【三橋貴明】一体全体、何をやっているんだ？？？

日本経済

2022年7月4日

【今週のNewsピックアップ】

改めて考えると不思議なのですが、
元々「電力改革」あるいは「電力自由化」とは、
発電と小売部門を「自由化」し、
「新たに発電所を建設した事業者が、
送配電会社のネットワークを通じて
電力を顧客に小売りする」ことを可能とし、
競争を引き起こすことで
「電気料金を下げる」ことが
目的だったはずです。

ところが、実際には発電所を持たず、
JEPX（日本卸電力取引所）から電気を調達し、
顧客に「安く売る」ことで
既存の電力会社のシェアを奪い取る
ビジネスモデルが勃興。

発電部門の強化はなされず、
小売部門では「値下げ競争」が起きるという、
「一体全体、何をやっているんだ？？？」
と、疑問を持たざるを得ない状況になりました。

反対側で原発は再稼働せず、
不安定電力であるメガソーラを拡大したため、
火力依存が高まります。
LNGへの依存度は、
ほとんど半分に達しています。

LNG価格が安い時期は
それでも良かったのですが、
コロナ禍以降にLNGに対する需要が拡大。
世界的にLNG価格が高騰します。
となれば、
JEPXに電気を卸している大手電力会社
（東京電力ホールディングスなど）は、
電力提供を抑制せざるを得ません。

結果、JEPXの市場で「需要＞供給」という
「あってはならない状況」が発生し、
価格は急騰しました。

【JEPX（日本卸電力取引所）
スポット市場システムプライス】
http://mtdata.jp/data_80.html#JEPX

無論、発電部門への投資が十分で、
大手電力会社以外にも卸売り市場に
電気を供給する事業者が多数あれば、
こんな事態にはなりませんでした。

とはいえ、
政府のエネルギー政策がコロコロ変わり、
かつデフレで長期投資が困難な日本において、
発電部門への新規参入が
増えるはずがありません。

もちろん、メガソーラは増えましたが、
「明日の天気次第」の事業者など、
電力卸売市場では何の役にも立ちません。
（JEPXでは、
翌日分の電気を売買するのです）
というわけで、JEPXの価格が急騰し、
新電力は撤退するか、
顧客に「電気代引き上げ」を
通知するしかありませんでした。

もう一度書いておきます。
一体全体、何をやっているんだ。

問題は、この手の「改革の失敗」が
政治家や国民に共有されず、
誰も責任を取ろうとしない。
誰も転換しようとしないという
日本の現実です。

電力改革は失敗だった。
この「誰の目にも明らかな事実」を、
早急に我々は共有しなければならないのです。

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第４７２　物価対策

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ライフラインと価格弾力性
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価格弾力性が低いとはいえ、
代替品が存在しないライフラインを
「市場化」した結果、どうなるか。
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