From 藤井聡
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●●月刊三橋最新号のテーマは「日本にエネルギーが危ない!」
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電力インフラを舞台に行われるレント・シーキング。
しかも、そこに中国企業が、、、
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この週末,NHKで「未解決事件」という番組で,尼崎連続殺人死体遺棄事件,いわゆる「角田美代子事件」が取り上げられました.
この事件は,角田美代子によって、15年という長い年月の間に、分かっているだけでも7つの家族が餌食となり,ガスバーナーで体を焼くなどと言った「虐待」が繰り返され、分かっているだけでも7人が殺され、3人が行方不明となったものです。また,この10人以外にも複数の人間が殺されたのではないかと言われている事件です.
首謀者の角田美代子が自殺したため,今は,その全容解明は困難となっているこの事件に対して,長期にわたる包括的,徹底的な取材をベースに,その事件の概要をとりまとめた番組が90分にわたって放映されました.
この事件については語るべき側面・論点がいくつもありますが,この番組をみて改めて強く感じたのは,この角田美代子事件は,文字通り,「人間社会の縮図」なのだというものです.
この事件は,次の様なものです.
<1>角田美代子は,ターゲットとした家族に入り込み,
<2>カネを巻き上げる弱者を作り出し,
<3>その弱者からカネを巻き上げる「強力な組織」を,暴力とカネを使って,つまり(人間の弱みである)恐怖と欲望を上手に使って作りあげ,
<4>搾り取れるだけ搾り取って,もう何もとれなくなれば,その弱者を殺し,
<5>そして,次のターゲットとなる家族を探し,<1>に戻ってこれを繰り返す.
こうやって10人以上もの,普通の日本人が徹底的な虐待の上殺められたのであり,その残虐非道ぶりは日本の犯罪史においても希有なものとして,巨大なインパクトを現代日本人に投げかけたものと思います.
ただし,この事件そのものは希有なものであるとしても,権力者が弱者から搾取するという,この<1>〜<5>の構図それ自体は,極めて「オーソドックス」なものです.
古くは「植民地政策」は文字通りこれですし,その現代版とも言いうる,「超広域」な「過剰な資本主義」もまた,この構図を色濃く胚胎しています(例えば「ダーウィンの悪夢」をご覧ください:http://www.youtube.com/watch?v=CGTqVOfo4wk).
あるいは,<3>について言えば,「組織」というものには常に(それが経済的なものであれ,社会的なものであれ,学術的なものであれ,政治的なものであれ),そういうものである危険性を孕んでいます.
当方は,この角田美代子事件のこの番組を見て,実に様々な「人物」の顔や様々な「組織」の名称を思い起こし,彼らの所行が如何に角田美代子「的」であるのかをつぶさに反芻しました.
こうした反芻は,角田美代子的な人物がたくさん居るという事を通して角田美代子の罪の重さを「減ずる」ものでは一切ありません.
そうではなく,角田美代子の罪の重さをして,当方が思い起こした様々な人物や組織の罪の重さを改めて噛みしめたのです.むしろ,角田美代子事件で搾取された「富の量」や不幸のどん底にたたき落とされた家族の「数」,そして殺められた人々の「数」を考えれば,当方が反芻した諸人物や諸組織は「より深刻」な罪を犯しているとすら言うことができるでしょう.
....ただし残念ながら,筆者がここで指摘している問題は,角田美代子事件の関係者を罰することが出来る様に,簡単に罰することなどできません.
なぜなら,我々人類が編み出した「罪を裁くシステム」そのものの構築や運用そのものに関わる罪は,「そのシステム」によって裁くことができないからです(!).
....といったこうした議論こそが,「政治」のど真ん中で,西洋で言う所の「神」の下で,日本で言うところの「お天道様」の下で,展開されなければならぬものの筆頭なのではないか,とすら思います.
なぜなら,角田美代子事件に潜むこの<1>〜<5>の構図こそが,我々「人類」が戦わなければならない「最大の敵」といって,決して過言ではないから,であります.
....ちなみに,(小学生の息子を寝かせた後で)この番組を見終わってからの我が家族の団らんの話題は,「もし,角田的な輩に取り入られたら,我が家族はどうするか(!)」というものでしたが,これがまた,なかなか盛り上がり,楽しく(?)意義深いものでございました.
(※ これっていわば「藤井家強靭化計画のための脆弱性評価」ってやつになりますね 笑)
...ってことで是非皆様も,ほのぼのとしたお茶の間の団らんの中で,たまにはこんなきつーーいネタでトークなさってみてもなかなか一興かもしれません...という,少々非・角田美代子的な雰囲気の中で,今週のお話をおしまいにしたいと思います(笑).
では,また来週!
PS
全ての政治論,経済論は,長らく考え続けられた安定的な「思想」の上に作りあげられなければなりません.だから,今日みたいな話と強靭化ってのは一直線に繋がるものなのですが....そのあたりについては,こんど発売になります下記書籍を是非ご参照ください!
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PPS
電力自由化の裏で進んでいる危ない現実とは
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【藤井聡】尼崎連続殺人事件の教訓への3件のコメント
2013年6月11日 2:11 AM
藤井先生、一体、どのくらいの人達が、先生の文章のように、冷静に分析できるのでしょう?考えてみると、私自身は、自覚なく弱者の立場に居た事が多いです。小学校の入学式の終わりに、校庭で整列する時、クラス毎ではなく、子供会のグループ毎に並ばなければなりませんでした。子供会の存在を知らなかった私は、どのグループにも、入れず、困って泣いていました。子供会の名簿に載らないのは、父の病気が原因だったのですが、その事を教えてくれる人は居ませんでした。貧しい家庭で、給食費を払って、家でも食事という事は許されず、食卓から外されて、なんとも寂しい子供時代でした。母が私を殴りながら、「何、その目は。あんただって、自分の子供に同じ事をするんだよ。私だっって、南郷(札幌市)のおばあちゃんに、デレッキで殴られて育ったんだから、・・・。」『そうなりたくない。同じになりたくない。』と、思っていたのに、近所の子に母が私にする事をやってしまっていました。自分で自分を止められなかった、・・・。その子のおかあさんに、叱られました。とても強い調子で、・・・でも、言葉だけで、・・・敬語で、・・・。4歳か5歳の頃のことです。7歳位まで、私の心の大きな部分で、繰り返し考えて、結婚とか子供とかは、ない事にしよう、もう、2度と暴力を振るう立場には、なりたくないと、決めてやっと、この問題を心に収める事ができました。でも、何か間違ってたらしくて、反論とかできなくて、・・・そこを見抜かれて、理不尽な事が多くて、・・・。 何故、今更、こんな事かいているのか、・・・。漠然とした、気掛かりがあります。景気が良くなるのは、歓迎します。雇用が満たされる事を望んでいます。でも、'80年代の文化の再来は嫌です。 問題は、私が抱えている何かなのでしょう、今現在、私には、それが、分からない。弱者の立場だったと認識するのは、難しかったです。 込み入った話で、申し訳ありません。 野口 英巳
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2013年6月11日 6:19 AM
藤井先生はじめこのサイトに出稿される先生方が私にとっては雲の上の人でありながら上記のような論文や御本を見るにつけ失礼にも勝手に親近感を持っているものの一人であります。私は大阪で自動車関係のサービス業に従事する一商売人でして、柄の悪い人たちは毎日のように来ます。(拒否してます) 各電話にボイスレコーダーを取り付けていて時々電池のチェックまでやっています。警察を呼んだり相談に行ったりすることも時々あり怖い思いをすることもあるんですが、それにしてもあの事件は闇が黒すぎて・・たぶん知らない間に似たような人を何度かは取引拒否したりしてるんだとは思いますが・・。「なぜなら,角田美代子事件に潜むこの<1>〜<5>の構図こそが,我々「人類」が戦わなければならない「最大の敵」といって,決して過言ではないから,であります.」 この部分、とても共感します。先日の「忘れられた日本人」ですが、本当にこれが日本人だと思います。私は子供がまだまだ幼いですが、父としてこうありたいと本当に思いました。本当の日本人は決して<1>〜<5>の構図ではありません。その日本人の中の日本を守るべき立場にある人には本当に「忘れられた日本人」を認識していただいてその人たちが食われるような国になってはいけないという意識を持っていただきたいと思います。私は先生のように思想戦で戦うといっても戦い方もどこで戦うべきかもわからない人間です。実際私が直接誰かと戦っても無意味ですし、(大阪では「維新」の同調圧力もあったりして)悲しいやら腹立つやらで言い負かしたり(相手は負けたつもりはないみたいです)するんですが今はこの辺はやめています。軽症そうな(親しい)人だけ喧嘩しないように説明はしますが。ガチガチの人たちは無意味です。ですから、私にできることは先生のような方々を応援することだけだと思っています。よろしくお願いします。
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2013年6月12日 3:15 PM
「藤井家強靭化計画のための脆弱性評価」=45_家族の人数っていうところでしょうか?w
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