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2025年10月11日

【立民の首班指名・野党一本化論の是非を問う】政策協定なき首班指名一本化は、政党政治の根幹を崩壊させる「政治破壊」である。【藤井聡】

来週以降に予定されている首班指名選挙とは、内閣総理大臣を決定する国会議員において行われる選挙です。

これまでは、一部の例外を除いて自民党(あるいは自公)の与党が多数派でしたから、与党が自民総裁に投票することで自動的に自民総裁が総理になってきましたので、この選挙に注目が集まることはあまりありませんでした。

ですが今は自民党が少数与党。しかも、昨日公明党が離脱したことで、自民党総裁が自動的に総理になるとは限らない状況となったことから、今、その行方に大きな注目が集まっています。

そんな中注目を集めているのが、立憲民主党による「玉木で一本化」論。自民党が少数派で公明も連立から外れているのだから、3つ4つの政党が一本化すれば政権交代が実現するじゃないかという事で立民が大きく主張し始めました。

しかし、この立民の主張は、「政党政治の常識」から考えれば、発言される方の品性を疑う程の至って不埒な主張なのです。

例えば公明党の斉藤氏は連立離脱を表明した昨日、「首班指名は斎藤と書く」とあえて発言したり、国民民主党の玉木氏が、自分を首班指名する可能性を示唆している立民に対してあえて「であれば(憲法9条問題や原発問題などについて)立憲民主党の皆さんが、国民民主党の政策に沿って一致結束した行動を取れるのか、ぜひ、党内調整と機関決定をしていただきたいと思います」と発言しているのは、「政党政治の常識」を尊重しているからです。

あるいは、維新の吉村氏も「立憲と国民民主が連立合意に至るなら、我々(維新)も真剣に聞く」と発言していますが、これは裏を返せば、「連立合意に至らないならば、我々は野党一本化案の話しに耳を傾けることはない」という事ですから、やはり「政党政治の常識」を尊重した判断をされている事になります。

かくして、立民が軽視、ないしは無視しようとしている「政党政治の常識」を、公明党、国民民主党、維新という各主要野党が尊重し、軽々に野党一本化をするということに慎重な態度を示しているのです。

では、ここで繰り返し述べた「政党政治の常識」とは一体何なのか―――それについて以下に簡潔に解説したいと思います。

(1)各政党は各々異なる政治理念の実現のための政治集団
まず、国政についての政党とは特定の国政上の理念を共有した人々がつくる政治集団です。だから特定政党は当然、他の政党と多かれ少なかれ異なる理念を持っています。

(2)各政党の党員は、首班指名では自分の政党党首に投票する道義的義務を負う
したがって、政党は当然、その理念が正しいと考えているので、それぞれの党首が総理大臣になるべきだと考える事になります。そして、首班指名選挙とは、国会において総理大臣を選ぶ選挙ですから、各政党党員は、首班指名では自分たちの党首に投票する「べき」存在なのです。

もし他党の党首に首班指名したいと考える党員が存在するとしたら、それは、その党員は当該の政治理念を共有していないことを意味しますので、党としては例えば「除名」することが道義的に求められる事になります。

(3)ただし「政策協定」が存在するなら、他党党首への投票も道義的に許容される
しかし、複数の政党が協議を行い、それぞれの政治理念の実現のためには協力することが必要であると「合意」された場合には、その限りではありません。一般にそうした合意内容は「政策協定」と呼ばれますが、これが取り結ばれた場合は、共同して各党の政治理念を実現するわけですから、どちらの政党の党首が総理大臣になっても、差し支えないという事になります。

したがってこの場合に限り、一方の党員がもう一方の党の党首に首班指名することが道義的に許される事になるのです。

(4)「政策協定」が不十分なまま他党党首を首班指名するのは極めて不埒かつ下劣である
以上が「政党政治の常識」です。いわば、自身の党の党首か、政策協定を結んだ他党の党首を首班指名するなら筋は通るが、政策協定が十分にできていない他党の党首に、単なる「数合わせ」目的で投票するなど、政党政治の常識を根底から破壊する極めて不埒かつ下劣な行為と言わざるを得ないのです。

その点で言うと、「政策協定なき玉木首班指名」に後ろ向きな維新、公明、国民民主はいずれも、それは単なる不埒かつ下品な権力闘争のためだけの「数合わせ」に過ぎぬと認識しているという点で、(少なくとも「政党政治の常識」の観点から)道義的に許容可能な政党だと言うことができるでしょう。

一方で、立民安住氏等は、「玉木首班指名の一本化」に向けて維新、国民民主のみならず、共産党やれいわ新選組にまで声をかけています。

その論理は「今野党がまとまれば政権交代ができる」という単なる数合わせに基づく党利党略だけにしか見えません。そこに「政策協定」がおざなりにされている様子が手に取るように分かるからです。したがって、立民のその振る舞いは政党政治の常識を裏切る、極めて不埒かつ下劣な振る舞いだと言わざるを得ないのです。

豊かな日本のためには、秩序ある道義に基づく政治が必要であり、その政治は今、政党政治で展開されているのです。

そうである以上、政党政治の常識を破壊する立憲民主党の振る舞いは、日本の政治を破壊し、日本の明るい未来そのものを破壊する深刻かつ重大な問題を抱えた政党政治破壊行動に等しいものと言わざるを得ません。

国民民主党、公明党、日本維新の会の皆さんは言うに及ばず、立憲民主党を含めた全党員の皆さんには、政治理念の「中身」こそ違えど、政党政治を行うものならば誰もが守らねばならぬ政党政治の原点、基本中の基本であるその常識に立ち返り、国会での実りある議論を展開されんことを、心から祈念申し上げたいと思います。

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