From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表
参院選も7月10日の投開票に向けて終盤戦に入りました。情勢調査では与党が過半数を制する結果となると予想されていますが、各選挙区各様の事情があり、まだまだ予断は許しません。
各党各様に政策を主張していますが、なんとも歯切れの悪いものが多く、有権者の側からすると、極めて選択しづらいところもあるのではないでしょうか。大手メディアは、様々な政策を主張するのはいいが財源論はどこへいった、などと批判的に報じているので、選挙目当ての無責任な政策、と思ってしまっている有権者も少なくないかもしれません。
財源は国債であって、税は財源ではないので、そのことをはっきりと主張していればそれで終わりなのですが。しかも消費税は社会保障の財源ではなく、使途は法定されておらず、なんでも使える「第二法人税」のようなもの。その税率を引き下げたからといって、社会保障にはなんら影響はありえません。社会保障に影響があると言うのであれば、それはPB黒字化目標という財政規律。こんな奇妙奇天烈なものを金科玉条のようにしているのは、世界を見渡しても日本だけです。
その消費税の正体についてはこちらの動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=edBIetuaNJw
そして、PB黒字化が日本だけ基準であることについては、こちらの動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=fiFGjVqWywk&t=2s
さて、こうした政策、財源論と直結する主張として、「身を切る改革」というものがあります。これは、議員が議員報酬や文書交通費等を削減することに始まり、公務員給与を減らしたり、事務事業を縮小又は廃止したり、事業を民営化したり、公有財産を民間事業者の事業の用に供したりすることによって、何か別の政策に係る費用を捻出しようというものです。
なんとなく、「当然だよな」と思ってしまう方が一般有権者の中には多いかもしれませんが、それは商品貨幣論、お金のプール論に立った場合の話。世の中にあるお金は限られているから稼ぐか、税で巻き上げるしか必要な費用を捻出する方法はなく、それが難しいなら、特に増税が嫌なら、何かの費用を削って捻出するしかないという話なのですが、貨幣、お金というものは、政府によって発行されるものであって、供給力やその伸び代の範囲内で発行することは可能です。つまり、世の中のお金は限られてはいないのです。政府の重要な役割の一つは、この通貨発行を上手に増やしながら、供給力も増やし、需要も増やしていく、需要が増えすぎないようにしていくことです。勿論単に発行するだけではなく、政府が使って国民経済に供給しなければなりません。これが経済成長です。
その通貨発行の手段が国債であって、これによって野放図な通貨発行ではなく、必要な分だけ通貨を増やすことが可能になっているのです。したがって国債は借金ではありません。法令上も借入金とは明確に分けられています。
これを「身を切る改革」というものに当てはめて考えてみると、身を切る改革は通貨発行を行いません。今ある通貨の量を前提にしてやりくりをしようという考え方ですから、新たな行政需要に対応しようとする際には、何かの事業を止めるか縮小するかしなければなりません。(人気取り政策の実施のために、必要な事業を廃止してしまうということもありえます。)
つまり、「身を切る改革」を進めていっても成長はしないのです。それどころか、良くて停滞、悪ければ衰退していきます。これは通貨の量という観点からもそうですが、行政がその機能を十全に果たせなくなることが、停滞や衰退につながるという観点からも言えることです。
勿論、地公体の場合は通貨発行が出来ませんから、地方税収は財源になりますが、足りない分、必要な不足分は国が地方交付税交付金という形で交付する、つまり国の通貨発行によって充当することが出来ます。したがって、地公体についても「身を切る改革」は不要です。
そもそも国にせよ地方にせよ、いざという時、今回のパンデミックのような事態になった時に迅速かつ柔軟に対応することが極めて重要ですが、「身を切る改革」と称して平時には稼働が少ない事務事業を廃止したり縮小したりしてしまうと、そのいざという時の対応が出来なくなってしまいます。
「身を切る改革」は安全保障という観点からも不要というより、絶対にやってはいけないことなのです。
一瞬耳障りのいい「身を切る改革」に、皆さん騙されないようにしてください。
このメルマガと併せて、こちらの動画もご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=8TqJ2HoYEEk&t=6s
【室伏謙一】身を切る改革は衰退促進策であるへの1件のコメント
2022年7月5日 12:48 PM
しかし現実は改革という言葉が大好きでそれだけで票を入れた日本人
そして維新は躍進した
情けない
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