From 平松禎史@アニメーター/演出家
消費税が10%になるまであと数日に迫りました。
最初に書いておきますと、消費税は、インフレ率の調整機能がなく、富の再配分機能もない…それどころか貧困層ほど重税になりますから、廃止すべき論外な税制です。
新聞各社は、軽減税率が適用されるため消費増税の被害を取り上げるのに消極的でした。経団連や経済同友会など影響力の強い大企業組織が10%以上の増税を主張していることもあって、増税反対論はほとんど報道されなかったか、せいぜい懐疑的ニュアンスで紹介される程度だった。世論調査でも増税が近くなるにつけ「あきらめ」心理が増加して賛否が拮抗または増税賛成が多くなる結果が出ています。すっかりあきらめムードになってから「賢い増税対策」を記事にして購読解約を踏み留まらせようと目論んでいるようだ。射幸心を狙うギャンブルか詐欺の手法に近いですね。
国民一般の心理は、「国の借金は1人あたり885万円」「国の借金で財政破綻する」「国の財政は逼迫している」「このままでは財源不足で社会保障や年金が破綻する」といった報道を繰り返し見せられているため、「財源は税収で決まっている」のだと思いこんでいます。
加えて、国民の大多数…たぶんほとんどが…血のにじむような努力で得た所得から徴収される税を「わたしたちの血税」と捉えている。
この「わたしたちの血税」感覚が、自分たちの首を絞めることになるとは露ほど思わないに違いない。
安倍政権を熱心に支持する層または擁護する層は、経済通も含めて、現実の経済が悪くなっていることを認めません。したがってその原因が緊縮財政にあることも認めない。政権が財政拡大しない限り、財政拡大を支持しないのです。ですから、安倍政権批判になる財政拡大論を攻撃するわけです。中身はどうでもよく、安倍首相または安倍首相を支持すると宣言してしまった自分さえ守れれば良いのだ。論外なのでこちら側は論じません。
今回は、安倍政権を支持しない層または安倍政権打倒を強く主張している層の意識について書いてみます。
安倍政権批判派の「よくあるお怒り」を例示してみましょう。
・こっちを増やすためにあっちを減らせ!
日本共産党やその支持層は、格差解消や社会保障充実などを求めています。同時に国防を否定します。さすがに自衛官の給与や人員を削れとは大声で言えないのでアメリカから武器を買うのをやめろと言います。その分を貧困対策や社会保障費に当てれば良いのだ、と。
予算の付替え論です。つまり、「財源は税収で決まっている」と思いこんでいるため、こっちを増やすためにあっちを減らせ、という発想になるのです。
ほか野党にしても立憲民主党とその支持層を筆頭に、予算の付替えを主張します。民主党時代の「事業仕分け」がそれ。立民の場合、増税容認ですから共産党とは違いますが、「財源は税収で決まっている」と思い込んでいるから、付け替え論になるのです。
・大企業優遇税制はけしからん!
政権批判派は消費増税の代わりに法人税減税がおこなわれているのはけしからん!と怒ります。その通りなのですが、これも付け替え論の一種なのでいくら怒っても消費税減税・廃止へと持っていく論拠にはなり得ません。なら他のどこを削ろうか?という話なるだけで、打撃を受ける分野が変わるだけ。大企業とて80年代のように余裕があるわけではないのです。国民経済はつながっているので一つの分野を衰退させれば全体に響くのです。
・大企業の内部留保はけしからん!
正確には利益剰余金のことですね。これは、デフレが原因です。
収益が増えないので万が一のために貯めている。仮に法人税を増税しても、収益が増えないデフレ状況で利益剰余金を賃金に上乗せする(できる)企業はないでしょう。法人増税や剰余金に課税などすれば、さらにコストカットで賃下げか、国民の代わりに安くても働く移民労働者に置き換えるでしょう。だから、デフレ状況での増税は何であっても弊害しかないのだ、と思うのです。
…というわけで、「財源は税収で決まっている」と思い込んでいれば、あらゆる批判、あらゆる是正策は裏目に出ます。この思い込みがある限りデフレを脱却できないからです。(できていないでしょう?)
野党が頼りにならないので仕方なしに与党を支持し、安倍政権もまーよくやってるんじゃないの?くらいに思っている多くの人々、経済に関心を持たない更に多くの人々も、「財源は税収で決まっている」と思い込んでいるんじゃないでしょうか。増税のたびに「やむを得ない」と容認してしまうのは「財源は税収で決まっている」と間違えているからです。
ボクも間違えていました。
なぜ増税を受入れてしまうのか。
いつからかわかりませんが、国民が政治に物申す時の殺し文句に「わたしたちの血税」があります。
税金とは、頑張って得た所得から強制的にむしり取られるお金だ、という意識と、「財源は税収で決まっている」という意識の合体です。
だから、政権や与党政治家を攻撃する武器が「わたしたちの血税」になる。
貧困化と格差拡大で、政権批判派は益々「わたしたちの血税」を叫び、無駄な支出を削れ! 財政を逼迫させる借金はやめろ! 将来世代にツケを回すな! と叫ぶ。
そうなると、政治家も票を取るために「わたしたちの血税」感覚で語るようになる。財源の付替え論で汲々とし、政府支出・国債発行は削る。その結果、貧困化と格差拡大、国内投資の削減でツケを将来世代に積み上げることになる。(なりました。)
「わたしたちの血税を無駄にするな!」感覚で、自縄自縛となる。(なってます。)
間違いに気がつけば、真に愚かしい負のループと言わざるを得ません。
+ + +
さて、現代貨幣理論〈MMT〉はかなり周知されてきたと思います。
MMTが示唆するのは、現実のお金のしくみです。すでにボクらがやっていることの説明に過ぎません。そこから示唆されるのは
「自国通貨建て国債が破綻することはない。」
「借入によって貨幣が生まれる。」
「政府は徴税より前に支出している。」
「財源は税収ではない。」
…という事実です。
この事実を活用すれば、日本の場合、インフレ率が3~4%になるまでは、政府支出を拡大し国債発行して国民に投資し、国民を豊かにできることがわかります。
大変シンプルな話です。
しかし、「わたしたちの血税」感覚にとって、これほど迷惑なものはない。
「財源は税収ではない」のなら、「わたしたちの血税」を武器に使えなくなるからだ。
よって、政権批判派のみなさんは、財政拡大を無限にできるなどトンデモだと(インフレ率が制約になるといくら説明しても)聞き入れない。財政拡大で貧困や格差、社会保障問題や防災減災が改善することなど、絶対に認められない。いや、安倍政権に限らず、「国家」が、財政拡大によって国民を豊かにするなど、あってはならないのだ。反国家と反政府を混同すると国民が迷惑します。
一方、政権支持派は政府がやらない財政拡大を促すMMTを受入れない。政権支持の経済通はインフレを止められなくなると言って受入れない。結局は政権批判派と同じです。
+ + +
ここ数年ブログで書いていることですが、「左右の共同作業で戦後レジームが固定強化されてきた」とともに、「左右の共同作業で国民貧困化が固定強化されてきた」のです。
佐藤健志さんの『平和主義は貧困への道 または 対米従属の爽快な末路』で、法的かつ歴史的な根拠が示されましたので、自信を持って言うことができます。
政権支持派と政権打党派の共同作業によって、国民貧困化・格差拡大・社会保障弱体化・災害弱国化・文化破壊などなどがおこなわれてきた。
政権支持派は都合が悪いことは無視する。加えて、政権打党派側も政治経済に関心を持たない一般層も、「わたしたちの血税」感覚で、ともに状況悪化を強力に推し進めたのです。
そのつもりがなくても、ね。
直近の問題で言えば、「わたしたちの血税」感覚が、消費増税を決定づけたと言っても過言ではありません。
間違えない人はいません。
「誰が」でなく「中身で」考えよう。
◯コマーシャル
ボクのブログです。
【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」第六十一話:『「わたしたちの血税」感覚が自分の首を絞める』への3件のコメント
2019年9月28日 11:37 AM
血税 とは
其生血を以て国に報するの謂なり
すなわち 兵役義務
平和大好きな方々が 血税 血税と 唱えるさまには
クスッとしてしまいます
が、、、
日本は戦時国債すら 発行できない 「平和国家」
税の真の意味も理解せず ボーッと 生きているから
このザマ
税は財源などではなく
経済の温度調節をするための ツマミ
「今日も学校は行けるのは 税金さんの おかげです」
などと
小学生の お子たちに
作文を強いるような 国の 未来は真っ暗闇
税は財源などでは ない と
小学校低学年から 徹底的に
叩き込まなければ
文字通りに 生血を
抜かれて しまい です ♪
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2019年9月28日 3:20 PM
次世代に ツケを 遺すな
とは
シャッキンという
貨幣や 税についての
間違った概念 かと、、
それこそ
「二度と 間違いは 繰り返しません」
で
ございませう ♪
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2019年9月29日 6:40 PM
お金とは富そのものではなく、
経済をうまく回すための増発自由な道具である。
その道具をうまく使うためにこそ税金があり、
その取り方によってお金の巡りと価値、格差の安定などの調整を
行っている。
これがあまり知られては居ないのが現状でしょう。
お金という限りある富を奪い合うことが経済活動だという
常識の上で生きているのが現代の日本人ですね。
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