政治

日本経済

2022年12月7日

【藤井聡】政府のコロナ規制に反発する欧米と中国。なぜ、日本人は政府に対して「従順」なのか?~政治心理学研究が示す〝キバ〟をおられた現代日本人の姿~

From 藤井聡@京都大学大学院教授

中国では今、大規模なデモが中国の各地で起こっています。習近平の「ゼロコロナ政策」に対する抗議デモです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/defd4115b140619f9a8922b7c056b485cdb44f60

中国では天安門事件以来、住民デモは徹底的に抑圧、弾圧されており、ここまで大規模なデモはまさにその天安門事件以来とのこと。

そして遂に、習近平主席の退陣を求める声も出始めたとのこと。これについて中国専門家である、石平氏は、次の様にコメントされています。

「1949年に共産党政権できてから、国民が公の場で、共産党の最高指導者の退陣を求めたのは、実は初めてのこと。天安門事件の時も、そういうことなかった」

この異例の事態はまさに、中国政府による「コロナ規制」が如何に激しく人々の暮らしを抑圧しているのか、そして、中国人達がそれに対して如何に激しく反発しているのかを示しています。

ただし、こうしたコロナ規制に対する反発は中国においてのみ見られるのではなく、一昨年、昨年と激しい”ロックダウン”が強行された欧米各国でも見られたものです。

つまり、欧米人や中国人は、コロナ感染症を抑止するための行動規制、自由の抑圧に対して、激しく反発し、直接的な政治行動をとるのです。

ところが、我が国日本においてはこうしたデモは全く見られません。

政府が自粛を要請すれば、唯々諾々とそれに従い、皆が大人しく自粛をする、ということが繰り返されてきました。それどころか、自粛警察なるものまで現れて、自主的に自粛をしない人々をつるし上げるという現象までが横行しました。つまり日本人は政府の自粛要請に対して、反発するどころか嬉々として付き従うという恐るべき従順な行動を取ったのです。

もちろん、その自粛なるものが公益に叶うことが科学的に明白なものであるなら、この日本人の態度は批判されるよりもむしろ賞賛されてしかるべきだということにはなりますが、そのような科学的証明等は全くなされてはおらず、従順に自粛している人々も、その自粛の有効性を心底信じているわけではないというのが実情でした。

ただただ、皆が自粛しているから、という程度の単なる「空気の支配」によって、政府の自粛要請に対して反発することなく嬉々として従順に従ったのです。

実に恐るべき社会的現象ですが、当方は、この問題について、「なぜ、日本人はデモに参加しないのか?」という事を心理学的に明らかにする研究を、研究室で川端氏や学生と共に行いました。

『日本人の積極的政治参加を阻害する心理要因に関する研究』遠山 航輝, 川端 祐一郎, 藤井 聡 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/78/6/78_II_574/_article/-char/ja/

詳細にご関心の方は上記論文を御参照頂ければと思いますが、この研究で明らかになったのは、次のような傾向でした。すなわち、日本人は

『だいだい、ホントに正しい事だとか為すべき事なんて何もないんだし、回りの事なんて俺にはどうでもいい。だいたい政治の話なんてヤバイもんなんだし、兎に角、もめ事なんてまっぴらごめんだよ、だいたい俺なんてナンもできねー奴なんだし』

と思っているから、皆、デモ等の政治行動をしない、という心理学的傾向でした。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/78/6/78_II_574/_article/-char/ja/

(具体的に言うなら、「政治の話はヤバイ」感(政治恐怖・軽蔑度)、「対立は避けたい」感(対立忌避傾向)、「回りの事なんてどうでもいい」感(自己閉塞性)が高ければデモに参加せず、「真善美はある」信念(非ニヒリスト度)、「俺はスゲーんだ」信念(傲慢性)が高ければ思えばデモに参加する、という傾向が統計学的に有意でした。上記の『』内の文章はこれの心的傾向を文章化したものです)

ということは、日本においてデモが起こらず、欧米中においてデモが起こるのは、日本人の方が、

「ホントに正しい事だとか為すべき事なんて何もないんだよ」
「回りの事なんて俺にはどうでもいいんだよ」
「だいたい政治の話なんてヤバイもんなんだよ」
「もめ事なんてまっぴらごめんだよ」
「だいたい俺なんてナンもできねー奴なんだし」

と思いがちだから、という事になります。ただし、各種の分析を通して明らかになったのは、

「ホントに正しい事だとか為すべき事なんて何もないんだよ」(ニヒリスト度)

が高いか低いか、ということが、政治にどれだけ関心を持つか、という事に対して最大の影響を持っている、ということ。

だとすると、日本においてニヒリズム(虚無主義=ホントに正しい事や為すべき事なんて何もない=真善美なんて何もないんだよという意識)が、諸外国よりもより激しく蔓延ってしまっていることが、日本人が政治に関心を持たず、デモなんかが起きない、最大の原因だ、という事が、統計学的・心理学的に示された訳です。

……なかなか絶望的な結論ですが、これが客観的な結論なわけです。

まぁ、何が正しいとか間違っているとかってことに興味関心の無い人々に、どんな政治の話をしたって無駄ですよね。彼らにあるのは、ただただ、打算だけ、という事になるわけですから。

……ってことで、日本人全体のニヒリズムを軽減させていくのは至難の業でしょうが、少なくとも身の回りの空間だけでも、そんなニヒリズムを打ち消していく努力を続けなきゃ、こっちが窒息してしまいそうになりますねw

……ということで、また次回!

追伸:本記事は、Foomiiメルマガの『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』https://foomii.com/00178)の12月2日の配信記事です。この一週間で下記の様な記事を配信しています。ご関心のものがありましたら是非、ご一読下さい。

独立の気概を持つ人物が総理大臣になる以外に、日本が助かる道はない。
https://foomii.com/00178/20221207100746102844

これもまた「コロナ自粛」がもたらした巨大被害 ~関係者間の信頼関係が形成できず、公益に関わる巨大プロジェクトが危機に瀕してしまう
https://foomii.com/00178/20221206100000102783

少なすぎ!岸田内閣の「39兆円の経済対策」の欺瞞を暴く(前半)
https://foomii.com/00178/20221205101129102766

御旅所でひっそり暮らすネコ。今の日本人は、こんな風にささやかに生きていくことすら難しいのかも知れない。
https://foomii.com/00178/20221204090556102722

【要注意!】「日本、スペイン・ドイツ連続撃破」という素晴らしき快挙。ただしこの勝利にただ浮かれているだけでは、日本国家は確実に衰退する、という話。
https://foomii.com/00178/20221203023613102688

欧米に続き、政府のコロナ規制に対する大規模抗議デモを起こす中国。なぜ、日本人だけ全くデモをしないのか?
https://foomii.com/00178/20221202020940102643

関連記事

政治

日本経済

【藤井聡】日本の防衛力を激しく弱体化させた、「世界最低の経済政策」

政治

日本経済

【藤井聡】 『プライマリーバランス亡国論』が、今、時代を変えつつある。この流れをこの<令和>において徹底加速しなければならない。

政治

日本経済

【小浜逸郎】歴史用語削減に断固反対する

政治

日本経済

【三橋貴明】三橋実況中継 12/11/25

政治

日本経済

【上島嘉郎】いま、大海軍を想う

【藤井聡】政府のコロナ規制に反発する欧米と中国。なぜ、日本人は政府に対して「従順」なのか?~政治心理学研究が示す〝キバ〟をおられた現代日本人の姿~への2件のコメント

  1. ニーチェ か サルトル か より

    皆 悩まず 小さくなった。。

    こんな日本にしたのは 誰だ??

    半世紀前に ゲバ棒振り回して
    石投げてた 連中かと、、、

    団塊のゴミどもを
    さっさと浚渫しないかぎり

    日本に明日は無い(たぶん)

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. ガレート型カテキン より

    何月何日にデモ行進します、あるいはデモを行いました、あるいは国会前でデモをおこなったが大々的に呼びかけたにもかかわらず自分の知名度をもってしても全然人が集まらずいまの日本人情けないとつくづく思いました、言わはるんやったら立場は違えどかなり共感できます。
    けれど仮にご自身がデモをなさらず、いやボクは学者やから言論人やから筆でメチャクチャ闘ってますねん言うんであれば、お書きになってるこれ大衆への扇動になりませんか。それこそ「ただただ、打算だけ」ということになりませんか。

    トランプは2年前、ホワイトハウスのすぐそばに集結した数千人もの支持者たちの前に現れて「ホワイトハウスへ行進しよう」と直接呼びかけ「私も一緒に行進する」と言ったそうですね。このへんが学者と経営者の違いなのか、日本人と米国人の違いなのか、もし私が支持者やったら、乏しい蓄えはたいてデトロイトからワシントンに乗り込んだ甲斐があったと熱いものが胸の底からこみ上げてきただろうな思います。
    だが自分でそう言っておきながらトランプはあの日あの後いかなる行動に出たか。トランプという人の「打算」いうか地金があれであらかた露呈してしまった。有り体に言って大統領の器どころか大衆を駒のようにしか考えていない見下げ果てた人物だと思いました。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】遠のくデフレ脱却宣言

  2. 日本経済

    【三橋貴明】ポピュリズム

  3. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】東京ホンマもん教室『岸田「骨太方針2024」...

  4. 未分類

    【竹村公太郎】江戸、近代そして未来のエネルギー戦略(そ...

  5. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】五島列島「洋上風力発電」視察記:なぜ、「洋上...

  6. 日本経済

    【三橋貴明】欧州の激変

  7. 日本経済

    【三橋貴明】本日は東京都知事選挙の投票日です

  8. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】開業医には,税負担が何分の一,何十分の一にな...

  9. 日本経済

    【三橋貴明】今度こそ政策の議論を!

  10. 日本経済

    【三橋貴明】特別会計に「闇」はない

MORE

タグクラウド