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2025年10月2日

【オールドメディアにはご注意を!】「進次郎、党員票で高市氏に圧勝」という特異な「読売調査」をチェック。結果「1000回に一回もない程歪んだ調査分析」である事が統計学的に判明。【藤井聡】

自民党の総裁選。その第一次投票の半分を占める「党員票」(あるいは、党員党友票)がどうなるのかは、選挙結果を決定付ける極めて重要なものです。

ついては、これについていくつかのメディアが、「自民党員・党友」の皆さんを対象としたアンケート調査を行っています。直近の日程では、以下の3調査が行われています。

「共同通信」 9月27・28日
「読売新聞」 9月27・28日
「日本テレビ」9月29・30日

ただし、報道では、一部調査の全員の数値の公表が確認できなかったので、取りいそぎ、今、「総裁選の軸」と言われている高市早苗氏と小泉進次郎氏に対する、「党員・党友」対象の支持率の調査結果は、以下となっています(注1)。

――――――――――――――――――――――――
      読売新聞  共同通信 日本テレビ
サンプル数 (519人) (180人) (1210人)
――――――――――――――――――――――――
高市早苗   28%   34.4%   35%
小泉進次郎  41%   30.5%   28%
――――――――――――――――――――――――

ご覧の様に、共同と日テレは、「高市氏」が優勢、一方で、読売は逆に「小泉氏」が圧倒的優勢、となっています。

もちろん、こういう調査では「サンプリング」といって数百人から千人前後にランダム(無作為)に選んでして答えて貰う、という方法で行われていますから、結果が調査によって違っているのは至って普通です。

しかし、上記の表からも明らかなように、共同と日テレの結果は大きな差は見られませんが、読売については、この両者の結果から「激しく」異なっており、共同・日テレ調査に比して「高市氏」の支持率が異様に低く、「小泉氏」の支持率が異様に高い結果となっています。

共同・日テレ調査に比して読売は、高市氏については「7%程度も低い」一方、小泉氏については「10~12%も高い」結果となっています。

もちろん、サンプルの取り方の違いによって、この読売調査の様な事が「絶対無い」ということは言えませんが、こんな事は「殆どあり得ないのでは!?」と疑われるような怪しい結果であるようにも思われます。

特に、日テレの党員党友調査は、2024年の総裁選の時も、非常に精度高く実際の党員票を予測していた事が分かっていますから、その点を踏まえると今回の「読売調査」の結果の信憑性が強く疑われるものとも考えられます。

ホントにこんなことが確率論的にあり得るのかどうか…ということを調べる方法として、人類は「統計学」を長い年月をかけて編み出してきたのでした。

ついては筆者はこの度、こういうことがどれくらいあり得る事なのか/あり得ないことなのかを、日テレ調査には、前回同様今回においても一定の信憑性があるという前提の下「統計学的」に調べてみる事にしました。その際の詳細は(注2)として文末に掲載しますが、その結果についてだけ言えば、以下の様な事が明らかとなりました。

まず、進次郎氏の得票率について分かった事は、以下の様な内容でした。

『「日テレ調査」の小泉得票率28%を基準とした場合、
サンプル180の調査で「小泉得票率30.5%」という(共同通信調査のような)結果になるようなことは、確率論的に十分あり得る。
しかし、サンプル519の調査で「小泉得票率41%」という(読売新聞調査のような)結果になるようなことは、確率論的にいって「千回に一回もない」くらいにあり得ない話である』

次に、高市氏の得票率については、以下の様なことが統計学的に明らかにされました。

『「日テレ調査」の高市得票率35%を基準とした場合、
サンプル180の調査で「高市得票率34.4%」という(共同通信調査のような)結果になるようなことは、確率論的に十分あり得る。
しかし、サンプル519の調査で「高市得票率28%」という(読売新聞調査のような)結果になるようなことは、確率論的にいって「五百回に一回もない」くらいにあり得ない話である』

つまり、どういう理由があるのかはこのデータだけからは分からないものの(注3)兎に角、読売の調査は一般的な調査よりも「過剰に低い高市支持率」を出してしまう特殊な傾き(あるいはバイアス=歪み)を持つと同時に、「過剰に高い小泉支持率」を出してしまう特殊な傾き(あるいはバイアス=歪み)を持つ調査であることが、統計学的に示されたわけです。

これは、読売新聞の様な大きな公的報道機関の調査としては、大変に深刻な問題です。

なぜなら、そもそもこうした「党員票の結果」は、「議員票」の動向にも影響を及ぼすものだからです。

議員の中には、「国民・党員が小泉さんを支持してるのなら、自分も小泉さんにしよう」だとか「国民・党員が高市さんを支持してるのに、それに逆らって小泉さんに投票するというのは自分はおかしいと思うから、高市さんでいいだろう」だとかと考え、投票する候補者を決定する事も十分に考えられます。

そう考えると、「高市下げ、進次郎上げ」の特殊な傾き・バイアスを持つ世論調査は、議員票の動向にも不当な影響を及ぼす、本来なら公表を控えるべき「不当な調査」である疑義が濃密にあるです。

したがって総裁選にご関心の方々におかれましては、中でもとりわけ自民党国会議員の皆さんにおかれましては、読売調査だけは考慮「外」とし、基本的に「無視」することが統計学的に正当であるという点を是非ともご理解頂きたいと思います。それはいわば、少なくとも統計学的にいうのならば「フェイク」の疑義が濃厚なものなのです。

いずれにせよ、オールドメディアの世論調査には十分にお気を付けください…。

(注1)共同通信のサンプル数は記事では報告されていなかったので、読売調査において報告されている自民党支持層サンプル数に対する自民党員の比率を掛け合わせて推計した)

(注2)統計的にあたっては、進次郎氏(あるいは、高市氏)を支持するか否かのダミー変数(0か1の変数)を「従属変数」として、読売新聞調査か否かのダミー変数、共同通信か否かのダミー変数を「説明変数」とした「二項ロジットモデル」を推計した。推計にあたっては、共同、読売、日テレ調査それぞれのサンプル数と高市支持率、進次郎支持率のデータから、三調査に回答した回答者全員のデータセットを作り、上記従属変数に対する説明変数の影響の有無を、各ダミー変数の係数を推計し、その係数の統計的有意性を確認することで検定した。その結果が下記となった。

表1 小泉進次郎を支持するか否かについての二項ロジットモデルの推計結果
――――――――――――――――――――――――
            係数  t値  p値
――――――――――――――――――――――――
読売新聞ダミー変数   0.585  5.33 <0.001
共同通信ダミー変数   0.127  0.73 0.466
――――――――――――――――――――――――

表2高市早苗を支持するか否かについての二項ロジットモデルの推計結果
――――――――――――――――――――――――
            係数  t値  p値
――――――――――――――――――――――――
読売新聞ダミー変数   -0.327 -2.84 <0.005
共同通信ダミー変数   -0.023 -0.14 0.893
――――――――――――――――――――――――

これらの表1、表2より、共同通信ダミー変数は、ともにp値が0.1以上の水準であり全く統計的有意では無かった。このことは、共同調査と日テレ調査との間に、進次郎、高市氏の双方について傾向差は存在しないことを意味している。
ところが、読売新聞ダミー変数は、小泉進次郎の支持動向に対してプラスの係数「0.585」という〝バイアス〟を持っており、かつ、そのバイアスのp値は0.001よりも小さい、つまり、「1000分の1」よりも小さい水準となっている。これは、読売調査における「小泉進次郎アゲ」(過剰に上振れさせるの意味)のバイアスが存在しないと考えた時に、0.585という「大きな」係数が得られるようなことは「1000回に一回も無い」という検定結果を意味している。
 さらに、この読売新聞ダミー変数は、高市早苗の支持動向に対してマイナスの係数「-0.327」という〝バイアス〟を持っており、かつ、そのバイアスのp値は0.005よりも小さい、つまり、「500分の1」よりも小さい水準となっている。これは、読売調査における「高市早苗アゲ」(過剰に下振れさせるの意味)のバイアスが存在しないと考えた時に、-0.327という「マイナスの大きな」係数が得られるようなことは「500回に一回も無い」という検定結果を意味している。

(注3)読売調査がどの様に行われたのかについては、下記のように記載されています:
「【調査方法】9月27~28日に、コンピューターで無作為に作成した固定電話と携帯電話の番号に対し、自動音声による調査で実施。9195人が回答し、自民党支持層3143人の回答を集計、分析した。」https://www.yomiuri.co.jp/election/yoron-chosa/20250928-OYT1T50086/
この記述だけでどの様にしてバイアスが生じたのか不明ですが、固定電話と携帯電話の比率が母集団と乖離していた可能性や、年齢性別階層の校正がサンプルと母集団との間の乖離についての適切な補正がなされていなかった可能性等が考えられます。

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