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2021年5月8日

【三宅隆介】[特別寄稿]ワクチン不足の次は、打ち手不足

From 三宅隆介@川崎市議会議員

川崎市は4月24日から75歳以上の高齢者を対象にワクチン接種の受付を開始しました。

ところが、市内には約16万人の対象者がいるにもかかわらず、実際に国から届いたワクチン数はたったの14,000人分にすぎませんでした。

ゆえに、やむを得ず川崎市としては予約受付を一時的に中断せざるを得なくなった次第です。

ここにきて、ようやくのことではありますが、政府は6月の中旬ごろまでに約5,000万人分のワクチンを確保できる見通しが立ったようです。

すると今度は、国は接種業務主体である自治体に対して「7月中までに65歳以上の高齢者への接種をすべて終わらせろ!」と言う。

しかも、川崎市に対しては「今からでも、もっと大規模な接種会場を用意しろ!」とまで言ってきました。

私の個人ブログでも述べているとおり、川崎市はその取り扱いに技術的な繊細さが求められるファイザー社製ワクチンの性質上、及び人的資源の効率性と集約性の観点から「集団接種会場」を主体とし、足らざるところを「個別接種会場」で補うという接種体制を緻密に計画し整備してきました。

市内7区の各区一箇所に「集団接種会場」が設置されているのはそのためです。

一方、国(厚労省)は当初、『練馬モデル』なる複数の「個別接種会場」主体での整備を各自治体に推奨していました。

しかしながら、これでは人的及び物的資源が分散され、しかも冷蔵状態での振動を避けねばならないファイザー社製ワクチンを各個別接種会場まで移送する際のリスクも高まってしまいます。

残念ながら、こうした国が推奨する『練馬モデル』に踊らせられて、最初から個別接種会場主体で整備してしまった自治体は少なくありません。

なお、ファイザー社製ワクチンが―15℃以下での冷凍移送が可能になった3月1日以降は、ワイドショー情報によって練馬モデルに魅了された市民からの要望が高まり、川崎市においても個別接種医療機関を徐々に拡充せざる得ない状況になりました。

それが今度は「大規模接種会場を整備してでも早く接種を終わらせろ!」と言っているわけです。

危機を想定する能力に乏しい政府は、これまで容赦なく「病床」を減らし、「保健所」を減らし、「公務員」を減らし、「地方交付税交付金」を減らしてきました。

つい最近まで厚労省などは川崎市に対し、「市立井田病院は近隣の民間病院と医療機能が重複しているから病床を減らせ」という再編計画を通告してきたほどです。

そのくせ、コロナ以降、市立井田病院がコロナ感染患者を積極的に受け入れている現実などを無視し、まるで再編通告などなかったかのようにとぼけています。

合理的戦略性に乏しく、常に兵站を無視した場当たりな政策(司令)は大戦末期の帝国陸海軍大本営にソックリです。

ワクチン承認が諸外国に比べて4ヶ月も遅れてしまったことからワクチンの確保に時間を要し、自治体に対しては個別接種会場主体での整備を推奨し人的資源を分散させ、ひたすら国民に「自粛」を要請することしかできない政府。

専門家たちからの「外国での接種状況を見て安全性を確かめてからゆっくり接種すればいい」という意見や、「日本人は外国人と異なり特殊だから日本人を対象にもう一度治験をやったほうがいい」などの意見を政府が取り入れてしまったことこそが、我が国の接種率が一向に向上しない最大の要因ではないでしょうか。

滑稽なことに、そうした専門家らも今ではワクチン推進派に豹変しております。

ワクチン接種に否定的だった野党も同じで、今になって「政府のワクチン対応が遅い」などの批判に転じている有様です。

因みに、2009年の新型インフルエンザの際には、政府は日本人への治験なしで緊急承認し接種を行いました。

今回の件と比較すると、まさに一貫性のない対応です。

ワクチン接種は医師のほか看護師などを動員して行われますが、今度はワクチンはあるけど「打ち手が足りない…」という危機的な状況に陥る可能性があります。

あまり知られていませんが、人口あたりの医師数をみると我が国は先進国のなかでも最低レベルです。

OECD諸国の平均で見ても約12〜13万人も足りていません。

むろん、このことは国の政策の結果です。

要するに今後はワクチン不足が緩和されつつ、ある時点から「打ち手不足」が発生する可能性が大で、その分岐点はおそらく6月下旬から7月の上旬になろうかと推察します。

練馬モデルのような個別接種を重視して効率的な接種が行える集団接種を後退させた国の政策のツケが回ってくるわけです。

以上の観点から、7月中に65歳以上の高齢者への接種を終えるのは実に困難な状況ですが、我が国ではいつの時代でも軍事であれ医療であれ、常に「現場」は優秀です。

とりわけ現場は、異常なほどの頑張りで無茶な命令にも対応しようとします。

その意味で犠牲になるのはいつも「現場」と「国民」です。

川崎市においても、7月中までに65歳以上の高齢者へのワクチン接種を完遂すべく、人員、予算、物資、会場の確保に向けて既に動き出しています。

予算については、これからはじまる6月議会において補正予算が審議されることになりますが、この期に及んで「財政規律がぁ〜」などと言って異を唱える議員がいたならば容赦なく糾弾する所存です。

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【三宅隆介】[特別寄稿]ワクチン不足の次は、打ち手不足への11件のコメント

  1. 足掻き続ける より

    ワクチン強制は断固拒否します。

    遺伝子ワクチンの危険性。
    接種後の死亡者数。
    発症・重症化抑制を期待するものであり「他人にうつす」ことや感染は防止できない。
    容易に変異するRNA型ウイルスに対してワクチンを造り続けるのか。
    「反ワクチン」ではない医師からの警告→岡田正彦氏のYouTube動画「新型コロナワクチンは危険」で検索。

    ワクチン以前に免疫力を衰退させる生活様式を改めた方が良い。
    子どもに接種させるなど狂気の沙汰。

    西洋医学を否定するわけではない。全て自然に任せろなどとも言っていない。
    しかし、ワクチン接種を強要するような我が国の「空気」には断固として抗う。

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  2. 大和魂 より

    コロナワクチンについては連休前の永田町でも、日本国民に向けて【言語道断】の発言を繰り返し行なった、コロナワクチン担当大臣の河野太郎から驚くべき低劣な戯けた発言が、されていましたね。

    まぁ彼も所詮は社会の元凶に位置する、安倍晋三と何ら遜色ないない存在であるのは、岸信介と河野一郎が暗躍した【誓約書事件】などを考察すれば一目瞭然ですから、結局は自民党関係者の主軸は世襲だと言うことです。

    だから、それを頭の片隅にすら置くことのできない、おバカ政治家連中が護る会の関係者であり、さらには長島昭久やら和田政宗やら細野豪志などの移籍した間抜け連中なんだから、三原じゅん子とか森下千里などが永田町で存在する価値すらも常識では、あり得ないわけですよ!!

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  3. 陰謀論者、とはいわないが より

    完璧なワクチンなど存在しない。だから拒む人がいてもよい。しかし拒む自由を言うのなら、接種を希望する自由も許容しないとフェアーでない。まずフェアーであることを望みたい。

    医師にも立場がいろいろある。ある医師ひとりの意見を象徴的に正義と据えてよいのなら、子宮頸がんワクチン接種は必要であると説く我が家のかかりつけ医、ハーバード大で免疫研究に携わったドクターもまた正義の中心に据えてよいことになる。

    米のMass General Brigham(これもハーバード大の関連病院)で働く職員64,900人を対象に、ファイザーとモデルナの新型コロナワクチンを1回接種した際の副作用(アナフィラキシー)発生率を調査した結果は0.025%(16人)だった(3月8日、米国医師会誌JAMA)。

    ひとつだけ言えることは、昨夏から内外でずいぶん指摘され、先ごろ科学誌ネイチャーにも取り上げられたが、もういい加減、新型コロナは集団免疫戦略が有効でないとの立場に立つべきだ(口にするのも情けないが)。危機に立ち向かうと銘打つある雑誌が、いまだに有効であるとの楽観認識を改めていないのは転倒していて、不気味としか言いようがない。

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  4. curonikeru より

    2021 1 13
    そして医療機関でありますけど、日本には、今の法律がある中でですね、逼迫(ひっぱく)状況にならないように、政府としては、ベッドは数多くあるわけでありますから、それぞれの民間病院に、一定量出してほしいとか、そういう働きかけをずっと行ってきているということも事実であります」

    今の法律
    が悪ければ、変える試みをしたのかな?
    川崎市会議員さん

    医師数が少ないのは、医学部、厚労省、皆保険、族議員、医師会、開業医、医療機器
    産学官連合の成果でしょ

    派生需要で医師数供給量を減らす需給操作である。

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  5. curonikeru より


    派生需要で医師数供給量を減らす需給操作である。


    平時における派生需要で医師数供給量を減らす需給操作である。

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  6. curonikeru より

    同様に
    平時における派生需要一定で、公務員数供給量を減らし給料維持する需給操作である。

    デジタル改革は自からやらず、
    ヒナが口開けピーピー共助。

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  7. curonikeru より

    なんだか、いかにも、改革派みたいですが、
    平民でござんす。

    和っ背、和っ背、和っ背
    MAMBO!

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  8. curonikeru より

    ふと日経みたら、
    坂井 修一(さかい しゅういち、1958年11月1日 – )は、日本の歌人、情報理工学者、東京大学教授。愛媛県出身。
    1958年11月1日(62歳)

    自由自在に楽しんでこそコンピュータなのに、

    修正します
    自由自在に楽しんでこそパーソナルコンピューターなのに、

    敢えて2点修正
    情報系も伸ばさないー、ですか。

    まて、幾度もエラー、プリントアウトなら、
    fortranポイな。なかなか興味深い。

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  9. 通りすがり より

    田村はん
    憲法には移動の自由化がありますので、出ていくことをとめられない。
    えだの
    じゃ、変えればいいじゃないですか
    とは言わず、、、、、

    麻呂
    日本人が格安観光で脱出し、戻ってきたら、防疫として、2週間待機なんてできますか?

    返信

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  11. curonikeru より

    今週のテーマは『コロナ脳が召喚した「凡庸という悪魔」 ~コロナ全体主義を打ち破れ~』です。

    なかなかやかたよ、
    コンクリートおじさん!

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