政治

日本経済

2021年6月17日

【藤井聡】孫子のための財政論:政治学が分かれば正しい経済政策が分かる

From 藤井聡@京都大学大学院教授

「表現者クライテリオン」はこの度、

『孫子のための財政論 ~中央銀行の政治学』

https://www.amazon.co.jp/dp/B095GRW59C/

を特集の最新刊を刊行しました。この特集では、今日本がなすべき「財政拡大」を、「政治」の視点を交えながら議論したものです。

そもそも日本は、20年以上に及ぶデフレ不況に加えて、安倍内閣下での2度に渡る消費増税、挙げ句に、コロナ自粛によって二年連続のマイナス成長となっています。特に昨年度は成長率マイナス4.6%、GDPにして約22兆円もの国民の所得が一気に失われました。

そして今年度に入ってからもさらなる自粛を要請する緊急事態宣言が出され、さらなる倒産、失業、そして貧困化と格差拡大が加速し、我々日本国民はさらなる不幸へと転落していくことは明白な状況に至っています。

この凄まじく不健全な経済状況を放置すれば、悪夢の様な状況を甘受せねばならぬのは、今を生きる日本国民のみではありません。我々の子供や孫の世代の日本国民もまた、大いなる不幸を生きて行かざるを得なくなります

それは丁度、たまたま裕福な先進国に生まれた国民は豊かで文化的な人生を送る幸運に恵まれる一方で、たまたま倒産、失業、貧困と格差がはびこる貧国に生まれた国民は「貧すれば鈍する」、すなわち「貧乏するとどんな人でもさもしい心をもつように」なってしまい、不幸なる人生を生きて行かざるを得なくなる――――そんな話が、我が国の将来の国民の身の上に等しく降りかかるのです。

かくして、我々世代が未来の子々孫々の幸福を願うのなら、この凄まじい現下の経済不況をどうにか改善せねばならないのです。

この500兆円を超える規模の巨大な日本経済全体を健全化することができる力を持つ存在は、幸か不幸か一つしかありません

中央政府です。

我々国民がどれだけ運動を展開しようとも、人々が多様である限り、一億人を超える全ての人々が一つの方向に向いていきなり消費や投資を拡大するようになるような事は万に一つもありません

いくつかの大企業が日本経済の健全化に乗り出したとしても、500兆円の経済全体の方向が転換するようなことはありません。どれだけの大企業と言えども、せいぜいが数兆円から10兆円規模の存在でしかないからです。

ところが中央政府は毎年、100兆円規模の予算を組んでいるのです。そして、その予算規模を、補正予算という制度を使えば、数十兆円規模で、そして望むのならば100兆円規模で一気に拡大することすらできるのです。

それだけの財政拡大があれば、日本経済が一気に好調になることは火を見るよりも明らかなのです。

さらには、法令や税制を調整する事を通して、一つ一つの企業や家計の経済活動を一気に変えてしまうこともできるのです。

例えば、国会決議一つで、消費税を凍結し、国民の消費に伴う支出を一気に1割近くも下落させ、それを通して未曾有の「巨大消費・拡大作戦」を敢行することもできるのです!

いわばGoToキャンペーンの超拡大のGoTo消費(コンサンプション)全商品10%オフ!(実際は9.1%w)ができるわけです。

だからこそ、今、欧米では、消費減税&未曾有の政府支出拡大が断行され、まさに経済はV字回復を一気に成長していこうとしています。

しかし我が国日本では、全く事情が異なります。

数字の上では「世界最大級の財政拡大」なんて言ってますが、単なるハリボテ

「真水」ではない「貸付」が多くの部分を占め、予備費を始めとした未執行予算が山ほど残されています。しかも、消費税については引き下げる議論が全く成されておらず、それどころか社会保険料の引き上げや子ども手当の減額などが無慈悲にも断行されています。

こうなっているのは偏に、日本政府が「財政均衡主義」、つまり、「政府支出は、税収の範囲で賄う」という、いわゆる「プライマリーバランス黒字化」という財政規律を採用しているからなのです。

それはつまり、「財政論」の歪みによって、日本一国において求められる財政拡大が不可能となっていることを意味しています。そしてその結果として、日本一国において経済が凋落し、国民が不幸のどん底へと転落し続けていく状況となっているのです。

当方が編集長を務める言論誌・表現者クライテリオンでは、こうした状況を打開することを企図し、この度、

『孫子のための財政論 ~中央銀行の政治学』
https://www.amazon.co.jp/dp/B095GRW59C/

と題した特集を企画し、発行いたした次第です。

この特集では、「子々孫々」を真剣に考えるのならば、あえて今、財政赤字を拡大して経済を立て直すことが必要であることを論じます。

そして、我が国に日本銀行という「中央銀行」があり、そこで発行している「円」を用いた政府支出を行う限り、どれだけ赤字が拡大したとしても、借金返済が出来なくなる、つまり破綻する事はない、したがって、赤字拡大で過剰なインフレにならない限り、政府は存分に支出拡大をすることができる――そうした財政論こそが今、日本に求められることを論じました。

こうした議論はしばしば、経済学の分野における「MMT」(現代貨幣理論)と呼ばれる理論の中で展開されてきましたが、これに対する理解が、日本では十分に浸透していません。その結果、財政拡大ができず、日本の地獄のような状況が継続しているわけですが――この特集では、この財政論を理解するためには、

「貨幣を発行する「中央銀行」という存在が、国家によって設置されている」

という点を十分に理解することが必要であること、そしてそれを理解するには、

「経済学ではなく政治学」

に基づく認識が必要であることを論じました。

つまり、貨幣というものそれ自身を理解するためには、経済学ではなく、国家という存在が一体何なのかを論じてきた「政治学」が必要である事を論じたわけです。

こうした認識を持てば、何故、多くの経済学者がMMTを理解できないのかの理由が明らかになります。それは、彼等経済学者の多くが経済学の専門家に過ぎず、「政治学」についての基本的素養が欠落している存在だからなのです。

本特集、

『孫子のための財政論 ~中央銀行の政治学』

https://www.amazon.co.jp/dp/B095GRW59C/

ではこうした視点に立ち、経済のための「政治学」を様々な角度から論じていきます。

是非共、MMT、そして、適正な経済政策を理解するためにも、本特集で論じた、政治学的視点の議論もしっかりとご理解いただきたいと思います。是非、ご一読下さい。

追伸:
経済を理解するためには、「政治」を理解する必要があります。そして今、日本で経済政策が全く出来なくなった理由を、政治の視点から下記にて改めて論じました。こちらも併せて是非、ご一読ください。
日本が『地獄』に落ちる根本原因 ~コロナ禍が露わにした日本に「政治」が無くなったという真実~
https://foomii.com/00178/2021061215572581243

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【藤井聡】孫子のための財政論:政治学が分かれば正しい経済政策が分かるへの6件のコメント

  1. たかゆき より

    孫子のための財政論

    ソンシ に 説法??

    あぁ 南洲さんの 「子孫の為に美田を買わず」
    って やつですか、、、

    子孫に インフラを 残さず 恨みを買う
    だべ ♪

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  3. この世は既にあの世 より

    先生、田原くんとの動画を少しだけ見ました。その中で田原くんは地方分権にシンパシーを感じていることが分かりました。地方分権は道州制に繋がるのでは?と思い、やっぱり高齢者である田原くんは国家が嫌いな戦後左翼人であるなあ、と。

    或いは土地規制法に反対する平和運動左翼、このあれが怖いこれが怖い、何でもかんでも怖い怖いというような病気は恐らく治らないので日本の繁栄はもとより自主独立は不可能ですね。

    中央集権とか国力増強とかをすると「戦争を始める悪い国」と考える病気の人がかなりいるので絶望的です。

    こういう言い方は失礼かもしれませんが、藤井先生、三橋さん、室伏さんの方が今のボンクラの政治家よりはマシなので交替してもらえませんかね。

    馬鹿や病人、根性無しに何かを要請したりインプットしてもムダなので、政治家を次々に交替させるしかありません。

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  4. 大和魂 より

    どいつもこいつも、特に日本文化などとは口にするだけの軽々しく威勢だけの薄っぺらい奴等ばかりなので、おそらくは十年後くらいから日本では移民が溢れて新自由主義社会となり、ビジネス保守派は壊滅されて後悔しながら己の無様さに吼え面をかく事になるでしょうね。

    なんせ現状でさえ日本社会に馴染まない他人や他方から権力や金銭を、むしり取ったり互いにう奪い合う社会の実情を黙殺できる無神経の軽薄な年配者が存在している時点で文化なんて、おこがましくてバカバカしくて子供のママごととして、大阪の口だけ間抜け集団と大差ないですからね。

    だから、非常に厳しい状況の中の分水嶺の状態のこの期に及んでも、結局は身体を張って犠牲になられた方々にも何らそしらぬ顔をして、自分たちの都合による憂国ごっこしているのは、これまた大阪のチンピラ詐欺集団と同じなのよ。

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  6. この世は既にあの世 より

    自民党って逮捕者は何人も出すわ、売国法案は次々に出してくるわの反社会勢力です。勉強議員はいわばそこの組員でしょ。

    ブルーマウンテン議員、西田、勉強議員、すべて売国法案に賛成してきたわけです。

    要は身体張れないわけでしょ。

    「勉強してます」だのそんなことはどうでもいいわけです。

    国を売ったでしょ、売りましたか?売りませんでしたか?

    答え=売りました。

    そういう人間を勉強してるからと言ってアホ共が推す理由が分かりませんねぇ。

    国民が馬鹿なのは、反社を反社と認識出来ずに売国奴に何度も投票することです。

    日本なんて既に終わった国なんですよ。

    反社が通るなら俺達の反社も通るはずでして、綺麗事や道徳を叫びたいのなら、反社勢力の組員なんか絶対に当選さしてはなりません。

    どうせ、口先だけ、ポーズのみ、二階や麻生に言われたら従うだけの犬。

    売国法案に全部賛成、そんなの許してたら正義は無く、民主主義も無い。

    勉強議員もよく恥ずかしくもなく顔出せますよね。てか、使えないって顔見れば分かるじゃないですか。

    禿げ上がって、脂ぎって、さえない顔でボソボソ言って、街や村を歩いて現場を知ろうとするわけじゃなく、楽して儲けようとする性根が染み付いている。

    こんなヤツ、何度当選させても同じ、反社の片棒担ぎ続けるだけ。

    昔の任侠道ならですね。情があって筋も通したでしょうが、反社自民党は詐欺をしながらのサイレントな暴力だけですからね。

    出来ない言い訳を「勉強してます」だのとよく思い付いたと思います。

    富の独り占めする理屈をよく思い付いたと思います。「経済成長すれば」「デフレ脱却すれば」「生産性向上をすれば」「付加価値を付ければ」

    それさえ言ってれば分配しなくていいんで。

    ただ国民は既にそんなこと冷めきっちゃって興味無いんですよね。勝手に言ってりゃいいじゃん、俺は俺で反社やるわい、と。

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