日本経済

2019年11月22日

【施 光恒】カジノ依存症に公的医療保険??

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

こんばんは~(^_^)/(遅くなりますた…)

昨日、このようなニュースがありました。

***
「ギャンブル依存、保険適用 IR誘致で厚労省検討 来年度から」(『東京新聞』2019年11月21日朝刊)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201911/CK2019112102000126.html

厚生労働省は二十日、ギャンブル依存症の治療を公的医療保険の適用対象とする方向で検討に入った。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致が今後各地で進むため依存症対策を強化したい考え。ただ依存症の治療に国民の税金や保険料が投入されることには反発も予想される。

この日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)で提案した。来年度の診療報酬改定に向けて結論を出す。(略)

この日の中医協では一部の委員から「他の依存症にも保険を適用するのか」「百八十七人の調査結果で効果があると言えるのか疑問だ」といった異論も出た。

IR誘致に向け一八年七月には、予防や社会復帰のための計画策定を政府などに義務付けるギャンブル依存症対策基本法が成立。政府は専門的な医療機関の整備など対策強化を進めている。
***

これ、どう思います?

私は、疑問を強く覚えます。よく言われているように、カジノ導入でギャンブル依存症が増えるのはまず間違いありません。

私は、カジノ解禁に反対です。(断っておきますが、パチンコにも反対です)。本来なら、カジノ解禁など認めるべきではありません。カジノ業者に、みすみす日本の普通の人々が食い物にされるのを許す政治は、どう考えてもよろしくないと思います。カジノ解禁は撤回すべきでしょう。

しかし、解禁するとすれば、最低限、ギャンブル依存症対策はしっかりしなければなりません。
ですが、その費用負担を公的保険に負わせるというのはおかしな話です。上記の記事中にもカジノが招くギャンブル依存症の治療に「国民の税金や保険料が投入されることには反発も予想される」とあるとおり、私も納得いきません。

まずは、カジノ業者に支払わせるのがスジではないでしょうか。

現在、このデフレ不況のなかで大変な思いをして、健康保険料を払っている国民がたくさんいます。特に、ここ25年ぐらいの間に急激に増えた非正規雇用の人々にとって、毎月の保険料の支払いはかなりの負担でしょう。

人々が懸命に働き、保険料を納め、機能させている公的保険を、カジノ業者が稼いだ後のしりぬぐいに使われるのは、賛成できません。

いわゆる新自由主義的な経済の下では、こういうの多いですよね。

ごく一部の企業や投資家が儲けやすい環境を作った結果、生じたコストを、一般国民に背負わせるような事例です。

例えば、これは以前、私が本メルマガで書いたことですが、移民(外国人単純労働者)の受け入れもそうした事例の一つです。

施「外国人労働者受け入れは誰の利益なのか?」(『「新」経世済民新聞』2019年7月5日配信)
https://38news.jp/economy/14019

米国の労働経済学者のジョージ・ボージャスは、米国における移民受け入れの経済的効果について次のように記しています(ボージャス/岩本正明訳『移民の政治経済学』白水社、2018年、206~207頁)。

「移民が労働人口に加わることで、富は移民と競合する立場にある労働者から移民を使う側の経営者に移転される。ただ、経営者が享受する利益は労働者が失う損失を上回るため、移民は「移民余剰」を生み出す。つまり、受け入れ国の国民の全体の富は純増する。ただ移民余剰は小さく、年間でおよそ五百憶ドル程度だ。一方で同じ分析結果によると、五千億ドルの富が労働者から企業に移転する。(略)。」

「受け入れ国が福祉国家である場合、移民余剰となる利益は移民による社会保障サービスの利用に伴う損失で相殺される可能性がある。移民が受け入れ国の国民よりもそうしたサービスを利用しがちであることはほぼ間違いないことで、移民は短期的には財政負担となる。ただ長い目で見れば、移民は財政面でプラスの存在かもしれない。(略)。移民は納税者となり、税負担を緩和するかもしれない。ただ、多くは想定される将来の税収や政府支出の推移に左右されるため、移民がもたらす長期的な財政上の利益を想定することは極めて困難だ。」

「少なくとも短期的には、移民余剰による経済的な利益は移民に給付される社会保障サービスの財政負担により相殺されると言ってもおそらく暴論ではない。過去数十年間に米国に移住してきた外国人の規模や技能水準を考えると、移民の経済的な影響は均せばせいぜい差し引きゼロだ。ただその裏では、莫大な富が労働者から企業に移転している」。

長々と引用しましたが、ここでボージャスが述べているのは、移民(外国人労働者)受け入れは、非常に不公平な施策であるということです。

賃金の安い移民を受け入れることで、一部の企業(経営者や投資家)はもうかります。その一方で、移民と競合する国内労働者は、職を奪われたり、賃金が下がったり、雇用条件が悪化したりするなど損失を被ります。

また、一般国民も、移民に給付される社会保障サービスの財政負担の増加分を背負わなければならなくなります。

他にも、おそらく、移民の子弟が公立の小学校などに通うことになれば、日本語の補習授業を開設する必要などが生じます。学校は、おそらくそのための専門教員を雇わなければならなくなります。そうした費用を負担するのは、結局は、国民の税金です。

これもなんか変な話ですよね。一部の企業関係者や投資家が儲けやすい環境を作るために、国民の税金や公的保険が使われるわけですので。

本来なら、多大な利益を受ける人々(移民を雇用する企業やそこから儲ける投資家など)が、移民のもたらすコストをまず第一に負担すべきでしょう。

あるいは、最近、流行の外国人観光客を大量に呼び込んで来ようとする政策、つまり「インバウンド」政策も、同様でしょう。

一部の観光業者は潤うかもしれませんが、そのために、一般国民は、いわゆる「観光公害」に悩まされたり、外国人観光客用のWiFiや多言語の各種標識の整備の費用を税金から負担させられたりしています。これも変ですよね。こういうWiFiなどがもし必要であるのならば、観光業者の団体などが負担すべきではないでしょうか。

一部の企業や投資家が稼ぎやすい環境を作るために、普通の人々の税金が使われたり、暮らしが悪化したりする今の政治のあり方は、やはり公平性を欠いていると言わざるを得ません。

マスコミや野党は、「桜を見る会」をめぐるこまごまとした事柄で政権批判をする暇があるなら、それよりももっと重要な、こうした歪んだ今の政治のありかたに切り込んでいってもらいたいものです…。そうすれば、少しは国民の支持を回復できるのではないでしょうか。

長々と失礼しました…。
<(_ _)>

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【施 光恒】カジノ依存症に公的医療保険??への4件のコメント

  1. 大和魂 より

    カジノ誘致に最も熱心なのが、関西の地域政党で、地元の市営地下鉄を売り飛ばした小学生以下のガラクタ集団の維新でした。また、彼らのスローガンがぶっ飛んで傑作でしかなく、それは、大阪の成長を止めるなだって!笑笑。それから丸山穂高は、除名にして元暴力団員の議員はスルーしてしらぬぞんぜぬと、更には犯罪議員は離党ですから全くハナシにもならないわけですよね。これぞ、まさしくガラクタ!だからカジノはやるべきではない!以上。

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  2. たかっきー より

    当たり前ですが受益者負担が原則ですよね。
    騙す側と騙される側、
    搾取する側と搾取される側、
    食うか食われるかの社会、
    今の世の中あまりにもおかしくなって来てますね。

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  3. たかゆき より

    人生は 博打だ

    日本は 賭場だ。。

    そして 日本には
    胴元と 張子しか 存在しない、、

    小生の職種は 切った張ったの
    バクチ そのもの
    で 申し分なしの 依存症

    それが 何か??

    ちなみに 博打で桜といえば
    花札

    桜に幕 は 20点
    光で ございます 

    11月の 光は 柳に道風
    運が良ければ

    柳を掴んだ 蛙のように
    大金を 手にすることが

    できる 鴨 ♪

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  4. お友達だけ優遇の安倍 より

    これは精神科の診療になるだろうが、保険診療報酬総額が減額減少の連続なのに精神科の報酬は下がっていない。
    アベ友に日本精神医学会の重鎮がいるとの噂とあながち無関係ではないのではないか?

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