日本経済

2023年10月2日

【三橋貴明】間違った指標が、政策を誤らせる

【今週のNewsピックアップ】
デフレギャップの情弱ビジネス
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12821466247.html
経済対策とGDPギャップ
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12822276376.html

内閣府は需給ギャップ計算に際し、
平均概念の潜在GDPを使用しています。

「潜在」GDPという言葉の印象とは裏腹に、
日本の潜在GDPは
供給力の天井ではありません。
内閣府の潜在GDPは天井ではなく、
過去の実績値に基づくトレンドが
用いられているのです。

要は、過去平均です。

そのため、推計期間の直近に
大きな変動が起きると、
潜在GDP試算時に
バイアスがかかってしまう。

たとえば、2020年に始まった
コロナ禍前半、
政府が緊急事態宣言を繰り返したため、
GDPは大きく減少しました。
2020年は、なにしろ政府が
「生産活動をしてはならない」と
規制をかけたのです。

当然ながら、国民は生産活動を停止し、
GDPは激減。
その「2020年の生産実績」を、
平均概念の潜在GDPは
含んでしまうわけです。

当たり前ですが、
政府の規制で生産活動が
激減した2020年の「実績」が、
日本の「潜在的な供給能力」
であるはずがありません。

なぜ、このような奇妙な統計手法に
なっているのかと言えば、
全要素生産性の取り扱いが
難しいためです。

潜在GDP(日本敬愛の供給能力)は、
「資本」「労働」「全要素生産性」の
総和になります。
資本を投じる(※工場を建設するなど)と、
当然ながら生産力が増強される。
労働の投入も、言うまでもありません。
一人で生産するよりも、二人の方が、
生産力が二倍になるかは置いておいて、
確実に生産力は強化される。

問題は、生産性です。
たとえば、投資による
生産性向上の効果、
労働者個人の生産性の伸びは、
事前に把握することが不可能です。
たとえば、同じくAという
技術を導入したところで、
技術Aが与える生産性向上効果は、
国により、地域により、企業により、
あるいは時期によって違う。

というわけで、内閣府は
全要素生産性について
「HPフィルター」で
平準化して求めています。
「最大」ではないのです。

問題は、過去の生産を平準化した結果、
潜在GDPが小さくなり、
デフレギャップ
(需給ギャップのマイナス)が
小さくなってしまうことです。
結果、現実が
総需要不足であったとしても、
需給ギャップがプラス化する。

つまり、財務省は、
「需給ギャップがプラス化した。
もはやデフレではない。
財政拡大は不要だ」
とのレトリックで、
緊縮財政を推進できる。

タイミング悪く、
経済対策の議論が始まった
このタイミングで、
内閣府発表の需給ギャップが
プラス化してしまった。

間違った指標が、政策を誤らせる。

日本の需給ギャップ統計は、
まさにその典型なのです。

◆一般参加可能な講演会のお知らせ
2023年10月4日(水)18時から
船橋市民文化創造館きららほーる
http://mtdata.jp/BNI.pdf
講演「公益経済主義とBNI
マクロ経済学から見る経済のこれから」

◆経営科学出版から
「財政破綻論の嘘
99%の日本人を貧乏にした
国家的詐欺のカラクリ」が刊行になりました。
https://in.38news.jp/38zase_blog

◆小学館から「日本経済 失敗の本質:
誤った貨幣観が国を滅ぼす」
が刊行になりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888973

◆メルマガ週刊三橋貴明Vol752
税金の権力
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
消費税導入・減税、
所得税の累進課税の緩和、法人税減税、
分離課税の導入。
これらの「税金」は「何」を目的にしていたのか?

◆メディア出演

三橋先生に色々聞いてみた
インボイス?デジタル独裁?
食糧危機?24年問題?大阪万博?
[三橋TV第760回] 三橋貴明・高家望愛・saya
https://youtu.be/7DYkhbs5r9g

利権万博?沼万博?
う〇ち万博?プレハブ万博?
命燃え尽きる大阪万博!
[三橋TV第761回] 坂本篤紀・三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/JGgwA-DKFGk

こいつら本当に日本人か?
ライドシェア推進組の狂気
ラストフロンティア日本
[三橋TV第762回] 坂本篤紀・三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/jUpwJ7pHqlI

日本は経済成長していない。
確かにその通りです。
ならば、日本経済を成長させるためには
どうしたら良いのでしょうか。
日本経済の成長に
本当に必要な指標、考え方、そして政策を、
わたし、シンガーsayaと共に
学んでいただくのが
「シンガーsayaの3分間エコノミクス
第二巻」です。
さあ、私と共に経済成長について
「ゼロ」から学んで下さい。
特別コンテンツとして、
三橋貴明&saya
「シンガーsayaが三橋先生に
ひたすら聞いてみた第一回」の
全編もご視聴いただけます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/economics/

◆三橋経済塾
9月16日、
三橋経済塾第十二期第九回対面講義が
配信になりました。
https://members12.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=2238
ゲスト講師は篠原信先生でした。
インターネット受講の皆様、
お待たせいたしました。

◆チャンネルAJER
今週の更新はありません。

関連記事

日本経済

【三橋貴明】あらゆる問題の解決を妨げている主犯

日本経済

【三橋貴明】現在の日本は「不自然」だ

日本経済

【藤井聡】「アンチ緊縮」という民衆運動

日本経済

【適菜収】音楽を媒介にしてミュージシャンの脳に入る

日本経済

【三橋貴明】シンポジウム「令和の政策ピボットは実現するのか」開催

【三橋貴明】間違った指標が、政策を誤らせるへの8件のコメント

  1. 三橋さん、主語と述語が逆ですよ より

    ⌈ワザと間違った政策実施の為に捏造した指標を悪用したアホアへ政権⌋でしょう。
    今朝のビッグブラザー見て唖然としました、
    国賊アへの経済政策責任者ウソっぱちトリクルノックダウン浜田宏一に⌈過ちを正すに憚る事勿れ⌋の一言で済ますのですか?
    コイツは⌈アホノミクソは壮大な社会実験だった⌋の一言で逃げたバカ学者ですよ。
    謝って済むなら御用犬ケ-サツはもっと不要ですよ。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

      1. 情念某 より

        浜田宏一をマスゴミでヨイショしまくってた漫談家いましたね
        エラソ-にしてたのに消滅。

        返信

        コメントに返信する

        メールアドレスが公開されることはありません。
        * が付いている欄は必須項目です

  2. 嘘の種類 より

    嘘には 三種類ある

    ただの嘘 真っ赤な嘘 そして統計

    There are three kinds of lies: lies, damned lies, and statistics.

    と 19世紀の英国首相が仰ったとか、、

    国民を欺く道具として 統計は最適ということ
    かと。。。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  3. 利根川 より

     三橋TV第735回でも解説されていましたが、平均概念の潜在GDPの話は「統計詐欺」という表面的な話にとどまらず、もっと致命的な経済学の根幹にかかわる話だったわけですね。

    詳しくは三橋TV第735回「ここが変だよ経済学」をご覧ください。以下、一部抜粋。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    三橋さん「それから『生産性』」

    三橋さん「この生産性も事前になんで上がるのかわからないんですよ」

    三橋さん「技術の問題があるから」

    三橋さん「GDPを成長させる要素は3つあって、一つは労働の投入量を増やす、2つ目は設備投資、3つ目が前の2つだけでは説明できない成長である全要素生産性」

    三橋さん「全要素生産性は事前に把握することはできないから経済学者は生産性についてはほぼ語らない」

    三橋さん「でも、労働力と資本(設備)は説明できるから、それで生産性を説明しようとする」

    三橋さん「だから全要素生産性については全く無視する」

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

     日本の主流派経済学では、数字で表せないものは排除したいという致命的で根幹的な欠陥がある。個人に対して懸命に技術指導を行ったとしても、必ずしも技術向上につながるとは限らない。なので、そういった全要素生産性を排除して出来上がったのが「平均概念の潜在GDP」だったと…

    三橋貴明「世界で唯一、嘘を言いまくって成長してきた学問。これが経済学なんですよ」

    本当に百害あって一利なしな学問だったんですね。そんなものを経済政策策定の指針にしてきた日本って…

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  4. 利根川 より

    「過ちを正すに憚る事勿れ」

    三橋さんは保守を自称したことがない方ですが、本来の保守というのはまさにこういうことなんでしょうね。
     間違いを犯した者を身の置き場がないほどに糾弾しては、その者は「仲間」ではなくなってしまう。そうやって「仲間」ではない者が増えていけばいずれ民主制は維持できなくなる。

    三橋貴明「民主制というのは負けた者が負けを認める、勝った者が負けた側にも配慮をするということができないと維持はできない」

    保守っていうのは頭がよくないとなれないものなんだなと(苦笑い
    私は保守にはなれそうにありません。
     ちなみに、間違えなかった者よりも間違ってなお自分の間違いを認められる者の方が優秀なのは明らかだと思います。専制国家を見れば「自分の間違いを認めることができない」ことで、破滅するとわかっていても直進し続けるしかないケースもあるわけで、ときに間違い、ときにそれを修正し、行ったり来たりしながらジワジワ漸変するのが民主制のいいところです。エドモンド・バークは偉大だった。

    とはいえ、直接間違った政策の被害にあった方は納得できないでしょうけど…

    あらためて考えてみると、当時、有権者の7割以上が小泉政権の構造改革(緊縮政策)に賛成していたわけで、「過ちは正せない」ということになったら永久に日本は需要不足の中で緊縮増税を続けることになってしまいます。
     当時、保守もリベラルも中韓叩きとそれに対するカウンター活動に夢中で、三橋さん中野さん、藤井教授らの「国民の生活を見ろ」という声にはほとんど耳を貸しませんでしたからね。
    「税は財源じゃない」という話も含め、間違えなかった奴なんて日本にほとんどいないと思います。わたしも間違っていた口ですが、近親憎悪というかなんというか、緊縮増税派には当たりがきつくなってしまいますね。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  5. 一番上のコメ者です より

    当方
    経済財政には全くド素人ですが
    小泉安倍菅カン野田の全ての政策にはずっと反対でしたし
    (間違っている)と思ってましたよ。
    あの(嫌われヒョットコ)、
    三橋氏もかつて評価し、ケケナカを嫌いリチャードクー氏を登用し
    規模はともかく具体的積極財政出動をした
    ⌈ナチスに学べ⌋舌禍爺もそこだけは評価してます。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

      1. 利根川 より

         大人気だった小泉竹中政権(小泉劇場)。あの当時に彼らが行っていた構造改革(緊縮政策)に反対していたというのはなかなかのご慧眼。
         どうしてあんなに大人気だったのかというと…

        小泉「このままでは日本は財政破綻する」

        小泉「予算は限られている。財政破綻を避けるためには聖域なき歳出削減です!」

        これが国民にウケたわけですね。
         お金が金貨銀貨であった大昔や、金本位制の時代であれば、お金の原料である貴金属が尽きてしまえばそれ以上「貨幣の発行」はできないわけで、「予算(貴金属の量)は限られているから支出を減らす」という政策にも正当性がないわけではなかった。
         しかし、現代では既に金本位制から脱却しており、なおかつ、日本は他国から借金をしていない、くわえて、国内に技術者や道具(重機や工場)も存在するので、自国通貨で仕事を請け負ってもらえる。よって、小泉が言うほど予算に限りがあるわけではなかった。


        金本位制時代の貨幣発行の上限は「貴金属の量」
        管理通貨制度の貨幣発行の上限は「その国の技術者や工場等インフラの量」(その国の供給能力)

        ところが、国民も政治家も金貨銀貨の時代で感覚がストップしてしまっているので、

        「このままでは財政破綻する!無駄削減だ!」

        と言われると、どちらかというと大賛成(笑)してしまうわけだ。国民の多くが、頭の中身が金貨銀貨の時代で止まってしまっている現状では、安倍晋三や浜田宏一じゃなくても皆同じことをするでしょう。現に岸田政権も同じことを続けている。新しい資本主義とかへそが茶を沸かすわ。
         「一番上のコメの方」は小泉政権当時から構造改革に反対していたそうですが…世の中には頭がいい奴っていうのがいるんだなと改めて思いました。
         以前、山本太郎さんが三橋さんと対談していましたが、山本太郎さんが「税は財源ではない」ということに気が付いたのが2016年だったのだそう。税理士の森井じゅんさんや、同じく税理士の安藤裕前衆議院議員、元格闘家の須藤元気さんなんかも自力で「金貨銀貨の世界」から脱却した人ですが…世の中には頭がいい奴っていうのはいるものなんだなと。わたしは中野剛志さんの本で「建部正義さんの内生的貨幣供給論」が解説されているのを読んで気が付いた口ですが、自力で気付くのは無理でしたね。
         私のような凡俗からすると、わかっていたのであれば

        「それ、はやく言ってよ」(SansanのCM参照)

        という感じなんですけどね。
         日本は民主制国家なので、多くの人が知るに至らないと永遠に需要不足の中で緊縮増税が繰り返され、世界で日本だけが経済成長しないという情けない状況が続きます。本来はTV新聞など報道機関の仕事なわけですが、ジャニーズ問題に見るように、日本の報道は当てにできないようなのでね。

        ※インボイス制度についてしっかり報道した長周新聞は報道の良心と言える

        ちなみに、人手不足の原因も、もとをただせば貨幣感が「金貨銀貨」であることが原因です。YouTubeのコメントから拝借しますが日本が人手不足になった経緯がコチラ⇓

        バブル崩壊+財政均衡

        不景気長期化

        実質賃金下落

        非婚化

        人手不足

        移民規制緩和

        たった一つの間違い(貨幣感の間違い)で全てが狂っていく。
         世の中には頭がいい奴というのはいるらしい。そうした人たちには気が付いたことはしっかり言ってもらいたいですね。民主制のいいところを最大限享受できるように
         

        返信

        コメントに返信する

        メールアドレスが公開されることはありません。
        * が付いている欄は必須項目です

        1. 墨田川 より

          延々 三橋氏の論文コピペ並べた挙げ句、
          他人に教えて貰いたい等と
          ⌈恥を知ってますか?⌋
          数多の情報から主張信念捜せず
          ⌈教えろ⌋ですか?
          義務教育から行き直してください。

          返信

          コメントに返信する

          メールアドレスが公開されることはありません。
          * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】手取りを増やさないのは自民党

  2. 日本経済

    【三橋貴明】人の意見を変える方法

  3. 日本経済

    【三橋貴明】最強の野党

  4. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】如何にすれば私達は「日本を滅ぼす売国石破政権...

  5. 日本経済

    【三橋貴明】人間万事塞翁が馬

  6. 日本経済

    【三橋貴明】手取りを増やす

  7. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】MMTの提唱者・ビルミッチェル教授をお招きし...

  8. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】【大胆予想】これからの日本の政治はどうなって...

  9. 日本経済

    【三橋貴明】キャスティングボート

  10. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】三沢カヅチカ京都拾得ライブ2024は満席の大...

MORE

タグクラウド