の件、ネット番組や付き合い上の立場から擁護しているようにしかみえない。保守を自称するならば、ときに右からの批判も恐れず間違ったことには間違っているというべきだ

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      1. 似非保守 より

        卓也さんの仰るとうりですね。

        この足立議員は自ら炎上商法を仕掛けているだけでしょう。

        >>また新聞メディアが誤った報道をすることと、立法権を有する政治家が
        特定の団体に「死ね」ということになんの関係があるの??
        「どっちもどっち論」で煙に巻こうとしたってそうはいかない<<

        これも仰るとうりですね。

        特定メディアや野党を叩けば、自分達の主張、立場を
        なんでも正当化出来る、と思い込んでいるから
        炎上商法に走るのでしょう。

        なんというか小泉構造改革路線とやり方がそっくりですね。
        郵政が悪い、農協が悪い、既得権者が悪いと炎上させて
        相手を叩く事で自分達を正当化しようとする手法。
        本来個別に考察すべきなのにね。

        これを意図的にやっている、あるいは乗せられている
        1bit脳の自称保守の連中は困ったものですね。

        ところで、慰安婦強制連行報道って産経もやって
        いたわけだけど、上島氏はそれについて
        ダンマリなのかな

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  2. 神奈川県skatou より

    上島先生のお話は人と議論するに核になる、とても大事な要点をお伝えいただいていると思い、家族にときどき紹介しております。

    さいきんふと、国会での議論がカケモリに終始する件について、また、報道と言われるものがその尻馬に乗っている件について、考えたのですが、別にそれがきわめて重大だと思ってるわけでなく、それしか会話ができない(見えない)のではないか。つまり、経世済民に不案内、不勉強につき、なにが問題で、なにが柱で、なにが枝葉末節か区別がつかない、言葉をもっていない、ということなのではないでしょうか。

    言葉がない、概念がない

    議員とは識者とは記者とは、(いや自分含むわれらを育てた教育とは)、そんなレベルなのでしょう。
    だからどれほどの学歴があっても、です。

    それを埋めるには、日々流されるのでなく、やはり読書なのかなと思い至り、隗よりということで、先生がご紹介の「大西郷遺訓」を味わいつつ、中野剛志先生の、温故知新かつ普遍性追求である、フリードリヒ・リストの本を日々読んでおります。

    リストがもっと評価されていれば、共産主義もなかったのかなと残念に思いつつ、それが偶然でなく必然ならば、やはり我々現代日本人が、どうにかしなければならないと思わずに居られませんです。

    でも、日本人とは何かというに実に危なく、空想上の概念かもしれませんが、それに近いものとして世に西郷隆盛を挙げることが多いのが、ようやく自分にもわかったような気がします。

    林房雄著「現代語訳 大西郷遺訓」、読んでいてふと気づいたことがあります。それは自分の思い込みです。

    近代合理主義のようなすべて説明できそうでとても不得手なところも多い、少なくとも人が人として生まれ育てられ学び、産み育て死んでいく道筋において不案内ではないか、という疑いがありました。
    実は合理主義云々ではなく、現代特有でもなく、もともと道筋が見えないのは古今で違いなく、学はそれを支えるものでなく傍記であるをわきまえ、敬天愛人、という境地なのかなと。

    そして「第十 始末に困る人」。
    ひとは誰しもありようを社会にembedさせるものであり、それゆえ属するべきもののことわりに従い、その形式にて自己形成をするもののはずです。が、いちど入水し一命を取り留めたを通じて己の存在が自由になり、自由ゆえの無定義、虚無に陥ることなく、時代がら洋の東西を問わず学を知りつつ国学にも助けられ、ただ日本を見つめることにより、どれにも依拠せず、ただひとつ、日本の西郷になった。
    それが無定義な彼の生い立ちの、社会的生存基盤だったのかもしれないと、空想いたしました。

    だとすれば庄内藩の話は至極当然ですし、官職から遠ざかる理由も自然でしょう。

    そして彼の学んだ姿勢に、今の我々の、あるいは自分の、救いがありそうだと思い至りました。ありがとうございました。

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  3. 拓三 より

    嘘つき同士の喧嘩を真面目に論じてどうすんのw

    そもそも維新て、財務省とマスコミの嘘話に乗っかって出来た政党やんw ただの内輪揉めw
    足立は野党やマスコミには喧嘩をうるけど財務省には決して喧嘩をうりませんなw

    それとな、「問題定義」て便利な言葉や。間違った言葉使っても後付けの論理付け加えたらでどうにでもなる。橋下が得意な戦法や。まっ、詐欺師が言い訳に良く使う手やけどw

    上島はん、何で維新が安倍を援護してるかよう考えてな。

    朝日や野党の悪口は誰でも言える!

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  4. あまき より

    山本夏彦が立派だったのは、文筆の世界に身を置きながら、新聞信ずるに足らずと本当のことを堂々と書き、しかしその死を願うようなことを書かなかったことだ。岩波に対してもそうで、潰れてしまえとは書かなかった。

    とかくこの世はダメとムダと書き、ダメの人と繰り返し自称した夏彦は、世が不完全であるがゆえにこの世を終の棲家と定める気になった人のようにも読者には思える。何度か自らの命を断とうと企て、失敗した過去をからりと明かして隠そうともせず、またその経験を以って何かを説く素振りすら見せなかったからだ。

    言いたいことを自由に書いているようでいて守るべき一線を守る美学に生きたという意味でも保守の人だ。先日、小堀桂一郎が桜の番組で大正民主主義批判を開陳して漱石を称賛していたが、親不孝と恩知らずに代表される大正民主主義は漱石からはじまっていると、その例を幾つも挙げていたのが山本夏彦で、夏彦は書くべきことを書いた人でもある。

    足立康史は、ふだん囲まれている方々が方々のせいか、もっと先に「死ね」と言うべき嘘つきがいることに気がつかないらしい。まずは大阪都構想推進にまつわる、維新の神をも畏れぬ数々の虚偽説明の事実に思いを致し、知的誠実性の持ち合わせがあるならば恥じるべきだろう。「比例復活当選は辞退する」と自ら律する姿勢を熱く語っていた点についても、公人として世間にけじめをつける必要がある。公人から離れて「朝日、死ね」とひとくさしする分には人格を問われこそすれ騒ぎになることはない。

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