From 三橋貴明
8月30日、東洋経済新報社から
ランダル・レイ教授の
「MMT現代貨幣理論入門」が
発売となりました。
https://amzn.to/2ZvzSUD
序章から、夢中になって読みましたよ。
レイ教授のレトリックや説明の洗練さも
さることながら、翻訳・監修
(島倉原氏, 鈴木正徳氏)が素晴らしい。
「分かっている人」が翻訳して下さった
おかげで、実に分かりやすく、
不整合がない一冊になっています。
昨日の「記紀と魏志倭人伝を普通に読む」と
根が同じなのですが、歴史学者
(あるいは考古学者)や経済学者は、
そもそも「基本認識」が間違っています。
結果、何を説明しても不整合や矛盾が生じ、
ダブルスタンダードにならざるを得なく
なるのです。
(都合がいいときには、
記紀の記述から引用する癖に、
記紀に明記されている開化天皇以前は、
根拠なく「架空の天皇」と断定する、など)
さすがに、歴史学までもがここまで
歪んでいるのは、我が国だけだと思います。
大東亜戦争敗北後、
皇国史観を否定したくなった
「気分」は理解できますが、
だからと言って基本史料である記紀を
全否定しては、日本の古代史は
成立しません。
もっとも、「人類に対する罪」という
意味では、貨幣認識を間違えていた
経済学者の方が、圧倒的に罪が重いです。
日本も悲惨な状況になっていますが、
貨幣観を間違えた結果としての
被害という意味では、
他の国も負けてはいません。
特に悲惨なのが、
ユーロ加盟国(の南欧諸国)ですね。
ところで、反・緊縮財政の旗を掲げた
ギリシャのシリザ(急伸左派連合)は、
先日の総選挙でND(新・民主主義党)に
敗れ、政権を失うことになりました。
結局のところ、EU及びユーロという
国際協定に加盟している限り、
いかなる政権が誕生しようとも、
MMT的な「国民のための政策」に
転換することは不可能なのです。
何しろ、金融主権と財政主権がありません。
ダニ・ロドリックの国際政治のトリレンマ、
「グローバリズム、国家主権、民主主義の
三つは、同時に二つまでしか
成立させることはできない」
は、見事にギリシャの手足を縛っています。
グローバリズムの国際協定
(マーストリヒト条約など)を批准した以上、
ギリシャは民主主義により国家主権を
行使することは不可能なのです。
結果的に、民主的に選ばれたシリザですら、
ギリシャを反緊縮に転換させることは
できず、NDという「緊縮派」に
政権を奪還される羽目になった、と。
ギリシャはユーロ・EUから
離脱しない限り、
国民経済を立て直すことはできません。
とはいえ、EUはともかく、
ユーロという「共通通貨」から
逃れることはできるのでしょうか。
方法はあります。
ギリシャ政府が自らの負債となる独自通貨
「新ドラクマ(名称は何でもいいですが)」
を発行し、年金支出や公務員給与、
インフラ整備費用として支払い、
流通させればいいのです。
「いや、そんなポッとでの
新ドラクマとやらを、
ユーロに慣れたギリシャ国民が
使うはずがない!」
と、思われた方が少なくないでしょうが、
考えが浅い。新ドラクマを
ギリシャ国内で流通させる方法は、
超簡単なのです。
ギリシャ政府が、「税金」について
新ドラクマ以外での受け取りを認めない、
と宣言すれば、話は終わりです。
納税の際に新ドラクマが必要ということに
なれば、ギリシャ国民はユーロではなく
新通貨を使用せざるを得なくなります。
すなわち、租税貨幣論の「実験」に
なるのです。ギリシャ政府には、
是非とも「ギリシャ国民のために」
新通貨導入を決定し、
「納税は新通貨以外では認めない」と
やって欲しいのでございます。
人類史上、硬貨としての貨幣が
初めて流通したギリシャにおいて
(厳密にはリディア王国ですが)、
2600年後、租税貨幣論という
貨幣の本質が証明されるって、粋な話でしょ?
◆【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※特別コンテンツ「邪馬台国はどこにあったのか?(長浜浩明先生」)が、リリースになりました! 超絶的に面白いです。是非、ご入会下さい。
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◆経営科学出版「知識ゼロから分かるMMT入門」が刊行になりました。
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◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第334回 続 アベ・ショック
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/
◆メルマガ 週刊三橋貴明 Vol536 問題は貨幣を受け取らせることだ
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
過去の銀行は、なぜ自行の「銀行券」を流通させることができたのか。現在の日本では、なぜ誰もが「日本円」を受け取るのか。
「貨幣を受け取らせる」理屈が理解できれば、「貨幣」について綺麗に見えてきます。
◆メディア出演
三橋TV、続々リリースされています。
三橋TV第129回【主要国で最も自国の農業を守らない国】
https://youtu.be/GrGtCo23eNA
三橋TV第130回【悪魔も怯えるグローバリストの悪辣さよ】
https://youtu.be/ocqLnXYMeoI
三橋TV第131回【緊縮財政という“日本国家の店じまい”】
https://youtu.be/CsCLO-3Ng2M
9月2日(月) チャンネル桜「Front Japan 桜」に出演しましす。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651
◆三橋経済塾
お待たせいたしました。令和元年8月17日(土)三橋経済塾第八期 第八回対面講義を配信致しました
https://members8.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=658
ゲスト講師は長浜浩明先生でした。
令和元年9月21日(土)三橋経済塾第八期、第九回対面講義申込開始致しました。
https://members8.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=674
ゲスト講師は安藤裕先生(衆議院議員)でございます。
◆チャンネルAJER
今週の更新はありません。
【今週のNewsピックアップ】
必要なのは国の信頼とやらではなく貨幣発行
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12513666239.html
MMT 現代貨幣理論入門
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12514752745.html
【三橋貴明】ギリシャで新通貨ドラクマを流通させる方法への3件のコメント
2019年9月2日 1:56 PM
とにかくどこもかしこも有権者の停滞が招く国家の衰退と没落。その筆頭はご存じの安倍応援団です。それが木を見て森を見ずにその背景の大本にはスルーして、断片的な韓国叩きに石破叩きに野党叩きを、味方面した外国人とやってますから目出度い話。これこれ疲弊の要因です。
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2019年9月2日 5:25 PM
ECB(欧州中央銀行)
その目的は 物価の安定 のみ とか、、
つまりは インフレになんて させて 堪るか。。。
日本にしろ ドイツにしろ
また
富国強兵なんて やられたら 堪りませんよね
宗主国さま ♪
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2019年9月2日 7:17 PM
ユーロとのレートが決まれば、最初は90%までユーロでの納税を認めるが、10%以上は新通貨で納税すると決めて、徐々に比率を上げて、最後ユーロを締め出せば大きな混乱はないかもしれませんね
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