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2013年6月14日

【施 光恒】TPPで破壊されるもの

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

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●今月の月刊三橋では、電力自由化やメガソーラービジネスに絡んだ、
とんでもない問題を取り上げました。
日本のインフラを使って、中国が、、、

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980_2013_06/index.php

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おはようございま〜す(^_^)/

1998年2月の長野オリンピックのころ、私は、イギリスの大学院に留学しておりました。
長野オリンピックといえば、なんといってもスキーのジャンプ競技ですよね。日本の原田雅彦選手、舟木和喜選手など「日の丸飛行隊」の選手たちが団体でみごと金メダルをとりました。私も、熱中してテレビ観戦していました。

スキーのジャンプ競技で金メダルをとった翌日、イギリス人のある友人に、「日本、おめでとう! 金メダルよかったね。イギリス人はみんな日本チームを応援してたよ!」と言われました。

「ありがとう。でも、なんで日本を応援してたの?」と尋ねると、
「ドイツを勝たせたくなかったから」とのこと…。(ドイツは銀メダルでした)。

イギリスとドイツって仲悪いんだなー、皮肉なイギリス人らしいなー、と思いました
(__`;)

私は、その友人に続けてこう訊きました。

「でも、ほんとはイギリスチームを一番応援してたんでしょ?」
「いやいや、イギリスにはスキーのジャンプの選手なんてほとんどいないよ」
「ええっ、イギリスって、スキー盛んそうなのに。なんで?」

不思議に思って尋ねると、友人は次のように答えました。

「なんでっていわれても…。どうしてスキーでジャンプなんかしなきゃならないんだ? おっかないじゃないか。イギリス人はそんなクレージーなことしないんだよ。そういうことは、きみたち日本人とかドイツ人に任せるよ。」

憎たらしくもありますが、この落ち着きというか斜に構えたところというか、いかにもイギリス的でカッコエエ、と思ったのを記憶しています。

実際、イギリスには、ほとんどスキージャンプという競技が存在せず、選手も皆無に近いということでした。

こう書きつつ、10数年前の記憶ですので、我ながら、あらためてホンマかいな?と思いました。本当にイギリスにはスキージャンプという競技が存在しないのかと

ネットで検索してみると、マイケル・エドワーズという選手が1988年のカルガリー・オリンピックで「イギリス史上初」のスキージャンプの代表選手になったとあります。

それまでイギリスは、スキーのジャンプ競技にエントリーすらしていなかったようですね。エドワーズが代表になった時も、ジャンプ選手は他にはいなかったそうです。イギリス国内で、スキーのジャンプ競技がほとんど行われていないのは確かなようです。(まあ、あまり雪が降らず、高い山らしい山がない地理的条件もあるでしょうが…)。

ひるがえってわが日本は、毎回、オリンピックでほとんど全種目にエントリーしています。残念ながら出場権を取れない種目もありますが、全種目に出ようという意欲は毎回大いにありますよね。

私は、これはとてもよいことだと思います。日本では、世界の代表的スポーツのほぼすべてが国内で成立していることを意味するわけですから。

スポーツだけでなく、日本人って、バイオリンやピアノなどの音楽、バレエなどのダンス、お菓子作りや料理などの職人仕事、果ては大食い競争まで、世界のいろいろな競技会に出場して、結構いい成績をおさめていますよね。

日本国内に多種多様なスポーツや、芸術、産業、娯楽が成立し、盛んだからこそ、なせるわざだと思います。日本人の好奇心のタマモノですよね。

歴代の日本人が、外国の良いモノ、面白そうなコトを、どんどん取り入れて、自分たちでもやってみようとしてきたことの積み重ねが、いろいろなものを幅広く、わりと簡単に享受できる現在の恵まれた状況を生み出しているわけです。いわば日本語環境の「ミニ世界」を国内に作り出してきたといってもいいかもしれません。
(^_^)

このことは、職業一般にも言えるでしょう。日本国内で就ける職業の多様さというのは、世界有数ではないでしょうか。

三橋さんなどのおかげで、最近、だいぶ周知されるようになってきましたが、日本の貿易依存度の低さは、世界有数です。
戦後、日本の輸出依存度や輸入依存度は、両方ともおおむね10〜15%程度です。
この数値は国際的みれば非常に低いもので、たとえば日本の貿易依存度の高さは、2010年度は184か国中179位、2011年度は180か国中175位に過ぎません。
先進国の中では、日本とアメリカが抜きんでて貿易依存度の低い国なのです。

原油などの資源は輸入に頼っていますが、全般的にみれば、日本は世界でも有数の自己完結性の高い経済社会を作り上げてきたのです。
これは、近代日本が、さまざまな産業を外国から学び入れ、製品やサービスを国産化し、国民が多種多様な産業を担ってきたことに由来します。

日本国内に多種多様な産業が成立しているということは、人々が選べる職業の選択肢が多いことを表します。

これは大変重要だと思います。
現代では、職業の選択肢の数とは、実際に選べる人生の選択肢の数を事実上意味すると言えますので。

リベラリズムの政治思想では、選択の自由の平等な配分、つまり人々が格差なく多様な人生の選択肢にアクセスできることに大きな価値を置きます。

その観点でいえば、現在の日本は、優等生でしょう。職業という具体的な人生の選択肢が、多くの人々にとってアクセスしやすいかたちで、日本国内にたくさんあるわけですから。
(^_^)

ですが、この恵まれた状態、TPPをはじめとする経済のグローバル化のなかで、数年後には失われてしまうかもしれません。

TPPに加入すれば、当然ながら貿易依存度は高くなるでしょう。TPPは、環太平洋地域に統合された経済圏を作ろうという試みですから、日本はその一部に過ぎなくなります。現在のように、国内だけでも自律できるような、多様な産業や職業が存在する環境は失われていくはずです。

TPP推進派が好んで取り上げる理由に、「自由貿易の推進のため」というものがあります。そして自由貿易をよしとする理論的根拠に、リカードの比較生産費説があります。
各国は、比較優位な製品に生産を特化し、互いに生産物を貿易したほうが、経済的効率は高まるはずだという理論です。

これは、机上の議論としては正しいのでしょう。
しかし、現実の世界では望ましくないですよね。各国の産業構造は、少数の産業に偏り、いびつなものとなってしまうからです。

そしてその結果、各国の生計の成り立つ職業の数は減り、人々の人生の実質的な選択肢の幅は非常に狭くなってしまいます。

たとえば、日本の場合、比較優位のある産業とは、製造業の開発部門など、知識集約型のごく一部のものだけでしょう。日本国内に残り、うまくやっていける産業の種類は、かなり少なくなると思います。

理論のうえでは、人間は、国境を超えて自由に移動し、どこででも、いきいきと暮らすことのできる存在だと想定されます。
つまりグローバル化推進論者は、「TPP以後のこれからの日本人は、日本国内にこだわらず、自分の就きたい職業を求めて海外に積極的に出ていくべきだ!」とでもいうんでしょう。
でも、これ、まったく現実の人間をみていませんよね。まさに机上の空論です。

現実世界では、人間は、特定の文化を担った存在です。
言葉の面からも、慣習や制度の面からも、特定の文化の中にいて初めて十分に機能する存在です。

言語的、文化的適応能力が非常に優れており、またそれを磨く経済的環境も整っているごく少数の者であれば、国境を超えて移動し、移動先の人々と互角に競争できる力を身につけることができるのかもしれません。

ですが圧倒的多数の人々は、そのような言語的・文化的適応力を持っていませんし、経済的環境にも恵まれていません。

また、ふつう、人は、いろいろな愛着や関わりをこれまで暮らしてきたところに持っているものです。たとえば、介護が必要な両親がいたり、住み慣れた土地に深い愛着を抱いていたりする場合がほとんどでしょう。そう簡単に別の国や地域に移動できるものでもありません。

ですので、大部分の日本人は、ある産業が日本国内で成立しなくなってしまったら、それに関連する職業に事実上、就けなくなってしまいます。つまり、人生の選択肢が失われてしまうのです。

結局、TPP加入後は、多様な人生の選択肢を享受できる日本人は、ごくごく少数の非常に恵まれた人々だけになるでしょう。

圧倒的大多数の日本人にとっては、いまよりも選択の自由がはるかに少ない、窮屈な世の中で生きていかなければならなくなってしまうでしょう
(_・ω・`)ショボーン

こういうのまったく望ましくないですよね。

もう遅いかもしれないかもしれませんが、やっぱりTPP絶対反対です。
というか、「自由貿易は常に正しい」というドグマティックな前提自体、疑ってかかるべきですよね。

いつもながらながながと失礼いたしますた…
<(_ _)>

PS
月刊三橋最新号は、電力自由化の裏で進む
「構造改革ビジネス」のカラクリを取り上げました。
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PPS
TPPへの最後の警鐘、今日、発売です
(`・ω・_)キリッ

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PPPS
中野さん、よく書くなあ( ゜д゜)ポカーン こちらも、おもしろそう。
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【施 光恒】TPPで破壊されるものへの2件のコメント

  1. 古事記 より

    侵略とは、言語と文化、宗教の破壊がこれです。戦後、特に最近は団塊世代と、その子供達が日本の主流となり。日本を変革とかグローバルとかを推進するのが好きな恩知らずな国民の声が多過ぎる様に感じてなら無い。施さん、日本の為に頑張り続けて下さい。私もあちらこちらで衝突して居ります。有名大学、有名企業、有名人、は全ての分野、人格が素晴らしい訳では無い。有識者と言っても単なる専門家。せめて日本を変革するならば、本当の国を愛し日本人子孫の事を公を案じる人格の有る方々に考えて頂きたい。理想主義者の故、河合栄次郎先生は専門の隣り合う学問も出来てはじめての教授であり、一つの事しか出来無いならば専門家として大学では無く高校の専門教師として、名乗るべきと仰って居ります、人の価値、人格をレッテルや金儲けのレベルでしか判断出来無い、失礼ながらレベルの低い機械の様な人達が、世界でも優秀な歴史を持つ日本の歴史文化を破壊する教育を推進するのは大反対です。

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  2. 遠山景武 より

    素晴らしい!と言うのが第一印象です。スキージャンプとイギリス人の反応や文化の差異を平易に紹介なさる書き出しに引き込まれました。TPPについては三橋さんの本やブログに啓蒙され、チャネル桜の討論番組を色々視聴し、知れば知るほど日本政府や現政権の対応に苛立たしさと言うより怒りを覚えています。しかし正論であっても所詮は言論人の限界、まして一般国民は何らの影響力も行使できず、言わば1億総「負け犬の遠吠え」でしかありません。選挙の1票の空しさも実感です。しかし、今日の、この「TPPで破壊されるもの」は素晴らしい可能性を示唆しています。日本民族の、そして日本文化の歴史にその証拠が沢山ある事を教えておられます。異国文明や文化の流入と言うより侵略、或いは、異国の政治勢力の侵入や圧力は太古の昔から、今日に至るまで数え切れない波乱の歴史です。縄文と弥生の邂逅に始まり、仏教伝来による物部氏と曾我氏の抗争、或いは唐の律令制度の洗礼を受け・・・遂に、異国との戦争に負け、占領政策下から未だに抜けきれないでいる今、再びTPPと言う不平等条約を排除しきれずに居ます。しかし、これまでの歴史が示している通り、我が日本民族はあらゆる異物を飲み込みつつも食中毒になるどころか栄養分を吸収し血となし骨としてより大きく強くなってきました。この能力を今こそ活かすべきだと思います。最早、異文化を持ち込む勢力と抗争したり、無能な政権を批難しても時代の波は津波となって押し寄せてきます。如何に被害を食い止め、波のエネルギーを利用しパワーを吸収すべきかを、民族の知恵を結集して波を受け止め、乗り越えるか、その事に知恵と力を振り向けるべきではないかと思い至りました。腹立たしいほど弱腰、無能振りの為政者達ではあるけれど、今や彼らを批判し糾弾している時ではないと考えるのです。TPPやアメリカや中国を利用し活用する策を模索しようではありませんか。

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