From 佐藤健志
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●●自虐史観はなぜ作られたのか、、、
月刊三橋の今月号のテーマは、「大東亜戦争の研究〜教科書が教えないリアルな歴史」です。
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藤井聡さんの新著「超インフラ論 地方が甦る〈四大交流圏〉構想」(PHP新書)は、みなさんご存じでしょう。
私もしっかり拝読しました。
第一部「総論」と、第二部「具体論」からなる同書は、
・なぜ日本再生にはインフラ整備が必要なのか?
・日本のインフラ(とくに人流・物流の基盤となる交通インフラ)はどういう状態にあるのか?
・具体的には、どのようなプロジェクトを推進すべきなのか?
といった点について、明快なビジョンを提示しています。
とくにサブタイトルにもなっている〈四大交流圏〉構想は、気宇壮大であるうえ、合理性も伴ったもの。
とはいえ驚かされるのは、藤井構想の基盤の一つとなっている整備新幹線計画が、なんと1970年代前半に決まっていたこと。
この計画、今でも十分には実現していないのです!
石油危機を乗り越えたあと、1980年代から1990年代にかけて、計画をやり遂げていれば、日本のあり方もずいぶん違っていたでしょうに。
演出家・プロデューサーの浅利慶太さんも、1971年の時点でこう書きました。
東京中心の体制では、日本を見つめ直す新しい考え方は生まれてこない。〈中央〉と〈地方〉という明治以来の悪習にしたがっていては、日本の再生、日本人の未来はない。(中略)
日本の芸術文化も産業も、そうしなければ(=東京一極集中を脱却しなければ)大きな壁にぶつかるだろう。政治など、芸術文化と産業の後からついてくればいい。それが健全な人間の社会の姿なのだ。
(「浅利慶太の四季」第一巻、慶應義塾大学出版会、1999年、250ページ。表記を一部変更)
激しい調子ですが、これには理由があります。
われわれの考え方や感じ方に大きな影響を与える点で、文化もまたインフラの一つ。
道路や鉄道、あるいは橋やトンネルといった〈物理的なインフラ〉が「ハード・インフラ」と呼ばれるのにたいし、こちらは「ソフト・インフラ」と呼ばれます。
つまりはインフラにも、ハードウェアとソフトウェアがあるという話。
しかるに演劇文化は、それ自体がソフト・インフラの一種(ブロードウェイの舞台は、間違いなくニューヨーク市のインフラです)でありながら、ハード・ソフトの両面でインフラ整備が進まないと開花しないのです。
必要となるインフラを、ここで列挙してみましょう。
まずは劇場。
当たり前ですね。同じ作品でも、劇場でやるのと、多目的ホールでやるのとでは、仕上がりにかなり差が生じます。
技術スタッフの腕が良ければ、それなりにカバーできるとはいえ、限界があるのは否定できません。
また劇場に関しては、設備もさることながら、立地条件が重要。
人が集まりやすいところにあることや、周辺にいい喫茶店やレストランがあることも大事ですが(飲まず食わずで芝居を観たい人、手を挙げて!)、決定的なのは住宅地からの距離。
日本の演劇界では、ソワレ(夜公演)の開始時間が、欧米より二時間前後早いものの、なぜそうなっているかと言うと、真夜中前に帰宅できないお客様が出るのを防ぐためなのです!
したがって、次はこれ。
よく整備された都市内・地域内交通。
公共交通もさることながら、劇場の周辺に駐車場がなかったりすると、けっこうイタい。
そしてもちろん、地域の経済が疲弊していては話になりません。
映画などと比べて、芝居はチケット代が高いのですから。
つまり演劇文化は、都市計画まで含めたハード・インフラが整備されたうえ、地域経済が活性化して、はじめて開花するのです。
しかしこれでも、まだ一つ足りないものがある。
分かりますか?
時間です。
芝居を観るための時間。
休憩を含めると、三時間は欲しいんですね。
理想を言えば三時間半。
これに劇場までの往復にかかる時間と、観劇前後の飲食などにかける時間を足して下さい。
先に私は、日本の劇場ではソワレの開始時間が早いと書きましたが、本当のことを言えば、今やソワレそのものがどんどん減っています。
主流は完全にマチネ(昼公演)。
演劇興行の基本は「一週間につき、ソワレ6回+マチネ2回」(※)のはずなのに、すっかり逆転してしまいました。
(※)なぜソワレが7回でないのかというと、休演日が1日入るからです。
理由は明らかでしょう。
わが国では、働いている人の多く(とくに男性)は芝居を観るための時間が取れないのですよ。
ゆえにお客様は、時間とお金に余裕のある一部の女性層が中心となる。
ですから、そういったお客様の好まれる内容の作品が、集中的に上演されるわけです。
その手の作品にも、むろん優れたものは多々ある。
しかし豊かな文化には、多様性が不可欠であることを思うとき、現在の状況は手放しでは喜べません。
だいたい三島由紀夫さんの名言にならえば、芸術には「夜」が不可欠なのです。
ソフト・インフラとしての演劇文化を真に充実させるには、勤労者が金銭的余裕のみならず、時間の余裕も持てるような社会・経済システムが必要となる。
そのためにはまず生産性を高めることで、比較的短い時間で、より多くの付加価値を生み出せるようにならなければならない。
三橋貴明さんの持論ですね。
しかし同時に「生産活動とは関係のない時間を、人々がたっぷり持てるようにするのもインフラ整備のうち」という発想が求められる。
つまり余暇。
演劇に限らず、お金と余暇が両方なければ、文化的な消費は成立しません。
需要が高まらず、いつまでもデフレが続くわけです。
「時は金なり」という格言にならえば、「余暇もインフラなり」。
日本のインフラは、この点でも(あるいは、この点でとくに!)先進国レベルとは言いがたいのではないでしょうか。
なお来週は都合によりお休みします。
9月9日にまたお会いしましょう。
ではでは♪
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エドマンド・バークも演劇好きだったのです。
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