FROM 東田剛
7、8日の米中首脳会談は、歴史の節目だったのかもしれません。
例えば、親米派が大好きなジョセフ・ナイは「ニクソンと毛沢東の会談以来、過去四十年で最も重要な米中首脳会談」と評価しています。
http://www.nytimes.com/2013/06/10/world/asia/obama-and-xi-try-to-avoid-a-cold-war-mentality.html?pagewanted=all
「尖閣を巡って、米中で応酬」とか報道されていますが、裏で両首脳が何を話しているやら、分かったものではありません。表向きにも、米国は主権の帰属については中立を貫いています。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/20130610k0000e030094000c.html
オバマは会談内容を安倍首相に説明するそうですが、まあ「中国と仲良くしろ」って命令を出すんでしょう。
日本政府も、相当焦ってます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130611-00000094-san-pol
安倍首相が「日米は同盟関係で、これは米中とは決定的な差だ」と強がっているのを見て、気の毒になってきました。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130610/plc13061011080001-n1.htm
親米派が「日米同盟!」と言い張るのって、社民党が「護憲!」を繰り返すのに似ていませんかね。
でも現実は、「日米は主従関係で、これは米中とは決定的な差だ」と言った方が正しい。
例えば、米中首脳会談は、米側からの提案だったそうです。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130609/amr13060921210010-n1.htm
夕食付きで合計八時間も話し合い、ノーネクタイの首脳同士の一時間近い散歩もありました。
2月の日米首脳会談は、日本側から懇願して一回断られ、再度お願いして実現したものの、夕食会なしであっさり終わったのに・・・。
TPPでは、周近平が情報提供を求めたら、オバマが応じて、情報提供のための公式協議の枠組みができることになりました。
http://www.nikkei.com/article/DGXDASGM1000Z_Q3A610C1MM0000/
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130610/amr13061007270000-n1.htm
日本は、「聖域なき関税撤廃を前提としない」とか当たり前の事だけ確認して、何の情報ももらえないまま、三日間の会合に出るためだけに事前協議で降りまくったのに・・・。
2月に安倍首相が交渉参加の意思を伝えてきたのは、オバマには意外だったそうです。米側の圧力というよりは、日本側から進んでTPPのお土産を持参したということだったようです。
http://realtime.wsj.com/japan/2013/06/10/%E5%AE%89%E5%80%8D%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%81%AE%E7%AC%AC3%E3%81%AE%E7%9F%A2%E3%80%81%E5%8F%82%E9%99%A2%E9%81%B8%E5%BE%8C%E3%81%AB%E5%9B%BD%E6%B0%91%E3%81%AF%E5%A4%B1%E6%9C%9B%E3%81%B8%EF%BC%9D%E3%82%B3/
今さらながら、実に軽率な判断でした。
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●●月刊三橋6月号では、電力自由化を舞台に行われる構造改革と、
「構造改革ビジネス」のとんでもない裏側を取り上げます。
⇒ http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980_2013_06/index.php
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日米関係よりも米中関係を軸としたアジア戦略を進めようとしている米国に、日本市場をタダで差し出してしまったのです。当然、日米同盟強化という見返りはありません。
米国の戦略転換は、日本にとって死活的な大変化です。
TPPも含めて、もっと国をあげて議論すべきでした。
でも、安倍首相は、こう言い放ちました。「時には、国論を二分するようなこともあるでしょう。TPP交渉への参加を決定した時も、そうでした。しかし、私は、成長のために必要であれば、どのような「岩盤」にも、ひるむことなく立ち向かっていく覚悟です。」
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0605speech.html
TPP反対派は「TPPは成長のために必要ではない」と主張していたのに、それに聞く耳持たず、邪魔な「岩盤」扱いし、あまつさえ「立ち向かっていく」と敵視すらしています。
そこまで言うかねえ。
そもそも、安倍首相は、何が「成長のために必要」なのかを分かっているのでしょうか。
例えば、医薬品のネット販売の解禁なんて、「成長のために必要」ではないでしょう。医薬品の需要が増えるわけではないのだから、単に、利益が薬店から楽天に移るだけです。下手すると、雇用が減りさえします。もちろん安全の問題も検討しなきゃいけない。
では、なんで決めたのかと言えば、三木谷社長が「産業競争力会議の議員を辞めるぞ」とごねたからだそうです。
http://mainichi.jp/select/news/20130607k0000m020039000c.html
何だよ、三木谷には、ひるんでるじゃん。
ちなみに、次期USTR代表のフロマンも「粗悪な協定を結ぶよりは交渉決裂の方がましだ」と超強気ですから、こんな調子じゃあ、フロマンにもひるむに決まっています。
http://news.biglobe.ne.jp/economy/0607/jj_130607_9726983001.html
それもこれも、日米同盟とか構造改革とかいった従来の路線に固執して、現実を見ようとせず、議論すら怠ってきたツケです。
そういえば、谷内正太郎・内閣官房参与が、米中首脳会談を前にして、日米同盟を議題にしたシンポジウムに出てました。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130530-OYT1T01118.htm
諸行無常の響きあり・・・。
PS
本日の参考文献
http://amzn.to/16YZLvu
PPS
交渉参加を決める前に、これを読んでおけばよかったのに・・・。
http://amzn.to/XT713a
PPPS
それとも、まもなく発売のこの二冊に起死回生の策が書いてあるかな?
http://amzn.to/10XzXGK
http://amzn.to/1aao2uo
【東田剛】あ〜最悪。日米と米中の大きな差。への18件のコメント
2013年6月12日 1:16 AM
言論人の方は演繹的な考え方ではなく帰納的な考えをするべきだと私は思います。 例えば、Aという政治家がいるとします。Aさんは保守政治家であるという公理を前提とし、AさんならTPPに最後は反対するだろう、構造改革は日本の国柄を生かした規制改革となるであろうという発想が演繹的な考え方です。 この思考法の欠点は前提が誤っていた場合にそこから導き出される命題が誤りとなってしまうことです。 これに対し、Aさんは聖域なき規制改革を推進した、歴史認識問題解決について真摯に取り組んでいないなどの事実からAさんは保守政治家ではないのでないかと発想することが帰納的な考え方です。 今の言論人(ニコニコ動画にコメントを書き込む人も含む)はまず人物の思考・行動性向を固定化し、OOはM党でTPPを推進したから売国奴だ!という一方でOOはZ党でTPPを推進しているがこれは日本に繁栄をもたらす深慮遠謀があってのことに違いないと擁護する傾向があります。 自分と完全におなじ意見を持った人間など一人もいませんし人には立場というものがあります。ですのである保守系の政治家が時局を鑑みて靖国神社参拝を見送る等の行為をしただけで直ちにその人間は保守派ではないと非難するのは間違いだと私は思いますし、更なる技術革新により原発が不要になる可能性が現実味を帯びてくれば、保守派の方が脱原発を推進しても私はその人を非難したりはしません。 ですが、TPP推進は、未来は確定的ではなく常に不確実性を内包しているため、人間が安定的な生活をおくるためには人が生活の中で生み出してきた秩序を大切だという保守の核心的な価値観に真っ向から反するものであると言わざるを得ません。 したがって言論人は政治家に対する自らの人物像を事実と照らし合わせて修正する必要があるのではないかという観点から帰納法的な思考をするべきだと考えました。
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2013年6月13日 12:59 PM
安倍総理のかわりとなる政治家はいくらでもいます。少なくともTPPに反対の人であれば良いのですから。
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2013年6月13日 7:13 PM
そうですね。勇気ある行動をとる東田氏は尊敬に値しますね。ほんと東田氏は素晴らしい活動家で頭が下がります。とりあえず、東田氏のようなお方が日本から居なくなったらダメなんです! 東田氏を批判してはダメなんです! と連呼しておきますね。
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2013年6月15日 10:16 AM
自分の発した問いながら愚問でしたね。とにかく自分がすべきことをしていくほかないのでしょう。
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2013年6月16日 12:03 PM
ここ最近のことですが、政府が遮二無二構造改革を進めようとするのは、なぜなんでしょうか?
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2013年6月16日 4:18 PM
まあ、だいたい同意見です。これを チャンスの切っ掛けにするには、目覚めた国民が「自主独立心」を堅持し、国のことを自分以上に思い実践する、それ以外不可能を可能にすることは出来ないです。 それと、今、見たのですが、藤井先生のHPが復活して、嬉しいです。そして、中野さんの、「維新・改革の正体」の書評を読み感動しました。「時勢に流されない信念を貫き通すその姿は感動的である。」 有難う御座います_
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2013年6月16日 6:01 PM
三橋さんが行動の人で東田さんが違うなんてのも単なるレッテルでしょう東田さんの言論活動も十二分にリスクを伴う勇気ある「行動」だと思います。二元論的レッテルがお好きなようですな
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2013年6月18日 9:44 AM
TPP阻止に命を懸けるという知人がいます。中野剛志先生が有楽町の反TPP集会で「TPPの反対をしている先生方はもう明らかに政治生命をかけておられる。名前は申しませんが、ある方は生命それ自体をかけておられます。だけども、TPPの交渉参加を推進している先生で、議員先生で、だれか生命ないしは政治生命をかけている人がいるんでしょうかね?もうそれだけみたって本気度とかが全然違うわけです。それは当たり前で、国を守るために政治家先生は命をかけることはありますけれども、国を売るために政治家先生が生命をかけることはないからであります。」と仰っていたのですが、自民党に命を懸けているような政治家が見当たりません。政治生命すらかけているように見えないのが現状です。このまま日本は亡国に走っていくのでしょうか。安倍支持を表明した言論人の責任は重いと私は考えます。命を懸けて阻止する心ある方はいないのでしょうか。国家の存亡がかかっているのに悲しい限りです。力のない我が身の不甲斐なさも感じています。非常に心配です。
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2013年6月19日 9:54 PM
>>私のような政治にも経済にも疎い人間にも、安倍氏が以前総理をやっていた時より、世界はかなり変わったのではないかと感じています。従来のような政治観、経済観では日本はやっていけないのではないかと考えるのですが、実務を担当している国会議員がそのような変化を感じることが無いということが不思議で仕方がない。本当に仰るとおりだと思います。どうして、変化を感じないのか。思うに国会議員になれる人は、社会的に恵まれている立場にあるので、変化したくない。変化を認めたくない気持がすごく強くあるのでしょうね。
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2013年6月20日 7:31 AM
安倍晋三氏にとって、アメリカが戦争で失敗をし、また経済でも失敗していることなど無かったことになっているのではないかと思うほど、従来どおりの路線での日米同盟や小泉的な改革の復活をやっています。東日本大震災もヨーロッパの混乱も、安倍氏や自民党には従来までの考え方に変化を与えるものではなかったのだと思うと私には不思議でならないのです。また日本の構造を変えると言っている首相を保守政治家だと思う保守的な人がいることも不思議でならないのです。私のような政治にも経済にも疎い人間にも、安倍氏が以前総理をやっていた時より、世界はかなり変わったのではないかと感じています。従来のような政治観、経済観では日本はやっていけないのではないかと考えるのですが、実務を担当している国会議員がそのような変化を感じることが無いということが不思議で仕方がない。不思議、不思議と繰り返してしまうほど、安倍首相がやろうとしていることが理解できません。
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2013年6月22日 1:07 AM
「平家物語」吹きました。(笑>>2月に安倍首相が交渉参加の意思を伝えてきたのは、オバマには意外だったそうです。米側の圧力というよりは、日本側から進んでTPPのお土産を持参したということだったようです。これは本当ですか??? ああああああ。(絶望。) 後でじっくり読んでみます。本予約しました!
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2013年6月23日 2:06 AM
カーティス氏がどんな人かしらないので論説自体にはイマイチ興味出ないですが、「したがってワシントンの友人によると、安倍首相が2月にワシントンを訪れ、オバマ大統領にTPPに署名すると話した時にはオバマ大統領には意外だったという」のくだりには2つの意味で驚きました。「意外だった」ことよりも「安倍首相2月にワシントンでオバマ大統領に署名すると話した」という暴露話に超絶にびっくりしました。みなさん安倍総理が2月に大統領と署名まで約束してたなんて知ってました?私ニュース見落としてましたかね・・。まあ確かに忙しくて全部は見れてませんが。それにしても3月前半に気をもんでた私のような人間はアホだったんですかね。ああ、アホじゃなくて「岩盤」か。それも立ち向かうべき岩盤・・。え、もしかして西田先生も?・・・・ムカッときました。やめときます。東田さん、もしかして今回はギャグやびっくり話を宝探しのように散りばめてみましたか?今週はギャグはお控えになったのかと思いましたよ。こういう方式も新鮮でかなり笑えましたよ。カーティス氏によると安倍総理は「党内ではある意味、妥協志向が強く、コンセンサス本位のリーダー」ということですが、私にはどう見ても党内でコンセンサス本位には見えません。三木谷や竹中やアメリカに対してはコンセンサス本意に見えますが。シンポジウムの話は確かに物悲しさが漂ってきます。読売新聞は物悲しさを表現した記事とは扱ってないみたいですね。でも一日本人としては情けないというかなんというか、そんな気持ちにもなってしまいます。「日本国防衛論」では、東アジアにおいてアメリカと中国が軍事的に拮抗している話が紹介されてたように記憶します。もちろん両国の軍事費や兵力は全く違うのですが、よく考えたら拮抗しているというお話。とても納得できたお話のひとつでして、アメリカがもはや覇権国家ではないということは日本にとって絶対に見落としてはいけない事実だと思います。安倍総理の演説、初めて全文見ました。みんなの党か維新のひとか竹中の演説かと思いました。新しいものに対する警戒心なんて全く感じられません。江戸時代の日本の農業を引き合いに出しておきながら「生産性向上が収入を向上させた」と言うところなど「江戸時代」のせいで一見保守っぽく見えるけど「供給サイド」であり、さらに時代の違いを無視してて私には理解不能でした。長くなってすいません。
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2013年6月25日 12:28 AM
追記『コメント欄』とは安倍首相の第3の矢、参院選後に国民は失望へ=コロンビア大教授の記事のコメント欄です。
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2013年6月25日 4:11 AM
ワタクシは信者でも反信者でもありませんが(あー、二元論的レッテルだなあ)、折を見てメルマガ登録やめます。小姑の鬱憤晴らし(文字通り)は読んでて不快です。内容ではなくてトーンというか自意識がね。これじゃ人は動かせないし組織の仕事も難しい。居心地のよい知識の羊水に埋没(逃避?)してればよろし。行動の人・三橋さんブログのほうは読み続けますよ。
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2013年6月26日 11:03 PM
あんまりTPPについての反対論を唱えると『岩盤』とか『左翼』とか『TPP芸人』とか言われますよ。(笑)アメリカ人の方が安倍さんをよく分かっているような気がして悲しいですね。(コメント欄のまずさがまた悲しい)首相は以前「どんな脅かしにも屈しない」とおっしゃっていましたがご自身で参拝されてその場でこの台詞をおっしゃっていただきたかったものです。信者への道は遠い。
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2013年6月28日 1:36 PM
安倍総理、現在の自民党の政策には評価できる部分もあるとは思いますが、「第三の矢」などと言って産業競争力会議や規制改革会議などに10年前から変わらないメンバーを集めて議論している時点で「頭の中、止まってる」と判断し、我々の未来を託せない人たちであると思わざるを得ません。しかし、このブログでご紹介いただいたコロンビア大のカーティス教授も言っている通り、「他にいない」のもまた事実、ほかにいる奴らはもっとひどい連中ばかり・・・かといって自分が立候補する器量もなし・・・所詮、政治家も日本国民であり、その代表がこのありさまならばわれわれ日本国民はここまでか、と諦めるほかないのでしょうか。東田さんのお考えを聞かせていただきたいです。
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2013年6月28日 8:39 PM
この記事で懸念されるようなことも、アベノミクスを支持している人たちは、逆の事をいい楽観しようとしています。良い方向に持って行きたいという気持ちは良いのですが、現状分析に願望を入れてもらっては困りますよね。確かに別の見解もあるでしょうが、この記事のような見方もできるし、少なくとも両面を見ていかないといけませんね。アベノミクスを支持するがあまり、懸念する意見にヒステリーを起こす傾向が一部の支持者に出始めていることが気にかかります。少なくとも孫崎、小沢一郎などといっしょにしてもらっては困りますね。
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2013年6月29日 12:09 AM
平家物語買いそーになったじゃねーか!
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