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日本経済

2023年2月14日

【室伏謙一】財務省とは何者か?

 故安倍元総理の回顧録が出版され、話題になっていますね。その内容の中で特に重要と思われるのが、財務省との死闘・暗闘のくだり。消費税増税の延期や金融政策、大規模な金融緩和ですが、そうしたものの実施をめぐって財務省との闘いがあったのみならず、財務省が安倍降ろしを仕掛けてきた可能性にまで具体的に言及されています。

 私は財務省との暗闘は第二次のみならず第一次安倍政権の時からではないかと考えています。(その辺りについては、オンラインサロン「霞が関リークス」で、私の経験も交えながら詳しく解説しています。)

 さて、そうした内容について、同回顧録から少々引用してみましょう。詳しくは同回顧録をお読みいただきたいと思いますが、引用の前に、安倍政権の経済政策は、ご承知のとおり基本的にリフレ派路線です。したがって、税は財源という頭になってしまっていますし、国債も借金ということになってしまっているようですが、リフレ派の考え方に立ったとしても、「誰の借金なの?」と考えたら、少なくとも国民の借金ではなく政府の借金であり、金融緩和を進めて最終的に日銀が国債を引き受けているわけですから、借金ではなく発行された国債の額面の範囲内での単なる通貨発行という結論に行き着くはずなのです。60年償還ルールも不要で、借換債でいいという考え方も、その根底には税は財源ではない、少なくとも、税収を前提に歳出をしているわけではないという前提、そして、日銀による信用創造という大前提がなければ成立しえませんし。

 ということでそうしたことを頭に入れて(既に入っていると思いますが)、お読みいただきたいと思います。例えば、民主党政権については以下のようなことを話しています。

「社会保障と税の一体改革は、財務省が描いたものです。当時は、永田町が財務省一色でしたね。財務省の力は大したものですよ。」
「時の政権に、核となる政策がないと、財務省が近づいてきて、政権もどっぷり頼ってしまう。菅直人首相は、消費税を増税して景気を良くするといった訳のわからない論理を展開しました。」

 なんだかどこかの今の政権のようですね。特段やりたい政策がなく、ただ総理でいたいだけの岸田政権に財務省が近づいてきて、岸田政権もどっぷり頼ってしまう・・・・

 小泉政権に関しては次のように話しています。

「小泉内閣も財務省主導の政権でした。消費税は増税しないと公約しましたが、代わりに歳出カットを大幅に進めることにしたわけです。」

 増税か歳出の大幅カットか、まるで防衛費増額等を巡る岸田政権のロジックのようです。しかも岸田政権下では両方とも同時に進めようとしている訳ですから、財務省の悪辣さの度が更に増していると言えるでしょう。

 そして極めつけは、財務省を形容して次のように話しています。

「国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです。」

 まさにザイム真理教そのものです。安倍元総理の口から出たこの話は、少なくとも保守人士は重く受け止めるべきでしょう。

 この安倍総理の回顧録が世に出て、財務省の実態が晒されたことは非常に重要だと思います。今年は日本が衰退・没落の経路に完全に入ってしまうのか、それとも反転して成長軌道に戻ることができるのかの分岐点となる年です。是非財務省、ザイム真理教の実態、悪虐非道の数々をより多くの人に知ってもらうよう、一緒に広めていきましょう。

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【室伏謙一】財務省とは何者か?への5件のコメント

  1. 内外問わず回顧録と名のつくものを鵜呑みにしてはなりません より

    在任中に2度も消費税を増税し民主党時代より国民の所得を減らした安倍が菅直人を批判するなんて目くそ鼻くそを笑うの類。
    不思議なのは、財出をめぐり安倍が財務省と暗闘・死闘を繰り広げた説に与したい人たち。この人たちはなぜか今に至るまで政官のなみなみならぬ間柄と「最強」とまでネトウヨにもてはやされた人事権掌握内閣の姿とが典型的に出現した「森友加計学園問題」を揃いも揃って避けたがる。
    こういうのを世間では片手落ち、あるいは自民の犬と呼びます。素人相手の経済評論もやりやすい。

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  2. インテリジェンス より

    安倍様は 三枚ほど舌を お持ちのようでしたから
    回顧録における 彼の発言とやらも

    全く 信用しておりません。。

    ちなみに 監修をなさった
    北村滋様 
    官邸の アイヒマンという
    素敵な 異名で呼ばれていた とか、、

    諜報員の工作活動には
    用心なさるのが 賢明 かと。。。

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  3. 利根川 より

    >> 「国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです。」

     まさにザイム真理教そのものです。安倍元総理の口から出たこの話は、少なくとも保守人士は重く受け止めるべきでしょう。>>

     責任ある積極財政を推進する議連 第16回勉強会の講師に森永康平さんが呼ばれていました。その講義ではメディアが行っている「ミスリードを誘う文章」についてデータを用いて解説されていましたが、講義後の参加者からの質問の段で青山繫晴議員が質問しておられました。青山議員といえば保守系の議員と認識されていますが、その方が行った質問が以下の二つ。

    1、防衛強化のために増税が必要だと思うが森永さんはどう考えているのか

    2、原発再稼働についてはどう考えているのか

    講義の内容とあまり関係ないことを質問しておられました。要は、踏み絵を踏ませて

    「お前は保守なのかそうじゃないのか」

    を確かめに来たものと思われます。彼の態度を見る限り、未だに自称保守界隈では「保守とは何か」についてすらまともに認識できていないようです。因みに、森永さんの回答はこうでした⇓

    1、防衛増税なんてしなくても防衛力強化はできるでしょ。政府は貨幣をつくれるのだから。守ってやるから金よこせなんて反社会的勢力的なことを国会議員が言ってて大丈夫なのか。

    2、エネルギーが十分にないと産業も防衛も医療もなにもできない。原発に限らずエネルギーを自給できるように色々なエネルギーを組み合わせて使うべき

     10年前から緊縮増税政策と戦ってこられた方々はお分かりかと思いますが、彼等自称保守は「保守とは何か」を理解していません。

    10年前の三橋貴明「政府はデフレギャップを埋めるために財政支出を増やすべき」

    10年前の自称保守「嫌韓嫌中なら保守!三橋はわけわからんこと言ってないでもっと中韓叩きをしろ!」

    10年前の藤井聡「プライマリーバランス黒字化が悪さをしてる。これがあるかぎり日本は停滞し続ける」

    10年前の自称保守「靖国参拝したら保守!藤井聡はわけわからんこと言ってないでもっと中韓叩きをしろ!」

    10年前の中野剛志「TPPなんて入ったらいけません。わざわざ自国の生産能力を棄損してどうするのか」

    10年前の自称保守「中野は自民党が推進してるTPPに反対なのか?ならばあ奴はサヨクに違いない」

     右左関係なく韓国や中国が嫌いな人もいれば好きな人もいます。嫌韓嫌中は政治のマトリックスとは関係ありません。靖国神社参拝についても、靖国神社には戦争で亡くなった日本兵やアメリカ兵が祭られていますが、そうした事情はあまり関係なく参拝する人は参拝します。政治思想の左右は関係ありません。亡くなった方への配慮があるかどうかの話です。TPPについては、むしろTPPという「革命」を推進している方が「左」なはずなのですが、なぜか話がひっくり返ってしまっている(苦笑い
     
    要するに、彼らは今も昔も保守とは何なのかを理解せずにひたすらに行動を続けている

    ということです。「保守とは何か」を分かっていないから他の誰かを叩くことで

    「サヨク(と自分が思っている者)を叩いている私は保守」

    とやるしかないわけですね。かなり前ですが西部邁さんが「日本に保守なんて居ない」という話をされていて、その中で「日本における保守が保守である為には敵が必要」というお話をされていました。同じ国民同士を敵としなければならないような思想があるとするならば、それこそがまさに革命的であり左といえるのではないでしょうか。
     さて、「税は財源」という考え方については左右問わず既に多くの方が指摘されていますが、単純に財務官僚たちが勘違いしているだけの話です。税金には色々な役割がありますが「税は財源ではない」わけです。これを正すことに左右の違いはないはずなのですが、いまだに青山繫晴議員みたいなのが居るわけでね。勉強しない議員は左右問わず議員バッチ外してくんねえかな~

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      1. 利根川 より

        「日本における保守が保守である為には敵が必要」

        こういう事情もあるとは思いますが、これとは別に政府自体も国民同士の争いを煽るような政策をうっていますからね。

        ・高齢者への増税で少子化対策をする(世代間闘争を煽る政策

        ・インボイス制度(事業者と事業者の間で「損の押し付け合い」)

        ・走行税(自動車必須の地方と都市部の格差拡大政策

        そりゃあもう国民同士の殴り合いにもなるってもんですよ。そして、国民同士で争わせておけば政府への批判は減るだろうと…ソ連お得意のやり方ですね(苦笑い
         ああ、そういえばコロナ禍の時も

        「休業要請に応じない店舗はメディアに晒しあげる」

        なんてやっていましたね。こうして、国民に国民を攻撃させるわけだ。どんぶり勘定事務所の税理士である神田知宜さんも言っていましたが、財務省はやり口が汚い。
         自分達が悲惨な目にあっているのは財務官僚が国民にゼロサムゲームをさせているからなのだから、国民は団結してこれを正していけばいいはず。それこそ民主制ってものでしょう。なのに、国民同士で殴り合いをする。それも弱い立場の者をみつけてそれをスケープゴートにするかのように。貧すれば鈍すると言うが、これほど下劣な民族になるとは驚きですよ。
         因みに、わたしも既にその下劣な人間の一人です。以前にも言いましたが私もまたとっくに全体主義に感染してしまっているのでね。
         
        三橋貴明「あえて、断言しますが、わたくしは震災が発生した際に、竹中平蔵が瓦礫の下敷きになっており、
        『三橋くん、助けてくれ』
         と、言われたら、助けますよ。単に『同じ国民』という理由で」

        今この時このセリフが言える人間がまだ残っていることが将来の日本の救いになると思います。
         因みにね、

        「収入が低いのはそいつの努力が足りないせいだ。個々人ができることをやって努力をすれば日本経済は復活する」

        そう言う人もいるわけですが、先ほども言ったように他の国はプラスサムゲームをやってるのに日本だけゼロサムゲームをやっているので、

        誰かが頑張って1億円稼ぐと誰かの稼ぎが1億円減る

        こうなるだけなんですよ。全体としてはプラスマイナスゼロ。貧困の押し付け合い。

        <二人以上の勤労者世帯の実収入の推移 (出典:総務省 家計調査)>

        2000年を0として

        2018年の世帯主(男性)の収入:-36009円

        2918年の配偶者(女性)の収入:+33354円

        誰かの収入が増えると、その分誰かの収入が減る。数字に出ちゃってるんだよな~。これをやめさせない限り個々人がどれだけ頑張ってもそれは他の誰かを貧困に陥れるだけのことになってしまうんですよ。やる気が出ないことこの上ない。
         これを正すことに右も左も関係ないはずなんですけどね~、うまくいかないですね~

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        1. 利根川 より

           全然関係ない話で恐縮ですが、岸田総理がLGBTの件で釈明に追われているそうです。そんな中、TVで

          TV「他の国はLGBTを認めているのだから我が国も多様性を認めるべき」

          と言っているのを見てクラクラきてしまいました。

          皆がやってるから日本もやらないといけないって…それじゃ世界から多様性なくなるだろ。キミらは一本化したいのか多様性ある世界にしたいのかどっちなんだ!

           日本だけがやってて、それで失敗してるなら外国の例を参考に日本化を施した上で導入してみるのもありだとおもいます。逆に日本だけがやってて、それでそれなりにうまくいっているのなら外野からとやかく言われようとも貫くべきです。
           で、LGBTについてはどのような社会システムだろうと、どのような宗教社会であろうと一定数は存在すると言われています。日本の場合は江戸時代の方がそうした文化に寛容な方だったのではないのでしょうか。
           三橋さんの言葉を借りるなら

          「自分も何かの折に少数派の立場に立たされることもあるのだから”同じ仲間として”少数派にも気を配っていく必要がある」

          ということですね。「他がやってるからウチも」という話ではないんですよ。”お互いに”気をつけましょうねと、そういうことです。
           それから、リベラル系の野党が「LGBTへの理解を推進する法案」とやらを出しているそうですが、これに関しては法律でどうこうなるようなものではないでしょう。
           例えば、皆大好きカレーライス、でも当然中にはカレーが嫌いな人だっている。

          「カレーを好きにならなくてはいけない法案」

          なんて出したところで好きにはならないでしょう。視覚・聴覚・味覚、そういった感覚的な好みというのはなかなか変わらないものです。法律でどうにかなるようなものではない。
           件の総理秘書官については低迷する岸田政権のために支持者(自称保守界隈)への保守アピールだったのだとおもいますが、自分達の保身のために他人を出汁に使うという下劣なことができるのは彼らに

          「同じ国民であるという仲間意識がない」

          からに他ならない。
           今回のLGBTの件に限った話ではなく、左右共に「同じ国民であるという仲間意識」を取り戻す必要があると思います。
           きれいごととかそういった話ではなく、これができないと民主制が維持できなくなるってことです。議事堂にカチコミかけられたブラジルを見ればいい、日本もいずれはああなるってことですよ。

          「そういうお前にできるのか」

          と言われると「出来ねえんだな、これが」(苦笑い
           藤井聡教授や森永康平さん、山本太郎議員なんかは左右問わず色々な立場の人達と冷静に話ができていて本当にすごいなと思いますが、じゃあ自分に出来るのかというと

          「出来ねえんだな、これが」

          感染拡大しちゃってるからね。貧すると鈍するわけですな。
           

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