政治

日本経済

2023年3月21日

【室伏謙一】不十分な岸田政権の物価高対策

 本年度、令和4年度予算の予備費の一部を使って、物価高騰対策を行うことが決まるようです。報道ベースでは22日に物価・賃金・生活総合対策本部で決定されるそうです。総額は2兆円強。端的に、小さくて不十分としか言いようがありませんね。

 もっとも、詳細な内容は報道ベースの情報以上のものはありませんが、その内容については決して悪いものではありません。

 その大部分を占めるのが、地方創生臨時交付金の追加交付で、総額で1.2兆円とのことです。この臨時交付金は各地公体がその実情に応じて自由に使えるお金であり、物価高騰の状況も地域によって多様であるところ、そうした地域の実情に応じた対策を可能にするもので総論としてはいいと思います。ただし、1.2兆円の全てがそうだというわけではなく、このうち5000億円は低所得世帯への給付金の原資となるもの。したがって、実情に応じた対策に使えるお金は7000億円ということ。勿論これは全国の総額です。規模が小さく、本気で物価高騰対策を考えているとは思えません。

 低所得世帯への給付金もそれ自体はいいのですが、1世帯当たり3万円と額が小さく、しかも1回限りです。低所得世帯はこの貴重な3万円を、節約しながら大事に大事に使うことになるでしょう、先の不安は全く解消されていないわけですから。そうすると「預金が増えたが使われていない。あんな給付金は無駄だ。」という話にされて、同種同様の給付金を実施するのはより難しくなっていくでしょう。(コロナの国民一律の交付金の時がそうでした。)低所得世帯が困っているのは物価高だけではありません。額を増やして半年ぐらい続けるなり、今の額のままだとしても年内は給付を続けるなりしなければ、対策として従前に機能しないでしょう。(「低所得世帯のみ」といった制限は国民の間に分断を生みます。したがって、本来であれば国民一律というのが妥当なのですが、今回はあくまでも予備費の範囲内で早急に対策を講じるという話なので、こうした方向性があるべき姿だと思います。)

 総額の話に戻れば、予備費は新型コロナ対策以外にも、本年度の2次補正で措置されたウクライナ情勢緊急対応や物価高対策のための予備費があるわけですから、少なくとも5兆円程度は今回措置すべきでしょう。そんなことを言うと、「額ありきではなく、中身が問題だ!」という声が聞こえて聞きそうですね。おっしゃるとおりです。中身が重要です。そうした中身も含めて、責任ある積極財政推進議連が、去る3月16日、萩生田政調会長に提言を提出しています。具体的にはこちらをご覧ください。

https://sekkyokuzaisei.jp/wp-content/uploads/2023/03/【確定版】物価高騰、賃上げ対策としての経世済民を求める決議%E3%80%88別紙含〉%E3%80%80.pdf

 報道ベースの情報と照らし合わせても、この提言がある程度採用されているように思います。今のところ額については採用されていませんが。ただ、まだ方向性が決まったと言う段階であり、まだまだ積み増しは不可能ではないようです。決定は22日ですので時間は限られていますが、是非みなさん「そんな額じゃ小さいぞ。効果的な対策が打てないじゃないか。もっと増やせ。」と声を挙げていただければと思います。

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【室伏謙一】不十分な岸田政権の物価高対策への4件のコメント

  1. 利根川 より

     国会グルメのお話見ました。お腹がすくお話でしたね。
     最近の日本がどんな感じかというと

    2022年11月の実質消費支出の主な内訳(前年同月比)

    消費支出-1.2%
    ・食料-2.9%

    穀類-6.8%
    パン-5.3%
    麺類-5.8%
    油脂-17.3%
    外食1.5%

    ・家庭用耐久財-6.1%
    ・被服及び履物-9.3%
    ・交通11.6%
    ・宿泊23.3%

    こんな感じだそうで。交通宿泊がプラスなのは政府による「全国旅行支援」があったからですね。

    森永康平さん「人間は食わなきゃ死んじゃうのに食う量を減らしてるんですよ」

    まあ、

    今年度の「国民負担率」47.5%

    の重税国家ですので、皆お金がないから節約をするわけです。しかし、節約をされてしまうと企業は売り上げが上がらなくなってしまうという。そんな中、無理して給料アップに励んでいる企業は大変立派だとは思いますが

    「おたくらは営利団体であって非営利団体でもボランティアでもないでしょうに」

    はたから見ているとこんな感想もでてくるわけです。そもそも、

    ”企業が頑張って賃金アップをしても、その分だけ政府が緊縮や増税をやったら”実質”の賃金は下がるわけでな…”

    そろそろ企業経営者はろくでなしの政治家官僚に怒ってもいいと思いますよ。
     こんなことを言うと

    緊縮派「消費税は社会保障の財源だから~」

    とか言われるわけですが

    >>2019年1月28日、衆議院本会議の施政方針演説

    安倍総理「(消費税)八%引き上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期してまいります。増税分の五分の四を借金返しに充てていた、消費税の使い道を見直し、二兆円規模を教育無償化などに振り向け、子育て世代に還元いたします」>>

     消費税は社会保障の財源で消費税を5%から8%へ上げたらその増収分は100%社会保障に使うと自民党は選挙の際に言っていたわけですが、実際には「増税分の五分の四を借金返しに充てていた」と安倍総理は語っているわけだ。
     
    わざわざ国会まで出てきて目を開けたまま寝てるのでもなけりゃ全ての議員が知っているはずだよな?

    つまり、消費税による増収が社会保障に使われているわけではないと安倍総理が暴露したわけだが、いまだに「消費税は社会保障の財源です」と言っている議員がいるとすればそいつは議員ではなく詐欺師だってことです。TVでは「ルフィは誰だ」ってやってましたが、わざわざ探さなくても国会にたくさんいそうですけどね。
     まず、

    「税は財源ではない」

    そろそろこれは理解していただきたい。よく耳にするのが

    「俺たちの払った税金が〇〇に使われるなんて許せねえ」

    というセリフですが、

    「俺たちの払った税金が使われるためには、まず、俺たちが先に税の支払いを済ませている必要がある。なぜなら、まだ支払われてもいない金を使うことなんてできないから」

    「俺たちの支払った税金が〇〇に使われているというのであれば、確定申告は年度初めに行われていなければおかしい」

    しかし、実際は確定申告は年度終わりに行われているわけです。我々国民がまだ税金を支払っていない段階で政府は支払いを済ませているわけですが、そのお金はいったいどこから用意してきたのか…

    政府とその子会社の日銀は日本円(国庫債券・日銀当座預金)を発行できる

    こういうことですね。
     加えて言えば、特別会計扱いの税金の場合、例えば昔のガソリン税がそれですが、

    道路を作るために道路を使う人に負担してもらうけど、その代わり、ガソリン税で5兆円取ったら道路を作るため”だけ”に5兆円支出するよ

    というのが特別会計。特別会計というのは「その目的のためだけにしか使えない」という特徴がある。
     逆に、消費税や所得税をはじめとする一般会計の場合は、先ほどの消費税が典型例ですが

    「社会保障のために必要だからといって国民から8兆円奪っても社会保障のために8兆円支出を増やす必要はない」

    というのが一般会計。
     「消費税が社会保障の財源」であるというのならば厚生労働省が管轄する特別会計でなければおかしいわけですが、実際には財務省所管の一般会計扱いなわけです。
     こんなことは政治家官僚であれば誰でも知っている話のはずなのに平然と「消費税は社会保障の財源です」という嘘をついているわけだ。詐欺師の定義を辞書で引くと

    巧みに人をだまして、金や品物を奪う人。詐欺を常習とする人。いかさまし。

    と書いてある。はたして国会で「消費税は社会保障の財源だから増税が必要」と説明してきた国会議員たちは何師にあたるのだろうか…

    詐欺師は詐欺を働き、泥棒は窃盗を働く、国会議員と官僚は…

    日本人は働き者ですな~。そんな働きするくらいなら働かないで寝てなさいよ、その方が世のため人のためになるさ。

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      1. 利根川 より

         この間、室伏さんが解説していた「財源確保法案」のお話にも言えますが、

        「防衛力強化のために必要なんです」

        というのであれば、防衛省所管の特別会計でなければおかしいのに、財務省所管の一般会計あつかいだということで…バカな国民には分からんだろうとなめられているんでしょうね。TV新聞でも詳しく報道させないのだから国民は知りようがないわけですが…(苦笑い
         報道を仕事とする人達に報道をさせない、その一方で自分たちは省益・出世・保身のために

        「消費税は社会保障の財源です」

        といって国民から消費税を巻き上げる”働き”をせっせとやって肥え太っていく。日本も昔の中国みたいになってきましたね~。中国は共産党エリートが支配しているが、日本は財務省エリートが支配しているわけだ、本質的にはどっちも一緒(笑)
         果たして、昔の中国みたいになったから経済成長しなくなったのか、経済成長しなくなったから昔の中国みたいになったのか… 

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        1. 利根川 より

           日本がこの20年間、何をやってきたのかというと

          政府が”何もしないで”景気をよくする方法

          を探していろいろやってきたわけだ。まあ、全部失敗して「失われた30年」なわけですけどね。
           
          一般個人「増税や労働規制緩和をされて生活が苦しいので節約頑張ります」

          企業「一般個人が節約をしているので売り上げがあがらないし、株主から配当金よこせって言われるので節約頑張ります」

          政府「みんな節約頑張ってるので政府も節約します」

          そして、誰も金を使わなくなった(爆笑
           
          コントでもやってるのかと

           当たり前ですが、一般個人は景気が悪いときは節約します。収入が減っているのに収入以上にお金を使いたがる人はなかなかいないでしょう。企業にしても消費者が節約傾向で投資をしても収入が見込めない状況でお金を使うことはありません。なにせ彼らは営利団体ですから。ちなみに、

          日本全体でどのくらい需要が足りないのかというと20兆円~40兆円

          と言われています。つまり、

          誰かが20兆円~40兆円分の消費(真水で)を継続的に日本社会で行わないと景気は良くならない

          ということですが、それだけのお金を不景気な状況下で個人や企業が継続的に出せるわけがないという。
           それができるのは通貨を発行できる政府だけなのにそれをやらないということはこの先も永遠に日本経済は停滞し続けるということになります。
           IMFの予想では2030年代以降、インドが日本を抜いて世界第三位の経済大国になると予想していますが、まあ、20年以上ピクリとも経済成長しない国ではそうなるでしょうね。
           岸田総理はインド太平洋地域のインフラ整備に9兆8000億円の投資をすると約束したそうですが、格上のインドに支援している場合じゃないんじゃないのと私などは思ってしまうわけなんですよ。というか、”ふつうは”経済成長って「してしまうもの」なのに、まったく経済成長していなくても気が付かなかったとか…そりゃあ、格下にもみられるというものでしょうよ。

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      1. ts より

        緊縮派や増税派にスペンディングファーストや税は財源ではないと説明しても、聞く耳持たず。
        税収見込みを担保にして政府支出をしていると。
        だから増税しないと政府支出も拡大できないと申されます。

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