日本経済

2019年8月20日

【室伏謙一】シェアリングエコノミーなるもののお寒い実態に関する幾つかの補足

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 三橋TVで8月14日から公開されているシェアリングエコノミーの実態についての解説、既にご覧いただいた読者の皆様もいらっしゃることかと思います。多くの反響をいただいており、皆様の関心の高さを実感しているところです。

 さて、私自身でも動画を確認しましたが、解説とは言っても時間の制約もあり、少々舌足らずになってしまったのではないかと考え、ご覧になる際のお手元の「レジュメ」的に補足説明をこちらでつらつらさせていただきたいと思います。

 まず、シェアリングエコノミー、内閣官房シェアリングエコノミー促進室も公式の文書の中で認めているとおり、経済活動ではなく経済活性化活動です。要するに経済活動そのものではないということであり、あくまでも経済を活性化する活動の一つと位置付けられているということです。そうすると、シェアリング「エコノミー」という名称自体おかしいですし、実際に経済が活性化しているのかという大いなる疑問もありますが(シェアリングエコノミー業界自体は拡大しているようですが、といっても元々なかったものなので拡大は当然で、活性化活動が活性化したとしても、それが経済自体の活性化につながっているのかはまた別の話)、経済を活性化させるための活動や支援というものは、非営利や薄利で行うものは別段、どちらかと言えば国や地方公共団体の役割。これを「シェア」の名の下に民間事業者等に行わせようというのは、まさに緊縮脳の最たるものです。

 残念ながら、直近の国の成長戦略や経済財政運営と改革の基本方針にはしっかりとシェアリングエコノミーについての記述が組み込まれてしまっており、つまりは歳出拡大をするつもりはない、積極財政に転ずるつもりはないということのようです。これでは今後シェアリングエコノミー関係者や関係事業者、それに乗っかる国会議員、地方議員、公務員が跳梁跋扈していくことでしょう。そう思うとなんとも暗澹たる思いになりますが、だからこそ皆様にはこの点はしっかり理解しておいていただきたいと思います。

 次に、シェアリングエコノミーは単に何かをシェアする、共有するという話ではなく、インターネット上のマッチングプラットフォームが介在することが当然の前提になっています。したがって、こうしたプラットフォーマー=シェアリングエコノミーという認識が日本では広まってしまっているわけです。その典型例がAirbnbという民泊のマッチングプラットフォームであり、以前はAirbnbは民泊の代名詞にまでなっていました。(民泊関係者は「エアビ」と略して使っていましたね。)

 そしてこのプラットフォーマー、仲介する場と言うか機会をインターネット上で提供するだけで、民泊であれば宿泊施設の在庫を抱えているわけではありませんし、もう一つ有名なウーバーイーツ(Uber Eats)にしても料理の配達人を雇用しているわけではありません。当然のことながら、Uber、三橋先生の言葉を借りれば白タク(まあ実際関係法令の許可等を得ているわけでなければまさに白タクですが)も、自分で自動車を所有しているわけでもなければ運転手を雇用しているわけでもありません。

 つまり、プラットフォーマー自らはマッチングサイトをインターネット上に設けて、後は上手に営業して宿泊施設や労働力、サービスの提供者と、それを利用したい人を集めて手数料を徴収すればよく、リスクは借りる側、利用する側と提供する側に寄せるという、非常にお手軽な商売をしているということです。加えて言えば、労働力にせよサービスにせよ、利用する側からすれば安いに越したことはないので、労働力等の提供料は当然低く抑えられます。労働力を提供する側は、本業の収入で足りない部分を補うための小遣い稼ぎでやっている場合が多いようで(と言いますか、十分な収入が得られている人がやるわけがないわけですが)、少しでも収入の足しにしようと、低い料金でもやってしまう、手数料を引き上げられてもやらざるを得ないという構図が出来上がってしまっているということのようです。(これじゃプラットフォーマーによる、情報の非対称性と優越的立場を利用した、搾取と変わらないですよね。だから「新・貧困ビジネス」なのです。)

 そしてシェアリングエコノミーを推進し、政府や関係議員に強力に働きかけを行っているのはこうしたプラットフォーマーやプラットフォーマー関係団体。行政サービスの補完や労働力等の提供者の能力の認証制度の創設まで考えているようです。前者であれば緊縮財政の結果こぼれ落ちた部分で儲けようということですし(その例として雪かきの話を挙げました)、後者であれば、認証制度による認証を受けられないか、評価を厳しくして低評価を増やすかすることで、労働力等の提供者に支払う料金を低く抑えることが出来るようになるということ。

 シェアリングエコノミーのお寒い実態はまだまだありますが、要するに仲介プラットフォーマーのチャリンチャリンビジネスのためのものということで、はっきり言えばレントシーカーのためのもの、ということです。

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【室伏謙一】シェアリングエコノミーなるもののお寒い実態に関する幾つかの補足への3件のコメント

  1. 大和魂 より

    いや、はや、目から鱗が落ちました。この期に及んでも、言葉巧みに国民を欺き、私腹を肥やすのですから、大したものです。これって話題の、なんちゃって興業と差ほど変わらなくて、それに関連するぶっ飛んだ有権者が選ぶ、ぶっ飛んだ地域政党の十八番の額に汗するどころか、顎に汗するのと同じ理屈ですよね。ならば、どこもかしこも汚染されていますから先ずは、法曹と検察の見直しから始めなければなりません。へえ~

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  2. たかゆき より

    実業と虚業

    インバウンドやらエアビやら
    シェアリングエコノミーやらの

    一見オシャンティーなカタカナ商売

    そもそもカタカナとは
    漢文を開くための
    補助言語

    補助言語が幅を利かす世界は どうなるか

    推して知るべし

    一例が

    ハングルとかいう

    カタカナモドキの補助言語で思考なさる お国

    パクリに精を出す素敵な「虚国」

    というわけで

    ウラがなければ オモテなし。。

    ちなみに小生

    実業とは 縁もゆかりもなしの

    虚業従事者で ございます どうよ ♪

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  3. リグス より

    なるほど、これまた勉強になりました。

    意味は違いますが、緊縮脳って面白い表現ですね。脳が縮小するのでアルツハイマーとも言えます。しかし、ここでこの病気を持ち出すと、差別になってしまうか?

    プラットフォームビジネスといいますか、新貧困ビジネスとか振り込め詐欺とか考案した人は実に賢いと思います。

    賢さは狡さを含む、振り込め詐欺は犯罪ですが、新貧困ビジネスは立派なビジネスで、しかも今後伸びていくであろう分野。初期に手をつけた人がリードしますね。

    そういえばマルチも親ネズミは儲かる仕組みですね、うーむ賢い。

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