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2024年2月21日

【藤井聡】祝・北陸新幹線完成! それは確かに「絶望」が蔓延する我が国日本に「希望」を与え得る希有な存在である。

この週末、来月16日に開業予定の「敦賀―金沢区間」の北陸新幹線を試乗して参りました。

今回の新幹線区間の開業は、一昨年2022年の西九州新幹線(いわゆる、長崎新幹線)の武雄温泉―長崎新幹線の開業に続くもので、それから一年余りでの新規開業となります。

今回繋がるのは、コチラの金沢と敦賀を結ぶ125キロの区間。

北陸新幹線は今、東京から(2015年に)金沢までやってきているのですが、この度それが、福井市を超えて、福井県南部の中心地、敦賀までやってくる、という次第です。

【北陸新幹線・敦賀開業の意味1:ついに東京と「近畿圏域」が北回り新幹線で接続】
福井と言えば例えば国交省では「近畿地方整備局」の管轄地となっていますし、「京福電車」という京都と福井の諸事業を担う鉄道会社もあるくらい、おおよそ近畿地方に位置すると言えますから、今回の開通で、北陸新幹線がいよいよ東京と近畿圏を繋ぐところまでできたという事になったわけです(ちなみに、民主党政権はそうした背景から、もう北陸新幹線は概成――おおよそできた――のだから、北陸新幹線を敦賀までで終わらせようとしていた程です)。

【北陸新幹線・敦賀開業の意味2:東京―福井間のアクセス性が飛躍的に短縮】
ちなみに現在、東京から福井に行こうとすると金沢まで新幹線で、そこからサンダーバードという特急に乗り換える必要があります。時間はおおよそ3時間40分~4時間10分もかかってしまう、というのが現状です。

ところが、今回の開業で、東京と福井が直通新幹線で結ばれることとなります。その結果、最速で約2時間50分で往来可能となるのです!

その短縮時間は50~70分もあります。

東京から乗り換え無しで福井まで2時間台となるわけですから、首都圏の人々にとって福井は十分にアクセスしやすい街の一つになるわけです。

その結果、短期的には福井の観光需要を飛躍的に増大させる事になります。ですがそれは、巨大な新幹線効果のほんの一旦。より重要なのは、中長期的に、福井に対する投資需要を活性化させる点にあります。その結果、デフレ不況で沈んでいる日本の中であるにも関わらず、の福井を含めた新幹線沿線の街々“だけ”が活性化していくこととなるのです。

【北陸新幹線・敦賀開業の意味3:北陸三県が初めて実質的な一つの“都市圏”になる】
ちなみに北陸には「北陸三県」という概念があり、富山、石川、福井を指すのですが、これまで北陸新幹線は富山・石川には接続していたものの、福井だけが少々時間距離が離れており、「蚊帳の外」になっていたわけです。

ところが、今回の開業でついに北陸三県全てが北陸新幹線に接続されることとなります。

それによって福井に極めて大きな成長インパクトがもたらされる事になりますが、それと同時に、富山・金沢には大きな成長インパクトがもたらされる事になります。

なぜなら、この福井への新幹線接続によって、富山・石川・福井の北陸三県がはじめて、実質的な“一つの都市圏”として“統合”され、一体的に発展していくことが可能となるからです。

例えば現在、福井から金沢に行くには在来線特急で、43分もかかります(経路検索ソフトでの午前10時頃の移動を前提とした場合の数値。以下同様)。ところが、新幹線が開業すれば、そのおおよそ半分の24分でいける事になります。

24分といえば、東京から渋谷駅まで山手線で移動した時の時間よりもまだ短い時間。

これはつまり、福井都市圏と金沢都市圏が融合した一つの一体的都市圏として発展していくことが可能となる、ということを意味します。

さらには、福井から富山に移動するには、現在は一旦金沢で特急から新幹線に乗り換える時間も必要なことから、90分もかかっています。これでは両都市が互いに「一体的」に発展していくことはほとんど期待できません。

しかし、今回の開業で、福井から富山に乗り換えなしで新幹線一本で行けるようになり、時間も44分と、実に半分以下にまで短縮されるのです!

44分と言えば、京都の出町柳から大阪の淀屋橋まで京阪特急でいくよりも短く、四条河原町から梅田まで阪急特急で行くのとほぼ同じ。

言うまでも無く、京都と大阪は京阪神都市圏として一体的に発展していますから、福井は金沢のみならず、富山も同様に一体的な都市圏として成長していくことが、この新幹線によって初めて可能となったのです!

【北陸新幹線・敦賀開業の意味4:福井は飛躍的成長し、富山・金沢もさらに成長する】

ちなみに、上述の京阪神は交通網で密接に結びつけられているが故に一体的に発達した都市圏です。さらに言えば、東京大阪名古屋の三大都市圏も、一本の新幹線と高速道路で結びつけられているが故に、超絶に発展したのです。

これは、高速の交通で複数の都市を接続すれば、それらの都市が統合され、一体的に発展していくというのは、歴位的・国土学的な法則といって差し支えない程の摂理、があるからなのです。

したがって、北陸の二大都市である金沢・富山の一体的都市圏の「蚊帳の外」にあった福井が、この新幹線によって「蚊帳の内」に入れられることとなったことで、飛躍的に成長していくことは必然なのです。そしてそれと同時に、福井とも統合された富山・金沢両都市もさらに成長する契機を得る事になることもまた、当然の帰結なのです。

【北陸新幹線・敦賀開業の意味5:京阪神と北陸三県の連携も拡大し、双方に利あり】
言うまでも無く、今回の開業は北陸三県と東京の時間距離を縮めただけでなく、北陸三県と京阪神との時間距離を縮める効果を持っています。

大阪・金沢間は現状2時間31分ですが、これが2時間9分と22分短縮されます。
大阪・富山間は現状3時間4分ですが、これが2時間35分と29分短縮されます。

無論、敦賀や福井と大阪・京都との時間はさして(あるいは全く)変化しませんし、敦賀での乗り換えの手間が発生することは事実ですが、少なくとも最速時間は上記分だけ短縮されます。

その意味で今回の新幹線開業は京阪神と北陸との連携と双方の共存共栄に対してプラスの効果を与えうるものと期待されるのです。

【北陸新幹線のポテンシャルは、京都・大阪に接続した時に初めて遺憾なく発揮される】
なお、その効果をさらに確実にするためにはもちろん、敦賀と京都・大阪を新幹線で接続することが必須。

それができれば、現状約2時間半の金沢・大阪間が、1時間20分と70短縮され、おおよそ半分程度にまでなるのです。そうなったとき、京阪神と北陸三県はさらなる成長を遂げることでしょう 。

さもなければ、北陸は京阪神よりもむしろ、首都圏との連携を深め、京阪神、関西、大阪の衰退はさらに加速することともなり兼ねないのです。

一日も早い北陸新幹線の京都・大阪への接続が求められているのです。

しかも、北陸新幹線が大阪まで接続されれば、それをさらに関西空港や四国へと延伸していくという「夢」も現実的な構想となることも期待できます。

四国には四国新幹線構想というものがあるのであり、それと北陸新幹線とを接続すれば、北陸、関西、四国が一体的に発展し、西日本全体の飛躍的成長をもたらす事になるでしょう。

そしてそれは勿論、日本全体の成長を牽引する巨大なエンジンを提供する事になるでしょう。

そうした未来の希望を実現化させるためにも、北陸新幹線の京都・大阪接続は、絶対に必要なのです。

【「新幹線」は絶望が蔓延する日本で「希望」を与え得る貴重で希有な存在である】

…などという事を考えながらの試乗会となりましたが、何よりも感動したのが、何度も何度も子供の頃から訪れている福井駅前も敦賀駅前も、かつてとは見違える程に大きく飛躍的発展を遂げていることでした。

かつては、駅前の商店街は潰れてしまった店だらけの文字通りのシャッター街で、歩いている人がいることすら珍しい程に衰退していたのが福井駅であり敦賀駅だったのですが、今やもう、駅前には官民あわせた投資が進み多くの商業施設やホテルが立ち並び、そこには確かに「賑わい」というべき人の流れができあがっていたのです。

絶望が蔓延しつつある我が国日本で、衰退し続けたにも拘わらずこれほどの明るい兆しを垣間見ることができる地方都市は、極めて貴重で希有な存在です。

新幹線という「国土」を貫く国家プロジェクトの巨大なる威力を、まざまざと見せつけられた気がしました。

関係各位のご尽力に、心からの深謝と敬意を表したいと思います。

この「希望」を、福井、北陸のみならず、全国各地の地方に届けねばなりません。それは決して不可能ではありません。我々は完全に絶望してしまう前に、なすべきことがまだまだたくさんのあるのです。

追伸1:
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【再考・現代貨幣理論(MMT)】 日本を救う経済新パラダイム
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【岸田氏はやはり単なる「増税メガネ」】「賃上げにより実質的な追加負担は生じない」という僅か19文字の国会総理答弁に含まれる『5つのウソ』
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【藤井聡】祝・北陸新幹線完成! それは確かに「絶望」が蔓延する我が国日本に「希望」を与え得る希有な存在である。への1件のコメント

  1. 藤林政信 より

    北陸新幹線を大阪市まで延長する上での障害は、京都市内の北陸新幹線建設反対の動きだろう。北陸新幹線の構造物によって大原地区の景観が損なわれるといった理由でね。
    山陽新幹線博多開業の予定が昭和49年12月から昭和50年3月10日に変更されたのも、北九州市内での用地買収の遅れが建設反対派の抵抗によってもたらされたからである。

    北陸新幹線の予定ルートが小浜市経由というのは果たして正しかったのだろうか。米原の方へ下って、栗東付近まで東海道新幹線を線増という形で複々線化して、京阪奈都市経由で旧梅田貨物駅跡地へ向かう新線建設という形の方が良かったのではないか。湖西線がよく影響受ける比良山地からの強風を考量しなくていいしね。

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