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2014年10月16日

【三橋貴明】続・アメリカの要望

From 三橋貴明@ブログ

IMF(国際通貨基金)が、
「先進国だけで1兆ドル(約110兆円)の「需要不足」を抱える」
と、極めて重要な事実を指摘してから、そろそろ一か月が経とうとしています。渡邊哲也氏がよく指摘していますが、IMFとは要するに「アメリカ」です。

どこで聞いたのか忘れてしまいましたが、アメリカの学者は、
「環境に応じて、論調を変えることで評価される」
そうでございます。まあ、全部が全部そうだとは思いませんが、ポール・クルーグマン教授などを見ていると、確かに日本の学者と比べると環境変化への適応力が高く見えます。

アメリカ政府も、同じなのでしょうか。
少なくとも、政府の政治家は学者よりも環境変化への適応力を持っていなければ、その国は立ち行かないでしょう。政治の世界を見ても、やはりアメリカの政治家は日本の政治家と比べて(少なくとも指導層は)適応力が高いように感じられるわけです。もちろん、悪い方に変わるケースも過去には多々ありましたが。
わたくしは、別に反米でも何でもありません。それどころか、アメリカの政治家や指導層の「国益」や「安全保障」を追求する姿勢については、心から尊敬しています。無論、昨今はウォール街に代表される「企業」のロビー活動が凄まじく、「アメリカ国民」のための政治が行われないケースも目にしますが。
「とにかく、アメリカは素晴らしい。アメリカを全面的に見習うべき」
といった感覚の持ち主を「親米」と表現するのであれば、もちろんわたくしは親米家でも何でもありません。

それはともかく、アメリカの財務長官やIMFが、世界経済の問題の根幹を「需要不足」と認識し始めていることは、これは世界にとっていいことだと思います。

『米財務長官、通貨安競争の回避と世界の需要押し上げを要請
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKCN0HZ2C620141010
ルー米財務長官は10日、世界の需要押し上げに注力するよう世界各国の首脳に求めた。さらに、景気や財政状況が堅調な国々に対し、成長支援に向け一段の措置を講じるよう要請した。また為替相場について、主要国は競争的な通貨切り下げを回避するという合意を順守する必要があると訴えた。
ルー長官は国際通貨金融委員会(IMFC)への声明で 「弱い需要の伸びは、多くの国で見られる慢性的な経済不振の元凶だ」と指摘した。
そのうえで、成長支援は「とりわけ、対外収支が黒字で、財政が世界の調整を支援できる柔軟な状況である国に課された義務だ」と強調した。ドイツを念頭に置いた発言とみられる。
その一方で「より力強い成長を実現するために需要と供給面の改革を同時に進める必要がある」として、欧州の国々は経済の生産性を改善する必要があると指摘した。
日本については、日銀がデフレサイクルを解消しつつあり、日本は慎重に財政健全化のペースを調整する必要があるとの見解を示した。
また、中国は市場が決定する為替相場への移行と金融部門リスクへの対処が不可欠と語った。』

より細かく書くと、ルー財務長官は、9月10日の国際通貨金融委員会において、日本について以下の通り語っています。
「日銀の金融政策はデフレ脱却と経済成長を支えている。しかしながら、政策当局者は財政再建のペースを慎重に調整し、成長を加速させるような構造改革が求められる」
何で「構造改革」なのか、という話は置いておいて、とりあえずルー財務長官は日本の政策当局者に、
「財政再建のペースを慎重に調整するべき」
と、まことにもっともなことを言っているのです。要するに、消費税再増税の問題です。
また、IMFCの声明では、各国の財政出動について、
「成長と雇用創出を支援するために、国内総生産(GDP)比で持続可能な範囲で柔軟に実行すべき」
と、提言しています。

消費税増税について、
「国際公約だから」
などと、意味不明なことを平気で口にする政治家や官僚がいます。そもそも、消費税増税は純然たる我が国の「内政問題」ですから、本当に「国際公約」とやらが日本に増税を求めていたとしたら、それは内政干渉という話になります。いつから我が国は、国内問題である「税制」について、外国「様」に従うような国に成り果てたのですか。

無論、増税推進派の官僚や政治家が、国民を黙らせるために「国際公約」というレトリックを使っているに過ぎません。

そんなことを言うならば、IMFCやアメリカは、我が国に「財政再建のペースを慎重に調整するべき(=消費税増税の延期、凍結)」さらに「財政出動で成長と雇用創出を支援するべき」と言っているわけです。

ガイコクガー、アメリカガー、コクサイコウヤクガー、などと、属国根性丸出しで増税を推進しようとしている人は、アメリカやIMFの要望についても「襟を正して」応えてくれるのでしょうね、きっと。

いずれにせよ、アメリカやIMFが何を言おうとも、我が国は消費税再増税を凍結し、失速した景気を持ち直させるための緊急経済対策を実施するべきなのは言うまでもありません。

PS
このVideoには、一部の人にとって不快な情報が含まれています。
ご覧になる場合は、自己責任でお願いします。
http://www.keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_CN_mag.php

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【三橋貴明】続・アメリカの要望への3件のコメント

  1. あまき より

    日本では接客訓練で「お客さまは背中でお訴えになる」みたいなおもてなしの基本をまず教わりますよね。日本の航空会社に乗った外国人が何も言わないのに乗務員からすっと毛布を差し出されて驚いたとか、とにかく相手の気持ちに立って喜んでもらうための努力を惜しまない。いつもあなたが言っておられる通りで、アブラ関係カネ関係、カタナ関係の力学がああしてこうしてこうなって、みたいな類いのことは間違いなくあるとは思うんですが、その作用をただ一方的に受けて変化を迫られているというわけでもどうやらなさそうだと、安倍政権を見ていて最近そう思うようになって来ました。つまり、相手が欲しいと言い出す前に毛布を差し出す式のこれをTPPをはじめとする交渉でやって来たんじゃないか。すでにこちらが毛布を用意しているのを相手は先刻承知で、どうせ貰えるのならいいものを寄越せと言おう、そんなのは時代遅れでいまどき誰も喜ばないよといったら必ずいいものを熨斗つけて持って来てくれるだろうと、そう相手に値踏みされるだけの足もとを見られているのではなく、こちらから見せて来てしまっているんじゃないかと。おもてなしは日本人のお家芸で、外国人を「お迎えする」という習慣もまた明治以来の国を挙げてのお家芸なわけですし。それから、外国全般、とりわけアメリカには個人的にあまりよくない感情を持っていますが、三橋さんの記事にもあるように、アメリカほど日本について知悉した人材と分析情報をもった国は他にないのではないかとも思われ、胸中なかなか複雑です。いかに謀略と対決するかという議論に早く進みたいものですが、それより前に、自ら胸あきを寛いで臍下丹田をあらわにするような、不見転のようなふるまいを決して交渉担当者にさせないよう、それから朝令暮改はエリートの恥には決してならない、特に国を守る政治家には必要なことだということも、差し出がましい言い方だけど東京大学法学部はよく教えてほしいです。

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  2. ぬこ より

    我らが宗主さまが、日本に何か要求してくる時は、何かの利権を求めている時なのでせうか?財政出動&外資規制緩和(第三の矢、TPP)で日本の需要を喰いまくろうちう魂胆がどうせあるのでしゃうね。日本国はデフレ脱却しても、そこで米国籍建設業者(戦後復興お得意のベク●ルとか)雇用されるのが、TPP加盟国の米国籍の低賃金シナ労働者だったら笑えますわよね。それでも、日本のデフレ脱却には必要なのでせうか?今の奴米政権にグローバル化を否定する力強さがあろうはずもなく。国栄えて民滅ぶ。その煙り上がらぬ民の竈… 民の涙で墨が湿って居るからなのん?

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  3. 神奈川県skatou より

    自分にはなぜ日本がデフレなのか不思議です。日本人の消費性向はそもそも、というと憶測ではありますが、より良いもの、確かなものを選びがち、この時代においても外国産食材はなかなか買おうとしない、また安さでなく、品物に価値を見出す傾向があるはずだと思うからです。趣味な世界でならば、スポーツ自転車のフレームは一番高いモデルから売れるとか。それでなくても職人技の逸品とか言われると、どんなジャンルでも自分の生活にオーバースペックなのに喜んで所有したがる。日本の男性は顕著ですね。なぜに今の日本が安物、安物といくのか。それは経済的な苦しい選択肢、つまり収入がボトルネックなのではないかと疑われるわけです。世代の違いがあるやもしれません。すくなくとも子育て世代はカネがあるなら、よく買い、よく食べ、よく動き、本来はもっと活発に消費活動の中心になっているはずだと思うのです。

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