自民党内では以前と比べて積極財政派、積極財政に理解がある議員が増えてきているようです。やはり故安倍元総理が積極財政派の騎手として立ってくれたことが大きいと思います。したがって、安倍元総理が暗殺されてしまったことは、本当に悔やまれてなりませんが、それでも積極財政派の勢いが衰えないというのは、本気でこの国のために積極財政を進めようとしている議員が少なからずいるということだと思います。
ただ、最近気になっているのが、積極財政派とされる議員たちの主張の中には大きく分けると二つあるということです。一つは、正しい貨幣観を持ち、税は財源ではなくあくまで政策調整の手段であり、国債は通貨発行の形式であって借金ではないことを理解している議員たち。もう一つは、貨幣観は正しい人も間違っている人もいるが、税は財源であって国債は借金(少なくとも資金調達の手段)であると考えている議員たち。後者の議員たちはまるで緊縮財政派のようですが、それでも積極財政を主張するのは、簡単に言えば、まだ金利が低いし、今の日本の経済状況からすれば積極財政にした方がいいからというもの。
要するに、積極財政にして日本経済を成長軌道に戻せば将来的に税収も増えるので、今は積極財政で歳出を拡大しようということですが、問題は成長させれば税収が増えるというところ。結果論からすれば前者の議員たちの主張・手法であっても税収は増えることは増えるでしょう。しかしそこは目的ではなく、あくまでも結果。後者の議員たちの頭の中ではそれも目的になっているのですが、ということは、成長して税収が増えるに至るのであれば、歳出拡大以外の手段・方法もありうるということになり、そこに「改革」が入ってきてしまいうるのです。
実際彼らは、例えば、成長のためには解雇規制の緩和を実現せよと繰り返し主張しています。解雇規制が緩和されれば労働移動が活発になって、成長産業に人が行くので、成長するという話なのですが、そんなものは机上の空論に過ぎません。そもそも人はモノや部品ではないので、そう簡単に別の仕事をしようとしてもできるわけではありませんし、成長産業となるためには、それを支える技術等開発するためには、大規模・長期・計画的な国の投資が必要ですし、開発者たちのための安定した雇用環境が必要です。解雇規制の緩和はそれと正反対のことをやろうというもので、その実は、解雇を簡単にすることで人件費を削減しよう、人をコストの調整弁に使おうということを目指すもの。成長産業云々はただの方便に過ぎません。(日本は解雇規制がしっかりしている中で発展・成長を遂げてきましたしね。)
そんな彼らの正体はと言えば、リフレ派と呼ばれる人たちです。かつてのみんなの党はまさにリフレ派でしたし、日本維新の会もその方向性を持っています。アベノミクスもリフレ派がブレーンとして入って立案されたものです。したがって、3本目の矢として「成長戦略」と称した規制緩和が入っていたのです。
積極財政推進という点で彼らと合従連衡するのはいいですし、あえて仲違いをする必要はありませんが、先を見据えて、彼らの主張には注意しておきましょう。
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