※このメルマガは藤井聡先生の知人・立命館大学教授(政治学、地方政治)村上弘先生の原稿より引用しています
■■■■A 「光」の面: 維新の公式宣伝■■■■
■A1文書 (日本維新の会「身を切る改革」同会HP、2023年4月訪問)
「議員の定数、公務員の人数を削減する」
「小さな行政機構」
「改革を主導する政治家がまず、自ら身を切って模範を示して、役人を納得させる。そして、意識改革に目覚めた役人が政治家とともに一丸となって行政改革を進める。この一連の流れが身を切る改革です。」
■A2文書 (大阪維新の会公認・吉村候補(当選)、2023年大阪府知事選挙公報、府選挙管理委員会HP)
「実績 身を切る改革を実行
知事退職金ゼロ、知事報酬30%カット、府議会議員報酬3割カット
府議会議員定数削減 H23 109人→ H27 88人→ R4 79人
実績 進む財政再建
10年連続赤字決算から、 橋下府政以降14年連続黒字決算へ (以下略)」
■A3文書 (2023年 衆議院 和歌山1区補欠選挙、維新・林候補(当選)ビラ、ご本人のHP)
「1 身を切る改革の徹底と しがらみのないクリーンな政治の実現
●政治を行うものこそ、クリーンで自らに厳しい姿勢が必要です。
●国会議員の報酬(歳費)・議員定数3割カットを断行します。 (以下略)」
■A4資料 (山陽新聞2023年02月03日、ウェブサイト)
日本維新の会の馬場伸幸代表は3日、岡山市内で山陽新聞社の単独インタビューに応じ、「議員報酬削減といった『身を切る改革』を進め、生まれた財源で教育費の無償化を推進したい」との考えを示した。・・・
■A5 松井一郎『政治家の喧嘩力』(単行本)2023年
*「身を切る改革」つまり議員定数削減についてのまとまった説明が、参考になる。削減の目的はあいまいで、多様な意見を議会から排除するデメリット(大阪維新にとってのメリット)は書かない。
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【維新の公式文書等の解読】
普通の政党なら、「議員を減らし、公務員を減らす」と公約するところだ。分かりやすく、批判もしやすい。しかし維新は、そうした表現を前面に出さず、「身を切る改革」というスローガンを反復し、オウムのようにマスコミや有権者が記憶し丸呑みするよう仕向けるところが、宣伝技術として巧みである。
(強く感情に訴えて思考を停止させるような宣伝は、「扇動」と呼ばれる。ポピュリズムは、「扇動政治」または「人民主義」と訳される。日本ではリーダーの強烈な言動がポピュリズムだと誤解されがちだが、組織的に反復する単純でウソの宣伝も、扇動に含まれる。)
維新は議員について3割削減と明記することが多いが、公務員については示さない。この間、国も地方自治体も公務員が減り、逆に各種の社会問題、事件事故、コロナ感染症で、有権者も維新も公共サービスの重要性を感じているからだろう。実際、A2、A3の宣伝が、公務員削減を書かないのは妥当だ。(ただし維新は、公約に書かないことでも、選挙に勝てばカジノの例のように進める。)
A2の維新の選挙公報は、「身を切る改革」で政治家に関するカットを、業績として誇り、それが大阪の財政再建につながった印象を与える(もちろん明言はしない)。A4資料も、議員を減らせばその財源で教育無償化ができるかのような印象を与える。しかし、この印象は全くの偽りである。なぜなら、議員経費の削減による節約額は、国民・住民1人当たり数十円に過ぎないから。
A3文書も、削減の対象は議員で、その根拠は政治家の「クリーンで自らに厳しい姿勢」である。A3の候補者は、「多くの政治家は自分の利益だけ追求する」「議員が少なく貧しい方が政治がクリーンになる」という、独断と偏見を持っておられるようだ。まじめに良い仕事をしている議員たちは、決して同意できないが、それ故に維新は独自の「改革」をアピールできる。病院、大学、マスコミで、職員数と給与を減らして「クリーンで自らに厳しい姿勢」を求めれば、組織は弱体化するに違いない。
これに対して、A1の説明によれば、議員定数の削減は、あくまでも行政改革という目的のための手段であり、議員数を減らすこと自体が重要なのではない。またこの論理に従えば、自治体の行政改革・効率化が進んでいるなら、なおさら議員を減らす必要はない。
このように、「身を切る改革」は、目的は分かりにくいのに、手段は「議員の人数・給与の大幅削減」と明快だ。もちろん、維新の本当の目的が、選挙で目立つことと、議会での中小政党排除や権力強化であると仮定すれば、とても分かりやすくなる。
いずれにせよ、Bで検討するように、
● もし議員を大幅に減らすなら、歳出減の効果はゼロに近く、議会制民主主義へのマイナスが深刻。
● もし公務員もいっそう大幅に減らすなら、歳出減はできるが、行政活動へのマイナスが起こりうる。また、そのために議員の削減は必要ない。
なお、維新が「身を切る改革」のなかで掲げる「企業・団体献金の禁止」も、企業人や富裕層は維新を含む政治パーティ等でまとまった個人献金ができるので、労働組合や各種団体の政党への財政支援(政治参加・参政権の1つ)への攻撃だと、ウラの目的を想像してみたい。
【インターネット情報】 読売新聞2014年12月9日付社説「議員定数削減 大衆迎合の主張は嘆かわしい」日本経済新聞2015年3月9日「国会議員数、実は並・・・」
https://www.nikkei.com/article/DGXZZO84176860Q5A310C1000000/?n_cid=nbpds_top3
(*人口で割った議員数は、日本は同じような中規模先進国のなかですでに少ないというデータ。ただし、巨大な人口を持つ大国よりは、人口当たりの数値が大きくなる。)
■■■■B 「影」の面: 維新が説明しない、マスコミもあまり報道しない問題点の情報■■■■
1.行政改革を進めるために、議員定数削減は必要でない
日本の国会議員の数はほぼ一定だが、地方議員は市町村合併等で減り、国・地方ともに公務員を減らしてきた。全国の地方自治体では、指定管理者、民間委託、住民団体・NPOとの協力など、行政の執行活動を民間に委託する制度が普及してきた。議員を減らさずに公務員を減らした事例は、多いだろう。
維新が言う、 「議員を減らすから公務員も減らせ」「議員を減らさなければ、公務員が拒否して行政改革は進まない」という論理は、おかしい。前者は、情緒的に公務員削減を絶対化し、マイナスがあっても進めることになり、弊害が大きい。後者は、もしある部門の公務員を本当に減らすべきであるなら、ニーズや財政データを含め、減らすことの合理性を明示して公務員に説明し政治的決定するべきであり、議員数削減は無関係である。
2.議員数を減らして生まれる財源は、きわめて小さく無意味
維新のホームページ(A1文書)は、議員減らしの目的を財源確保だと書かない(それを書くとウソがばれてしまう。)。しかし、「知事選公報」(A2)やA4記事は、議員減によって財政が健全化する印象を与える。いずれにせよ、議員減で節約できる金額のデータなしには検討できないので、マスコミや他の政党が情報提供するべきだ。
地方議員1人に必要な年間予算は2千万円とも言われ、そうであれば、たとえば大阪府議会の定数を10減らすことによる節約額は、住民1人当たり数十円に過ぎない。国会議員の「身を切る改革」についても、同じような計算の結果が広く報道されるべきだ。さて、住民1人当たり10円玉数個を配る(サービスを増やす)ために、議会制民主主義のメイン機関を弱め、少数派を排除し、特定政党の優越と支配を強化してもよいのだろうか。
【資料】総務省「地方議会の運営実態等に関する資料」2010年前後 *給与その他の支給額のデータ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000071523.pdf
3.議員数を減らすデメリット ー 最大政党以外の政党の弱体化、政府・知事・市長への監視や審議の低下
(1)議会定数を減らせば、政権・与党が権力を強化。それが本当の目的かもしれない。
国会では、定数削減は比例代表分の部分に向かいやすい。地方議会では、定数削減によって1人区が増え、複数選出区も人数が減る。いずれも、死票が増え、政権と最大政党が有利になり、少数派が排除される。
大阪で維新が「改革」として宣伝する府議会の定数減は、深刻なデメリットを生み出した。1人区が増え【注】、そこでは候補者が減り投票率も下がる傾向があり、2023年統一地方選のデータによれば、最大政党の維新は5割強の得票で1議席(100%)取れる。それ以外の政党・候補に票を投じた5割弱の有権者の意思、候補者を立てなかった政党の支持者の意思は、完全に無視された。
これに対して、4人区(枚方、東大阪)では維新は5割強の得票で2人当選、3人区(高槻、茨木)なら維新は4割で1人当選となっている。そこでは候補者が増え、投票率もやや高くなる。これが民意を反映した本来の議会選挙の結果なのだが、「身を切る改革」はこのような多様性のある民主主義を壊してしまった。選挙区の定数が小さいと、新人候補も、維新の公認でなければ当選しにくくなる。
日本の知事・市長選では小池都知事、かつての横山ノック大阪府知事のように現職の大勝が起こるが、議会選挙の方は、かりに多くの選挙区定数が3~4という「公平」な制度であったならば、維新は単独過半数を取れていない可能性がある。
【注】東京都議会は定数127人で、42選挙区のうち1人区は7だけ。大阪府議会は、維新が定数を79人に減らす「身を切る改革」(2022年)によって、53選挙区のうち1人区は36にまで増えた。なお、大阪と同じ人口規模の県の議会定数は、神奈川105、愛知102。
【参考】産経新聞2023年3月14日「維新政治は大阪をどう変えた 松井一郎氏4月政界引退」
https://www.sankei.com/article/20230314-K3ARQYKCJBJJHP3BHAMDRW3JBQ/
【参考】読売新聞2023年4月30日「大阪で維新に大敗、自民が立て直しに危機感」より、右の表
(2)知事・市長、政府に対する、野党や市民の監視・チェックが弱まる。
前からの続きだが、大阪の維新政権は、ミラノ万博のように内陸用地で賢く節約するのではなく、コストが掛かる埋立て島を万博・カジノIRの立地場所に選んでしまったが、これも野党が弱く批判に耳を傾ける議論がむずかしいことが一因だ。野党が弱いと、かえって政権や行政の税金のムダ遣いが進み、行政改革に逆行してしまうわけだ。現在、埋立て島ゆえに整備費がどんどん膨張している問題も、ある程度の野党が存在しなければ問題にできない。
(3)議会の活動の中心である委員会で、メンバーが不足し、偏っていしまう。
テレビに映る本会議を見ていると、議員が多すぎるように見える。でも、実質的な審議は、複数の委員会で行われることを知っている人がどれほどいるだろうか。議員定数は、各委員会において、与党と野党、少数派、女性、いろいろな専門職などを含む十分な人数のメンバーを確保する必要がある。
ちなみに維新は、否決された大阪都構想の可決やカジノ住民投票の否決(2023年)について、大阪市会の公明党を別件で威嚇し同調させたり、特別区の議会に東京よりはるかに少ない20人程度の定数を予定したことからわかるように、政治リーダーを絶対化し、議会制民主主義も、直接民主主義もともに軽視してきた。
4.地方議員の給与削減 ー 維新のお金持ち政治家は身を切らず、一般市民を議員から排除する
国会、府県・政令市などの議員は専門職化し給与は高いが、ある程度の減額は可能だろう。しかし、一般市の議員の給与レベルは、議員の成り手不足の一因として問題になっている。
他方で、維新の政治家のプロフィールを「選挙公報」などで調べると、重要な事実が分かる。つまり多くは、弁護士、会社経営者・役員など高所得で兼業・復職もできるので、たとえ議員給与や知事退職金が減っても、定数減で落選のリスクが増えても、実は、「身を切る」痛みがないのである。
つまり「身を切る」という鮮烈な表現は、会社員(兼業困難)や公務員(まず辞職が必要)など多くの市民に対して、そして「1人区」などで中政党・小政党に対して、バリアを高くして切り捨てるという意味で、理解するのが正しい。私たちは維新のスローガンを、客観的には、自分たち強い勢力やお金持ち以外の多様な意見を「切り捨て」、議論や批判ができるような「民主主義を切る」公約だと、正しく理解しておきたい。
こう分析すると、維新の「身を切る改革」は、議会制度への単純化した攻撃による扇動政治(ポピュリズム)の可能性が高い。初期の「大阪都構想」と同じように、「身を切る改革」は神秘化・絶対化されている。もちろん、ポピュリズムが伸びる責任は、他の政党やマスコミが、この小論で問題提起したような、「身を切る改革」の内容、メリット、デメリットを具体的に論じないことにもある。 情報発信の改善を、お願いしたい。
■■■C 付録:村上による学生アンケートから■■■
表のように、議員数削減への意見は、賛成5割、反対1割、中間および分からないが4割。
ただし、賛成の回答者は、「強権的な改革」「経済成長」などを重視する傾向がある。
反対の回答者には、「新聞をよく読む」「強権的な改革に反対」などの傾向があり、また知識の面で、議員が本会議だけでなく委員会に分かれて実質審議する制度や、ポピュリズム、ファシズム(政治的扇動・独裁への警戒)を知っている人が多い。しかし、委員会制度を説明できるのは、教養課程の政治を学ぶ学生でも2割以下なので、その知識なしに本会議だけを見て「議員が多すぎる」と誤解する人々が多いというわけだ。 「身を切る改革」は、日本人の政治的教育・知識の不足をみごとに利用している。
■■■■D 付録: なぜ、維新の会は強いのか■■■■
マスコミや他の政党は 維新の台頭を下の1、2によるものと理解・解説し、4の「身を切る改革」等の維新の宣伝の絶大な効果とその内実に、注目してこなかった。
もし1,2が原因なら、維新の伸びは関西以外では限界がある。しかし、4の高度で特殊な宣伝技術が原因なら、宣伝をファクト・チェックし有権者が賢明にならない限り、日本全体で、他の政党(および思考し議論のできる民主主義)が脅かされるだろう。
1.強そうなリーダー ・・・このタイプの政治家がかなりの層に支持される現象は、米国トランプ大統領の例でもわかる。しかし、コロナ感染症による大阪府知事のテレビ出演もなくなり、この原因は、全国的な維新の伸びを説明できない。
2.大阪の「実績」・・・大阪の活性化は、維新の都市整備策もあるが、それ以上に全国的な景気回復、大阪で維新統治以前に決定された都市開発の完成などに助けられている。いずれにせよ、この「実績」のアピール力は関西でも疑わしく(神戸、京都、奈良なども努力して活性化しているので)、全国的には効果が小さいだろう。
維新の場合、大阪での実績や数値目標を示し、アピール力のある施策に大都市の豊かな財源を投入する。ただし、子育て・教育費支援などのサービスは、他の自治体や国でも次第に進みつつある。そうした住民サービスは、議員定数を減らさない自治体でも進めている。 【参考】 https://manetatsu.com/2021/06/340934/
3.日本人は、「強い者を支持する」心理がある。イギリスやドイツ(moral courage, Zivilcourageという価値観がある)では選挙後、勝った政党の支持率が上がることはないが、「行列のできる店」のごとく同調性が高い日本では、「選挙後のバンドワゴン効果」が顕著で、政党の政策等を検討しないままの「ブーム」が起こりやすい。マスコミも、2021年衆院選で、維新の前々回議席回復を「躍進」と誤報し、その後も、維新の政策(隠されたものを含む)の冷静な分析なしに、「なぜ勝ったか」「支持率上昇」というニュースばかり増幅しているように見える。
4.有害無益・危険なものを含む政策を、インパクトのある美しいスローガンでくるむ、特殊な宣伝技術 →これは、「大阪都」以来の伝統的な技術で、維新の台頭を決定的に支えている。
この宣伝に単純化・ウソと攻撃性が多いとすれば、考えさせない扇動政治(ポピュリズム)に該当するが、海外の一部のポピュリズムのような粗暴な言動は控えるので、「知的なポピュリズム」なのだろう。
▼は、政治学で通説の、政治的な保守または右派(=権威主義または権力集中、新自由主義)の特徴で、7.の攻撃性とも整合性がある。この解釈によれば、維新の伸びは、日本政治をさらに保守化させ、民主主義に必要な「保守とリベラル」の議論やバランスを壊すことになる。
しかし、民主主義に無関心でおカネだけに関心を持つ人などが、▼の特徴を視野に入れなければ、維新を「第3極」と呼ぶことができる。この解釈によれば、維新は日本政治に、自民、立憲民主とは違う新たな選択肢(それが何かはあまり述べないが)をもたらす。
4-2.こうした維新の宣伝を、マスコミや他政党が分析・論評しない。さらに岸田政権になって維新が自民党と距離を置くと、マスコミは簡単に、従来の「保守新党」「ポピュリズム」に代えて「第3極」と呼ぶようになった。
5.維新リーダーのツィッターは、「改革」アピールと立憲民主党などへの「反改革」のレッテル貼り・批判で、毎日見ている人への効果は大きいだろう。インターネット広告も、活発だ。
なお、2023年地方選(大阪)での新聞社の出口調査と1週間前の世論調査の回答結果のズレをもとに、全体の投票率が下がった中で、維新の支持者は非支持者よりも投票に行った割合が大きいと推定できる。つまり、低投票率の傾向が、維新に有利になっている。
【参考】
読売新聞2023年4月2日「大阪ダブル選」維新評価にねじれ、府市政「支持」・IR誘致「反対」
(世論調査) https://www.yomiuri.co.jp/election/local/20230402-OYT1T50084/
同4月11日 大阪ダブル選の争点だった「IR誘致」、賛成が反対上回る
(出口調査) https://www.yomiuri.co.jp/election/local/20230411-OYT1T50060/
6.維新塾による候補者のリクルート・・・維新の候補は、経営者、会社役員、若くて元気な人々が多いが、これを維新塾などで集め育てる。こうした維新のメンバーは当選を党に依存するので、党の政策や方針を議論・批判することは少なく、党の公認を受けて「ともかく政治家になりたい」モチベーションで、選挙活動にはエネルギッシュに励む。それゆえに、党が政権についてリーダーが保守右派的な動きを本格化させたとき、他の普通の政党のように、メンバーが議論し止めることは期待できない。
7.攻撃性(「既得権」への批判、批判者へのSNSでの攻撃・罵倒ときには訴訟など)で、マスコミや研究者に圧力をかける。ただし、その程度の威嚇によって、批判を自粛する側にも責任がある。
維新のリーダーたちの攻撃性は、「強さ」「真剣さ」と見えることもある。しかし政治の世界での攻撃性には、危険が多い。複数の事例を挙げると、「身を切る改革」の名による議会の縮小をはじめ、「表現の不自由展」を認めた愛知県知事への辞任要求、民間の従軍慰安婦像の設置を認めたサンフランシスコ市に対する、大阪市の姉妹都市関係の破棄などだ。維新は、カジノに関する署名を集めての住民投票の請求も、拒否した。大阪の維新は、衆議院選挙での「配慮」と引き換えに公明党の絶大な協力を得てきたが、23年に市議会で単独過半数を獲得するや否や「配慮」の終了を示唆したようなクールさも注目される。
マスコミが自民、立憲民主などを気軽に批判するのに、維新への分析や批判を自粛するのであれば、「報道の公平性」の倫理に反する。維新が述べない事実を指摘しても、語句に注意すればふつう攻撃は受けません。
8.自民党、立憲民主党の弱点と課題
維新の台頭は、自民党に対する不満の拡大と、代替案としての他の野党の弱さにも、原因がある。自民党においては、党内の権力闘争や政策上の課題があり、兵庫・奈良の知事選、2023年衆議院和歌山補選では(あまり報道されないが)保守などの勢力の分裂によって、維新に大阪外進出のチャンスを与えた。
他の野党も、政策やイメージを鮮明に打ち出す必要がある。たとえば、立憲民主の「生活安全保障」「もっとよい未来」はあいまいでインパクトがなく、維新の「改革・身を切る改革・成長」の力強い雄弁さと競争するためには、「生活保障・憲法の尊重・人権・環境」など、リベラルなものを含む複数の価値を宣伝するべきだ。
【参考論文】村上弘「2022年参議院選挙における政党の宣伝」『立命館法学』(インターネットでも読めます) //
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