政治

日本経済

2023年6月13日

【室伏謙一】まとまりのない骨太の方針原案に見える霞が関の能力低下

 経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針2023の原案が先週6月7日に提示されました。勿論それ以前から骨子が提示され、関係府省の関係部局間での協議は行われてきているので、この日に初めてというわけではありませんが、公にされたのはこの日です。

 骨太の方針は今後の経済財政運営の指針となるものであるばかりではなく、来年度、令和6年度予算編成の骨格となるものでもあります。加えて、「○年度にプライマリーバランス黒字化を目指す」といった財政規律も記載され、財政規律やその達成すべき年度の根拠ともなるものです。その点では、時の政権、政府の財政運営を縛るものでもあると言ってもいいでしょう。
 
 さて、その今年の骨太の方針の原案、その中身はどうかと言えば・・・緊縮推進と旧態依然とした新自由主義政策が詰められたガラクタ箱のようなもの。しかも、内容にまとまりがなく、関係府省が出してきたもの、追記してきたものをただつなげただけ、霞が関の業界用語では「ガッチャンコ」しただけのようなものになっています。読んでいくと相矛盾する内容もありますし、とにかくたくさん入れよう、とにかく骨太に書き込めばいい、そうした意図も透けて見えます。

 では、なぜそんな状態になってしまっているのかと言えば、霞が関の取りまとめ能力、調整能力が著しく低下しているから、ということだと思います。要するに、官僚の質や能力が低下した結果であるということです。

 財務官僚の質の低下については、これまでも『表現者クライテリオン』の私の連載「徹底検証!霞が関の舞台裏」等でも解説してきていますが、財務省に限らず、霞が関全般に言える話だということです。

 骨太の方針2023はまだ正式決定したわけではないですし、責任ある積極財政推進議連の議員の方々を中心に、私もお手伝いをして、その内容の正常化に向けた攻防が行われている最中です。そうした攻防の舞台裏や骨太の詳細な中身の問題点については、私のオンラインサロン「霞が関リークス」の8月号で解説しますので、そちらにご期待いただくとして、皆さんに覚えておいていただきたいのは、調整・取りまとめ能力を失った霞が関の実態と、そんな連中が作成、取りまとめた、「駄文」が今後のこの国の経済財政運営の指針となってしまう危険性があるということです。そうさせないために、現在攻防が続けられていますが、是非、責任ある積極財政推進議連をはじめとした、積極財政派議員の活躍を応援していただければと思います。

 なお、同議連では、先月、なんとジョセフ・スティグリッツ教授をお招きして特別講演が行われました。主流派経済学者や財務省にとっては不都合な真実が散りばめられていますので、こちらも是非ご覧いただき、拡散していただければと思います。(字幕もしっかり付いていますし、より正確なものとなるよう、字幕は、当日打合せ段階から出席した私の方で手を入れています。)

https://www.youtube.com/watch?v=qX0cJaHkKVY 
 

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【室伏謙一】まとまりのない骨太の方針原案に見える霞が関の能力低下への5件のコメント

  1. 地方のみならず、いまや日本そのものが途上国化 より

    まったくおっしゃる通りですね。
    公共交通に独立採算を求めるような痴呆国家は
    おそらく自民に籠城された日本だけでしょう。

    国立大にも第一次産業にも国土防衛にも各国
    自立と威信を賭けて莫大な公金をつぎ込み堅持。
    国内投資をケチらない。これが本当の先進国。

    ましてや熊本ほどの政令市でケチってどうする。

    運賃収入7割附近をどの国でも目指します。
    渋滞対策にも福祉対策にもなるとの考え方です。
    黒字なんて目指してたら日本より人口密度の低い
    ヨーロッパの優れた都市交通公共交通、あらかた
    消えてなくなってます。

    以前、フィナンシャルタイムズでしたか、
    ニッポンの新幹線は優秀であると褒めました。
    安全だから?定時だから?快適だから?ノー。
    補助金なしで立派に運営できてるから、だそう。

    東急や阪急が当たり前だと思う日本人が大間違い。
    国鉄分割民営化のときはさすがに手本にしなかった
    と思ったら、何と国は近鉄が手本になると考えた。
    この自縄自縛が40年続いていまや完全に日本人の
    思想に染みついちゃってます。

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  2. 利根川 より

     びっくりするかもしれないけれど、未だに公共事業悪玉論を唱える人がいるんですよ。

    <2023年 6月9日 財政金融委員会 立憲 福田昭男夫議員>

    「日本の財政は1990年代初頭までは非常に安定しておりました」

    「その当時はまだ財政赤字は100兆円を下回っておりました」

    「ところが、バブル崩壊以降、公共事業630兆円を投資したことによって、そのまま赤字財政に転落、財政を圧迫してきたのが歴史」

    日本銀行が発表している「需給ギャップ」によると、全期間の7割に当たる28年がマイナス、つまり総需要が供給力を下回った状態だとのこと。当時、アメリカの要請に従って金融政策に失敗してしまったせいでバブルが発生・崩壊、

    民間個人「リストラされてお金使えません」

    民間企業「バブル崩壊で借金返済大変なのでお金使えません」

    政府「財政再建です。お金使いません」

    その結果、”誰も金を使わなくなった” 税収というのは利益の一部から徴収されるものなので、誰もお金を使わないで利益が上がらなければ税収が鈍るのは当然のことでしょう。

    ※貨幣を発行できる政府が税収のことばかり気にしているのはアホらしいですけどね

    当たり前ですが、リストラされて収入が減った個人が「支出を増やすこと」はできませんし、営利団体である民間企業が

    国民の財布のひもが固くて売り上げが見込めない時期に大規模な投資なんてしません

    個人や企業がお金を使わなくなった分だけ政府がお金を使わないと

    「貨幣経済が崩壊してしまう」

    だから、公共事業630兆円を投資したわけだ。さて、この630兆円ですが、先ほどの需給ギャップをみると公共事業をやったおかげでその後は徐々にプラスに向かっています。つまり、この630兆円のおかげで

    お客が増えた(需要が増えた)

    わけですよ。お客がいないと(需要がないと)商売にならんのだから、この630兆円は必要な支出だったんですよ。むしろ、

    需給ギャップ全期間の7割に当たる28年がマイナス

    なのだから、足りてなかったという見方すらできる。
     いったんは需給ギャップが解消に向かったものの、98年あたりからまた下落。そうですね、消費税5%への増税が行われました。

    増税とは消費(需要)を減らす効果がある

    のだから、まあそうなりますよね。
     で、この30年間、なんとか政府がお金を使わないで(貨幣を発行しないで)個人や企業にお金を使わせて需要不足を埋めようとしてきたわけですが、

    個人←実質賃金が低下し続けているのでない袖は振れない

    企業←個人がお金を使わないので売り上げがあがらないので投資の必要がない

    無理だったわけだ。だから、最近は緊縮増税派ですら「必要な所には政府もお金を出す必要がある」として、諮問会議のお友達の会社への支出を増やすことは認めているわけですよ(笑)
     インフラの老朽化や災害対策の必要性が叫ばれる中、カビの生えた公共事業悪玉論とかやめてもらっていいですかね(怒り心頭

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  3. 利根川 より

    罪務省「世の中の富が全部で100あって、20しか得られない人と80得られる人がいた場合、20しか得られない人は努力が足りないだけ」

    罪務省「学びなおし(リスキリング)させて努力させれば皆が80得られるようになる」

    罪務省「リスキリングして稼げる仕事にどんどん転職していけばいい」

    こんなことを言っているわけですが、最近の日本の特徴は社会にとって重要な仕事に就いている現場の人間ほど収入が低い(苦笑い)というのがあります。
     例えば育児・介護は共に知識や技術が求められる職業ですが、近年多少は改善されたとはいえ年収1000万は超えないでしょう。逆に、日本経済を30年にわたって沈滞させてきた国会議員たちは国会議事堂で「目を開けたまま寝てても」1000万以上は軽く稼いでいるわけですよ。
     ちなみに、

    収入なんて関係ない!俺はこの仕事が好きでやってんだよ

    という方も見かけますが、「農業国防研究所」の動画を一度見ていただきたいですね。どんなに好きでも、どんなにモチベーションが高くても、きちんと収益が上がらないと続けられないのですよ。こんなカネの話なんて政治がしっかり仕事をしていればやる必要なんかないんですけどね。
     で、財務省の言う通り、儲けが大きい職業にみんなが転職していったとしましょう。その場合、

    収入は低いけど社会にとって重要な仕事って誰がやるの?奴隷?

    その答えはコチラ⇓

    「特定技能の長期就労2分野から12分野へ拡大」

    いまだに外国人を低賃金で使い倒そうという方針は変わっていないそうです。これに賛成する野党は二度と「人権がどうたら」とか言わないでもらいたいですね。
     特定技能の長期就労というのは元々は

    自民党「技能実習制度は国際貢献のための制度」

    自民党「外国人に技能を身につけさせて母国の発展に貢献してもらうことを目的としたもので、移民受け入れではない」

    と自称保守たちに説明していたわけですが、

    自民党「移民受け入れはしないといったな、あれは嘘だ」

    ということだそうですよ。この上さらに自民党を支持するのであれば最早”自称”することすらおこがましい保守(笑)ということになりますね。
     ちなみに、

    「日本は人手不足!」

    なんて言われていますが、2020年の労働力調査によると日本全国で無職の者は108万人、内15歳~34歳までの無職者数は69万人とのことで、人手はあるんですよね。ただ、ひたすら実質賃金が下げられていくのとはうらはらに責任ばかりが重くのしかかる社会になったせいで

    嫌になってゴールしちゃう人

    が出てきちゃってるわけですよ。人手不足なのではなくて、安くていざとなったら使い捨てできる人手が足りないというわけです。
     これを言うと「企業経営者けしからん」という話になるわけですが、三橋TV第362回の森井じゅん先生のお話を聞けばわかるように、税制が悪いせいで企業経営者はそうせざるを得ないというわけです。そうせざるを得ない状況にしているのは皆さんが選んだ政治家たちです。
     これを言うと維新の会に乗っかって「政治家や公務員の給料を下げろ」とかやりだす方が出てくるわけですが、日本は今、需要不足なので

    「他人の足を引っ張るのではなく、底上げをしましょう」

    ということでしてね。
     以前、日本の医療体制はボロボロで外国人を受け入れたとしても責任が持てないというお話をしたと思いますが、

    安藤裕さん「日本語を教える教室のない空白自治体は4割超」

    安藤裕さん「小中などの学校では児童生徒の3割超が必要な日本語授業を受けられない」
     
    教育について同じ状況なようです。まあ、日本語がわからないとなると授業にはついていけないし、そうなれば進学も難しい。すると労働単価が高い仕事にはなかなかつけない。最後には罪を犯すしか道はなくなる。
     政治家・官僚、あるいは外国人株主なんかは安い労働力が増えればいいだけなので、それこそが望むところなのかもしれませんが、治安悪化の影響を受ける日本人にも、悲惨な未来しか待っていない多くの外国人にも損しかないわけで、誰得なのかと。

    山本太郎議員「日本の野党は弱者を守るとか言いながら弱者(労働者)を足蹴にしてきたのだから人気なんて出るわけがない」

    その通りだと思いますよ。
     さらに言えば、「先進国は途上国から資源の搾取をしている」と批判されることがありますが、

    「優秀な人材まで海外から搾取する」

    と宣言しているわけで、もはやゲロ以下の臭いしかしない。

    吐き気を催す邪悪

    っていうのはこういうのをいうのか(苦笑い

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  4. 利根川 より

    ジョセフ・E・スティグリッツ コロンビア大学教授の講義を視聴しました。

    スティグリッツ教授「日本を苦しめている総需要の弱さについてかんがえるならば、なぜ消費が少ないのか、なぜ投資が少ないのかを分析し、どうすれば消費と投資を刺激できるのか分析する必要があります」

    スティグリッツ教授「消費が低い理由の一つには実質賃金が非常に低いことです。労働が本来あるべき姿ではないのです」

    スティグリッツ教授「その理由の一つは、市場の支配力があり、労働者の交渉力が弱いことです」

    スティグリッツ教授「それに対応するには、労働者の交渉力を高め、組合を強化すること」

    こんなお話をされていましたが、小泉純一郎元総理や維新の会が行ってきたことは

    維新の会「既得権益の打破!組合を解体せよ!」

    ということだったわけで、やっちまったな~と。

    スティグリッツ教授「法人税は、企業の利益に対する税金に聞こえますが、投資コストを引くことができるため、投資を抑制することはありません。労働コストも差し引くことができるため、雇用を阻害することもありません」

    スティグリッツ教授「この税金は、投資、生産における投入、労働を支払った後の余剰利益にかかる税金です」

    スティグリッツ教授「法人税を下げたらどうなるのか?」

    スティグリッツ教授「私は、投資を促す大きな影響を与えることはなく、むしろ株主配当の増加、CEOの給与の増加、自社株買いの増加につながるだろうと考えていました」

    スティグリッツ教授「トランプ大統領は2017年に実施した減税に関して『より多くの投資につながる』と発言していました」

    スティグリッツ教授「私はいつも学生に、私とトランプ大統領、どちらが正しかったと思いますか、と聞くんです」

    スティグリッツ教授「答えは私が正しかった、です(笑)」

    日本も法人税を減らせば投資が増えるとか言ってた奴がいましたね~。

    スティグリッツ教授「最後に、緊縮財政は正しい政策ではありません」

    スティグリッツ教授「緊縮財政は、経済成長をもたらす方法ではありません。緊縮財政がうまくいったことはありません」

    『経済政策の第一の目的は完全雇用を維持することであり労働や資本を含むすべての資源が使われるようにすることです』

    『第二の目的は、将来の持続可能性を確保する方法で政策を行うことです。将来のための持続可能性とは投資を行うことです』

    スティグリッツ教授「米国やほかの国々で、格差や賃金の停滞が政治的不満につながることを私たちは見てきました」

    スティグリッツ教授「政治的な不満はポピュリズムなどの形で現れ、アメリカでは今、民主主義の存続を危うくしている」

    スティグリッツ教授「社会における格差の問題に取り組むこと以上に重要な問題はないと私は考えています」

    消費税は逆累進性のある税金ということで、日本は格差を拡大する政策をやってきたんですよね~。やっちまったな~。
    アメリカは日本のような付加価値税(消費税)はないそうなので消費税に関して聞かれた際のスティグリッツ教授の反応は鈍いものでしたが、日本の消費(総需要)が弱い原因って明らかにコイツ(消費税)なんですよね~。日本で暮らしているからこそ骨身に染みるのかもしれませんが…

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