コラム

2018年7月14日

【竹村公太郎】見えないインフラ

From 竹村公太郎@元国土交通省/日本水フォーラム事務局長

構造から機能へ

土木工学を専攻して以来、
半世紀以上になる。

土木技術者として前半の25年間は、
先輩たちが計画した3つのダムを
造ることに邁進した。

心の迷いはなく、
屈託のない時間であった。

人生の折り返しの時期、
ダム建設の現場から
社会をにぎわせていた
長良川河口堰事業に投入された。

構造物を造る世界から、
インフラの必要性を
説明する世界に入った。

インフラの説明は、
インフラの機能を説明すること。

その機能の説明がとても難しい。

インフラの機能を説明する悪戦苦闘が、
数年間に及ぶ長良川河口堰での
経験だった。

機能の説明は難しい。

例えば、2017年に施行された
水循環基本法がある。

この水循環の説明が難しい。

水循環のアナロジーとして、
自分に身近な身体の血液循環を
考えてもわかる。

血管の構造や血液組織の構造は
調べてみればそれなりに理解できる。

しかし、血液循環の機能を
理解することは容易ではない。

それと同じで、水循環の機能を
説明せよとなるとハタと困ってしまう。

インフラ・ストラクチャーとは下部構造

長良川河口堰事業から3年後、
私は今の近畿整備局、
当時の近畿地方建設局にいた。

任務は、河川だけではなく
道路、公園、営繕、用地の
幅広いインフラ整備の推進であった。

スピーチの機会も多く、
インフラ整備の重要性を
何度も述べることとなった。

スピーチを繰り返しているうちに、
ふっと自分が使っている
「インフラ」という言葉が気になった。

あわてて英和辞書を引いてみた。

そこには「下部の」という言葉があった。

改めて確認したが、
インフラ(Infra)・ストラクチャー
とは「下部構造」であった。

下部構造ということは、
その上には何かがある。

下部構造とは上にあるものを
支えているからだ。

上にあるものとは、
国民の様々な社会活動である。

製造、商業、金融、法律、医療、
教育、芸術、芸能、娯楽、スポーツ、
環境活動などだ。

つまり、人間が行う
あらゆる社会活動となる。

その上部活動を支えているのが、
下部構造となる。

見えないもの

さらにインフラ(infra)の
項を英和辞書で追っていった。

「インフラ・レッド(Infra Red)」
つまり「赤外線」があった。

赤外線は光の波長としては
存在しているが、
人間の目には見えない
低い波長の光線である。

さらに、辞書を追った。

インフラ・ソニック(Infra Sonic)
があった。

それは「不可聴音」
という意味であった。

音波としてはあるが
人間には聞こえない
低い波長の音を指していた。

私の目から鱗がポロリと落ちていった。

「インフラ」という言葉は
「人には見えない、人には聞こえない」
という意味があった。

つまり
「インフラ・ストラクチャー(Infra Structure)」
は、「人々には見えない構造物」となる。

上部構造の舞台で活躍する人々は、
舞台の下部は見ることができない。

歌舞伎座の役者は、
奈落に入れば舞台の下の構造は見える。

しかし、一般の観客には見えない。

一般の人々にとって、
見えないインフラ・ストラクチャーを
理解できないのは当然であった。

説明していなかったこと

このことに気が付くと、
次々と反省がよみがえってきた。

インフラの説明をする時に、
その構造を説明し過ぎていたのではないか?

下部構造が上部を支えていることを
説明していたのか?

インフラと社会活動の
密接な関係を説明してきたのか?

人々があることを理解するのは、
自分の生活の場であり、
自分の歩みの歴史の中である。

自分の人生が、足元の土台に
支えられている。

それを丁寧に説明しない限り、
人々は下部構造を理解することはない。

インフラの説明とは、
見えない土台の説明となる。

見えないモノの説明は、
高度な知的作業となる。

インフラに人生を投入して、
その最終コーナーを曲がったところで、
やっとそのことに気がついた。

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【竹村公太郎】見えないインフラへの4件のコメント

  1. 鈍ちゃん騒ぎ より

    >見えないものの説明

     東大教授吉川氏は財政破綻と言う見えないものの説明をするわけですね。でもそれは現実に在るものでなく嘘っぱちな見えないもの。
    なんで東大教授とあろうものが、財政破綻の足音が聴こえると言う超スーパーウルトラ聴覚を持つアホ垂れロボット政治家連中と同じ嘘っぱちを吐き、学内政治にのさばれるんですか?

    「あちゃーっ吉川くんっ!」
    森田健作さんとしてはめんどうでも吉川狂授をこてんぱんにしてほしいものです。

    すみませんアホな支離滅裂なコメント。
    しかし思います。相変わらずマス‐コミュニケーションが叩くのは的外ればかりな言葉かりがまかり通る日本ですね。

    返信

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  2. たかゆき より

    健康 インフラ

    健康とインフラは一緒

    失って初めてそのありがたみに 気付く、、

    骨も血管も筋肉も 老化してボロボロなのに

    それなりに 機能しているし なんたって カネがないからと

    ほったらかし

    命よりもカネが大切とは、、、

    それはそれで ご立派

    日の本 滅んで円遺こる 
    縁無き衆生は度し難し 南無南無 ♪

    返信

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  3. Y.kawai より

    下部構造は「見えないもの、聞えないもの」・・・納得です。
    自らが立っているの足元の下には意識が向かないからこそ、インフラは機能しているともいえるわけですね。人は知覚できたものを材料に認識したいものだけで自らの世界観を構築していることの証でもあると思います。しかしこれが無意識に行われてしまうために人は自分で思考の領域を狭めてしまうことに気づけないのだと思います。知らないことやわからないことが常に存在することを心から認めること、いわゆる謙虚さだけが、物事の真実を知るために絶対的に必要な「抑制機能」なのではないか?と考えました。竹村先生の穏やかに磨かれた文章にいつも救われています。ありがとうございます。

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  4. つぼた より

    数か月前、用事で姫路の夢前川を遡って上流の町まで行く機会がありました。

    関西の瀬戸内側から北に行こうとすると、必然的に山の谷にある川の側の道路を遡ることになります。

    道路も良く整備されていますが、川の護岸が非常に良く整備されていて、立派なダムのようなものがあったり、何に使われるのかよく分からない構造物があったりします。

    時には、川の中に小さな砂防ダムがあって水がさわさわと流れていたり、先人が後世の我々のために、とても良く考えて整備して下さっているのが分かります。

    何とはなしに、日本人は偉いなあと思ったりします。

    先日、西日本一帯で河川の氾濫があり甚大な被害が出ましたが、これから川の再整備が行なわれて、また静かに水の流れる川の景色が蘇ることを期待しています。

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